オンザエッジの恋の駆け引き感――ラクロ『危険な関係』
ピエール・ショデルロ・ド・ラクロ『危険な関係』(竹村猛/訳)を読む。18世紀パリの社交界を舞台にした書簡形式の小説。凝った文体の文章が延々と続くということもなく読みやすい。
ヴァルモン子爵が放蕩者的ポジション、セシル嬢は軍人(※ラクロ自身が投影されているかもしれない)との縁談が進められているが乗り気でない……といった関係性を軸に物語は展開していく。他のご婦人方については年齢が明らかでないこともあって把握しきっていない。
読みやすさの割に全然進捗しないなと思って確認したら紙の本では608ページあった。文庫本二冊くらいのボリューム。前半は短い手紙のやり取りが重ねられていくので途切れ途切れになってしまうためかもしれない。後半は長文の手紙が増え、ペースが上がった。
昔の人は丁寧に文をしたためていたのだなと思う。僕は恋文は書いたことはないけど、電子メール主体の今、親しい人相手でも極力余計なことは書かず要点だけ伝わるように変化していった。
元々はトドロフ『小説の記号学』で分析の題材として取り上げられていたので手にとったもの。時の流れに淘汰されずに生き残った作品はやはり面白い。『小説の記号学』はいずれ再読しようと思っている。
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