他流試合っぽさを感じる――山野弘樹『独学の思考法 地頭を鍛える「考える技術」』
山野弘樹『独学の思考法 地頭を鍛える「考える技術」』を読む。「探求」というキーワードが使用されているので、学校での探求学習が念頭にあるのかもしれない。
教員の私的な会合にご厚意で混ぜてもらったことがあるのだけど、今どきの普通の高校生は勉強せずに定期試験で平均点をとるのがコスパがいいといった思考なのだそうである。それではいずれAIに仕事を奪われてしまうだろうと懸念されていた。
ちなみに、世界史だと憶えることが多くて大変なのだけど(学習が進んである種の閾値に達すると)やがて個々の繋がりが見えてくるようになり、面白くなってきたという感想もあったとのこと。
ほんのちょっとだけど他流試合といった読後感だった。僕自身は民俗学徒ではないけれど、重出立証法である。要するに比較するという手法。比較することで違いに気づくといった当然のプロセスを重ねて認識を更新していく。これには批判があって、おそらく比べるという行為には共時性という横軸と通時性という縦軸とがあって、双方に留意せねばならないということではないか。
芸能だと系統の異なるものを見比べることが肝要だった。共通性に気づくこともあれば、自身が当然と思っていたことが地域性によるものであったことを認識するといった体験をした。
フィールドワーカーではないのだけど、神楽の研究者や家元のお話を伺っていて、「これは本には載っていないけど重要な情報だな」と感じたことが何度かあった。
……民俗学は美学とは相性が比較的よいと感じる。
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