出雲・隠岐・鳥取

2026年2月16日 (月)

山陰の貿易に関する論文を読む

渡邊英俊「グローバル化時代の山陰経済―境港における国際物流を中心に―」『山陰研究』(6)を読む。

山陰でグローバルゲートウェイ機能を有する港湾・空港は境港、浜田港、三隅港、米子空港の四つ。三隅港は三隅火力発電所に隣接し、石炭の輸入に特化した港湾である。

中国地方の貿易、輸出入額は4兆円台だが山陽に集中していて山陰側はその内2%ほどと見劣りする。鳥取県では鉄鋼が最大の輸出品、ウッドチップが最大の輸入品である。これは日立金属安来工場と王子製紙米子工場の立地によるところが大きい。島根県では中古車が最大の輸出品で石炭が最大の輸入品となっている。石炭は2011年で224万トンの輸入実績。

島根県内の製造業に関しては神戸港からの輸出が多いとのこと。

王子製紙が輸入するウッドチップの原料はユーカリが多い。これはユーカリが成長の早い樹だからだが、その分水の吸収量が多く環境に負荷をかけている。また葉の油分は山火事の原因ともなっているとのこと。日本の製紙業が世界の環境に負の影響を及ぼしていることになる。

余談。
太平洋を横断してきた船舶は津軽海峡を通って日本海を南下、対馬海峡から東シナ海へと向かうルートをとるとのこと。そのため、博多港を国際ハブ港として整備すべきだという意見を読んだことがある。ただ、日本の場合、人口の集積地、消費地が首都圏と関西となるため、そちらが優先されてしまうのだとか。

◆参考文献
渡邊英俊「グローバル化時代の山陰経済―境港における国際物流を中心に―」『山陰研究』(6)(島根大学法文学部山陰研究センター, 2013)pp.93-108.

|

2026年2月14日 (土)

クランクアップ――ばけばけ

「ばけばけ」がクランクアップ 最後のシーンは夫婦の愛あふれる
https://www.sanin-chuo.co.jp/articles/-/946659

山陰中央新報の記事。少し前に脚本担当の方が松江での講演会で脚本を書き終えたことに触れていて、脚本は番組放送開始前には完成しているのかと思いきや、朝ドラでもそうではなかったと知る。

NHK ONEには加入しているのだけど、「ばけばけ」は視聴できていない。というか朝ドラ全般。一話15分とはいえ毎週月~土を半年だから、ついていくのがしんどそうで。

|

2025年11月22日 (土)

邪馬台国米子説

邪馬台国、淀江にあった!? 根拠解説の冊子が話題に
https://www.sanin-chuo.co.jp/articles/-/900792

邪馬台国米子説を取り上げた記事。「やりすぎ淀江伝説」というタイトルで、半分ジョーク。米子だと出雲と吉備に挟まれる形となるので、ちと厳しいかもしれない。

米子の弥生遺跡は紀元前一世紀くらいから形成されたのだったか。横浜の大塚歳勝土遺跡は紀元後くらいかららしいけれど、丘陵地を削って集落を形成したとみられるので、その時点で結構な土木技術があったことは窺える。北九州は知らないけれど、どれくらいまで遡れるのだろう。

|

2025年11月 3日 (月)

雲伯地方(宍道湖中海圏)は案外IT技術者の集積地だった

山陰中央新報デジタルの購読を初めてしばらく、出雲地方はIT技術者の集積地であることが分かった。松江はRubyというプログラミング言語の開発拠点であったりするのだけど、出雲市にもIT技術者が多くいるそうだ。

海外からの人材も増えているとのこと。ウクライナ戦争のあおりで東欧からの技術者が訪日するケースもあるとか。雲伯地方ではインドとの交流を進めているそうで、その線もあるか。

石見地方に在住のIT技術者は少ないらしい。石見には大規模な事業所が少ないと思われるので情報システム化が遅れた、あるいは石見地方に本拠を置く会社が少ないという理由もあるだろう。

|

2025年10月30日 (木)

鳥取のソウルフード

NHK「さんいんスペシャル 鳥取うまいものハンター 秋の大収穫祭」をNHK ONEで見る。鳥取の食材や郷土料理が紹介される。まずは倉吉市の関金わさび。大阪の高級料亭にも卸されているとのこと。大山の伏流水が水源となっているそうで、外気温25℃に対し水温11℃といった冷たい水で育てていた。次はとうふちくわ。豆腐と魚のすり身の割合は7:3ほど。元は江戸時代の質素倹約令に由来するとされてきたが、研究者(鳥取県立博物館の学芸員さん?)によると豆腐はハレの日の食べ物で、巡見使を豆腐ちくわでもてなした記録も残っており、むしろ豪華な料理だったのではないかとしている。最後はトビウオ。空を飛ぶため体を軽くする必要があり胃を持たず雑味のない上品な味だとの評。琴浦町のトビウオ料理が紹介される。アゴ団子とアゴの土鍋ご飯。出雲でもアゴ野焼きは名物だったりする。

|

2025年10月15日 (水)

出雲に地芝居があった

出雲歌舞伎むらくも座50年 佐田 ぬくもりのある舞台継承 19日に記念公演 一体感が人気
https://www.sanin-chuo.co.jp/articles/-/876912

山陰中央新報2025年10月15日付記事。出雲に地芝居(農村歌舞伎)があることを知る。正確には1975年に復活させたそうだ。地芝居は文化財保護行政が端緒についたばかりで衰退と保存活動のタイミングが合わなかったのかもしれない。記事によるとスサノオホールで公演を行うとのこと。須佐神社の辺り。今年は色々と動きづらくて無理そうだけど、出雲市内に前泊すれば何とかなるか。

<追記>
出雲駅前のビッグハートでの公演もあるようだ。

|

2025年10月13日 (月)

鳥取県の農業の現況――NHKさんいんスペシャル

NHK「さんいんスペシャル」をNHK ONEで視聴する。

「梨王国 復活を目指して」は鳥取の梨について。現在、梨の生産量、鳥取は全国6位だそうである。首都圏だと千葉県辺りが産地だろうか。幸水といった品種が多い。千葉は都市部を離れるとすぐ田舎と化すのが予想外で驚かされたが。最盛期は1000戸を超えていた梨農家は将来250戸ほどに減少する見通しだという。理由として農家の後継者不在の問題が挙げられる。番組ではある梨農家が県外からの研修生二名を受け入れて指導する様が映されていた。その梨農園のオーナーは60代半ばの年齢だがリウマチで農業を継続することが困難となったため、後継者に引き継がせることを決断したとのこと。研修生は独立して初年度の収入は250万円ほどを見込んでいる。それに補助金が数年間、百数十万円支給されるので、その規模での立ち上げを見込んでいる。新しい品種も開発されていて甘味と酸味の調和がとれたものだとのこと。リンゴなんか甘味に全振りして酸味が感じられない品種ばかりになったのだけど、そこら辺、果物の酸味を嫌う層が一定数いるのだろうか?

「“儲(もう)かる”農業が日本を救う~米作り最前線~」こちらも鳥取県の中山間地域で高収益を挙げる米農家を取り上げたもの。100haを三人で管理する大規模経営で、経常収支が30%に達しているという。競争力のある商品やサービスの粗利は三割くらいと考えられるのでかなりの効率の良さである。ほとんどの米農家が赤字を強いられているなかでの高収益で注目の的となっている。種に特殊な肥料をコーティングし、田に直接播く。水に浮かばず沈むため鳥に食べられたり流されたりしなくなる。従来の苗床を作ってから植えるやり方だと苗床が8㎏ほどあり重労働だったのから解放されたとのこと。苗床を作る手法も稲作におけるイノベーションだったのだけど、今度はその苗床を不要とするイノベーションが進行中だった。また、衛星写真で過去のデータを参照し生育状況の良し悪しを見極め適切な箇所に自動操縦のドローンで撒くことで肥料を10~15%削減したとのこと。トラクターも自動運転とのこと。泥濘地での運転はハンドルが取られ操作が難しかったのが他の作業を並行して行えるようになったという。自動運転は農場で既に威力を発揮していた。現在はビール会社が開発した新たなコーティングで水を張らない状態での種蒔きに挑んでいる。外国の粗放農業を思わせる。こうした取り組みはSNSで発信しており見学者も絶えないとのこと。ノウハウは隠さず教えているそうだ。盗めるものは盗めという姿勢。背景には米作りに対する危機感があってのことだろう。使命感も口にされていた。若い頃、歌手を目指して上京したが子供が生まれて帰郷したという話だったので、全くの新規参入組ではないようだ。苗床を排することに心理的ハードルがあるとしていたので急速に普及していく訳でもなさそうだが、平地の限られる中山間地域で規模を拡大し成果を上げているのは凄い。経営者としてだけでなくイノベーターとしてのセンスもある人なのだろう。

ちょうどNHKスペシャルが「米価騒乱 揺れる“主食の未来”」の回で鳥取県、JAとっとりの取り組み(※生産に要する費用を前払い、利益が出れば後払いするといった仕組み)も紹介されていたので内容が被っているかと思ったら全く異なる内容だった。

中山間地域だと圃場整備して一枚当たりの田の面積を拡大するのに限界があるし、そもそも圃場整備は一旦終えたところが多いだろう。そういった地域でもIT化を駆使することで効率的な経営が行えるようになる……といった事例であった。

|

2025年5月 8日 (木)

やりたいのは神楽なのか芝居なのか――スーパー神楽

出雲市佐田町にスサノオホールという施設があることを知る。須佐神社の近くだから出雲市といってもかなり奥の方だけど、500人以上収容できる規模のホールだ。ここで芸北神楽や石見神楽の団体が公演するという情報がSNSで流れてきた。市街地ではないとはいえ、出雲市内まで進出することになる。呼んだのは出雲の人たち自身だろうけれど。

出雲神楽は石見神楽ほどフットワークが軽くなく、観光神楽にもようやく重い腰を上げたといった印象なので、どうなのだろう。

「スーパー神楽」と銘打っているので「これは神楽そのものではありません。ステージ用の演出に特化した演目です」と断りを入れてはいる。

出雲神楽界隈の人たちも来場するかもしれないが「自分たちとは別ものだ」といった感想に落ち着くのではないか。

演目を確認すると、ほとんどが説話ベースの新作のようだ。「大蛇」はなかった。これも難しいところで、神仏習合時代には現在とは全く異なる演目が上演されていた記録もあるし(※死体に巻く布の長さが足りないから成仏できないという話もあるけれど、一方で安珍清姫もあったりする)、一概にダメとも言い切れない。とはいえ、原則と例外があるとしたら、例外の方が肥大化していっている傾向にはある。

神楽の体裁をとりつつも芝居に傾倒していっているように見える。中身は徐々に信心とは無縁のものとなっているように感じられる。銀座で歌舞伎を鑑賞した際、スーパー神楽を「歌舞伎化した」とした評を思い出して言い得て妙だと思った。

芝居だからダメということもないのだけど。芝居は芝居で楽しい。神楽が神楽能と化して数百年経過している。神楽と芝居は二項対立ではなくグラデーションのような感じ。

たとえば首都圏の神楽師たちは面芝居という芸能もやっていたそうだ。演目のタイトルをみると農村歌舞伎的な内容のようだ。今はやらなくなったようで、どうして廃れたのかは知らない。ただ、首都圏の神楽師たちは神楽と面芝居は別枠として区別してはいたのである。

たとえば「魚屋宗五郎」といった演目も上演されていたそうだ。たまたま実見できたのだけど、酒癖の悪い宗五郎がとある事情で飲み始めたら止まらなくなる様がとても面白かった。

備後神楽にも歌舞伎的な演目があるようだ。ただ、資料集の解説にプロ化した結果、却って廃れてしまったと記述されていた。正確なことは分からないが、長大な五郎王子譚を演じる神楽師と被っていたのかもしれない。原因は分からないが、五郎王子のプロ化した神楽は文化財保護行政が端緒についた頃には衰退してしまったらしい。補助金が支給されていればまた違ったのかもしれない。

いずれ「自分たちがやりたいのは神楽なのか、それとも芝居なのか」といった問いに直面するようになるのではないかという気がする。

未検証だけど、地域的にお芝居に対する根強いニーズがあって、それを無意識的に反映した結果なのかもしれない。直面に化粧するところなど、大衆演劇の影響が濃厚だ。それで神楽研究者や他地域の神楽通との齟齬をきたす要因となってしまっているのかもしれない。

芸北は土着的/土俗的な信仰を排してきた土地柄だそうで(それを言うと石見地方でも荒神信仰は見られないように思うが)、そういったことも土着的なものへの関心の薄さを感じさせる背景にあるのかもしれない。

佐藤両々『カグラ舞う!』という漫画を読むと、舞台は北広島町らしいが、主人公(ヒロイン)の住まいの周辺は親戚ばかりというセリフが出てくる。開拓者の子孫がそのまま住み着いた古い土地柄ということがそれとなく示唆されているのだけど、そこら辺は合理的というか保守的ではないのかもしれない。

「出雲/石見」「神話/説話」という線引きをひょいと飛び越えて自由自在に活動している。中国道沿いはそこら辺が曖昧な印象があるけれど、僕は「ここから先はやらない」という線引きはある程度尊重した方がいいと思っている。それはそれで一つの見識ではあるし、何も言われないというのは必ずしも肯定を意味しているとは限らないからだ。

首都圏は人が流入し続けている地域だし、芸事も数多あって家元制の場合は芸に対する考え方も確立されているだろう。そこら辺の違いもあるのかもしれない。

……一応弁護もしておくと、江津市の大都神楽団、僕は浅利の常設劇場にはまだ行けてないけれどDVDなら見たことはある。「天蓋」も収録されていた。天蓋が幾つかのパーツに分割されていて、それを紐で上下させることで神を招く様を表現する演目である。そういった基本的な演目を押さえた上で新しいことに取り組もうとしている団体もある。

あと、照明によって衣装のきらびやかさが惹き立つこともあるので、ステージでの上演を否定するつもりもない。

|

2025年4月10日 (木)

米子以東だと一泊しないと観光できない

テレビをつけたら、今春オープンした鳥取県立美術館とその企画展について解説していた。倉吉市にあるそうだ。僕は米子には行ったことがあるけれど、それ以東については通過したのみである。スーパーまつかぜで鳥取までは行けるのだけど、倉吉や鳥取まで足を伸ばすなら一泊して市内を散策してみたいし。というか、まだ松江の島根県立美術館にも行っていない。島根県立美術館には国内有数の浮世絵コレクションがあるそうで、ちょうど今年大河「べらぼう」もやっていることだし……とは思っている。西洋美術に関してはほんのちょっとだけど一応鑑賞経験はある。

|

2025年3月 4日 (火)

鳥取県立図書館にドラマ誌を寄贈――大山山麓を舞台にしたドラマ「灯の橋」(水木洋子/作)の脚本収録号

鳥取県立図書館に月刊ドラマ2007年2月号(映人社)を寄贈しました。既にOPACに登録されています。確認したところ、郷土資料に分類されていました。

寄贈した理由ですが、この号には水木洋子「灯の橋」という大山山麓を舞台にしたドラマの脚本が収録されているからです。

「灯(ともしび)の橋」は単発ドラマ枠だった時代の東芝日曜劇場で放送されたもので、山陰放送も制作協力としてクレジットされています。芸術祭大賞受賞作品ですが、読み物としても優れています。

ストーリーは大山山麓に移住してきた眼科の女医夫婦が一家殺人事件の生き残りの少年を書生として迎え入れる……といった形で展開していきます。私には判別できないのですが、一部の登場人物のセリフは雲伯方言で書かれているものと思われます。

寄贈したこの号ですが、実は瑕疵のある物です。購入したきっかけが、とあるアニメ脚本コンクールの存在を知ったからでして、その応募券が必要だったので当該の号を購入、応募要項が記されたページの一部を切り取って……という経緯です。見返したら、要項に赤線を引いたりしていました。また、何度も読み返しましたので、表紙がよれてしまいました。これがドラマ誌を購読するきっかけともなったのですが、そんな訳で傷んだものしか手元になかった次第です。事前に相談したのですが、受け入れる旨返信をもらったときはホッとしました。

なお、切り取ったページは表裏とも広告のページで収録されたコンテンツには影響ありません。また、表紙以外は比較的きれいな状態です。

……という訳で鳥取県在住で脚本を書いてみたい/読んでみたい方は一度読んでみたらいいのではないでしょうか。ちなみに「水木洋子」では検索でヒットしないようです。出版者の欄で「映人社」で検索すればヒットします。

|

より以前の記事一覧