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2006年3月22日 (水)

ファンダメンタル・ホラー

「ホラー映画の魅力 ファンダメンタル・ホラー宣言」(小中千昭著 岩波アクティブ新書)を読む。僕自身は怖がりなのでホラー映画をほとんど観ないが、偶々著者の小中千昭氏は僕が好きな特撮作品の脚本家だったりする。で、読んでみたわけである。

読んでいくと小中氏の創作暦が織り込まれている。「本当にあった怖い話」や「学校の怪談」といったテレビ/ビデオシリーズなどを手がけられていたらしい。それは90年代の頃らしいが、僕はそれらの作品とは全く縁がなかった。子供向けシリーズと思っていたのと、そういう怪談もののベースにある死生観があまりにもアホらしく思えたからである。

話はそれるが、日本人の死生観は矛盾した部分があるそうだ。本来、仏教は輪廻転生を前提としている。輪廻転生を繰り返すことから解脱することが究極の目標であるが、そういう思想がベースにありながら、夏には盆で祖先の霊を祭っている。これは道教の影響とか言われてるはずである。で、僕は不勉強なので、この辺について宗教家の人達がどういう解釈をされているのかは知らない。とにかく死生観、つまり死んだら人間はどうなるか、というのは人間にとって永遠の問題である。死生観が根底にあって宗教というものはあるはずである。

話を元に戻すと、怖いという感情、恐怖という感情は言葉では語りえないものなのかもしれない。「ホラー映画の魅力」では不条理さが根底にあると指摘されているのだと思う。で、思い出したのが、先日読んだ漫画「へるん幻視行」(宇治谷順・ほんまりう著 小学館)である。これはラフカディオ・ハーンが怪談のエピソードをベースにした奇怪な事件に遭遇するというストーリーである。ミステリ仕立てなのだが、それゆえロジカルな展開となっており、怪談本来の不条理さとはミスマッチをおこしているかもしれない(そこが味わいにもなっているのだが)。この漫画についてamazon.comの書評では好意的な評価はされていなかった。ただ、いいアイデアで先に使われてくやしい、という複雑な感情をはらんだものであった。

「ホラー映画の魅力」で取りあげられていた映画は有名なものが多く、僕も子供の頃に観た記憶のある作品もいくつかあった。怖がってばかりいないでこういったジャンルを観るのも悪くないかもしれない。

僕自身は心霊現象みたいなものに遭遇したことはないが、夢うつつでまどろんでいるときにふいに暗闇に呑みこまれる様な恐怖を感じることがある。背筋がぞくっとする感じであるが、小中氏が表現したいのもそういう感覚なのだろう。この恐怖感は生理的なものもある様である。布団から脚を出して寝ていると、そういう感覚になることが多い様である。あるとき、出張中のホテルで、ぞくっとした感触で目覚めたことがあったが、多分そういうことだと思う。ひょっとしたらいわく付きのホテルなのかもしれないが、そこまでは知らない。ホテル火災で人命が失われたホテルに泊まったときは何もなかった。阪神大震災のときもぞくっとした感触で目を覚ました。あれは最初の縦揺れの衝撃で目を覚ましたと思っているが。

そういうわけで、日本のホラー映画は活況を呈しているが、このジャンルがどの辺まで先に進んでいるのか確かめてみたいと思う。

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