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2025年2月

2025年2月24日 (月)

コノテーションがキーとなる分析概念か――ロラン・バルト『S/Z バルザック「サラジーヌ」の構造分析』

ロラン・バルト『S/Z バルザック「サラジーヌ」の構造分析』(沢崎浩平/訳)を読む。

本書はバルト自身が物語の構造分析を行ったものであり、バルザックの中編小説「サラジーヌ」の分析に充てられている。巻末に「サラジーヌ」が収録されている。ネタバレ要素を含むので、先にこちらから読んだ方がよいだろう。

僕自身は初読では内容がさっぱり理解できなかったが、後で『S/Z』本文を読んで、一文一文詳細な解説が施されているので「ああ、こういう話なのか」と概略は理解でき、本文を読み終えた後で再読した。

芸術の神に愛された若者であるサラジーヌが旅行先のイタリアでラ・ザンビネッラに逢いその虜となってしまう……といった内容である。

構造分析と標記されていて、下記の五大コードで項目分けされているが、大部分は修辞学の技法(換喩、提喩など)で分析されているように思える。特にコノテーションが重要なキーワードだろうか。ちなみに、下記の項目を押さえておけば理解がスムーズとなると思われる。

・サンタグム(連辞)ex. 「サクラ・ガ・サイタ」
・パラディグム(範列)ex. サクラ/バラ/チューリップ

・デノテーション(表示的意味作用、外示):「サクラ」←桜の花という対象の概念(内容)を示す
・コノテーション(伴示的意味作用、共示):「サクラ」→日本人にとって「大和心」「はかなさ」などを示す

五大コード:
・HER:解釈学的コード
・SEM:記号内容あるいは意味素といった諸単位の注記
・SYM:象徴の場の単位
・ACT:そのシークエンスを構成する諸項
・REF:参照のコード

先に記事を書いたトドロフとバルトとは師弟関係にあり、『小説の記号学』と本書は近い関係にあるように思われる。いずれも西洋の分厚い修辞学の蓄積があった上で展開される分析と見える。

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2025年2月20日 (木)

広島の文化施設をフォローする

広島市のアステールプラザと広島文化学園HBGホールのSNSのアカウントをフォローする。広島駅から市電で市役所前駅で下車、徒歩600mほど。二か所とも割と近い位置に立地しているようだ。広島市なら高速バスで二時間半ほどだし、東横インも利用実績はあるので予約のハードルは低い。……という訳で演劇やらコンサートやらで利用できないかと考えたもの。

首都圏は高速バスで二時間半、新幹線で三時間半かかるので、移動だけで疲弊してしまう。交通費も高額になってしまうし。とはいえ、下北沢とか銀座とか、本当にアリバイ的に行っただけだよなあと痛感する。

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2025年2月19日 (水)

2025年の江戸里神楽を観る会の予定

2025年の「江戸里神楽を観る会」は令和7年3月16日(日)に品川区の六行会ホールで開催されるとのこと。午後1時開演(正午開場)。入場無料。全席自由席。

・神剣幽助
・品川神社・幸替の舞
・山海幸易・海神宮の場

が上演される予定。幸替の舞と山海幸易は海幸山幸のお話。神剣幽助は能由来の演目。

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2025年2月17日 (月)

下北沢を再訪――劇団1980「人ハ落目ノココロザシ」

下北沢の駅前劇場で、劇団1980の「人ハ落目ノココロザシ」を見る。藤田傳/作、磯村純/演出。一幕もので上演時間は90分ほど。この劇団の代表作の一つらしい。舞台は身の上相談所。カウンセラーの許に様々な事情を抱えたクライアントたちがやって来て……という内容。登場人物は全部で14人か。以下、ネタバレ含む。一部出入りするクライアントはいるが、ほとんどのクライアントが狭い舞台に居続ける。それぞれの登場人物にちゃんと見せ場がある。どうやって収拾をつけるのかと思っていたら、クライアント同士の利害が一致しはじめて続々と退場していく展開となる。なるほどと感心する。プロが書いた作品だと思う。最後の展開ははっきりとは記憶していない。まあ、みんなどことなくインテリっぽさがあるなとは思った。今の視点だと、一見カルト宗教の教祖っぽい女性の存在感が高いだろうか。彼女は実際には決断できない人間に「それがあなたの選択です」と背中を押すことしかしない。売るモノはないが、それが彼女の商売なのだ。今の時代、SNSや広告、通販サイトのレコメンドなんかが氾濫して、本当に自分の意思で物事を決めているか定かでなく、ある意味可視化されるようになった存在かもしれない。今日が千秋楽で上演終了後に最初のクライアントの老人役の人が挨拶した。希望する人は関係者と歓談できたらしい。会場では演劇関係者らしき観客の会話が聞こえた。

下北沢・駅前劇場
下北沢・駅前劇場
下北沢・駅前劇場が入居したビル

着いたのは12時半頃。駅前劇場が入居しているビルの二階のガストで昼食をとる。90分制とのこと。猫の顔をしたロボットが配膳してくれる。13時20分過ぎに三階に上がると既に受付は開いていた。開演前にトイレに二度行く。席は上手というか入り口近くの席だったのでホッとする。下手側の席だと奥まっていていざというときに通り抜けが厳しいので。

駅前劇場は200人ほどのキャパの小劇場。雑居ビルの一角を演劇用に改装したものと思われる。椅子はパイプ椅子。クッションは敷いている。奥の方の席でも演者の顔がはっきり見えるのは小劇場ならではかもしれない。

下北沢駅前

……なぜ下北沢にいたのかは秘密。実にしょうもないことがきっかけである。

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2025年2月 8日 (土)

『危険な関係』を読んだ方がいいか――トドロフ『小説の記号学 文学と意味作用』

T.トドロフ『小説の記号学 文学と意味作用』(菅野昭正/保苅瑞穂 訳注)を読む。トドロフは東欧から西欧に亡命した人で、東欧と西欧の人文知を結びつける役割を果たしたとのこと。解説によると、この本はトドロフがバルトの指導を受けて執筆した博士論文に相当するらしい。

読んでみると、西洋には修辞学の厚い蓄積があって、これらの研究が成り立っているようだ。

本書は小説『危険な関係』を題材としている。巻末に登場人物表と粗筋が掲載されているが、書簡形式で描写された作品で複雑な筋らしく、一読では理解できない。実際に小説を読んだ方がいいかもしれない。岩波文庫であるとのこと。登場人物自体、既婚女性は夫人と記載されているので判別できるが、名前によっては男女いずれか判別できない登場人物もいる。

しかしそうした関係は、欲する、伝達する、協力するという三つの関係に簡単に還元されるものであることに直ちに気がつく。(84P)

……といったところがとりあえずメモした箇所である。

人称との関連で、本書では話者と作中の登場人物とは区別されている。もちろん、話者=登場人物のこともある。話者が物語の背景全てを見通している場合もあれば、逆に登場人物よりも知らない場合もある。話者>作中の登場人物、話者<作中の登場人物、いずれも成り立つ。

トドロフは日本語訳された著書も多く、とりあえずどれから読んだらよいのか分からず『小説の記号学』を選んだ。高田本ではトドロフも物語構造分析の事例として取り上げられているのだけど、具体的な書名は挙げられていなかった。

読んだ限りではトドロフのテキスト分析は長編小説を射程に入れており、昔話の分析にダイレクトに導入できるツール的な手法ではなさそうだ。

現在、バルトの『S/Z』を読んでいるが、師弟とも、修辞学の技法をベースに分析を進めているように見える。『小説の記号学』の177~178ページに修辞学の技法が一覧表として掲載されている。

ラクロ『危険な関係』は現在では角川書店から刊行されている。電子書籍版もあり。

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2025年2月 7日 (金)

モチーフ素の連鎖で民話を分析――アラン・ダンダス『民話の構造 アメリカ・インディアンの民話の形態論』

アラン・ダンダス『民話の構造 アメリカ・インディアンの民話の形態論』(池上嘉彦他/訳)を読む。

ダンダス(ダンデス)はアメリカ民俗学会の重鎮だそうだが、言語学にも通じていて、言語学の概念を民俗学に援用して解釈している。僕は言語学の知識はほとんど無いのでピンとこない箇所も多かった。イーミックとエティックといった区分の持つニュアンスは特にピンと来ない。

プロップが『昔話の形態学』で機能と名づけた概念をモチーフ素として、その連鎖で北米先住民の神話/民話の構造を分析している。レヴィ=ストロースに対しては批判的なスタンスだ。

モチーフ素の連鎖の事例としては、

・欠乏/欠乏の解消
・禁止/違反
・欺瞞/成功

これらが中核となる。そして、

・禁止/違反―結果―脱出の試み
・欠乏―欺瞞/成功―欠乏の解消

・欠乏/欠乏の解消―禁止/違反―結果―脱出の試み

といった組み合わせが挙げられている。

北米先住民の神話/民話は西欧の民話と比較して深み(depth)がないと分析されているとのこと。深みと訳すと誤読される怖れがなきにもしもあらずな気がする。深度とした方がいいような気もする。

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2025年2月 1日 (土)

ようやく復調してきたか

島根にUターンして二か月半ほど経過したが、引っ越しに伴う諸手続きも見通しが立ち、疲労もある程度抜け、作業環境も整ってようやく復調してきた感じがする。……というか、実家だとどうも気が散ってしまって集中できない。引っ越し前は早起きしてブログ記事を書いていたのだけど、今思うとあんな面倒なことをよくやったものだと思う。一旦集中力が途切れてしまうと中々再開できないでいる。

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