芝居小屋の雰囲気がよく伝わってくる――仲野マリ『地方の芝居小屋を巡る』
仲野マリ『地方の芝居小屋を巡る』を読む。地芝居(農村歌舞伎)の舞台を取り上げた電子書籍。写真はカラーで芝居小屋の雰囲気がよく伝わってくる。岐阜県に地歌舞伎の芝居小屋が多く現存しているそうだが、最寄り駅から車で数十分といった具合で交通の便はよくないのだとか。
地芝居はテレビに押された等の理由で昭和40年代には衰退してしまったとのことだが、地方自治体の無形文化財保護行政が本格化したのはおそらく1970年代以降なので、タイミングが合わなかった側面もあるかもしれない。
歌舞伎も人気低迷していた時期があったとは知らなかった。
首都圏の神楽師は面芝居という芸能も演じていたと聞く。今はやらなくなっているようである。厚木市の垣澤社中の台本を収録した本を参照したが、タイトルから判断するに農村歌舞伎に近いものが多いと思われる。収録はされていなかったが「魚屋宗五郎」もやっていたらしい。酒癖の悪い宗五郎がとある事情でちょっとだけと飲み始めたら止まらなくなる様が面白い演目。映像が記録されているかは知らない。台本があるので復活上演は可能なはずだが、当時を知る人が少なくなって復活させるには相当なエネルギーが必要かもしれない。
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