書籍・雑誌

2023年2月 1日 (水)

2040年には若年女性が半減――増田寛也「地方消滅――東京一極集中が招く人口急減」

増田寛也「地方消滅――東京一極集中が招く人口急減」を読む。この本(電子書籍版)が刊行されたのは2015年である。文中の記述から書籍版は2014年頃出版ではないかと思われるが、2023年の今、既に8年以上が経過している訳である。2040年までは17年しかなく、具体的に想像のつく年代として視野に入ってくる。

地方消滅とあるのは、2040年に20~39歳の女性が50%以上減少する市区町村を意味する。巻末に全国各市区町村のデータが掲載されているが、惨憺たる数字である。人口再生産の基板たる若年女性が半減してしまうのである。

例えば僕の出身地である島根県浜田市だと、2010年の若年女性人口が5766人、2040年では2758人と-52.2%の減少となる。ちなみに今住んでいる横浜市都筑区は13.4%の増加となる。

出生率は沖縄の1.94から東京の1.13まで幅がある。東京が第二子をもうけ難い地域であるとは知らなかった。希望出生率は2.0を越えているが、それを阻害している要因が都市部にはあるということだ。

地方から東京への人口流入が止まらない。コロナ禍で出超となったが、2022年には入超となっている。本書では地域中核都市が人口のダムとなって、東京への人口流入を防ぐべきであるとしている。そのためには均衡な国土の発展ではなく、選択と集中が必要であるとしている。

この報告は増田レポートと呼ばれているが、他の新書を読むと選択と集中に懐疑的な論調も見られた。人口減対策として人々の活動動線集約を図るコンパクトシティ化が挙げられるが、限界集落で一軒家に住むお婆さんの人口集積地帯への移住ではなく、そこで最期を看取ってあげましょう的な論調である。

|

2023年1月27日 (金)

地方の事情――飯田泰之他「地域再生の失敗学」

飯田泰之他「地域再生の失敗学」を読む。著者の飯田氏と五人の識者の講演と対談が収録されている。論点は多岐に渡るので要約は難しい。地域の問題点が浮かび上がるよう配慮されている。

例えば地方公共団体の主な収入源は固定資産税ではなく地方交付税交付金であると指摘している。固定資産税の減免のあり方がシャッター街をリノベーションすることを妨げているのではないかといったことが指摘される。

まあ、ゆるキャラに関しては大目にみてもいいのではないかと思う。地域のシンボルになり得る素材だから。

|

2023年1月25日 (水)

国―県―市町村の力関係――山下祐介・金井利之「地方創生の正体――なぜ地域政策は失敗するのか」

山下祐介・金井利之「地方創生の正体――なぜ地域政策は失敗するのか」を読む。まず福島第一原発事故にまつわる国―県―市町村の力関係を見て、それから地方創生に議論は移る。山下氏は社会学者、金井氏は行政学者。山下氏の質問に金井氏が答える対話形式で議論は進行していく。根本的には少子化が根底にあるので抜本的な改革案がでないところに地方行政の苦境があるようだ。

|

2023年1月21日 (土)

感性だけでなくロジックも肝要――増村岳史「ビジネスの限界はアートで超えろ!」

増村岳史「ビジネスの限界はアートで超えろ!」を読む。ここで重視されるのは感性だけでなくロジックを用いた観る術である。感性とロジックはコインの表裏であると指摘される。諸外国と異なり、日本の美術教育では感性の赴くままに描けと指導され、ロジックが伸ばされないことが指摘されている。

|

2023年1月10日 (火)

難解――ニクラス・ルーマン「社会システム理論」

ニクラス・ルーマン「社会システム理論」上下巻を読む。上下合わせて1000ページ近くある大著。また、難解とされている。

この本、読者が100人いたら数人が理解できるかといったレベルの分かりにくさである。記述自体はそう難しくないが、具体例が無く、図解もされず、そのまま細部の検討に入ってしまうので何が何やら分からなくなってしまうのである。書いた本人にしか分からないのではないかとさえ思う。

通読するのを断念しようかと考えつつ読んでいたが、300ページくらいから何となく分かってくる。理解した訳ではないが、意味が通るようになった。そういう意味では諦めずに読むべき本かもしれない。図解するとベン図のようでそうでない。

もっとも、翌日読むと前日ほどでない。その時の体調にも依るのかもしれない。

きっかけは宮台真司が社会システム理論を援用して、現代日本ではシステム(市場、行政etc)が発達して環境(生活世界)を浸食するようになったという問題提起に感銘を受けて読んだのだが、原典には歯が立たなかった。

しかし、民俗なら民俗というシステムがあることになる。この場合、どう考えればよいのだろう。

|

2023年1月 4日 (水)

五日間で591冊

Amazon KDPの無料キャンペーン、8冊出して五日間で591冊という好調な数字だった。石見の文芸シリーズでまとめてシリーズ化したのが要因だろう。これでレビューを付けてくれる人が出ればいいのだが、積ん読の可能性も否定できない。

多くの電子書籍には巻末にレビューのお願いが掲載されているが、僕の本ではやっていない。普通の本っぽくしたいからなのだが、言われないとしてくれない人もいるし、考え物である。

|

2023年1月 3日 (火)

初めてのカテゴリー1位

「神楽と文系(各論3)」が文化人類学・民俗学 (Kindleストア)のカテゴリーで1位を獲る。無料キャンペーンの効果だが、初めての経験。

もっとも、ダウンロードしただけで積ん読の人が多いと予想できる。

|

2022年12月30日 (金)

日常の当たり前に潜む問題――ガーフィンケル他「エスノメソドロジー」

ガーフィンケル他「エスノメソドロジー」を読む。民族誌の方法論を想像していたらそうではなく、日常的な当たり前に潜む問題を摘出し、それを解体・再編していく営みの実践論であった。

具体例として陪審員、ホットローダー(走り屋)、精神病者、受刑者のコード、性転換者の生活史といったものが挙げられている。

受刑者のコードとはチクるな、白状するなといったものである。

この内、性転換者は女性的な身体を持ちつつもペニスを有するという人物の生活史である。男性器がありながら乳房が発達するということがあるのかと思ったが、後に子供の頃から女性ホルモンを投与していたという事実が明らかにされる。それはともかく、この人物の性自認は女性であり続けたのである。

|

2022年12月27日 (火)

三十年前の本だが――石井淳蔵「マーケティングの神話」

石井淳蔵「マーケティングの神話 岩波現代文庫135」を読む。

本文中の事例から推察するに三十年程前の本と思われる。どうして現代文庫に収録されたのかと思ったが、当時としては新しかった社会構成主義的な観点でマーケティングを捉えたものということだろうか。エスノメソドロジーという単語が出てくるので、そういう視点が盛り込まれているのだろう。

マルクスの著作は読んでいないが、生産と言う概念が生産能力なのか生産性なのか技術力なのか曖昧模糊としている様に感じた。

相対主義の分類や解釈学については理解はできなかったが、参考になった。

本書はマーケティングの理論について書かれたものだと結論づけられる。その点で三十年後の現在でも価値があると評されたのだろう。

|

地道な努力で差がついた

柄谷行人氏が2022年バーグルエン哲学・文化賞を受賞した。僕は氏の著作は『日本近代文学の起源』しか読んでおらず、ファンではないが、喜ばしいことである。翻って浅田彰はどうなのだろう。Wikipediaを確認したところ、評論家という肩書きは認められたが思想家という肩書きは記されていなかった。某匿名掲示板のスレッドを読んだところ、本を書かない(対談集だけ)という評だった。柄谷氏は英語でも情報を発信していたとのことで今回の受賞に繋がったのだろう。ファンではないので知らないが、浅田は知能の高さにあぐらをかいていたのではないか。それが今回の受賞で差となって明確に現れたのではないか。

|

より以前の記事一覧