日本列島は北方ルートと南方ルートの交差点――後藤明『世界神話学入門』
後藤明『世界神話学入門』を読む。神話や民話がいかにして伝播したかの研究は、インド―ヨーロッパ語族という枠組みが見い出されたのと軌を一にして発展してきた。つまり言語学と深い関わりがあるのだけど、本書では近年の動向として、遺伝子の変異から人類の大移動の時期を推定し、それを神話論の裏づけとして援用しようという思潮が紹介されている。
仮説と断りは入れているが、近年の有力説くらいの位置づけにはあるかもしれない。
ユーラシア大陸に分布する神話は創世神話を持つなど体系化されている。つまり、それらは高度な概念が芽生えた後に生まれたお話と考えることができる。一方で、サハラ以南のアフリカ大陸やメラネシア、ポリネシアといった地域の神話には創世神話を持たないといった特徴が残されており、人類の思考の古層を残していると考察している。
新大陸もユーラシア型の神話なのだそうである。僕自身は読んだことがないが、マヤ、アステカの神話は体系化されたものだそうである。ちなみに、南米最南端、つまり人類大移動の最果ての地では古い型の残存が見られるとしている。
ユーラシア大陸でも人類の移動経路には北方と南方の二つのルートがあり、日本列島がその交差する地点となるのだそうだ。本書では海幸山幸の神話が取り上げられる。
……テクノ・リバタリアンが世界を引っ搔き回しているご時世である。理数系の素養を持ち、技術の動向を読める人材が有利な世の中であることは覆せないだろう。一方で、本書では狩猟採集民の神話からささやかながらも自然観の転換が模索されている。
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