神話/伝説の成立過程が窺える――佐藤健寿『カーゴ・カルト』
佐藤健寿『カーゴ・カルト』を読む。バヌアツのタンナ島を取材した写真集。タンナ島にはカーゴカルトと呼ばれる類のジョン・フラム信仰が現存しているとのこと。バヌアツ自体は第二次大戦で戦場となることはなかったが、ソロモン諸島に近く、米軍が基地を築いて廃棄した後はリゾート地となった。が、タント島は開発から免れ、現在でもプリミティブな生活様式を守る人たちが多く暮らしている。その風景を撮影したもの。
バヌアツは英仏の共同統治下にあったが抑圧的で、基地建設の労働者を求めた米軍の方が雇用関係に基づく対応で、却って住民に歓迎されたらしい。タンナ島では米軍を模した祭りが現在も続いている。
ジョン・フラムは白人でも黒人でもない精霊とされる。英側の記録によると、ジョン・フラムに扮して扇動したとされる男の名前が記録されているが、島民の間では伝説ないし現代の神話と化した。ジョン・フラムはカスタムと現地語で呼ばれる島民の従来通りの生活様式を肯定する存在なのである。
タンナ島には18世紀にクック船長が上陸し、火山に登山しようとしたところ、聖地のため住民に拒否されたとのこと。バヌアツが植民地化されるのは遅く、20世紀に入ってからだった。そのため、プリミティブな暮らしだった島民にとって文明と接触したのはつい最近のこととなる。そして大戦中には米軍の巨大な物量を目の当たりとすることとなる。
バヌアツは1980年に独立を果たしたとのこと。タンナ島の教育状況については触れられていないので分からない。初等教育くらいは施されているのだろうか。
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