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2008年7月21日 (月)

最悪手連発

 色即是空 空即是色とは言うが、怪我をすれば痛いし、病気をすれば苦しみ悶絶する。自分が見ているものは果たして現実だろうか? それならまだしも実は現実と妄想の区別がついてないんじゃないか? と悩んだことがある。物理学では全てのはじまりはビッグバンからというのが定説といってよい。一方、世界は平たくて巨大な亀の甲羅の上に乗っている、なんて古い世界観もある。人間の視覚情報と虫の視覚情報は異質なものだそうだし、目を転じると、言葉こそが混沌を切り分けると考える学者もいる。世界は超越者のみている夢だという世界観を取り込んだライトノベルが大ヒットしたのも記憶に新しい。

 実は世界は一人のオーストラリア人の妄想に過ぎない、ここ数日インターネットを駆け巡る文字列を受け入れるならそうなるだろうか。新聞やニュースではほとんど触れられていないし、街はいつもと変わらない。火種になっている英文記事を直に読んでいないので未だ信じ難いが、毎日新聞の公式サイトにお詫びのページがあることからすると――実はフィッシングサイトではないか?――根も葉もない話ではないらしい。新聞に「みだらな表現」とあれば、連載小説の一節が想定内か。違う。ありえないことが起きている。超人的な妄想力が世界を覆い尽くした。

 妄想くらいならすることもあるが、それを世界に垂れ流そうとは全く思わない。ネット上の文字列を追っていると、躁状態になっている自分に気づく。ネット上のコミュニティは同じ傾向の見解で固まる、言い換えれば棲み分ける傾向がある。火事と喧嘩は江戸の華と言うが、個人的には静かに見守ろうと思う。

 関係者の処分が公表されたが、危機意識が微塵も感じられない。一部の暴走でなく、むしろ組織的に行なわれたもので、内部事情が外部に漏れるのを警戒しているように受けとめられる。

 その後、7/20付朝刊紙面で2面に渡って検証記事が載ったが、記事のチェック体制に不備があったとの釈明。新聞社のWEBサイト、おそらくCMSと呼ばれるツールで運営されているはずだが、記事執筆→ 編集デスクの承認→ 記事のアップロード・公開といった業務フローがシステム上組み込まれているか。システムを設計・構築する段階でヒューマン・エラーは可能な限り排除されるはず。

 日本は滅びるね、日露戦争の勝利で浮かれる中、冷たく言い放つ台詞が夏目漱石の「三四郎」にあるそうだ。昔、某テレビ局は死んだとコメントしたニュースキャスターがいた。では、今回の件はどうなのか。現時点では最悪手を連発しているとしか思えない。自浄能力がないと心証を持たれてもおかしくない。そもそも5年以上有害情報がクオリティペーパーから垂れ流されていたこと自体、個人でなしうることでないし、ありえない。

 インターネットの事実上の標準語は英語である。なのでWikipediaの政治的なマターでは、特に英文ページで編集合戦が繰り広げられているとか。英文で発信された情報は各国語に翻訳され世界に拡散していく。第三者機関のコメントでネットに過剰反応したものがあったが、ある意味、毎日新聞こそ、ネットの特性を知り抜いて悪用した――灯台もと暗しで日本人が気づかなかったのも含めて――のではないか。

 いずれ実家に電話しようと思っているが、まだしていない。

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