サクセスストーリーの源流としての「七人の侍」
四方田犬彦「七人の侍と現代」(岩波新書)をちら読み。サクセスストーリーの源流の一つのようだ。
意外だったが、「七人の侍」のストーリーを要約して幾つかの要素を落とすと(リーダーの勘兵衛の威厳ある佇まいを崩して駄目なキャラに改変、また、ラストで勝者の図式を転換させる)、確かにサクセスストーリーになる。
ちなみに、この本では複数のプロフェッショナルが協力して活躍する映画という観点で映画史を追っていくので、「がんばれ!ベアーズ」や「ロッキー」といった典型的なサクセスストーリーは紹介されていない。
七人の侍では野伏せりを略奪者としてのみしか描いていない(敵側からの視点がない)と指摘。西部劇と似た図式。
フォロワーの作品は逆に七人の侍がそうだったから、敵側の視点に思い至ったのかもしれない。というか、主人公たちは敵の内部事情を知る由もない。分からない、理解しえないから恐ろしい存在として成り立っている。侍を雇って抵抗すると決めた以上、引き返せないはずなのだ。
ジョーズやエイリアンは姿を隠しているから怖い、それも一つの真理だ。いや、相手は人間だけど、百姓側の視点で描くと、敵の視点は余計なものでしかないだろう。
<追記>
読了。黒澤監督は徹頭徹尾、勧善懲悪的な構想で描いたようだ。敵側の視点の欠如。むしろ欠けているから現在でも戦火に苦しむ国/地域の人たちに現役の作品として受け入れられているのではないかと思った。
他、終戦後まもない時期の映画史も解説してあるが、映画業界の撮影所システムが無くなったのは、映画産業の斜陽化だけでなく、労働争議にも原因があったことがうかがえた。待遇の改善とかはともかく、作品の内容にまで口を出されたら堪らない。
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