昔話

2022年10月 4日 (火)

大きな話――モチーフ分析

◆あらすじ

 昔、ある若者が大阪へ出て、初めて宿に泊まった。女中が来てガラガラと雨戸を閉めた。若者はそれを見て、この家の雨戸は簡単でいい。自分のところでは、朝から昼まで中かかって雨戸を開け、夕方には昼から中かかって雨戸を閉めると言った。夕食の時給仕に出たさっきの女中が、明日この後ろの畠を見ろ。随分広い畠に粟が沢山播いてあると言うと、若者は自分のところには粟三斗蒔きの畠があると言った。女中がこの上へ行ってみましょう。向こうにとても長い橋ができたと言うと、若者は自分のところの前の川には十日渡りの橋があると言った。女中が何を言っても若者は大きなことを言うので、これは大した家らしいと思った。若者は女中に自分のところに来ないか。うちへ来てくれたら、米を搗(つ)くこともいらない。水を担ぐこともいらないと言った。すると、それでは明日一緒に行きましょうということになって、女中は若者について来た。行ってみると。粟三斗蒔きという畠は小さい、草のいっぱい生えた畠で、三斗蒔きというのは一度蒔いたが生えない。二度蒔いたが生えない。三度蒔いたらようやく生えた。それで三度蒔きで、昼までかかって雨戸を開け、昼から中かかって閉める雨戸というのはたった一枚で、上に引っかかり下に引っかかりガッタンピッシと中々動かない。長い橋というのはどこにあるかと訊くと、この下の谷川にかかった赤い橋で、毎月十日になると金比羅さんの祭りに皆が渡るから十日渡りの橋と言うのだ。米は搗かせないというのは、袋を下げてあっちこっちで貰って歩くから搗く必要がない。水は担がせないというのは、水はたごが一つしかないから担がれない。片手で下げてくるのだと言った。

◆モチーフ分析

・ある若者が大阪へ出て、初めて宿に泊まった
・女中が来てガラガラと雨戸を閉めた
・若者は自分のところでは朝から昼までかかって雨戸を開け、昼から夕方までかかって雨戸を閉めると言った
・夕食の給仕に出たとき、女中が後ろの広い畠に粟が沢山播いてあると言った
・若者は自分のところには粟三斗蒔きの畠があると言った
・女中が向こうにはとても長い橋があると言った
・若者は自分のところの前の川には十日渡りの橋があると言った
・女中が何を言っても若者は大きなことを言うので、大した家らしいと思った
・若者は女中にうちへ来ないか、米を搗くことも水を担ぐこともいらないと言った
・翌日、女中は若者について行った
・行ってみると、粟三斗蒔きは三度蒔いたらようやく生えたということだった
・雨戸はガタピシ動かない
・毎月十日になると金比羅さんの祭りがあるから十日渡りの橋と言う
・米は袋を下げてあっちこっちで貰って歩くから搗く必要がない
・水はたごが一つだけあるから担がれない。片手で下げてくるのだと言った

 形態素解析すると、
名詞:若者 女中 こと 雨戸 十 三 ところ 橋 粟 自分 水 畠 米 あっちこっち うち たご とき ガラガラ 一つ 何 前 向こう 夕方 夕食 大阪 家 宿 川 後ろ 必要 昼 昼ま 朝 毎月 沢山 片手 祭り 給仕 翌日 袋 金比羅
動詞:言う ある 蒔く 下げる 出る 担ぐ 搗く 来る 渡る 閉める いう いる かかる ついて行く なる 動く 思う 播く 歩く 泊まる 生える 行く 貰う 開ける
形容詞:でかい ない 広い 長い
副詞:とても ようやく ガタピシ 初めて

 若者/女中の構図です。抽象化すると男/女です。若者―大きな話―女中という図式です。

 大阪に初めて泊まった[宿泊]若者に女中が話しかける[対話]と若者はそれより大きな話をする[大言]。大した家らしいと思った[感心]女中は若者について行く[同行]。ところが若者の話は嘘ではないが、とてもみすぼらしいものだった[露見]。

 大きなことを放してばかりの若者だったが、実態はとてもみすぼらしいものだった……という内容です。

 発想の飛躍は若者の大言壮語でしょうか。若者―大きな話―女中という図式です。この後女中は大阪に帰ったのでしょうか。

◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.317-318.

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2022年10月 3日 (月)

大かん狐――モチーフ分析

◆あらすじ

 昔、大かんの大岩の辺りに大かん狐というよく人を化かす狐がいた。日が暮れてここを通るとよく化かされた。それを問屋の主人が大層自慢にして来る船頭毎に大かん狐はよく人を化かす。誰でも彼でも皆化かすと言った。一人の船頭がそれを聞いて自分なら化かされないと言った。それなら賭けをしようということになって、船頭は日が暮れるのを待って大かんへ出かけた。そして大岩に腰をかけていると、向こうから殿さまの行列がやって来た。下に、下にという声に船頭はやれしまった、殿さまのお通りとは知らなかったと小さくなっている内に先払いが来て、やい無礼者、殿さまのお通りというのにそこにおるとは不届き者、手打ちにしてやると言った。船頭がどうなることかと震えていると、これでこらえてやると言って頭をくりくり坊主に剃ってしまった。やれ助かったと思ってみると、侍も殿さまもいない。これはしまった。狐に化かされたと思って問屋へ戻ったところ、これは自分の勝ちだ。それでは約束通り船をもらうと言って、乗ってきた船を取られてしまった。船頭は仕方ないので何里もある道を歩いて帰って布団を被って寝ていた。三日経っても起きないので女房が心配して訳を尋ねた。それを聞くと女房は、それなら自分が仇をとってやろうと言って千石船を準備してそれに乗って出かけた。そして問屋の主人に自分なら化かされないと言った。そこで千石船と問屋の家財全部とで賭けをすることになった。女船頭は日が暮れるのを待って大かんの大岩へ出かけた。間もなく下に、下にという声が聞こえてきた。女船頭は侍に化けている狐に向かって、まだまだ化け方が下手だ。目で直せと怒鳴りつけた。狐どもは化けの皮が剥がれたと思って、どのようにすれば化けられるかと尋ねた。女船頭が唐鐘へ行って木綿と針と糸をとってくれば言うて聞かすと言うと、狐どもはすぐ唐鐘へ行って盗んできた。女船頭はそれで大きな袋をこしらえて、この袋の中へ入れ、そうしたら言うて聞かすと言った。狐どもは皆袋の中へ入ったので女船頭は袋の口をしっかり結んで問屋へ引きずって帰った。問屋の主人はびっくりしてしまった。女船頭は多くの若い衆を使って狐を猫島の沖へ沈めてしまったので、それから大かんで狐に化かされる者はいなくなった。女船頭は勝ったので、問屋の家財を全部もらって大金持ちになった。

◆モチーフ分析

・大かんの大岩の辺りに大かん狐という人をよく化かす狐がいた
・それを問屋の主人が自慢にしていた
・一人の船頭が自分なら化かされないと言った
・それで賭けをすることになった
・日が暮れるのを待って船頭は大かんへ出かけた
・大岩に腰掛けていると、向こうから殿さまの行列がやって来た
・先払いが不届き者、手打ちにしてくれると言った
・船頭は坊主頭にされて、これでこらえてやるとなった
・助かったと思ってみると侍も殿さまもいない
・狐に化かされたと思って問屋へ戻ったところ、乗ってきた船を取られてしまった
・船頭は仕方なく何里もある道を歩いて帰った
・布団を被って三日ほど寝ていた
・女房が心配して訳を尋ねたので話した
・女房はそれなら自分が仇をとると言って千石船を準備して出かけた
・問屋に自分なら化かされないと千石船と問屋の家財全部とで賭けをした
・女船頭は日が暮れるのを待って大かんの大岩へ出かけた
・間もなく下に、下にという声が聞こえてきた
・女船頭は侍に化けている狐に向かって、まだまだ化け方が下手だ、目で直せと怒鳴りつけた
・狐たちは化けの皮が剥がれたと思って、どのようにすれば化けられるかと尋ねた
・女船頭が唐鐘へ行って木綿と針と糸をとってくれば言うて聞かすと答えた
・狐どもはすぐ唐鐘へ行って盗んできた
・女船頭はそれで大きな袋をこしらえて、この袋へ入れ、そうしたら言うて聞かすと言った
・狐どもが皆袋の中へ入ったので女船頭は袋の口をしっかり結んで問屋へ引きずっていった
・女船頭は若い衆を使って狐を猫島の沖へ沈めた
・それから大かんで狐に化かされる者はいなくなった
・女船頭は賭けに勝ったので問屋の家財を全部もらって大金持ちになった

 形態素解析すると、
名詞:船頭 狐 女 問屋 かん それ 大岩 自分 袋 賭け かす 下 侍 千石船 唐 女房 家財 日 殿さま 聞 鐘 三 こと これ ところ 一人 不届き 中 主人 人 仇 何 先払い 全部 化けの皮 口 向こう 坊主頭 声 大金持ち 布団 心配 手打ち 木綿 沖 準備 猫島 皆 目 糸 者 自慢 船 若い衆 行列 訳 辺り 道 針
動詞:する 言う 化かす いる 出かける 化ける 思う いう とる なる 尋ねる 待つ 暮れる 行く ある かむ こしらえる こらえる もらう やって来る やる 乗る 使う 入る 入れる 剥がれる 助かる 勝つ 取る 向かう 寝る 帰る 引きずる 怒鳴りつける 戻る 歩く 沈める 盗む 直す 答える 結ぶ 聞こえる 腰掛ける 被る 話す形容詞:よい 仕方ない
形容動詞:どのよう 下手
副詞:しっかり すぐ そう まだまだ 全部 間もなく

 船頭/狐/問屋の構図です。船頭(女房)―賭け―問屋、船頭(女房)―殿さまの行列―狐の図式です。

 狐に化かされるか問屋と賭けをした船頭だったが[賭け]、大名行列に騙されて[幻惑]頭を丸坊主にされていまう[敗北]。賭けに負けて船頭は船を失った[喪失]。女房が仇をとると言って問屋と賭けをする[賭け]。女房は狐を騙して袋に入れて猫島の沖に沈める[謀略]。狐に化かされる者はいなくなり[安定]、女房は問屋の家財を手に入れた[獲得]。

 船頭の仇をとるため女房が狐を騙し、袋に詰めて海に沈めた……という内容です。

 発想の飛躍は、女船頭が狐を騙すところでしょうか。女船頭―袋―狐の図式です。この話も人間が狐に勝ちます。

 唐鐘の地名が出ますので浜田の話だと思われますが、大かんという地名は知りません。

◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.313-316.

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2022年10月 2日 (日)

はんだの馬場の尻焼狐――モチーフ分析

◆あらすじ

 小路の爺さんは度胸のいい人だった。ある日日が暮れてから山の内の方から牛を引いて帰った。寂しいはんだの馬場に差しかかると、年頃の娘がひょっこり出てきて道連れになった。そして、爺さん、足ガだるいがその牛に乗せてくれないかと言った。爺さんは来たなと思ったが、そしらぬ顔で、乗せてやるともと言い、鞍にかき乗せて、しっかりと綱でくくりつけた。娘はそんなに締めたら痛いと言う。いいや、落ちると悪いからと構わずにしっかり縛りつけて歩き出した。その内に村の近くになった。娘は、爺さん、降ろしてください。歩くからと言ったが、いいや、もう直に村だから、ついでに乗ってらっしゃいと答える。小便がしたいから降ろして下さいと言うと、もうじきだから、ついでにそのままにしなさい。娘は降りようと思ってもがいたが、しっかり縛りつけてあるのでどうにもならない。爺さんはいくらもがいても何と言っても取りあわず、とうとう自分の家まで帰った。そして門口から、婆さん、お客さんを連れてきたから足を洗う湯をもってきなさい。うめないでよい。なるたけよく沸かして熱くしてもってきなさいと言った。婆さんは変なことだと思ったが、ぐらぐら煮える熱い湯をたらいに入れてもってきた。爺さんは娘をしっかり抱きかかえて降ろし、それお客人、足を洗ってあげますと言って湯の中へ入れたので、娘はたちまち正体を現し狐になって、尻を焼かれて逃げていった。

◆モチーフ分析

・小路の爺さんは度胸がよかった
・日が暮れてから牛を引いて帰ってきた
・はんだの馬場に差しかかると年頃の娘と道連れになった
・娘は足がだるいから牛に乗せてくれと言った
・爺さんは応じて、娘を鞍に乗せて綱でくくり付けた
・娘が痛いといったが、爺さんは落ちると悪いからと取りあわない
・村の近くになって娘が降ろしてくれと言ったが、爺さんは取りあわない
・娘は降りようともがいたが、しっかり縛りつけられているのでどうにもならない
・爺さんは家に着くと婆さんに足を洗う湯を頼んだ
・婆さんが煮えた熱い湯をたらいに入れて持ってきた
・爺さんが娘を降ろして足を洗おうとして湯の中に入れると、娘は正体を現し狐になった
・尻を焼かれて狐は逃げていった

 形態素解析すると、
名詞:娘 爺さん 湯 足 婆さん 牛 狐 たらい はんだ 中 家 小路 尻 年頃 度胸 日 村 正体 綱 近く 道連れ 鞍 馬場
動詞:なる 乗せる 入れる 取りあう 洗う 言う 降ろす いく くくり付ける する もがく 差しかかる 帰る 引く 応じる 持つ 暮れる 焼く 煮える 現す 着く 縛りつける 落ちる 逃げる 降りる 頼む
形容詞:だるい よい 悪い 熱い 痛い
副詞:しっかり どう

 爺さん/娘(狐)の構図です。抽象化すると、人間/動物となります。爺さん―牛―娘=狐、爺さん―(煮える)湯―娘=狐といった図式です。

 爺さんが牛を引いて帰ってきたところ[帰還]、はんだの馬場で娘と道連れになった[遭遇]。足がだるいと言う娘を牛に乗せ[依頼][承諾]、綱で縛りつける[緊縛]。娘は文句を言うが[苦情]、爺さんは取りあわない[無視]。家に着き、煮えた湯で足を洗おう[検査]とすると正体を現し[露見]、狐は逃げていった[逃走]。

 馬場で道連れになった娘が牛に乗せてくれるよう依頼し、爺さんが応じるが、しっかり縛りつけて問答無用で家まで連れ帰る。煮えた湯を足につけると狐は正体を現した……という内容です。

 発想の飛躍は、爺さんが狐に勝つことでしょうか。爺さん―(煮える)湯―娘=狐の図式です。狐に化かされる話がほとんどなのですが、この話では珍しく人間が勝ちます。

◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.311-312.

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要ロールバック

昔話のモチーフ素の抽出の部分のやり直し、どうしようかと思っていたが、初期の話に遡ってみると、初期のやり方の方が望ましいとなった。100話近くロールバックしなければならないが。

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2022年10月 1日 (土)

池の峠の狐――モチーフ分析

◆あらすじ

 昔、小角(こづの)の池の峠に人を化かす狐がいた。村に何でも自慢する男がいて、自分なら狐に化かされたりしやせんといつも言っていた。その男がある晩そこを通りかかると、道のほとりに美しい女が立っていた。男はこいつが例の狐に違いないと思って、いきなり腕をひっ捕まえると、おのれ、狐め。俺を化かそうと思ってもそうはいかない。連れて帰って火あぶりにしてやるからそう思えと言ってずるずる引っ張って帰った。女は驚いて自分は狐ではない。助けてください、手を放してくださいと言ったが、男は何、放すものかといってどうしても放してくれない。女は泣く泣くもう右の腕はちぎれるから左の腕と取りかえてくださいと頼むので、それなら取りかえてやろうと言って左の手を引っ張って帰った。男は家の前まで帰ると、おい、かかあ、お客さんを連れて帰ったから火をどんどん焚け、これから火あぶりにしてやると大きな声で怒鳴った。すると、いきなり手が軽くなって男はすとんと尻もちをついた。しかし握った手は放さないで、しまった、狐は逃がしてしまった。それでも手だけは引き抜いてやったからこれを見よと言って女房にそれを見せた。女房はそれを見るとくすくす笑い出したので、火の灯りでよく見ると胡瓜(きゅうり)を一本しっかり握っていた。

◆モチーフ分析

・小角の池の峠に人を化かす狐がいた
・ある男は自分は化かされないと自慢していた
・ある晩、池の峠を通りかかると、道のほとりに美しい女が立っていた
・男はこいつが例の狐に違いないと思って、女の腕を捕まえた
・女は驚いて自分は狐ではないと許しを請う
・男が手を放さないので女はせめて左の腕と取りかえてくださいと言う
・応じた男は女を家まで連れてくる
・男は女房に火を焚けと言い、火あぶりにしてやると怒鳴った
・すると、手が軽くなって男は尻もちをついた
・握った手は放さないで、手だけは引き抜いてやったと女房に見せた
・女房はくすくす笑い出す
・よく見るとそれは胡瓜だった

 形態素解析すると、
名詞:男 女 手 女房 狐 峠 池 腕 自分 こいつ それ ほとり 人 例 家 小角 尻もち 左 晩 火 火あぶり 胡瓜 自慢 道
動詞:化かす 放す 言う いる する つく やる 取りかえる 引き抜く 応じる 怒鳴る 思う 捕まえる 握る 焚く 立つ 笑い出す 見せる 見る 許す 請う 通りかかる 連れる 驚く
形容詞:ない 美しい 軽い 違いない
副詞:くすくす せめて よく

 男/狐の構図です。抽象化すると、人間/動物です。男―胡瓜/腕―女=狐といった図式です。

 狐が<出る>という池の峠で男は美しい女と<遭遇>する。女を狐と<見た>男は女の腕を強引に<掴む>。女はせめて左腕にしてくれと<言い>、男は腕を<持ち直す>。女を強引に家まで<連れて>きた男だったが、火あぶりにしてやると言ったところ、すとんと<尻もち>をつく。女房に腕を<見せた>ところ、それは胡瓜だった。

 狐が出るという池の峠で遭遇した女の腕を強引に掴んで家まで連れていった男だったが、きづくと胡瓜を握っていた……という内容です。

 発想の飛躍は男が胡瓜をつかまされていたことでしょうか。男―胡瓜/腕―女=狐の図式です。左腕にもちかえたところで握らされた様です。すんでのところで狐を取り逃がしてしまったというところです。

 那賀郡に小角や池の峠といった地名があるのか知りません。伝説的要素を持ちますが、内容的には昔話でしょうか。

◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.309-310.

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研究篇を読み終える

角川書店『日本昔話大成』第12巻 研究篇を読む。これには昔話研究に関する論文が収められている。通読して気づいたのだけど、歴史地理的手法についての解説ではモチーフ分析について触れられていなかった。こちらの思い違いか。昔話の形態論についての論考では現在僕が進めている手法が、まだ生というか発展途上のものであることに気づかされた。これ、どーしよう?

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2022年9月30日 (金)

大公――モチーフ分析

◆あらすじ

 昔、大公という若者がいた。近所に金持ちの旦那がいた。旦那は欲張りで評判がよくなかった。大公は時々雇われて旦那のところへ働きに行った。ある日旦那の供をして山奥へ猟に行った。昼になったので昼飯を食べて休んでいる内に大公は木に登って遠方をあっちこっちと見ていたが、旦那様、大変ですと言って慌てて下りてきた。お家の方に当たって火の手が見える。火事かもしれないから自分が帰って様子を見てくると言って走って帰った。そして家へ帰ると、奥様、大変でございます。旦那さまが崖から落ちて頭に大怪我をした。それには女房の髪を黒焼きにしてつけると聞いているので自分が取りに帰った。すぐ髪を切って下さいと言った。奥様はびっくりして大急ぎで髪を根元からぷっつり切って大公に渡した。大公は山へ行くと、旦那様、大火事です。火事で奥様が大怪我をした。火事の怪我には何でも旦那の髪の黒焼きがよいということだ。早くそのまげを切るように言った。旦那は慌てて髪を根元からぷっつり切って大公に渡した。大公はそれを持って一散に駆けだした。旦那も大公について駆けだした。そして家へ帰ってみると家は何の事もなく、入って見ると奥さんが丸坊主になっていた。旦那は大公に騙されて二人とも髪を切られたことを知ると、大いに腹を立て、下男にいいつけて大公を捕らえてこさせた。そして大きな箱を作ってその中に入れ、首ほど出して大川へ流してこいと言いつけた。二人の下男は箱をかついで大川へ来た。土手におろして川へつき落とそうとすると、大公が箱の中から何も思い残すことはないが、これまで溜めた金がどこそこに瓶にいっぱい埋めてある。お前らに形見にやるから人に知られぬように早く掘れと言うと、下男たちは箱をそのままにして自分が掘ろうと思って我先に走って帰った。大公は穴から首を出してみると、目の悪い男が杖にすがって通りかかった。大公は大きな声であなたは目が悪いらしいが、この箱へ入るとじきよくなる。自分も目が悪くてこの箱へ入れてもらったらすっかりよくなった。これから出ようと思っているところだと言った。目の悪い男はそれではというので縄をといて大公を出し、代わって自分が入った。大公はそれに縄をかけて逃げた。下男たちは大公に言われたところへ走っていって掘ってみたが何も出ない。ようやく騙されたことに気がついて帰ってくると、物も言わずに箱を川へ突っ込んでしまった。三日ほど経って大公は旦那のところへ言った。旦那さま、自分はこの間川へ流してもらったが、あれから竜宮へ参った。立派な御殿で、お姫様の美しいこと、旦那様のことを話しましたら是非お連れしてこいとのことで迎えに参ったと言うと、旦那は大喜びで夫婦づれで大川のほとりへ来た。そして、一、二、三で飛び込むのですよと言って二人を川へつき落とした。それから自分が旦那のところへ帰って楽に暮らした。

◆モチーフ分析

・大公という若者がいた
・近所に金持ちの旦那がいたが欲張りで評判がよくなかった
・大公は旦那のところへ時々雇われた
・旦那の供をして山奥へ猟にいった
・旦那の家の方向に火の手が見える。家事かもしれないから帰って様子を見てくるといって走って帰った
・家へ帰ると奥さんに旦那が怪我をしたと言って髪を切らせた
・大公は山へ戻ると、旦那に火事で奥さんが怪我をしたと言ってまげを切らせた
・家へ帰ると、家は何事もなく、奥さんが丸坊主になっていた
・騙されて腹をたてた旦那は下男に大公を捕らえさせ、箱の中に入れ、川に流してこいと言った
・下男が川へ突き落とそうとすると、大公は溜めた金が埋めてあるから形見にやると言う
・下男たち、箱をそのままにして走って帰る
・目の悪い男が通りがかった
・大公はこの箱に入るとじきに良くなるといって入れ替わらせた
・騙されたと知った下男たちが箱を川へ突っ込んでしまった
・大公は三日ほど経って旦那のところへ行き、竜宮へ言ったと語った
・旦那を招いていると騙し、旦那と奥さんを川に突き落とした
・大公、自分は旦那のところへ帰って楽に暮らした

 形態素解析すると、
名詞:旦那 大公 下男 奥さん 家 川 箱 ところ 怪我 三 まげ 中 丸坊主 何事 供 家事 山 山奥 形見 方向 様子 欲張り 火の手 火事 猟 男 目 竜宮 腹 自分 若者 評判 近所 金 金持ち 髪
動詞:帰る する 言う いく 騙す いる 切る 突き落とす 走る いう しれる たてる なる やる 入る 入れる 入れ替わる 埋める 戻る 招く 捕らえる 暮らす 流す 溜める 知る 突っ込む 経つ 行く 見える 見る 語る 通りがかる 雇う
形容詞:ない よい 悪い 良い
形容動詞:じき 楽
副詞:そのまま 時々

 大公/旦那/下男の構図です。大公―火事―旦那、大公―火事―奥さん、大公―箱―下男、大公―箱―目の悪い男という図式です。

 大公が旦那の家が火事だと≪騙し>て旦那と奥さんを丸坊主に<させる>。怒った旦那は大公を箱に<入れて>川に<流そう>とする。が、大公は下男たちを<騙し>、更に目の悪い男を<騙して><入れ替わる>。大公は竜宮に行ってきたと旦那を<騙し>、旦那と奥さんを川へ<突き飛ばす>。

 大公は旦那を騙して丸坊主にさせ、更に竜宮に行ってきたと騙し、旦那夫婦を川へ突き落とす……という内容です。

 発想の飛躍は大公の悪知恵でしょうか。大公―火事―旦那、大公―火事―奥さん、大公―箱―下男、大公―箱―目の悪い男という図式です。

 原話はアンデルセンの「小クラウスと大クラウス」だそうですが、読み比べてみると、かなりローカライズされています。

◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.306-308.
・大庭良美「石見の民話―その特色と面白さ―」『郷土石見』八号(石見郷土研究懇話会、一九七九)五八―七一頁。

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2022年9月29日 (木)

渡廊下の寄附――モチーフ分析

◆あらすじ

 あるところに分限者(ぶげんしゃ)がいた。とてもけちで少しでもお金を出すことが嫌いで出そうとはしない。お寺の寄附なども言い訳をしてなかなか出さなかった。檀那寺の方丈はこんなことでは良くない、何とかして功徳をさせて救ってやらないと死んでから罪におちると思い、いろいろ考えた末に、近頃お寺の渡廊下が痛んで歩くのに危ない様になったが一つ寄附をしてくださらないかと言った。主人はいやな顔をして、一体どれくらい出せばいいだろうと訊いた。一両もあれば充分だろうと方丈が言うと、主人は渡廊下を直すと言えば五両や十両はいると言うに違いないと思ったのが案外少なかったので、それでは出そうと言って喜んで一両出した。方丈もこれで功徳ができたと喜んだ。ところがそれから間もなく主人は急病で亡くなった。葬式の日は分限者の旦那さまが亡くなったというので大勢の人が来て、幸い天気も良かった。坊さんもたくさん呼ばれていて、お経をあげて順々に焼香した。すると、その時今までよく晴れていた空がにわかにかき曇り、真っ黒い雲が棺を狙って舞い降りてきた。檀那寺の方丈は持っていた鉄の如意をふりかぶり、廊下、廊下と叫んで黒雲めがけて投げつけた。すると黒雲は直ちに天上へ舞い上がり、空は元のように晴れた。黒雲は火車で、棺の中の死体をさらうために来たのであった。火車は強欲な人が死ぬと死体をとって食う魔物である。居合わせた他の坊さんたちは、方丈の廊下廊下という一喝の威力に驚いて教えてくれるように頼んだ。方丈はそこで、この主人が強欲で死んだら火車にとられる様なことになってはいけないと思い、渡廊下に寄附をさせて、その功徳で救ったのだと教えたということである。

◆モチーフ分析

・あるところにけちな分限者がいた
・お寺の寄附も言い訳をしてなかなか出さなかった
・檀那寺の方丈は、何とかして功徳をさせないと死んでから罪に落ちると考えた
・方丈は分限者にお寺の渡廊下が痛んでいるので寄附してくれないか言った
・分限者は嫌な顔をして、どれくらい出せばいいか訊いた
・一両もあれば充分だと方丈が言うと、五六両と見積もっていた分限者は喜んで一両だした
・方丈はこれで功徳ができたと喜んだ
・それから間もなく分限者は急病で亡くなった
・葬式の日は大勢の人が来て、天気も良かった
・坊さんもたくさん呼ばれていて、お経をあげ順々に焼香した
・空がにわかみかき曇り、真っ黒い雲が棺を狙って舞い降りてきた
・方丈は黒雲めがけ鉄の如意をふりかぶり、廊下、廊下と叫んで黒雲めがけて投げつけた
・すると黒雲は直ちに天上へ舞い上がり、空は元の様に晴れた
・黒雲は火車で、棺の中の死体をさらうために来た
・火車は強欲な人が死ぬと死体をとって食う魔物である
・居合わせた他の坊さんたちは、方丈の一喝の威力に驚いて教えてくれるよう頼んだ
・方丈は分限者が強欲で死んだら火車にとられる様なことにならない様、渡廊下に寄附をさせて、その功徳で救ったのだと教えた

形態素解析すると、
名詞:方丈 分限者 黒雲 功徳 寄附 火車 一 お寺 人 坊さん 廊下 強欲 棺 死体 渡廊下 空 56 お経 けち こと これ たくさん ため ところ どれくらい 一喝 中 他 元 充分 大勢 天上 天気 如意 威力 寺 急病 日 檀那 焼香 罪 葬式 言い訳 鉄 雲 顔 魔物
動詞:する 死ぬ とる めがける 出す 喜ぶ 教える 来る 言う あげる ある いる かき曇る かぶる さらう だす できる なる ふる 亡くなる 叫ぶ 呼ぶ 居合わせる 投げつける 救う 晴れる 狙う 痛む 考える 舞い上がる 舞い降りる 落ちる 見積もる 訊く 頼む 食う 驚く
形容詞:いい 真っ黒い 良い
形容動詞:にわか 嫌
副詞:なかなか 何とか 直ちに 間もなく 順々

 方丈/分限者/火車の構図です。方丈―渡廊下―寄附―分限者、方丈―分限者―火車の図式です。

 けちな分限者に功徳を<積ませ>ようと方丈は渡廊下への<寄附>をさせる。分限者が<死に>、葬式に火車が<現れた>が、方丈は渡廊下の寄附を<主張>して火車を<退ける>。

 けちな分限者がいたが生前、少額ながら渡廊下への寄附を行っていたため、その功徳で火車に食われることを免れた……という内容です。

 発想の飛躍は渡廊下の寄附が一両というところでしょうか。方丈―渡廊下―寄附―一両―分限者という図式です。火車は妖怪ですが『石見の民話』では他のお話にも登場します。

 この昔話はアニメ「まんが日本昔ばなし」の出典としてクレジットされています。そうすると、石見の昔話が源流と思われるかもしれませんが、山形県のお寺の伝説ともなっているそうです。

◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.304-305.

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2022年9月28日 (水)

山小屋の不思議――モチーフ分析

◆あらすじ

 昔、門田の明比谷(あけひだに)という大きな山で木挽(こび)きが三人で小屋を作って泊まり込んで毎日木を伐ったり板にしたりしていた。ところがある晩、一人が死んだので、近くの集落へ知らせに出ることになった。死んだものを一人おいて二人で出かける訳にはいかないので、一人が死んだ人の番をして、もう一人が出かけることにした。何しろ人里離れた山の中であり、夜のことだから、残って死人の番をしている方も、夜道を一人で出かける方も気持ちの悪いことで、どちらも山には慣れていて度胸がよいので、一人が死人の番をし、一人が出かけた。残った方は囲炉裏(いろり)の火を消えないように焚きながら仲間が帰ってくるのを待ってした。すると、死人がむくむくと起き上がった。番をしていた木挽きはびっくりした。こんなことは生まれて初めてだ。しばらくすると死人はばったり倒れた。番をしていた男は思わずほっとして胸をなで下ろした。ところがしばらくすると、死人がまた起き上がった。おや、と思って見ているとしばらくするとまた倒れた。いくら度胸のすわった男でも気持ちのいいことではない。それでもどうしようもないので火を焚きながら仲間の帰るのを今か今かと待っていた。知らせにいった方は小屋ではさぞ待っているだろうと思って、一生懸命急いで村へ下りて手前の家に知らせて頼んでおくとすぐ引き返した。そうして小屋の前まで帰ってくると、戸口のところに何か変なものがいて、のびあがったりしゃがんだりしている。男はこっそり裏へ回って、ソマを持ってくるといきなり戸口にいるものに切りつけた。するとギャッという叫び声がして動かなくなった。留守番をしていた木挽きが火をもって出てみると、大きな狸が肩口を切られて死んでいた。それで死人が起きたり倒れたりしたのは狸のしわざだと分かった。

◆モチーフ分析

・門田の明比谷という山で三人の木挽きが小屋を作って泊まり込んで毎日木を伐ったり板にしたりしていた
・ある晩、一人が死んだので、近くの集落へ知らせに出ることになった
・一人が死んだ者の番をして、もう一人が出かけることにした
・二人とも度胸があって、残った方が囲炉裏の火を消えないように焚きながら仲間が帰ってくるのを待っていた
・すると、死人がむくむくと起き上がった
・番をしていた木挽きはびっくりした
・死体はしばらくすると、ばったり倒れた
・番をしていた男はほっと胸をなで下ろした
・すると、死人がまた起き上がって、また倒れた
・気持ち悪いが、どうしようもないので火を焚きながら仲間の帰ってくるのを今か今かと待っていた
・知らせに行った男は一生懸命に急いで村へ下りて知らせると、すぐに引き返した
・小屋の前まで帰ってくると、何か変なものがいて伸び上がったりしゃがんだりしている
・男はこっそり裏へ回ってソマで戸口にいるものに切りつけた
・ギャッという叫び声がして動かなくなった
・留守番をしていた木挽きが火をもって出てみると、大きな狸が肩口を切られて死んでいた
・それで狸のしわざだと分かった

 形態素解析すると、
名詞:一人 木挽き 火 男 番 こと もの 仲間 小屋 死人 狸 三 しわざ びっくり ほっと ソマ 一生懸命 二人 前 叫び声 囲炉裏 変 山 度胸 戸口 方 明 晩 木 村 板 死体 毎日 比谷 留守番 者 肩口 胸 裏 近く 門田 集落
動詞:する 帰る 死ぬ 知らせる いう いる 倒れる 出る 待つ 焚く 起き上がる ある しゃがむ なで下ろす なる もつ 下りる 伐る 伸び上がる 作る 出かける 分かつ 切りつける 切る 動く 回る 引き返す 急ぐ 残る 泊まり込む 消える 行く
形容詞:しようもない 気持ち悪い
副詞:また こっそり しばらく すぐ どう ばったり むくむく もう ギャッと 今か今かと 何か

 木挽き/死人/狸の構図です。抽象化すると、人間/死人/動物です。木挽き―死人―狸の図式です。

 三人の木挽きの内、一人が<死んだ>。一人が留守番を<して>、もう一人が村へ知らせに<いく>ことになった。番を<して>いると、死体が<起き上がって>やがて<倒れた>。<驚いた>木挽きだったが、もう一人の帰還を<待った>。知らせに<いった>木挽きが<帰って>くると戸口に何か<いた>。ソマで<切り>つけると狸だった。それで狸のしわざと<分かった>。

 死体がひとりでに動くので不気味に思ったところ、狸の仕業であった……という内容です。

 発想の飛躍は狸が死体を操ることでしょうか。木挽き―死人―狸という図式です。

◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.302-303.

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2022年9月27日 (火)

「空」の塔婆――モチーフ分析

◆あらすじ

 昔あるところに大変貧乏な親子がいた。父親が死んだが、貧乏なので法事をすることができなかった。ある夕方、坊さんが一夜泊めてくれと言ってきた。息子は自分は親父が死んでも法事もよくできない程で、あなたを泊めても食べさせるご飯もないと言った。坊さんはそれなら今晩泊めてくれ、そうしたら親父さんの法事をしてやろうと言った。息子はたいそう喜んで坊さんを泊め、食べさせるものがないので、自分の粗末な食べ物を食べさせた。坊さんはそれで結構と言って夕飯を済ますと、何でもよいから木を一本削ってこいと言った。息子は一本の木を鉋(かんな)できれいに削ってくると、坊さんは筆を出して塔婆にして字を書いて、お経を読んでくれた。坊さんは朝出るときこれを墓へ持っていって立てなさいと言ってどこへともなく行ってしまった。するとそこへ友達がやって来た。息子が昨夜坊さんが来て法事をしてもらったと言って塔婆を出して見せた。友達は手にとって見ていたが、お前、坊さんにお布施をあげなかっただろうと言った。金がないからあげなかったと言うと、そうだろう、塔婆には悪口が書いてあると言って塔婆の字を読んで聞かせた。それには「斎(とき)ばかり布施はなにわの白塔婆 手向けに書くぞ 空の一字を」として「空」という字が一字書いてあった。息子はそれを聞くと腹を立てて、塔婆は裏の小川に投げた。その晩息子が寝ていると、父親が夢枕に立って、あの塔婆のおかげで自分は成仏した。塔婆は井手にかかっているから拾ってきて立ててくれと言った。息子があくる朝小川を探していくと、塔婆は少し川下の井手にかかっていたので大事に拾って帰って、父親の墓に立てた。

◆モチーフ分析

・貧乏な親子がいた
・父親が死んだが貧乏なので法事をすることができなかった
・ある夕方、坊さんが一夜泊めてくれと言ってきた
・息子は法事もできない程貧しく、食べさせるご飯もないと断った
・坊さんはそれなら親父さんの法事をしてやろうと言った
・息子は喜んで坊さんを泊め、自分の粗末な食べ物を与えた
・坊さんはそれで結構と夕飯を済ませると、木を一本削ってこいと言った
・息子が鉋で木を削ってくると、坊さんはそれを塔婆にしてお経を読んだ
・坊さんは塔婆を墓へ持っていって立てなさいと言って、どこへともなく行ってしまった
・友達がやって来て、息子は塔婆を見せた
・友達は塔婆に悪口が書いてあるといって読んできかせた
・歌が一首と「空」の一字が書いてあった
・腹をたてた息子は塔婆を裏の小川に投げた
・その晩息子が寝ていると父親が夢枕に立った
・父親は塔婆のおかげで自分は成仏できた。塔婆を拾ってきて立ててくれと言った
・明くる朝、息子は小川を探すと塔婆は川下の井手にかかっていた
・息子は塔婆を大事に拾って帰って父親の墓に立てた

 形態素解析すると、
名詞:塔婆 息子 坊さん 父親 それ 法事 1 友達 墓 小川 木 自分 おかげ お経 こと ご飯 どこ 一夜 一字 井手 夕方 夕飯 夢枕 大事 川下 悪口 成仏 明くる朝 晩 歌 程 空 粗末 腹 裏 親子 親父 鉋 食べ物
動詞:言う する 立てる できる 削る 拾う 書く 泊める 読む いく いる かかる きく たてる やって来る 与える 寝る 帰る 投げる 持っていく 探す 断る 死ぬ 済ませる 立つ 行く 見せる 食べる
形容詞:ない 貧しい
形容動詞:貧乏
副詞:喜んで 結構

息子/坊さん、息子/友達の構図です。坊さん―父親/塔婆―息子、息子―塔婆―友達の図式です。

 貧しいため父親の法事も<あげ>られなかった息子だったが、一夜の宿を<求めた>坊さんに法事を<あげて>もらう。塔婆を<受け取った>息子だが、友達が悪口が<書いて>あると<教える>。塔婆を<捨てた>息子だったが、父親が枕元に<現れた>。息子は塔婆を<探し>墓に<立てた>。

 坊さんから貰った塔婆を怒りで捨てた息子だったが、塔婆のおかげで父が成仏できたと知り、塔婆を探して墓に立てた……というお話。「空」の一字で父親は成仏できたということでしょうか。

 発想の飛躍は塔婆に悪口が書いてあるとしたところでしょうか。友達―悪口/塔婆―息子の図式です。

◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.300-301.

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