民俗芸能大会のはしり
NHK FMで「民謡をたずねて」を聴く。毎年神宮外苑の日本青年館で行われる全国民俗芸能大会特集。大正14年に始まり今年で71回になる。フォークロリズムのはしりである。舞台での芸能の上演を民俗学者は軽視するのだけど、照明で衣装のきらびやかさが映えるという効果もある。
なお、この大会の後で地方での民俗芸能大会が盛んに催されるようになったとのこと。
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NHK FMで「民謡をたずねて」を聴く。毎年神宮外苑の日本青年館で行われる全国民俗芸能大会特集。大正14年に始まり今年で71回になる。フォークロリズムのはしりである。舞台での芸能の上演を民俗学者は軽視するのだけど、照明で衣装のきらびやかさが映えるという効果もある。
なお、この大会の後で地方での民俗芸能大会が盛んに催されるようになったとのこと。
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衆院補選、島根一区、立憲の亀井候補が当確の情報が。自民の新人・錦織氏を破る。島根県、特に出雲地方は保守の牙城で、ここが陥落したということは自民党にとって極めて厳しい情勢ということである。
亀井女史は津和野藩主の血筋で本来なら島根二区が地盤のはずだが勝ってしまった。父上は自民から出ていたと記憶している。島根の議席が減らされたのではじき出された図式。世襲議員なのだが、知名度で有利に働いたか。
錦織氏は財務省出身の元官僚。財務省の緊縮財政路線が日本の成長を阻害したという批判も根強いのでどうかと思ったが、今回は負けてしまった。まあ、次があるとも言える。
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◆あらすじ
狐と狸が出会った。狐が狸に空死にするように言って、狐は猟師に化けて狸を背負って町へ出て狸を売った。狐は狸は空死にするものだから、しっかり縛り付けておくように言ったので買い手は狸をしっかり縛った。狐の猟師は狸を売った金で焼き餅を買って、吊されている狸のところへ行って、焼き餅を買ったから下りてこいと言った。しっかり縛られているので中々身体が抜けない。ようやく下りてくると狐は焼き餅を全部食べてしまった。狸は皆食ったとプンプン怒った。狸は仇をとってやるぞと思って翌晩狐のところに鮒(ふな)を持っていった。狐がどうして獲ったか訊くと、狸は夜に堤へ尻尾をつけているといくらでも食いつくと言った。狐は狸に案内されて堤へ行った。そして狸の言う通り尻尾を水につけてじっとしていた。狸がまだまだと言うので狐はじっと尻尾をつけていた。そうして夜中尻尾を堤につけていたので氷が張って尻尾がとれなくなった。夜が明けて動けなくなっているところを人に見つけられ、散々な目に遭った。
◆モチーフ分析
・狐と狸が出会った
・狸に空死にするように言い、狐は猟師に化けて狸を売る
・買い手、言われた通りに狸をしっかり縛る
・狐、狸を売った金で焼き餅を買う
・狐、狸に降りてこいと言う
・狸、しっかり縛られているため身体が抜けない
・ようやく下りてくると、狐は焼き餅を全部食べてしまった
・狸、狐が全部食べたと怒る
・狸、仇を取るために翌晩狐のところに鮒を持っていく
・狸、夜に堤に尻尾をつけていると食いつくと言う
・狐、狸に連れられて堤へ行く
・狐、狸の言う通り、尻尾を水につける
・狐、尻尾を水につけ続ける
・氷が張って、狐、動けなくなる
・夜が明けて人に見つかり、散々な目に遭う
◆行為項分析
S1:(S2+O1)
意思の主体者がS1であり、行為の主体者がS2、S2の行為の対象がO1である
S(サブジェクト:主体)
S1:狐
S2:狸
S3:猟師
S4:買い手
S5:人
O(オブジェクト:対象)
O1:金
O2:焼き餅
O3:鮒
O4:堤
O5:尻尾
O6:水
O7:散々な目
m(修飾語)
m1:空死に
m2:縛られた
m3:凍った
m4:動けない
+:接
-:離
・狐と狸が出会った
(遭遇)S1狐:S1狐+S2狸
・狸に空死にするように言い、狐は猟師に化けて狸を売る
(偽装)S1狐:S2狸+m1空死に
(変装)S1狐:S1狐+S3猟師
(売却)S1狐:S3猟師-S2狸
・買い手、言われた通りに狸をしっかり縛る
(緊縛)S4買い手:S2狸+m2縛られた
・狐、狸を売った金で焼き餅を買う
(購入)S1狐:S1狐+O2焼き餅
・狐、狸に降りてこいと言う
(声かけ)S1狐:S1狐+S2狸
・狸、しっかり縛られているため身体が抜けない
(苦闘)S2狸:S2狸-m2縛られた
・ようやく下りてくると、狐は焼き餅を全部食べてしまった
(消尽)S1狐:S2狸-O2焼き餅
・狸、狐が全部食べたと怒る
(激怒)S2狸:S1狐+O2焼き餅
・狸、仇を取るために翌晩狐のところに鮒を持っていく
(持参)S2狸:S1狐+O3鮒
・狸、夜に堤に尻尾をつけていると食いつくと言う
(入れ知恵)S2狸:S1狐+O5尻尾
・狐、狸に連れられて堤へ行く
(移動)S2狸:S1狐+O4堤
・狐、狸の言う通り、尻尾を水につける
(釣り)S1狐:O5尻尾+O6水
・狐、尻尾を水につけ続ける
(継続)S1狐:O5尻尾+O6水
・氷が張って、狐、動けなくなる
(氷結)S1狐:O5尻尾+m3凍った
(拘束)S1狐:S1狐+m4動けない
・夜が明けて人に見つかり、散々な目に遭う
(被害)S5人:S1狐+O7散々な目
◆行為項モデル
送り手→(客体)→受け手
↑
補助者→(主体)←反対者
というモデルを構築するのですが、ここでこのモデルに一つの要素を付加します。
聴き手(関心)
↓
送り手→(客体)→受け手
↑
補助者→(主体)←反対者
この聴き手は筆者が独自に付加したものです。「浮布の池」で解説しています。客体は分析で使用したサブジェクトやオブジェクトとは限りません。むしろ主体のこうなって欲しいという願いと説明した方が分かりやすいかもしれません。
聴き手(狐はどんな意地悪をするか)
↓
送り手(狐)→ 死んだふり(客体)→ 受け手(狸)
↑
補助者(なし)→ 狐(主体)← 反対者(狸)
聴き手(狸は仕返しできるか)
↓
送り手(狸)→ 鮒(客体)→ 受け手(狐)
↑
補助者(なし)→ 狸(主体)← 反対者(狐)
といった二つの行為項モデルが作成できるでしょうか。狐は狸に死んだふりをさせて売り飛ばしてしまいます。そしてその金で焼き餅を買って全部食べてしまいます。怒った狸は鮒が釣れると狐を騙して尻尾の釣りをさせます。尻尾が凍り付いて動けなくなった狐は酷い目に遭ったという筋立てです。狐の意地悪と狸の仕返しが描かれています。狐と狸が争う話では狐が勝つ話が多いように思えますが、この話では狸がきっちりと復讐します。
狐―狸、焼き餅―鮒、死んだふり―尻尾の釣り、といった対立軸が見出せるでしょうか。尻尾/釣りに狐の間抜けな一面が暗喩されています。
◆関係分析
スーリオは演劇における登場人物の機能を六種に集約し占星術の記号で表記します。
♌しし座:主題の力(ヴェクトル)
☉太陽:価値、善
♁地球:善の潜在的獲得者
♂火星:対立者
♎てんびん座:審判者
☾月:援助者
という六つの機能が挙げられます。
☾は☾(♌)主題の援助者という風に表現されます。
☾(☉)☾(♁)☾(♂)☾(♎)もあり得ます。
一人の登場人物に二つまたは三つの星が該当することもあります。
これらを元に関係分析をすると、
狸♌♁―狐♂―買い手♎☾(♂)―人♎☾(♌)
といった風に表記できるでしょうか。仕返しすることを価値☉と置くと、狸は享受者♁となります。買い手は死んだふりをした狸を買い取り、人は尻尾が凍り付いた狐を発見しますので審判者♎と置くことができるでしょうか。買い手は狐に金を渡しますので狐の援助者☾、人は狸の援助者☾と見ることも可能です。
◆発想の飛躍
狐と狸の化かし合いが発想の飛躍でしょうか。「狐―焼き餅―狸」「狸―鮒―狐」といった図式です。
◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.110-112.
・『物語構造分析の理論と技法 CM・アニメ・コミック分析を例として』(高田明典, 大学教育出版, 2010)
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◆あらすじ
昔、神さまが十二の干支(えと)を決めるため正月十二日朝、まっさきに来た者から順番を決めることにした。猫はその会議に差し支えがあって行けなかったので、鼠(ねずみ)に干支を決める日はいつだったか訊いた。鼠は猫を騙して十三日だったと答えた。鼠は十一日の晩、牛小屋の中で寝ていた。夜中頃、牛がごそごそ出始めたので、どこへ行くか訊いたところ、そろそろ出かけないと間に合わないと言った。鼠はずるい事を考えて牛の背中に乗った。そうして神さまの門口についた時、ぴょんと飛び降りて牛より先になった。そこで鼠が一番、牛が二番となった。十三日の朝、猫は一番になろうと早々に出かけていった。すると門番が何しに来たと訊いたので、今年は干支が決まるというのでやって来たと答えた。すると何を寝ぼけている。顔を洗ってこい。あれは昨日済んだと散々に笑われた。猫は鼠に騙されたと腹が立ち、その日から顔を洗うことを始めた。そして鼠を探しては捕る様になった。
◆モチーフ分析
・干支を決めるため正月十二日朝にまっさきに来た者から順番を決めることになった
・猫はその会議に行けなかった
・猫、干支を決める日を鼠に尋ねる
・鼠、十三日だと猫を騙す
・十一日の晩、鼠は牛小屋で寝ている
・牛が出発したので、その背中に飛び乗る
・牛が門口に到着した際に飛び降りて一番乗りとなる
・鼠、干支の一番目となる
・十三日、猫が神さまの門口に行く
・干支を決めたのは昨日だ。顔を洗ってこいと嘲笑される
・鼠を恨んだ猫はそれから顔を洗い、鼠を捕るようになった
◆行為項分析
S1:(S2+O1)
意思の主体者がS1であり、行為の主体者がS2、S2の行為の対象がO1である
S(サブジェクト:主体)
S1:神さま
S2:猫
S3:鼠
S4:牛
S5:門番
O(オブジェクト:対象)
O1:干支
O2:十二日
O3:順番
O4:会議
O5:日程
O6:十三日
O7:牛小屋
O8:牛の背中
O9:門口
O10:顔
m(修飾語)
m1:一番乗り
m2:恨んだ
+:接
-:離
・干支を決めるため正月十二日朝にまっさきに来た者から順番を決めることになった
(決定)S1神さま:O1干支+O3順番
・猫はその会議に行けなかった
(不在)S2猫:S2猫-O4会議
・猫、干支を決める日を鼠に尋ねる
(質問)S2猫:S2猫+S3鼠
・鼠、十三日だと猫を騙す
(騙し)S3鼠:O2十二日-S2猫
・十一日の晩、鼠は牛小屋で寝ている
(準備)S3鼠:S3鼠+O7牛小屋
・牛が出発したので、その背中に飛び乗る
(出発)S3鼠:S3鼠+O8牛の背中
・牛が門口に到着した際に飛び降りて一番乗りとなる
(到着)S3鼠:O9門口+m1一番乗り
・鼠、干支の一番目となる
(決定)S1神さま:S3鼠+O1干支+m1一番乗り
・十三日、猫が神さまの門口に行く
(訪問)S2猫:S2猫+O9門口
・干支を決めたのは昨日だ。顔を洗ってこいと嘲笑される
(嘲笑)S5門番:S5門番-S2猫
・鼠を恨んだ猫はそれから顔を洗い、鼠を捕るようになった
(恨み)S2猫:S2猫-S3鼠
(洗顔)S2猫:S2猫+O10顔
(捕食)S2猫:S2猫+S3鼠
◆行為項モデル
送り手→(客体)→受け手
↑
補助者→(主体)←反対者
というモデルを構築するのですが、ここでこのモデルに一つの要素を付加します。
聴き手(関心)
↓
送り手→(客体)→受け手
↑
補助者→(主体)←反対者
この聴き手は筆者が独自に付加したものです。「浮布の池」で解説しています。客体は分析で使用したサブジェクトやオブジェクトとは限りません。むしろ主体のこうなって欲しいという願いと説明した方が分かりやすいかもしれません。
聴き手(猫は十二支に入れるか)
↓
送り手(鼠)→ 干支の日程(客体)→ 受け手(猫)
↑
補助者(なし)→ 猫(主体)← 反対者(鼠)
といった行為項モデルが作成できるでしょうか。猫は鼠に間違った日程を伝えられ十二支から漏れてしまいます。一方、鼠は小狡く立ち回って干支の一番目を獲得します。ただし、その所為で猫は鼠を捕るようになったという由来譚です。
猫―鼠、猫―門番、鼠―牛、十二日―十三日、といった対立軸が見出せます。猫/顔を洗うは猫の恥辱の暗喩として同定できるでしょうか。
◆関係分析
スーリオは演劇における登場人物の機能を六種に集約し占星術の記号で表記します。
♌しし座:主題の力(ヴェクトル)
☉太陽:価値、善
♁地球:善の潜在的獲得者
♂火星:対立者
♎てんびん座:審判者
☾月:援助者
という六つの機能が挙げられます。
☾は☾(♌)主題の援助者という風に表現されます。
☾(☉)☾(♁)☾(♂)☾(♎)もあり得ます。
一人の登場人物に二つまたは三つの星が該当することもあります。
これらを元に関係分析をすると、
猫♌―鼠♂♁―神さま♎―門番☾(♎)―牛☾(♂)
といった風に表記できるでしょうか。十二支に選ばれることを価値☉と置くと、猫はその価値を逃してしまいます。鼠が享受者♁です。神さまを審判者♎とすることもできるでしょう。門番と牛は援助者☾です。
◆元型分析
ここでの鼠はユングの元型(アーキタイプ)でいうトリックスター(trickster)と言えるでしょうか。狡い知恵を駆使し他者に迷惑をかけ自分は利益を得ますが、そのために報復されてしまうという一面も持ちます。
◆発想の飛躍
発想の飛躍は鼠の小狡い知恵でしょうか。「猫―十二日/十三日―鼠」といった図式です。この昔話はアジアに広く分布するお話です。
◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.108-109.
・『民間説話―理論と展開―』上巻(S・トンプソン, 荒木博之, 石原綏代/訳, 社会思想社, 1977)p.290.
・『物語構造分析の理論と技法 CM・アニメ・コミック分析を例として』(高田明典, 大学教育出版, 2010)
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◆あらすじ
昔、ホトトギスと雉子(きじ)がどちらがたくさん鳴くか自慢し合った。雉子が自分は秋の彼岸から春の彼岸までに一千一声鳴くと自慢した。ホトトギスは負けん気になって自分は一夏に八千八声鳴いてみせると自慢した。それでは見せてみよという話になった。さっそくホトトギスは鳴き始めたが中々八千八声は鳴けなくて、仕方がないから飛んでいるときも鳴いた。それでも八千八声には届かないので、今度は夜も寝ずに鳴いた。しまいには喉から血が出た。それでも雉子に約束した八千八声鳴かねばならない。困った。卵を産んでかえすときに鳴かなかったら八千八声にならない。そこで考えた。鶯(うぐいす)がいない時には鶯の卵を放りだして自分の卵を産んでおいた。そうと知らない鶯は一生懸命かえして育てた。ホトトギスの子は一人で飛べるようになると、他所へ飛んでいってしまうそうだ。そうしてホトトギスは八千八声鳴く。八千八声鳴くと喉から血を出して死んでしまうそうだ。
◆モチーフ分析
・ホトトギスと雉子がどちらがたくさん鳴くか自慢し合う
・雉子、秋の彼岸から春の彼岸までに一千一声鳴くと自慢する
・ホトトギスは負けじと一夏に八千八声鳴くと自慢する
・それでは見せてみよと実行を迫られる
・一日中鳴いても八千八声に届かない
・ホトトギス、鶯の巣に自分の卵を産み付ける
・鶯、ホトトギスの卵をかえして世話する
・ホトトギス、八千八声鳴いて喉から血を流して死ぬ
◆行為項分析
S1:(S2+O1)
意思の主体者がS1であり、行為の主体者がS2、S2の行為の対象がO1である
S(サブジェクト:主体)
S1:ホトトギス
S2:雉子
S3:鶯
O(オブジェクト:対象)
O1:一千一声
O2:八千八声
O3:鶯の巣
O4:卵
m(修飾語)
m1:一日中
m2:血を流した
m3:死んだ
+:接
-:離
・ホトトギスと雉子がどちらがたくさん鳴くか自慢し合う
(自慢合戦)S1ホトトギス:S1ホトトギス+S2雉子
・雉子、秋の彼岸から春の彼岸までに一千一声鳴くと自慢する
(自慢)S2雉子:S2雉子+O1一千一声
・ホトトギスは負けじと一夏に八千八声鳴くと自慢する
(自慢)S1ホトトギス:S1ホトトギス+O2八千八声
・それでは見せてみよと実行を迫られる
(要請)S2雉子:S1ホトトギス+O2八千八声
・一日中鳴いても八千八声に届かない
(未達)S1ホトトギス:O2八千八声+m1一日中
・ホトトギス、鶯の巣に自分の卵を産み付ける
(托卵)S1ホトトギス:O3鶯の巣+O4卵
・鶯、ホトトギスの卵をかえして世話する
(世話)S3鶯:S3鶯+O4卵
・ホトトギス、八千八声鳴いて喉から血を流して死ぬ
()S1ホトトギス:O2八千八声+m2血を流した
(死亡)S1ホトトギス:S1ホトトギス+m3死んだ
◆行為項モデル
送り手→(客体)→受け手
↑
補助者→(主体)←反対者
というモデルを構築するのですが、ここでこのモデルに一つの要素を付加します。
聴き手(関心)
↓
送り手→(客体)→受け手
↑
補助者→(主体)←反対者
この聴き手は筆者が独自に付加したものです。「浮布の池」で解説しています。客体は分析で使用したサブジェクトやオブジェクトとは限りません。むしろ主体のこうなって欲しいという願いと説明した方が分かりやすいかもしれません。
聴き手(ホトトギスは約束を実行できるか)
↓
送り手(ホトトギス)→ 八千八声鳴く(客体)→ 受け手(雉子)
↑
補助者(鶯)→ ホトトギス(主体)← 反対者(雉子)
といった行為項モデルが作成できるでしょうか。ホトトギスは一夏で八千八声鳴くと雉子に宣言したものの、その実行を迫られて達成に奔走することになるという筋立てです。できもしない約束をした結果、無関係の鶯の子育ての邪魔をし、自身は八千八声鳴いた結果、喉から血を流して死んでしまうという結果に陥ります。
ホトトギス―雉子、ホトトギス―鶯、一千一声―八千八声、といった対立軸が見出せます。卵/子育てに托卵というホトトギスの性質の暗喩が同定できます。
◆関係分析
スーリオは演劇における登場人物の機能を六種に集約し占星術の記号で表記します。
♌しし座:主題の力(ヴェクトル)
☉太陽:価値、善
♁地球:善の潜在的獲得者
♂火星:対立者
♎てんびん座:審判者
☾月:援助者
という六つの機能が挙げられます。
☾は☾(♌)主題の援助者という風に表現されます。
☾(☉)☾(♁)☾(♂)☾(♎)もあり得ます。
一人の登場人物に二つまたは三つの星が該当することもあります。
これらを元に関係分析をすると、
ホトトギス♌♁―雉子♂♎―鶯☾(♌)
といった風に表記できるでしょうか。鳴き声自慢に勝つことを価値☉と置くと、ホトトギスは享受者♁となります。一方、雉子はホトトギスが本当に八千八声鳴くか判定する審判者♎となります。鶯はホトトギスに托卵されるという迷惑を被りますので援助者☾(-1)と置けるでしょうか。
◆発想の飛躍
発想の飛躍は八千八声でしょうか。「ホトトギス―八千八声/一千一声―雉子」といった図式です。
◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)p.107.
・『物語構造分析の理論と技法 CM・アニメ・コミック分析を例として』(高田明典, 大学教育出版, 2010)
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NHK FMで「民謡をたずねて Mixed by DJ俚謡山脈 ゲスト:齊藤修平」を聴く。俚謡山脈(佐藤雄彦、斉藤匠)の二人が全国の民謡を紹介する番組。今回のゲストは民俗学者の齊藤修平先生。斎藤先生と俚謡山脈のお二人とは過去に仕事をご一緒にされた経験があってその伝手とのことらしい。
番組ではまず埼玉県の盆踊り歌や民謡が流される。30枚ほどのLPレコード、CDとしてパッケージ化、アーカイブ化されているとのこと。関東地方は人口が多いので様々な民俗が残されている。それらが良い状態で録音されている。音質がいいのでスタジオ録音かと思いきや一発録りだという。ミキサーはクラシック音楽畑の人だったとのこと。千葉県の民謡も紹介される。
ラジオ番組なので固有名詞にどういう漢字を当てるかは分からなかった。
また、斎藤先生が現在フィールドワークを行っている新島の民謡も流される。初めて新島を訪れたのは25歳だったがそのときは島言葉が分からなかったとのこと。現在でも80代、90代の世代の人たちには島言葉が残されているため、そういった人たちとの会話を録音して残しているとのこと。
90代の人というと相当高齢だが、戦中は小学生くらいの年齢だった世代である。
先日、斎藤先生とお話する機会があったのだが、現在では録音するだけでなくビデオに録画して完全な形で後世に残せるようにしているとのこと。録画されていれば万が一失伝しても復活は可能だ。
他、齊藤先生がストーンズがお好きなことが分かる。ポール・マッカートニーの東京ドーム公演の話をされていたのは聞いたことがある。ロックのレジェンドたちと同世代なのである。
斎藤先生には長年のフィールドワークで培った膨大なノウハウがあるはずなのだが、それらを文章化されることにはあまりご興味がないようだ。むしろフィールドワークした結果を冊子として印刷、インフォーマントの方たちに配って喜んでもらうのを悦びとしているように見える。
実際の収録は3時間ほどかかったとのこと。それが25分に編集された訳だが、どう編集されたかはご本人も知らされていないとのこと。
今回の内容は4月30日午前11時25分まで一週間NHKらじるらじるで聴き逃し配信されている。
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◆あらすじ
炭が囲炉裏から真っ赤になって逃げ出した。藁しべも囲炉裏から逃げ出した。鍋の中で煮えていた蚕豆も飛び出した。三人は一緒になって逃げたが、途中に小川があって渡れないので途方に暮れた。藁しべが橋になって炭と蚕豆がその上を渡ることになった。まず炭が渡りはじめたが、まだ身体が焼けているので橋の真ん中で藁しべを二つに焼き切ってしまった。藁しべは落ちて流れてゆき、炭は川に落ちてブクブクと沈んでしまった。それを見て笑った蚕豆だったが、あんまり笑ったので腹の皮が裂けてしまった。蚕豆の腹にある筋はその時医者に縫ってもらった跡である。
◆モチーフ分析
・炭が囲炉裏から逃げ出した
・藁しべも囲炉裏から逃げ出した
・鍋の中の蚕豆も逃げ出した
・三人は一緒に逃げた
・途中に小川があって渡れない
・藁しべが橋になった
・炭が橋を渡りはじめたが、藁しべが焼き切れてしまう
・藁しべは流れて落ちていった
・炭は川に落ちて沈んだ
・それを見た蚕豆は笑う
・笑い過ぎたので腹の皮が裂けてしまった
・蚕豆の腹にある筋はそのとき医者に縫ってもらった跡である
◆行為項分析
S1:(S2+O1)
意思の主体者がS1であり、行為の主体者がS2、S2の行為の対象がO1である
S(サブジェクト:主体)
S1:炭
S2:藁しべ
S3:蚕豆
S4:医者
O(オブジェクト:対象)
O1:囲炉裏
O2:鍋
O3:小川
O4:向こう岸
O5:橋
O6:筋
m(修飾語)
m1:焼き切れた
m2:割けた
+:接
-:離
・炭が囲炉裏から逃げ出した
(脱走)S1炭:S1炭-O1囲炉裏
・藁しべも囲炉裏から逃げ出した
(脱走)S2藁しべ:S2藁しべ-O1囲炉裏
・鍋の中の蚕豆も逃げ出した
(脱走)S3蚕豆:S3蚕豆-O2鍋
・三人は一緒に逃げた
(逃走)S1炭+S2藁しべ+S3蚕豆:S1炭+S2藁しべ+S3蚕豆-Xどこか
・途中に小川があって渡れない
(足止め)S1炭+S2藁しべ+S3蚕豆:O3小川-S1炭+S2藁しべ+S3蚕豆
・藁しべが橋になった
(架橋)S2藁しべ:S2藁しべ+O5橋
・炭が橋を渡りはじめたが、藁しべが焼き切れてしまう
(渡河)S1炭:S1炭+O5橋
(切断)S1炭:S2藁しべ+m1焼き切れた
・藁しべは流れて落ちていった
(転落)S2藁しべ:S2藁しべ+O3小川
・炭は川に落ちて沈んだ
(沈没)S1炭:S1炭+O3小川
・それを見た蚕豆は笑う
(嘲笑)S3蚕豆:S3蚕豆-S1炭-S2藁しべ
・笑い過ぎたので腹の皮が裂けてしまった
(裂断)S3蚕豆:S3蚕豆+m2割けた
・蚕豆の腹にある筋はそのとき医者に縫ってもらった跡である
(由来)S4医者:S3蚕豆+O6筋
◆行為項モデル
送り手→(客体)→受け手
↑
補助者→(主体)←反対者
というモデルを構築するのですが、ここでこのモデルに一つの要素を付加します。
聴き手(関心)
↓
送り手→(客体)→受け手
↑
補助者→(主体)←反対者
この聴き手は筆者が独自に付加したものです。「浮布の池」で解説しています。客体は分析で使用したサブジェクトやオブジェクトとは限りません。むしろ主体のこうなって欲しいという願いと説明した方が分かりやすいかもしれません。
聴き手(炭、藁しべ、蚕豆は無事逃げられるか)
↓
送り手(炭)→ 小川を渡る(客体)→ 受け手(藁しべ)
↑
補助者(医者)→ 蚕豆(主体)← 反対者(なし)
といった行為項モデルが作成できるでしょうか。炭、藁しべ、蚕豆は逃げ出したものの小川を渡ることができません。藁しべが身を横たえて橋となりますが、渡ろうとした炭はまだ焼けていたため藁しべが焼き切れてしまうといった筋立てとなっています。
炭―藁しべ―蚕豆、囲炉裏―鍋、といった対立軸が見出せます。蚕豆/筋といった嘲笑することによる罰として腹が避けてしまうといった暗喩が同定できます。
◆関係分析
スーリオは演劇における登場人物の機能を六種に集約し占星術の記号で表記します。
♌しし座:主題の力(ヴェクトル)
☉太陽:価値、善
♁地球:善の潜在的獲得者
♂火星:対立者
♎てんびん座:審判者
☾月:援助者
という六つの機能が挙げられます。
☾は☾(♌)主題の援助者という風に表現されます。
☾(☉)☾(♁)☾(♂)☾(♎)もあり得ます。
一人の登場人物に二つまたは三つの星が該当することもあります。
これらを元に関係分析をすると、
蚕豆♌♁♎―炭♁―藁しべ♁―医者☾(♌)
といった風に表記できるでしょうか。逃げ出すことを価値☉と置くと、炭、藁しべ、蚕豆のいずれも享受者♁となります。蚕豆は川に落ちた炭と藁しべを嘲笑しますので審判者♎と置けるかもしれません。医者は割けた蚕豆の腹を縫いますので援助者☾と置けます。この関係分析では対立者♂は見出せません。
◆発想の飛躍
発想の飛躍はそれぞれの特性に応じた結末となることでしょうか。「炭―焼ける―落ちる」「藁しべ―焼ける―切れる」「蚕豆―笑う―腹が割ける」といった図式となります。
この昔話は世界中に分布したお話のようです。日本にいつ入ってきたのかは分かりませんが、囲炉裏といった要素は日本独自のものかもしれません。
◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)p.106.
・『民間説話―理論と展開―』上巻(S・トンプソン, 荒木博之, 石原綏代/訳, 社会思想社, 1977)p.329.
・『物語構造分析の理論と技法 CM・アニメ・コミック分析を例として』(高田明典, 大学教育出版, 2010)
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◆あらすじ
清見の大掛と平田の田原との境に榎(えのき)の木山という山がある。むかし榎の木山に山姥がいて大掛の川渕や田原の伊の木へ時々木綿を引きに出てきた。山姥は一日に糸巻きの管にやっと二本くらいしか引かなかったが、かせに巻くと不思議に巻いても巻いても糸が出てきて榎の木山の高さよりもっと長く出た。山姥の髪は真っ白だったが、山姥が米をとぐとぎ汁は榎の木川を白くしていつまでも流れた。その後榎の木山の持ち主が山の木を伐り払ったため、山姥は髪の白いのが恥ずかしくていることができず石見町の原山へ逃げていった。その時、清見の川渕と田原の伊の木の二軒だけは食物に不自由のないようにといって飯杓子を一本ずつ渡して、飯が少ないときはこの杓子でまぜるといくらでも増えると教えていった。ところが伊の木では父親が外から帰ってきてこんな汚い杓子はいらんと捨ててしまった。後からその杓子の有り難さを知って探しに行ったが、どこにも見えなかった。山姥が田原の金沢へ一度宿を借りに来た。気持ちよく宿を貸したところ、お礼に米のとぎ汁をあげるから、これからは水に不自由はせぬと言った。この水は濁っているが今でも絶えることはない。榎の木山の九合目には山姥のせんち石といって山姥がせんちにした跡という岩がある。
◆モチーフ分析
・昔、榎の木山に山姥がいて時々木綿を引きに出てきた
・一日に糸巻きの管に二本くらいしか引かなかったが、かせに巻くと巻いても巻いても糸が出てきた
・山姥が米をとぐとぎ汁は榎の木川を白くした
・榎の木山の木が伐り払われたため、山姥は恥ずかしがって原山へ逃げていった
・その際、二軒の家に飯杓子を渡した
・その飯杓子で混ぜると飯が幾らでも増えた
・伊の木では父親が汚いといって飯杓子を捨ててしまった
・後でありがたさを知って探したが見つからなかった
・山姥に宿を貸したところ、お礼に米のとぎ汁をくれた
・その水は濁っているが涸れることがない
・山姥が雪隠にしたという岩がある
◆行為項分析
S1:(S2+O1)
意思の主体者がS1であり、行為の主体者がS2、S2の行為の対象がO1である
S(サブジェクト:主体)
S1:山姥
S2:家
S3:伊の木の父親
O(オブジェクト:対象)
O1:榎の木山
O2:木綿
O3:かせ
O4:糸
O5:とぎ汁
O6:榎の木川
O7:飯杓子
O8:飯
O9:宿
O10:とぎ汁
O11:雪隠
O12:岩
m(修飾語)
m1:白い
m2:増えた
m3:濁った
m4:涸れない
+:接
-:離
・昔、榎の木山に山姥がいて時々木綿を引きに出てきた
(存在)S1山姥:S1山姥+O1榎の木山
(糸引き)S1山姥:S1山姥+O2木綿
・一日に糸巻きの管に二本くらいしか引かなかったが、かせに巻くと巻いても巻いても糸が出てきた
(増殖)S1山姥:O3かせ+O4糸
・山姥が米をとぐとぎ汁は榎の木川を白くした
(着色)S1山姥:O6榎の木川+m1白い
・榎の木山の木が伐り払われたため、山姥は恥ずかしがって原山へ逃げていった
(移住)S1山姥:S1山姥-O1榎の木山
・その際、二軒の家に飯杓子を渡した
(譲渡)S1山姥:S2家+O7飯杓子
・その飯杓子で混ぜると飯が幾らでも増えた
(増殖)S2家:O7飯杓子+O8飯
・伊の木では父親が汚いといって飯杓子を捨ててしまった
(廃棄)S3伊の木の父親:S2家-O7飯杓子
・後でありがたさを知って探したが見つからなかった
(捜索)S3伊の木の父親:S3伊の木の父親-O7飯杓子
・山姥に宿を貸したところ、お礼に米のとぎ汁をくれた
(宿泊)S2家:S1山姥+O9宿
(贈与)S1山姥:S2家+O10とぎ汁
・その水は濁っているが涸れることがない
(濁り)O10とぎ汁:O10とぎ汁+m3濁った
(増殖)O10とぎ汁:O10とぎ汁+m4涸れない
・山姥が雪隠にしたという岩がある
(存在)O12岩:S1山姥+O11雪隠
◆行為項モデル
送り手→(客体)→受け手
↑
補助者→(主体)←反対者
というモデルを構築するのですが、ここでこのモデルに一つの要素を付加します。
聴き手(関心)
↓
送り手→(客体)→受け手
↑
補助者→(主体)←反対者
この聴き手は筆者が独自に付加したものです。「浮布の池」で解説しています。客体は分析で使用したサブジェクトやオブジェクトとは限りません。むしろ主体のこうなって欲しいという願いと説明した方が分かりやすいかもしれません。
聴き手(山姥の能力はどのようなものか)
↓
送り手(山姥)→ 糸引き(客体)→ 受け手(山姥)
↑
補助者(なし)→ 山姥(主体)← 反対者(なし)
聴き手(山姥が渡したものの効用は何か)
↓
送り手(山姥)→ 飯杓子(客体)→ 受け手(家)
↑
補助者(なし)→ 山姥(主体)← 反対者(伊の木の父親)
聴き手(山姥が渡したものの効用は何か)
↓
送り手(山姥)→ とぎ汁(客体)→ 受け手(家)
↑
補助者(なし)→ 山姥(主体)← 反対者(なし)
といった三つの行為項モデルが作成できるでしょうか。榎の木山の山姥は超自然的な力を持っており周辺の人々に幸をもたらします。そういった点では害意のない山姥像が描かれています。
山姥―糸、山姥―飯杓子、山姥―とぎ汁、といった対立軸が見出せます。飯杓子/とぎ汁から尽きることのない豊饒さの暗喩が同定できます。
◆関係分析
スーリオは演劇における登場人物の機能を六種に集約し占星術の記号で表記します。
♌しし座:主題の力(ヴェクトル)
☉太陽:価値、善
♁地球:善の潜在的獲得者
♂火星:対立者
♎てんびん座:審判者
☾月:援助者
という六つの機能が挙げられます。
☾は☾(♌)主題の援助者という風に表現されます。
☾(☉)☾(♁)☾(♂)☾(♎)もあり得ます。
一人の登場人物に二つまたは三つの星が該当することもあります。
これらを元に関係分析をすると、
山姥♌☉―家♁☾(♌)―伊の木の父親♂♎
といった風に表記できるでしょうか。山姥のもたらす豊饒さを価値☉と置くと、家の者はその享受者♁となります。おそらく彼らは山姥に親切に接しているはずなので援助者☾とも見なせます。伊の木の父親は山姥のもたらした飯杓子の価値を見誤りますので審判者♎(-1)とでも置けるでしょうか。
◆元型分析
ユングの提唱した元型(アーキタイプ)ですと山姥は一般的に太母(great mother)とおけるでしょう。榎の木山の山姥は恥ずかしがりやで、また周囲の人々に親切であるという点では太母的ではありません。ただ、超自然的な力を発揮して豊饒さをもたらすという点では太母的です。
◆発想の飛躍
発想の飛躍は山姥のもたらす豊饒さでしょうか。「山姥―糸巻き/飯杓子/とぎ汁―尽きない」といった図式です。
◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.104-105.
・『物語構造分析の理論と技法 CM・アニメ・コミック分析を例として』(高田明典, 大学教育出版, 2010)
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◆あらすじ
石見町矢上の原山にある岩窟は市木浄泉寺の下まで続いていると言われている。そしてこの岩窟には山姥が住んでいたという。昔、大石の田植えは分限者のことで大田植だった。毎年のように早乙女(さおとめ)を十四五人雇っていたが、田植えの日になると夜明けからきれいに身支度をした早乙女が集まって田に入る。苗取りのときはそんなにはっきりしないが、並んで植え始めるとどうも雇った人数より一人多い。ところが不思議なことに顔を見ても違った人は見当たらない。それが、数えてみると一人多いので、誰か手伝いに来てくれたのだろうと昼飯の準備は一人増やしておいた。昼になって早乙女は田からあがって食事をした。ところが済んでから見ると一人分残っている。変に思って午後田に出た早乙女を数えてみると、やはり一人多い。ますます変だと思いながら田植えが済んで田から上がった人数を数えてみると、間違いなく雇っただけの人数だった。それでいよいよ訳が分からなくなってしまった。明くる年もその明くる年も同じ様な事が続いて、結局一人増えるのは山姥が手伝いに来たのだろうということになった。
◆モチーフ分析
・矢上の原山にある岩窟は浄泉寺の下まで続いていると言われている
・この岩窟には山姥が住んでいたという
・昔、大石の大田植は毎年のように早乙女を十四五人雇っていた
・田植えをはじめて見ると、どうも雇った人数より一人多い
・ところが顔を見ても違った人は見当たらない
・一人多いので昼食を一人分増やしておいたが、済んでみると一人分余っている
・変に思って早乙女の数を数えるが、やはり一人多い
・田植えが済んで田から上がった人数を数えると、雇っただけの人数だった
・明くる年もその明くる年も同じ様なことが続いた
・一人増えるのは山姥が手伝いに来ているのだろうということになった
◆行為項分析
S1:(S2+O1)
意思の主体者がS1であり、行為の主体者がS2、S2の行為の対象がO1である
S(サブジェクト:主体)
S1:山姥
S2:雇い主
S3:早乙女
S4:人々
O(オブジェクト:対象)
O1:岩窟
O2:浄泉寺
O3:大田植
O4:昼食
+:接
-:離
・矢上の原山にある岩窟は浄泉寺の下まで続いていると言われている
(噂)S4人々:O1岩窟+O2浄泉寺
・この岩窟には山姥が住んでいたという
(伝聞)S4人々:S2山姥+O1岩窟
・昔、大石の大田植は毎年のように早乙女を十四五人雇っていた
(雇用)S2雇用主:S2雇用主+S3早乙女
・田植えをはじめて見ると、どうも雇った人数より一人多い
(検算)S2雇用主:S3早乙女+S3早乙女
・ところが顔を見ても違った人は見当たらない
(確認)S2雇用主:S3早乙女-S3早乙女
・一人多いので昼食を一人分増やしておいたが、済んでみると一人分余っている
(準備)S2雇用主:S3早乙女+O4昼食
・変に思って早乙女の数を数えるが、やはり一人多い
(検算)S2雇用主:S3早乙女+S3早乙女
・田植えが済んで田から上がった人数を数えると、雇っただけの人数だった
(検算)S2雇用主:S3早乙女-S3早乙女
・明くる年もその明くる年も同じ様なことが続いた
(繰り返し)S2雇用主:S3早乙女+S3早乙女
・一人増えるのは山姥が手伝いに来ているのだろうということになった
(結論)S2山姥:S2山姥+S3早乙女
◆行為項モデル
送り手→(客体)→受け手
↑
補助者→(主体)←反対者
というモデルを構築するのですが、ここでこのモデルに一つの要素を付加します。
聴き手(関心)
↓
送り手→(客体)→受け手
↑
補助者→(主体)←反対者
この聴き手は筆者が独自に付加したものです。「浮布の池」で解説しています。客体は分析で使用したサブジェクトやオブジェクトとは限りません。むしろ主体のこうなって欲しいという願いと説明した方が分かりやすいかもしれません。
聴き手(一人多い早乙女はいったい誰か)
↓
送り手(山姥)→ 田植え(客体)→ 受け手(早乙女)
↑
補助者(山姥)→ 雇い主(主体)← 反対者(なし)
といった行為項モデルが作成できるでしょうか。ここでは送り手に山姥を入れました。大田植えで手伝いに来た早乙女の人数を数えると一人多いが誰がそうなのか分からないというお話です。山姥は恐ろしい存在として描かれることが多いですが、この伝説の山姥は田植えを手伝う善良な一面を見せます。
山姥―早乙女、早乙女―大田植、岩窟―浄泉寺、といった対立軸が見出せます。早乙女/昼食から人数が一人多いことの暗喩が同定されます。
◆関係分析
スーリオは演劇における登場人物の機能を六種に集約し占星術の記号で表記します。
♌しし座:主題の力(ヴェクトル)
☉太陽:価値、善
♁地球:善の潜在的獲得者
♂火星:対立者
♎てんびん座:審判者
☾月:援助者
という六つの機能が挙げられます。
☾は☾(♌)主題の援助者という風に表現されます。
☾(☉)☾(♁)☾(♂)☾(♎)もあり得ます。
一人の登場人物に二つまたは三つの星が該当することもあります。
これらを元に関係分析をすると、
山姥♌☾(☉)―早乙女☾(♎)―雇い主♎
といった風に表記できるでしょうか。田植えを終わらせることを価値☉と置くと、山姥はその援助者☾となります。このお話には対立者♂は存在しません。雇い主は早乙女の人数を数えますので審判者♎としていいでしょう。早乙女たちは雇い主に雇われた存在ですので援助者☾(♎)となります。
◆元型分析
ユングの提唱した元型(アーキタイプ)ですと山姥は太母(great mother)とおけるでしょう。山姥は超自然的な存在であり、時には人を喰らう恐ろしい存在として語られますが、この伝説の山姥は田植えをこっそり手伝うという点で太母らしくはありません。
◆発想の飛躍
発想の飛躍は早乙女がいつの間にか一人増えていることでしょうか。「山姥―田植え―早乙女」の図式です。
◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)p.103.
・『物語構造分析の理論と技法 CM・アニメ・コミック分析を例として』(高田明典, 大学教育出版, 2010)
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◆あらすじ
平安時代のはじめ、唐から帰ってきた弘法大師は金剛杖をつきならしながら宇坂峠を越えて市木の里へ入ってきた。峠から真正面にあおぐ丸瀬山の気高い姿は若い弘法大師の心をとらえた。この山を開いて道場を建て、金剛峯寺を開基しようと思った。大師はいばらの茂みを分けて丸瀬山に入った。そして谷から峯へと調査して回った。調査も大体終わって谷の数も峯の数も開基に都合のよいことが分かってきた。ところがこの事を知ってこの山に住む山姥が気をもみはじめた。このままでおくと山は開かれ大勢の人が出入りするようになって住む所が荒らされてしまう。その様な事にならぬよう細工をしてやろうと言って山姥は谷を一谷隠してしまった。弘法大師が最後の調査をしてみると、開山には四十八谷なければいけないのに四十七谷しかない。不審に思ってもう一度数えてみた。しかしどうしても四十七谷しかない。遂に諦めるより仕方がなかった。しかし、せめてこの山へ入った記念にと、大師は三体の観音さまを刻んで山に留め、次の山をもとめて三坂を超え芸州路へ向かった。こうして丸瀬山は山姥の邪魔でついに開かれることなく終わった。今でも隠しが谷といってその時山姥が隠したという谷がある。
大師はまたこのとき丸瀬山から日本海の激しい波風の有様を見て、行き交う船の安全を祈願して仏像を残された。その後丸瀬山には夜な夜な灯がともり、沖に出た船はこの灯を唯一の目印にした。ことに海の荒れる時は、どんな大荒れにも消えることのないこの灯を頼って帰れば難船を免れた。
観音さまの一体は観音寺原に、一体は麦尾に飛んで行き、一体は山に残っている。山に残った一体は昔ある人が丸瀬山の頂きの岩屋で見かけたので、明くる日に迎えて帰ろうと思っていったが、どうしても見つけることができなかったという。
◆モチーフ分析
・弘法大師、市木の里へ入ってくる
・弘法大師、丸瀬山の山並みに惹かれる
・弘法大師、丸瀬山に道場を開基しようと考える
・弘法大師、開基のための調査を行う
・調査は順調に進む
・丸瀬山に住む山姥がこのままでは丸瀬山に人が増え、自分の住処が荒らされると懸念する
・山姥、谷を一つ隠す
・弘法大師が谷の数を数えると四十七谷しかない
・四十八谷に一谷足りないので諦める
・弘法大師、市木の里を去る
・弘法大師、丸瀬山に仏像を残した
・その後、丸瀬山の漁り火によって多くの船が難破を免れた
・仏像は二体が外に流出した
・残りの一体は頂きの岩屋で見つかったが、その後見た者はいない
◆行為項分析
S1:(S2+O1)
意思の主体者がS1であり、行為の主体者がS2、S2の行為の対象がO1である
S(サブジェクト:主体)
S1:弘法大師
S2:山姥
O(オブジェクト:対象)
O1:市木の里
O2:丸瀬山
O3:開基の志
O4:調査
O5:谷
O6:四十七谷
O7:四十八谷
O8:仏像
O9:漁り火
O10:船
O11:難破
O12:岩屋
+:接
-:離
・弘法大師、市木の里へ入ってくる
(来訪)S1弘法大師:S1弘法大師+O1市木の里
・弘法大師、丸瀬山の山並みに惹かれる
(魅惑)S1弘法大師:S1弘法大師+O2丸瀬山
・弘法大師、丸瀬山に道場を開基しようと考える
(決意)S1弘法大師:S1弘法大師+O3開基の志
・弘法大師、開基のための調査を行う
(調査)S1弘法大師:S1弘法大師+O2丸瀬山
・調査は順調に進む
(経過)O4調査:O4調査+O2丸瀬山
・丸瀬山に住む山姥がこのままでは丸瀬山に人が増え、自分の住処が荒らされると懸念する
(懸念)S2山姥:S2山姥-O2丸瀬山
・山姥、谷を一つ隠す
(秘匿)S2山姥:S2山姥-O5谷
・弘法大師が谷の数を数えると四十七谷しかない
(検算)S1弘法大師:S1弘法大師+O6四十七谷
・四十八谷に一谷足りないので諦める
(断念)S1弘法大師:S1弘法大師-O3開基の志
・弘法大師、市木の里を去る
(退去)S1弘法大師:S1弘法大師-O1市木の里
・弘法大師、丸瀬山に仏像を残した
(安置)S1弘法大師:O2丸瀬山+O8仏像
・その後、丸瀬山の漁り火によって多くの船が難破を免れた
(効験)O9漁り火:O10船-O11難破
・仏像は二体が外に流出した
(流出)O8仏像:O2丸瀬山-O8仏像
・残りの一体は頂きの岩屋で見つかったが、その後見た者はいない
(発見)O8仏像:O8仏像+O12岩屋
(行方不明)O8仏像:O2丸瀬山-O8仏像
◆行為項モデル
送り手→(客体)→受け手
↑
補助者→(主体)←反対者
というモデルを構築するのですが、ここでこのモデルに一つの要素を付加します。
聴き手(関心)
↓
送り手→(客体)→受け手
↑
補助者→(主体)←反対者
この聴き手は筆者が独自に付加したものです。「浮布の池」で解説しています。客体は分析で使用したサブジェクトやオブジェクトとは限りません。むしろ主体のこうなって欲しいという願いと説明した方が分かりやすいかもしれません。
聴き手(弘法大師は無事開基できるか)
↓
送り手(山姥)→ 谷を一つ隠す(客体)→ 受け手(弘法大師)
↑
補助者(なし)→ 山姥(主体)← 反対者(弘法大師)
聴き手(弘法大師の残した仏像はどうなるか)
↓
送り手(弘法大師)→ 仏像(客体)→ 受け手(船)
↑
補助者(なし)→ 弘法大師(主体)← 反対者(なし)
といった二つの行為項モデルが作成できるでしょうか。弘法大師は市木の里の丸瀬山で開基しようとするものの、それを危惧した山姥が谷を一つ隠すことで妨害します。
弘法大師―山姥、四十七谷―四十八谷、開基―谷、といった対立軸が見出せます。仏像/漁り火から弘法大師の高い法力による救済の暗喩が同定できます。
◆関係分析
スーリオは演劇における登場人物の機能を六種に集約し占星術の記号で表記します。
♌しし座:主題の力(ヴェクトル)
☉太陽:価値、善
♁地球:善の潜在的獲得者
♂火星:対立者
♎てんびん座:審判者
☾月:援助者
という六つの機能が挙げられます。
☾は☾(♌)主題の援助者という風に表現されます。
☾(☉)☾(♁)☾(♂)☾(♎)もあり得ます。
一人の登場人物に二つまたは三つの星が該当することもあります。
これらを元に関係分析をすると、
弘法大師♌♎―山姥♂―船♁
といった風に表記できるでしょうか。丸瀬山に開基することを価値☉とおくと、弘法大師は開基の適当な場所を選定しますので審判者♎となります。船自体は登場人物ではありませんが、船乗りたちを登場人物と置くと、弘法大師が残した仏像の効験によって難破を免れますので享受者♁と見ることができます。
◆発想の飛躍
発想の飛躍は山姥が谷を一つ隠してしまうことでしょうか。「弘法大師―四十七谷/四十八谷―山姥」といった図式です。
◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.101-102.
・『物語構造分析の理論と技法 CM・アニメ・コミック分析を例として』(高田明典, 大学教育出版, 2010)
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NHK+で「さんいんスペシャル いいいじゅー!!「益田市」」を見る。益田市に映画館を復活させた夫婦が取材される。以前、益田市にも映画館はあったが、2008年に閉館していたとのこと。映画館の場所は駅裏のレジャービル内。益田駅からどういうルートで行くのか分からない。駐車場があるのかも分からない。旦那さんは東京のミニシアターで働いていた。益田市出身の奥さんと益田市に移住することにし、劇場を見て保存状態がよかったため復活を決意したとのこと。開業資金として2000万円が必要だった。クラウドファンディングと銀行からの融資、地元企業の協賛等で賄った。映画館一館の経営が成り立つには人口10万人必要だという。益田市の人口は4万4千人。収入は運営費に消えるという。生活費は音声データ起こしの副業で賄っているとのこと。30人くらい入れば利益が出る水準とのこと。顧客はシニア層が中心。高校生といったハイティーンの層の来場が少ないとのこと。今はオンデマンド配信が中心で、劇場で映画を見る体験をしていないのが大きいようだ。彼らをいかにして振り向かせるか。スクリーンは意外と大きい。相模原市の障がい者施設での大量殺傷事件を取り上げた映画を上映するなど独自の取り組みも行っている。観客と夫妻との会話があり、顧客の意見は随時汲み取っているようだ。
……応援してあげたい気持ちはあるが、諸事情で益田まで映画を見に行くのは難しそうだ。
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◆あらすじ
鳴美の堤から切り立った岩の上に登ると、小さな祠(ほこら)がある。竜の明神で、祠の前の岩角に立っている松を髪かけの松という。弘安(こうあん)正応(しょうおう)の頃、阿波麻生庄の領主小笠原長親は海辺防備の功によって村之郷に移封されて海を渡った。後に川本温湯城三原丸小城を中心にして十五代およそ三百年間この辺りを治めた小笠原氏の先祖である。長親は村之郷に来ると南山城を築いて根拠地とした。重臣に何々太夫宗利という武士がいた。まだ若年であったが優れた武士だったので軍師として重く用いた。足利の勢が攻め寄せた時、川を上って魚断(いおき)りに押し寄せると味方の軍勢は天嶮によってこれを防ぎ敵は意を断(き)って引き返したので魚断りというようになった。
この戦いで最も手柄を立てたのは軍師の宗利だった。それで長親は宗利に自分の娘を妻に与えた。ところがしばらく経って疫病にかかり生まれもつかぬ醜い女になった。その頃小間使いに美しい女があって、宗利は次第に本妻を避けるようになった。本妻はこれを恨んで、ある日宗利を動かして小間使いを連れて魚断りの景色を見に出かけた。そして景色のよい明鏡台へいって、しばらく休息していると、小間使いは懐中から小さな鏡を取り出してほつれた髪をかきあげた。その時後ろから忍び寄った本妻はいきなり小間使いを岩の上から突き落とした。
この時小間使いは手鏡に映った本妻の顔からそれと察したので、本妻の袖をしっかり掴んだ。それで、あっという間に二人の女は相重なって落ちていった。驚いた宗利が駆け寄ってみると、数十丈の岩壁を悲鳴をあげて落ちていく二人の黒髪はどちらも竜となって互いにもつれ争いながら途中の松の枝にかかって抜け、二人はそのまま遙か谷底の深さも知れぬ渕に呑まれてしまった。宗利は意外のことに驚くとともに、深く嘆き悲しんで蟇田まで帰り、自刃して果てた。二人の女を呑んだ渕を鏡が渕といい、以来二人は竜となって永遠に相戦ったと言われている。古くから三人を神に祀ってあったのを昭和九年の明神勧請のときに合祀した。
◆モチーフ分析
・足利との戦いで宗利、軍功を挙げる
・宗利、小笠原長親の娘を賜る
・宗利の本妻、疫病で醜い容姿になってしまう
・宗利、美しい小間使いに心を移してしまう
・本妻、宗利と小間使いを魚断りに誘う
・小間使い、髪のほつれを直そうとして背後に本妻が迫っていることに気づく
・本妻の裾を掴んだ小間使い、共に崖から転落する
・二人の髪が竜となる
・二人は渕に飲み込まれる
・衝撃を受けた宗利、自刃する
・本妻と小間使いは竜となって永遠に争った
・三人を祀った祠が建った
◆行為項分析
S1:(S2+O1)
意思の主体者がS1であり、行為の主体者がS2、S2の行為の対象がO1である
S(サブジェクト:主体)
S1:宗利
S2:小笠原長親
S3:本妻
S4:小間使い
O(オブジェクト:対象)
O1:足利
O2:軍功
O3:疫病
O4:魚断り
O5:崖
O6:竜
O7:渕
O8:祠
m(修飾語)
m1:醜い
+:接
-:離
・足利との戦いで宗利、軍功を挙げる
(戦功)S1宗利:S1宗利+O2軍功
・宗利、小笠原長親の娘を賜る
(結婚)S2小笠原長親:S1宗利+S3本妻
・宗利の本妻、疫病で醜い容姿になってしまう
(変貌)S3本妻:S3本妻+m1醜い
・宗利、美しい小間使いに心を移してしまう
(浮気)S1宗利:S1宗利+S4小間使い
・本妻、宗利と小間使いを魚断りに誘う
(勧誘)S3本妻:S4小間使い+O4魚断り
・小間使い、髪のほつれを直そうとして背後に本妻が迫っていることに気づく
(接近)S4小間使い:S4小間使い+S3本妻
・本妻の裾を掴んだ小間使い、共に崖から転落する
(転落)S4小間使い:S4小間使い+S3本妻-O5崖
・二人の髪が竜となる
(変身)S4小間使い+S3本妻:S4小間使い+S3本妻+O6竜
・二人は渕に飲み込まれる
(水没)S4小間使い+S3本妻:S4小間使い+S3本妻+O7渕
・衝撃を受けた宗利、自刃する
(自害)S1宗利:S1宗利-S1宗利
・本妻と小間使いは竜となって永遠に争った
(闘争)S3本妻:S3本妻+S4小間使い
・三人を祀った祠が建った
(祭祀)S2小笠原長親:S2小笠原長親+O8祠
◆行為項モデル
送り手→(客体)→受け手
↑
補助者→(主体)←反対者
というモデルを構築するのですが、ここでこのモデルに一つの要素を付加します。
聴き手(関心)
↓
送り手→(客体)→受け手
↑
補助者→(主体)←反対者
この聴き手は筆者が独自に付加したものです。「浮布の池」で解説しています。客体は分析で使用したサブジェクトやオブジェクトとは限りません。むしろ主体のこうなって欲しいという願いと説明した方が分かりやすいかもしれません。
聴き手(長親は宗利にどう報いるか)
↓
送り手(宗利)→ 軍功(客体)→ 受け手(小笠原長親)
↑
補助者(なし)→ 宗利(主体)← 反対者(足利)
聴き手(本妻と小間使いの関係はどうなるか)
↓
送り手(本妻)→ 崖から突き落とす(客体)→ 受け手(小間使い)
↑
補助者(宗利)→ 本妻(主体)← 反対者(小間使い)
といった行為項モデルが作成できるでしょうか。小間使いに心を移した宗利を補助者とするのは疑問含みですが、一応そうしました。小間使いを妬んだ本妻は小間使いを崖から突き落とそうとしますが、鏡でその姿を見られてしまい道連れにされてしまうという筋立てです。嫉妬は深く、二人は竜となって永遠に争い続けたという話でもあります。
本妻―小間使い、宗利―本妻、宗利―小間使い、といった対立軸が見出せます。髪/竜から女の情念の激しさといった暗喩を同定できます。
◆関係分析
スーリオは演劇における登場人物の機能を六種に集約し占星術の記号で表記します。
♌しし座:主題の力(ヴェクトル)
☉太陽:価値、善
♁地球:善の潜在的獲得者
♂火星:対立者
♎てんびん座:審判者
☾月:援助者
という六つの機能が挙げられます。
☾は☾(♌)主題の援助者という風に表現されます。
☾(☉)☾(♁)☾(♂)☾(♎)もあり得ます。
一人の登場人物に二つまたは三つの星が該当することもあります。
これらを元に関係分析をすると、
1. 宗利♌♁―本妻☉―小笠原長親♎
2. 本妻♌♁―小間使い♂♁―宗利♎☉
といった風に表記できるでしょうか。小笠原長親は宗利の軍功に報いるため娘と結婚させますので本妻を価値☉と置くことができます。ここでは宗利は享受者♁となります。
一方、本妻からすると、宗利の愛を小間使いに奪われてしまいますので、宗利を価値☉と置くことができます。本妻、小間使いの双方が享受者♁となります。二人の転落死によって宗利は自害しますので審判者♎とも置けるでしょうか。
◆発想の飛躍
発想の飛躍は本妻と小間使いの双方が滝壺に転落し、髪が竜となることでしょうか。「本妻―髪/竜―小間使い」という図式です。
◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.99-100.
・『物語構造分析の理論と技法 CM・アニメ・コミック分析を例として』(高田明典, 大学教育出版, 2010)
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◆あらすじ
昔、石見町中野の賀茂神社の三重の塔を建てた時のこと。この塔は有名な左甚五郎に頼んで建てた。甚五郎は日本一の大工だから、どんな力を持っているかと思って原山の山姥が様子を見にやってきた。山姥が甚五郎にこの塔を一夜で建てることができるか尋ねた。甚五郎は一夜で建ててみせると請け負った。すると山姥が甚五郎が一夜で建てるなら自分も一夜で機を織ってその布で原山を包んでみせると言った。勝負をすることになった。夕方から仕事にかかった甚五郎は一生懸命細工をしたが夜明け近くなったので、ふと原山の方をみると、一面に白い布らしいものが山を包んでいる。負けてしまったと思った甚五郎は道具を片付けて早々に逃げ出した。日和を通って川戸越しの月の夜という所まで逃げたが、夜が明けたので原山の辺りを見回すとどうしたことか別に白い布らしいものは掛かっていない。よく考えてみると、どうも月の光で白く見えたのを布で包んであると勘違いしたのだと気がついた。しかし、今更帰る訳にもいかないので逃げていった。「月の夜」という地名は今でも残っている。
◆モチーフ分析
・賀茂神社の三重の塔を左甚五郎が建てた
・様子を見に原山の山姥がやって来た
・山姥、塔を一夜で建てることが出来るか甚五郎に尋ねる
・甚五郎、一夜で出来ると請け負う
・山姥、ならば自分は一夜で機を織って原山を包んでみせると言った
・甚五郎と山姥、勝負することになる
・夕方から仕事を始めた甚五郎、夜明け近くに原山の方を見ると、一面に白い布が包んである
・負けたと思った甚五郎、道具を片付けて逃げ出す
・月の夜まで逃げたが、夜明けに原山を見ると白い布は掛かっていない
・月の光で白く見えたのを勘違いしたらしい
・今更帰る訳にはいかないので逃げていった
◆行為項分析
S1:(S2+O1)
意思の主体者がS1であり、行為の主体者がS2、S2の行為の対象がO1である
S(サブジェクト:主体)
S1:左甚五郎
S2:山姥
O(オブジェクト:対象)
O1:賀茂神社
O2:三重の塔
O3:原山
O4:白い布
O5:月の夜
O6:月の光
m(修飾語)
m1:一夜の
+:接
-:離
・賀茂神社の三重の塔を左甚五郎が建てた
(建築)S1左甚五郎:S1左甚五郎+O2三重の塔
・様子を見に原山の山姥がやって来た
(来訪)S2山姥:S2山姥+O1賀茂神社
・山姥、塔を一夜で建てることが出来るか甚五郎に尋ねる
(質問)S2山姥:S2山姥+S1左甚五郎
・甚五郎、一夜で出来ると請け負う
(請負)S1左甚五郎:S1左甚五郎+m1一夜の
・山姥、ならば自分は一夜で機を織って原山を包んでみせると言った
(応酬)S2山姥:S2山姥+m1一夜の
・甚五郎と山姥、勝負することになる
(勝負)S1左甚五郎:S1左甚五郎+S2山姥
・夕方から仕事を始めた甚五郎、夜明け近くに原山の方を見ると、一面に白い布が包んである
(視認)S1左甚五郎:S1左甚五郎+O4白い布
・負けたと思った甚五郎、道具を片付けて逃げ出す
(逃亡)S1左甚五郎:S1左甚五郎-O1賀茂神社
・月の夜まで逃げたが、夜明けに原山を見ると白い布は掛かっていない
(逃亡)S1左甚五郎:S1左甚五郎+O5月の夜
(視認)S1左甚五郎:O3原山-O4白い布
・月の光で白く見えたのを勘違いしたらしい
(誤認)S1左甚五郎:S1左甚五郎-O3原山
・今更帰る訳にはいかないので逃げていった
(逃亡)S1左甚五郎:S1左甚五郎-O1賀茂神社
◆行為項モデル
送り手→(客体)→受け手
↑
補助者→(主体)←反対者
というモデルを構築するのですが、ここでこのモデルに一つの要素を付加します。
聴き手(関心)
↓
送り手→(客体)→受け手
↑
補助者→(主体)←反対者
この聴き手は筆者が独自に付加したものです。「浮布の池」で解説しています。客体は分析で使用したサブジェクトやオブジェクトとは限りません。むしろ主体のこうなって欲しいという願いと説明した方が分かりやすいかもしれません。
聴き手(左甚五郎は山姥との勝負に勝てるか)
↓
送り手(左甚五郎)→ 三重の塔(客体)→ 受け手(山姥)
↑
補助者(なし) → 左甚五郎(主体)← 反対者(山姥)
といった行為項モデルが作成できるでしょうか。左甚五郎は賀茂神社の三重の塔を一晩で完成させる、山姥は一晩で原山を布で覆うと勝負します。月の光を白い布と誤認した左甚五郎は負けたと逃亡してしまいます。後にそれは誤認だったと分かりますが今更戻る訳にもいかなかったというお話です。
左甚五郎―山姥、三重の塔―白い布、白い布―月の光、といった対立軸が見出せます。月の光/白い布といった誤認の暗喩が同定できます。
左甚五郎は伝説的な腕前の大工です。対する山姥は超自然的な力の象徴です。両者を対比させることで伝説の面白みが生じます。
◆関係分析
スーリオは演劇における登場人物の機能を六種に集約し占星術の記号で表記します。
♌しし座:主題の力(ヴェクトル)
☉太陽:価値、善
♁地球:善の潜在的獲得者
♂火星:対立者
♎てんびん座:審判者
☾月:援助者
という六つの機能が挙げられます。
☾は☾(♌)主題の援助者という風に表現されます。
☾(☉)☾(♁)☾(♂)☾(♎)もあり得ます。
一人の登場人物に二つまたは三つの星が該当することもあります。
これらを元に関係分析をすると、
左甚五郎♌♎♁―山姥♂
といった風に表記できるでしょうか。価値☉を勝負に勝つこととすると、左甚五郎は享受者となります。また、自身で勝ち負けを判断していますので審判者♎ともおけます。左甚五郎と山姥との二人だけの勝負となりますので援助者は存在しません。
◆元型分析
山姥はユングの元型(アーキタイプ)として解釈すると太母(great mother)とおけるでしょうか。超自然的な力の象徴である山姥は時として人を喰らう恐ろしい存在でもあります。このお話では山姥は逃げ出した左甚五郎に対して特に何もしていません。
◆発想の飛躍
発想の飛躍は一夜で山を布で覆うと宣言するところでしょうか。「左甚五郎―塔/布―山姥」といった図式です。
◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.97-98.
・『物語構造分析の理論と技法 CM・アニメ・コミック分析を例として』(高田明典, 大学教育出版, 2010)
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◆あらすじ
昔、邑智郡都賀村の都賀西に高橋備前守という城主がいた。備前守に仕える三十六人の小姓の中に松原千代坊師という十七八ばかりの勇士がいた。ある日集まって話をしていると年長の小姓が犬伏山の大蛇の話を持ち出して、誰か嘘かまことか見届けてくる者はいないかという話になった。返事をする者はいなかったが、千代坊が名乗り出た。千代坊は他の小姓たちから妬まれていたのである。大蛇を従えて帰ったら残り三十五人の大小を褒美として進ぜようという話になった。千代坊は褒美は断ったが、これは皆の企みだとすぐ分かった。
千代坊は独り犬伏山に向かった。犬伏山に近い向山の出口に一軒家があって老人夫婦が住んでいた。夕方、そこに千代坊がやって来て水を一杯所望した。千代坊はこれから犬伏山を越えると告げた。老人夫婦はここから一里あまり奥に椿の大木があって、そこに年を経た雄雌の大蛇がいる。これまで夜に犬伏山を通って災難に遭った者は数え切れないと引き留めたが、千代坊は礼を言って山へ入って行った。
だんだん暗くなり、山は次第に深くなった。椿の木の下で大蛇が出るのを待ち受けた。真夜中になって大蛇が下りてきた。千代坊は大蛇を真っ二つに斬った。次に雌蛇が下りてきた。これも一刀のもとに胴切りにした。夜が明けてきた。しかし、千代坊は大蛇の毒気を全身に浴びて身体が次第にしびれてきた。勇気を奮い起こして谷底へ下りて大蛇の耳を四つ切り取って元のところへ這い上がったが、毒が全身にまわり気を失ってしまった。
夜が明けるのを待って老人たちが山へ登ってきた。そして倒れている千代坊を助け起こして家へ連れ帰って介抱をして城へ知らせた。千代坊が目を覚ましたときには乗り物で城中へ迎え入れられた後であった。
千代坊の勇気に感心した備前守は三十五人の小姓たちを閉門にし、三十五の大小を改めて褒美に取らせた。千代坊は身体が回復すると暇を願い、都賀東の金東寺に入って坊さんとなった。そして名を教雲と改め仏道の修行にいそしんだ。その子孫は吾郷村に今も続いている。
◆モチーフ分析
・都賀西の高橋備前守に仕える三十六人の小姓がいた
・その中に千代坊という十七八の勇士がいた
・ある日、小姓たちが犬伏山の大蛇の噂をした
・千代坊が大蛇を退治しに行くという話になった
・残り三十五人の大小を賭ける話となった
・千代坊、犬伏山に向かう
・途中、老人の家に立ち寄る
・老人たち、千代坊を引き留めるが、千代坊、出立する
・犬伏山の椿の木の下で千代坊、大蛇を退治する
・千代坊、もう一匹の大蛇も退治する
・千代坊、証拠に大蛇の耳を切り取る
・大蛇の毒気に当てられた千代坊、意識を失う
・老人たちがやって来て千代坊を介抱する
・千代坊が目覚めたときには城中にいた
・備前守、千代坊の勇気を讃え、褒美を取らせる
・千代坊、暇を乞い、仏門に入る
◆行為項分析
S1:(S2+O1)
意思の主体者がS1であり、行為の主体者がS2、S2の行為の対象がO1である
S(サブジェクト:主体)
S1:備前守
S2:小姓
S3:千代坊
S4:老人
O(オブジェクト:対象)
O1:都賀西
O2:犬伏山
O3:大蛇
O4:大小
O5:耳
O6:城中
O7:仏門
m(修飾語)
m1:毒に侵された
+:接
-:離
・都賀西の高橋備前守に仕える三十六人の小姓がいた
(存在)S1備前守:S1備前守+S2小姓
・その中に千代坊という十七八の勇士がいた
(存在)S3千代坊:S3千代坊+S1備前守
・ある日、小姓たちが犬伏山の大蛇の噂をした
(噂)S2小姓:S2小姓+O3大蛇
・千代坊が大蛇を退治しに行くという話になった
(強要)S2小姓:S3千代坊+O3大蛇
・残り三十五人の大小を賭ける話となった
(賭け)S2小姓:S3千代坊+O4大小
・千代坊、犬伏山に向かう
(出立)S3千代坊:S3千代坊+O2犬伏山
・途中、老人の家に立ち寄る
(訪問)S3千代坊:S3千代坊+S4老人
・老人たち、千代坊を引き留める
(引き止め)S4老人:S3千代坊-O2犬伏山
・千代坊、出立する
(出立)S3千代坊:S3千代坊+O2犬伏山
・犬伏山の椿の木の下で千代坊、大蛇を退治する
(退治)S3千代坊:S3千代坊+O3大蛇
・千代坊、もう一匹の大蛇も退治する
(退治)S3千代坊:S3千代坊+O3大蛇
・千代坊、証拠に大蛇の耳を切り取る
(獲得)S3千代坊:S3千代坊+O5耳
・大蛇の毒気に当てられた千代坊、意識を失う
(失神)S3千代坊:S3千代坊+m1毒に侵された
・老人たちがやって来て千代坊を介抱する
(介抱)S4老人:S4老人+S3千代坊
・千代坊が目覚めたときには城中にいた
(覚醒)S3千代坊:S3千代坊+O6城中
・備前守、千代坊の勇気を讃え、褒美を取らせる
(褒章)S1備前守:S3千代坊+O4大小
・千代坊、暇を乞い、仏門に入る
(退職)S3千代坊:S3千代坊-S1備前守
(出家)S3千代坊:S3千代坊+O7仏門
◆行為項モデル
送り手→(客体)→受け手
↑
補助者→(主体)←反対者
というモデルを構築するのですが、ここでこのモデルに一つの要素を付加します。
聴き手(関心)
↓
送り手→(客体)→受け手
↑
補助者→(主体)←反対者
この聴き手は筆者が独自に付加したものです。「浮布の池」で解説しています。客体は分析で使用したサブジェクトやオブジェクトとは限りません。むしろ主体のこうなって欲しいという願いと説明した方が分かりやすいかもしれません。
聴き手(千代坊は小姓たちの謀略にかかってしまうのか)
↓
送り手(千代坊)→ 大蛇退治(客体)→受け手(小姓)
↑
補助者(備前守)→ 小姓(主体)← 反対者(千代坊)
聴き手(千代坊は果たして大蛇を退治できるか)
↓
送り手(千代坊)→ 大蛇の耳(客体)→受け手(備前守)
↑
補助者(老人)→ 千代坊(主体)← 反対者(小姓)
聴き手(事件の後、千代坊はどういう行動をとるか)
↓
送り手(千代坊)→ 出家(客体)→受け手(備前守)
↑
補助者(なし)→ 千代坊(主体)← 反対者(小姓)
といった三つの行為項モデルが作成できるでしょうか。千代坊は小姓たちの謀略によって大蛇退治を押し付けられますが、見事果たしてみせます。備前守から褒章の大小を受け取った千代坊ですが、その後出家してしまいます。仏門に入った理由は明らかにされていませんが、大蛇退治と関係があるかもしれません。
千代坊―小姓、千代坊―備前守、千代坊―老人、千代坊―大蛇、耳―大小、といった対立軸が見出せます。耳/大小/褒章といった暗喩が同定できるでしょうか。
◆関係分析
スーリオは演劇における登場人物の機能を六種に集約し占星術の記号で表記します。
♌しし座:主題の力(ヴェクトル)
☉太陽:価値、善
♁地球:善の潜在的獲得者
♂火星:対立者
♎てんびん座:審判者
☾月:援助者
という六つの機能が挙げられます。
☾は☾(♌)主題の援助者という風に表現されます。
☾(☉)☾(♁)☾(♂)☾(♎)もあり得ます。
一人の登場人物に二つまたは三つの星が該当することもあります。
これらを元に関係分析をすると、
千代坊♌♁―大蛇☉―小姓♂―備前守♎―老人☾(♌)
といった風に表記できるでしょうか。大蛇退治を価値☉と置くと千代坊は享受者♁となります。備前守は審判者♎と置けます。老人は千代坊を介抱しますので援助者☾となります。
◆発想の飛躍
発想の飛躍は大蛇が雄雌の二匹登場し、退治した証拠として耳を持ち帰ることでしょうか。「千代坊―大蛇―雄/雌」「千代坊―大蛇―耳―大小―小姓」といった図式です。
◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.93-96.
・『物語構造分析の理論と技法 CM・アニメ・コミック分析を例として』(高田明典, 大学教育出版, 2010)
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◆あらすじ
治承(じしょう)三年の頃は邑智郡阿須那(あすな)の牛馬市が最も盛んな時だった。出雲の国飯石郡松笠村に竜頭ヶ滝という滝があった。後に名馬として有名になった池月はこの滝の近くで生まれた。小さいとき母馬が死んだ。母馬を探して滝の辺りをさ迷っている内に自分の姿が滝壺に映るのを母馬と思って滝壺に飛び込んだ。しかし水の中には母馬はいないので上に上がってみると水の中に母馬の姿が見える。そこで飛び込むが、やはり母馬はいない。こうした事を繰り返す内に泳ぎが上手になった。
治承三年四月の阿須那の市にこの馬は馬喰(ばくろう)に連れられて都賀本郷まで来た。が、江川は雪解けで水が多く渡ることができない。しかし川向こうの都賀西では市へ行く牛や馬がひっきりなしに通っていく。これを見た馬は激しい流れに飛び込んで川を真一文字に渡って都賀西から阿須那の市場に駆け込んだ。驚いた人々が見ていると一人の商人が池月を栢(かや)の木に繋いだ。
それからしばらくして雲州から馬の持ち主がやって来た。そして馬を売ろうとしたが買う人がいない。羽村長田までいったところで買い手がついた。その男は指を六本出した。持ち主は六百文だと思って手を打った。ところが買い手は六百両出したので売主は驚いた。この馬は名馬の相があり六百両でも安い位だとのことであった。
この馬は後に東国に下って名馬の名が高くなり、遂に源頼朝に買い上げられた。元暦(げんりゃく)元年正月、宇治川の合戦に佐々木四郎高綱が池月に打ちまたがって先陣の名を天下にあげた。池月を繋いだ栢の木は阿須那の賀茂神社の境内に今もある。
◆モチーフ分析
・母馬をなくした子馬がいた
・子馬は滝壺の水面に映った自分の姿を母馬と思って飛び込んだ
・それを繰り返す内に泳ぎが上手になった
・江川は雪解けの水で増水していた
・馬は江川に飛び込んで一直線に対岸まで泳ぎ切った
・馬の買い手が持ち主に指六本示した
・それは六百文ではなく六百両だった
・その馬は名馬の相があるので六百両でも安いと評された
・その馬は東国へ上がり源頼朝に買い上げられた
・宇治川の先陣争いでその馬は見事に勝利した
◆行為項分析
S1:(S2+O1)
意思の主体者がS1であり、行為の主体者がS2、S2の行為の対象がO1である
S(サブジェクト:主体)
S1:子馬
S2:母馬
S3:買い手
S4:持ち主
S5:源頼朝
O(オブジェクト:対象)
O1:滝壺
O2:江川
O3:対岸
O4:指六本
O5:六百両
O6:名馬の相
O7:東国
O8:先陣争いでの勝利
m(修飾語)
m1:泳ぎ上手
m2:増水
+:接
-:離
・母馬をなくした子馬がいた
(喪失)S1子馬:S1子馬-S2母馬
・子馬は滝壺の水面に映った自分の姿を母馬と思って飛び込んだ
(飛び込み)S1子馬:S1子馬+O1滝壺
・それを繰り返す内に泳ぎが上手になった
(上達)S1子馬:S1子馬+m1泳ぎ上手
・江川は雪解けの水で増水していた
(増水)O2江川:O2江川+m2増水
・馬は江川に飛び込んで一直線に対岸まで泳ぎ切った
(飛び込み)S1子馬:S1子馬+O2江川
(渡河)S1子馬:S1子馬+O3対岸
・馬の買い手が持ち主に指六本示した
(提示)S3買い手:S3買い手+O4指六本
・それは六百文ではなく六百両だった
(大儲け)S4持ち主:S4持ち主+O5六百両
・その馬は名馬の相があるので六百両でも安いと評された
(鑑定)S3買い手:S1子馬+O6名馬の相
・その馬は東国へ上がり源頼朝に買い上げられた
(東上)S1子馬:S1子馬+O7東国
(献上)S1子馬:S5源頼朝+S1子馬
・宇治川の先陣争いでその馬は見事に勝利した
(勝利)S1子馬:S1子馬+O8先陣争いでの勝利
◆行為項モデル
送り手→(客体)→受け手
↑
補助者→(主体)←反対者
というモデルを構築するのですが、ここでこのモデルに一つの要素を付加します。
聴き手(関心)
↓
送り手→(客体)→受け手
↑
補助者→(主体)←反対者
この聴き手は筆者が独自に付加したものです。「浮布の池」で解説しています。客体は分析で使用したサブジェクトやオブジェクトとは限りません。むしろ主体のこうなって欲しいという願いと説明した方が分かりやすいかもしれません。
聴き手(母馬を失った子馬はどうなるか)
↓
送り手(子馬)→ 母馬(客体)→受け手(子馬)
↑
補助者(自分の影)→ 子馬(主体)← 反対者(なし)
聴き手(馬の価値はいかほどか)
↓
送り手(買い手)→ 六百両(客体)→受け手(持ち主)
↑
補助者(なし)→ 買い手(主体)← 反対者(なし)
聴き手(馬は果たして活躍するか)
↓
送り手(馬)→ 先陣争いの勝利(客体)→受け手(佐々木高綱)
↑
補助者(源頼朝)→ 馬(主体)← 反対者(ライバルの馬)
といった三つの行為項モデルが作成できるでしょうか。島根県邑智郡の名馬池月伝説は奥出雲の竜頭ヶ滝でのエピソード、江川での渡河、名馬の相、頼朝への献上、宇治川での先陣争いといったエピソードを含みます。子馬の鑑定では買い手が主体となります。
子馬―母馬、子馬―自分の影、子馬―滝壺、子馬―泳ぎ、子馬―名馬の相、馬―ライバルの馬、といった対立軸が見出せます。泳ぎ上手/先陣争いでの勝利/名馬の相といった暗喩が同定できます。
◆関係分析
スーリオは演劇における登場人物の機能を六種に集約し占星術の記号で表記します。
♌しし座:主題の力(ヴェクトル)
☉太陽:価値、善
♁地球:善の潜在的獲得者
♂火星:対立者
♎てんびん座:審判者
☾月:援助者
という六つの機能が挙げられます。
☾は☾(♌)主題の援助者という風に表現されます。
☾(☉)☾(♁)☾(♂)☾(♎)もあり得ます。
一人の登場人物に二つまたは三つの星が該当することもあります。
これらを元に関係分析をすると、
子馬♌☉―母馬☾(♌)―買い手♎♁―持ち主☾(♎)
といった風に表記できるでしょうか。子馬には名馬の相がありますので価値☉となります。それを見抜いた買い手が審判者♎であり享受者♁となります。
馬♌☉―ライバルの馬♂―佐々木高綱♁――源頼朝☾(♁)
となるでしょうか。成長した馬は勝利をもたらしますので価値☉であり、乗り手の佐々木高綱は享受者♁となります。高綱に馬を下賜した源頼朝は高綱の援助者☾となります。
◆発想の飛躍
発想の飛躍は、自分の影を母馬と間違えて滝壺に飛び込む、増水した江川を渡河する、六百文どころか六百両で売れるといったところでしょうか。「子馬―滝壺―泳ぎ」「子馬―渡河―江川」「子馬―六百文/六百両―買い手」といった図式です。
◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.91-92.
・『物語構造分析の理論と技法 CM・アニメ・コミック分析を例として』(高田明典, 大学教育出版, 2010)
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「最深日本研究~外国人博士の目~」をNHK+で見る。スイス人の若手女性人類学者がメタバース世界で日本人男性が美少女のアバターを使う割合が非常に多いことに着目したもの。声はボイスチェンジャーで変換する。当初はSNSで接触を図ったが欧米人の女性であることで信用されなかったという。そこで自身もメタバース世界に入り彼らと一年かけて交流することで距離を縮めていったとのこと。発表された論文では歌舞伎の女形や人形浄瑠璃と関連づけられて論じられているとのこと。美少女のアバターをまとった男性は「バ美肉」と呼ばれる。「バーチャル 美少女 受肉」の略とのこと。受肉には宗教的な意味合いはない。その女性研究者の6度目の来日でのフィールドワークが取材される。男性なのに女性声優的なアニメ声をだせる特異なスキルを持つ男性と直接面会し発声のコツを聴く。男性も習得するのに2年かかったという。研究者によると、カワイイ仕草も実際にやってみると難しいという。文化人類学は過去には主に未開民族のフィールドワークを中心にしていたが、この女性研究者はバーチャル人類学という領域を開拓しつつある。研究者の考察では日本人男性はカワイイになりきることでストレスから解放される。カワイイだと失敗しても許されるからとしていた。ある男性はインタビューで容易に他人と交流できるのが魅力と語っていた。この研究者はロシアからスイスに移住した際、フランス語を憶える必要があり、その際にフランス語に翻訳された日本の漫画を読んで学習したのがきっかけとのこと。
メタバースの利用者は4億人に上るという。期待外れと言われたりしたが、結構な数のアーリーアダプターがいるという印象。僕自身は眼鏡をかけているのでヘッドマウントディスプレイを装着するには困難があるかもしれない。必要なパソコンのスペック等も知らない。ゲームプレイの経験は実質2Dまでで、オープン3DCGの世界だと迷ってしまうタイプである。そこまでして他人と交流したくないという気質なのである。
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未来社『石見の民話』の分析二周目、石東編まで終わった。グレマスの行為項分析とスーリオの関係分析に慣れるために行っている、そしてそれらの分析手法が昔話で適用可能か検証しているという流れ。大体の感じは把握できたのではないかと思う。
検証しているというのは、グレマスはプロップの昔話の形態学に影響を受けているからである。プロップが分析したのはあくまで「ロシアの」「魔法昔話」についてである。要するに冒険譚についてのものなのである。
昔話には冒険譚の他、滑稽譚やナンセンスなものも含まれる。そういったものにも適用可能か、『石見の民話』は幸い幅広いタイプの昔話/伝説が多数収録されているのでちょうどいいと思ったのである。
一周目であらすじは既に起こしているのでさほど苦痛には感じない。昔話の分析で最も負荷がかかるのはあらすじに起こすところである。
グレマスの行為項分析に関しては、グレマス自身の著作は難解でよく分からず、手法は高田本に頼ることとなった。他、行為項モデルについては、見目宗弘「ごんは、なぜ、土間に栗を置いたのか? ―グレマス「行為項モデル」に基づく『ごんぎつね』の解釈―」という論文も参照している。
「浮布の池」を分析したところで聴き手の関心(物語の焦点は何か)という独自の項目を付け加えた。行為項モデルの客体欄に書いてもいいのかもしれないが、別にした方が分かりやすいかなと考えてのことである。
また、石東編ではないが「えんこうの一文銭」をふと思い出したのも利いている。この話は本来は補助者である猫が途中から主役に入れ替わってしまう。そういう点で単一のモデルのみで説明できない事例である。
ネットを適当に検索した印象で言うと、グレマスの行為項分析とスーリオの関係分析はあまり普及していないようだ。というのは、おそらく分析を実施した論文を読んでも記号の羅列で何が書かれているか書いた本人以外分からないからだ。占星術記号で登場人物の役割を表記するというのは慧眼だと思うのだが。
昔話の研究では取り入れられておらず、昔話研究者は従来通りのモチーフ分析を行っているようにも見える。これは行為項分析や関係分析だと情報を落とし過ぎてしまう結果になってしまうからではないか。
物語を要素に還元して骨格を明らかにするという手法は、一見複雑に見える物語も骨格を取り出すと案外シンプルな構造となっているということなのだけど、そうするとそこから漏れ出てしまう作品の魅力がどうしても出てきてしまうのだ。
昔話のモチーフ分析は元々、類話を比較して共通点、差異からその話の源流を探る試みなので、情報を落とし過ぎると意味がなくなってしまうのだ。
物語の要素をこれ以上細かく分解することは難しいと思う。なので、物語構造分析の手法は約60年前には確立されていて、それから後はあまり進展が見られないという風に受け取れる。
これから先は計量文献学といった理系の研究手法などが脚光を浴びていくかもしれない。テクスト分析については未確認。
高田本では物語構造分析について他の本/著者も挙げられていたのだけど、それらの本を読んだ印象では(※まだ読了していない本もある)それらは小説や戯曲向けかなという印象である。
レヴィ=ストロースの『アスディワル武勲詩』も読んだが、彼の神話分析は類話を収集して比較する手法なので今回は割愛した。
問題はトータルで何文字くらいになるかである。前巻を超えるのは間違いない。電子書籍は何ページになろうと無問題だが、ペーパーバックだとかなり分厚くなってしまう。仕様上640ページまで大丈夫らしいので上下巻に分ければ大丈夫だとは思うが。
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◆あらすじ
彦八が死んで閻魔さまの前へ出た。彦八は嘘ばかりついて人を騙していたから地獄だと閻魔は言った。彦八は鬼に向かって忘れ物をしたからちょっと帰らせて欲しい。来るときには虎の皮を土産に持ってくると言った。鬼は虎の皮が欲しいので許した。彦八が喜んで帰ると葬式の最中だった。柩の蓋を押し上げて生き返った彦八は心を入れ替え御法義者になった。今度死んで閻魔さまのところへ行くと成績がよいので極楽に行くことになった。そして地蔵さまに連れられて極楽へ行きかけると鬼が虎の皮を催促した。彦八はあれは嘘の皮だと答えて極楽へ行ってしまった。
◆モチーフ分析
・彦八、死んで閻魔の前に出る
・生前、嘘をついて人を騙していたから地獄行きだと言われる
・彦八、忘れ物をしたから一度戻りたいという
・鬼に虎の皮を土産にするからと許可を得る
・生き返った彦八、善人となる
・二度目に死んだ際、今度は天国行きだと告げられる
・鬼が虎の皮を欲しいと言う
・あれは嘘の皮だと言って極楽へ行ってしまう
◆行為項分析
S1:(S2+O1)
意思の主体者がS1であり、行為の主体者がS2、S2の行為の対象がO1である
S(サブジェクト:主体)
S1:彦八
S2:閻魔
S3:鬼
O(オブジェクト:対象)
O1:地獄
O2:虎の皮
O3:天国
O4:嘘の皮
m(修飾語)
m1:善人
+:接
-:離
・彦八、死んで閻魔の前に出る
(出廷)S1彦八:S1彦八+S2閻魔
・生前、嘘をついて人を騙していたから地獄行きだと言われる
(判決)S2閻魔:S1彦八+O1地獄
・彦八、忘れ物をしたから一度戻りたいという
(申請)S1彦八:S1彦八+S3鬼
・鬼に虎の皮を土産にするからと許可を得る
(約束)S1彦八:S3鬼+O2虎の皮
・生き返った彦八、善人となる
(蘇生)S1彦八:S1彦八+m1善人
・二度目に死んだ際、今度は天国行きだと告げられる
(判決)S2閻魔:S1彦八+O3天国
・鬼が虎の皮を欲しいと言う
(要求)S3鬼:S3鬼+O2虎の皮
・あれは嘘の皮だと言って極楽へ行ってしまう
(反故)S1彦八:S3鬼+O4嘘の皮
◆行為項モデル
送り手→(客体)→受け手
↑
補助者→(主体)←反対者
というモデルを構築するのですが、ここでこのモデルに一つの要素を付加します。
聴き手(関心)
↓
送り手→(客体)→受け手
↑
補助者→(主体)←反対者
この聴き手は筆者が独自に付加したものです。「浮布の池」で解説しています。客体は分析で使用したサブジェクトやオブジェクトとは限りません。むしろ主体のこうなって欲しいという願いと説明した方が分かりやすいかもしれません。
聴き手(彦八は約束を守るか)
↓
送り手(彦八)→ 虎の皮(客体)→受け手(鬼)
↑
補助者(地蔵)→ 彦八(主体)← 反対者(鬼)
といった行為項モデルが作成できるでしょうか。彦八は生前嘘をついて人々を騙していたと裁定され地獄行きとなります。ところが護送中に言い訳と約束をして生き返ります。蘇生した彦八は行動を改めて善人となり今度は天国行きとなります。ところが、鬼が約束の品(虎の皮)を要求したところ、あれは嘘だったとあっさり反故にして天国に行ってしまいます。嘘をついた瞬間、地獄に堕とされてしまうといった展開も考えられますが、ここではそうなってはいません。
彦八―閻魔、彦八―鬼、彦八―地蔵、鬼―虎の皮、虎の皮―嘘の皮、といった対立軸が見出せます。虎の皮/蘇生といった暗喩が同定できるでしょうか。
◆関係分析
スーリオは演劇における登場人物の機能を六種に集約し占星術の記号で表記します。
♌しし座:主題の力(ヴェクトル)
☉太陽:価値、善
♁地球:善の潜在的獲得者
♂火星:対立者
♎てんびん座:審判者
☾月:援助者
という六つの機能が挙げられます。
☾は☾(♌)主題の援助者という風に表現されます。
☾(☉)☾(♁)☾(♂)☾(♎)もあり得ます。
一人の登場人物に二つまたは三つの星が該当することもあります。
これらを元に関係分析をすると、
彦八♌♁―鬼♂☾(♌)―閻魔♎☉―地蔵☾(♌)
といった風に表記できるでしょうか。価値を天国行きと置くと、閻魔が審判者♎であることになり彦八が享受者♁となります。鬼は対立者でもありますが、彦八が蘇生する手助けもしますから彦八の援助者☾とも見なせます。地蔵は彦八を天国に連れていく役割ですが援助者☾となります。
価値を虎の皮と置くと、
彦八♌☉―鬼♂♁☾(♌)―閻魔♎―地蔵☾(♌)
となるでしょうか。虎の皮は価値☉ですが嘘の皮でもありますので☉(-1)とでも表記できるでしょうか。
◆元型
彦八はユングの提唱した元型(アーキタイプ)だとトリックスターに分類されます。知恵者ですが物語を引っ掻き回すいたずら者の役割です。
◆発想の飛躍
発想の飛躍はあれは嘘の皮だと反故にすることでしょうか。「彦八―嘘の皮/虎の皮―鬼」の図式です。
◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.83-84.
・『物語構造分析の理論と技法 CM・アニメ・コミック分析を例として』(高田明典, 大学教育出版, 2010)
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◆あらすじ
昔、爺さんと婆さんがいた。娘がいていい女房だった。多くの若者が我こそは聟にと思っていた。いい聟をとろうと思った爺さんと婆さんは門口に立て札をたてた。三把の藁を十八把に数えた者に娘をやると宣言した。若者が代わる代わるやってきて、どうにか十八把に数えようと思ったが、どうしてもできない。皆、諦めて帰った。そこへ村一番の頓知(とんち)の利く者が行って、「ちょいと来ると二把(庭)ござる。なかえの隅に九把(鍬)ござる。門に三把で十八把」と答えた。感心した婆さんはこの者が聟だといって娘をやった(十四把にしかならないが話はこのようになっている)。
◆モチーフ分析
・爺さんと婆さんにいい娘がいた
・多くの若者が娘を嫁に欲しがっていた
・爺さんは門に立て札をたてお題を出す
・誰も解けない
・村一番の頓知の利く者がお題を解く
・婆さんは娘を嫁にやった
◆行為項分析
S1:(S2+O1)
意思の主体者がS1であり、行為の主体者がS2、S2の行為の対象がO1である
S(サブジェクト:主体)
S1:爺さん
S2:婆さん
S3:娘
S4:若者
S5:知恵者
O(オブジェクト:対象)
O1:お題
O2:嫁
O3:頓智
+:接
-:離
・爺さんと婆さんにいい娘がいた
(存在)S1爺さん:S1爺さん+S3娘
・多くの若者が娘を嫁に欲しがっていた
(求愛)S4若者:S4若者+O2嫁
・爺さんは門に立て札をたてお題を出す
(出題)S1爺さん:O1お題+S4若者
・誰も解けない
(回答不能)S4若者:S4若者-O1お題
・村一番の頓知の利く者がお題を解く
(解答)S5知恵者:S5知恵者+O1お題
・婆さんは娘を嫁にやった
(結婚)S2婆さん:S5知恵者+S3娘
◆行為項モデル
送り手→(客体)→受け手
↑
補助者→(主体)←反対者
というモデルを構築するのですが、ここでこのモデルに一つの要素を付加します。
聴き手(関心)
↓
送り手→(客体)→受け手
↑
補助者→(主体)←反対者
この聴き手は筆者が独自に付加したものです。「浮布の池」で解説しています。客体は分析で使用したサブジェクトやオブジェクトとは限りません。むしろ主体のこうなって欲しいという願いと説明した方が分かりやすいかもしれません。
聴き手(娘を嫁に勝ち取るのは誰か)
↓
送り手(婆さん)→ 娘(客体)→受け手(知恵者)
↑
補助者(婆さん)→ 爺さん(主体)← 反対者(若者)
といった行為項モデルが作成できるでしょうか。娘は知恵のある者に嫁にやると爺さん婆さんは一見意味不明なお題を出します。誰もそのお題を解けませんが、頓智の利く知恵者が見事にお題を解いてみせます。
爺さん―若者、婆さん―若者、娘―若者、爺さん―知恵者、婆さん―知恵者、娘―知恵者、お題―頓智といった対立軸が見出せます。頓智/結婚といった暗喩が同定できます。
◆関係分析
スーリオは演劇における登場人物の機能を六種に集約し占星術の記号で表記します。
♌しし座:主題の力(ヴェクトル)
☉太陽:価値、善
♁地球:善の潜在的獲得者
♂火星:対立者
♎てんびん座:審判者
☾月:援助者
という六つの機能が挙げられます。
☾は☾(♌)主題の援助者という風に表現されます。
☾(☉)☾(♁)☾(♂)☾(♎)もあり得ます。
一人の登場人物に二つまたは三つの星が該当することもあります。
これらを元に関係分析をすると、
知恵者♌♁―娘☉―爺さん♂♎―婆さん☾(♂)―若者♂
といった風に表記できるでしょうか。娘を価値☉と置くと、その贈与者である爺さん婆さんが対立者♂であり審判者♎となります。ここでは婆さんを爺さんの援助者☾としました。他の若者たちもライバルですので対立者♂とします。
お題とその解答自体はナンセンスな内容ですが、物語の構図そのものはちゃんと成立しています。
◆発想の飛躍
発想の飛躍はお題とその解答のナンセンスな内容でしょうか。「爺さん/婆さん―娘/頓智―知恵者」の図式です。
◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.81-82.
・『物語構造分析の理論と技法 CM・アニメ・コミック分析を例として』(高田明典, 大学教育出版, 2010)
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普段、ChatGPT3.5を利用しているのだが、試しにCopilotを利用してみたところ、4.0ベースのCopilotの方が明らかに性能が高いのは分かった。ただ、2000字までしか入力できない。
ChatGPT3.5から4.0にアップグレードするには月20ドル。約3000円。昔話の分析のチェックで使うだけにはコスト高か。
まあ、3000円って米国ではラーメン一杯の値段だそうなのだけど。
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◆あらすじ
静間に引迫(ひきさこ)坂といってとても淋(さび)しい坂があった。ここはよく化物が出ると言われていた。ある日、雨の降る夕方に大浦の三四郎という人が坂を通りかかった。萱(かや)みのを着て、寒いので下に狐の皮を着ていた。そこへ向こうから三人若い者が来て出会った。若い者はこの辺りには化物が出るというがこやつだ。今日は三人いるから退治してやろうと相談して三四郎を捕まえた。三四郎は自分は大浦の者で大田に用事に行っての帰りだと説明しても若者たちは放そうとしない。その内に一人が三四郎の後ろに尻尾がぶらさがっているのを見つけた。三四郎は幾ら言っても駄目だと覚悟を決めた。そこまで見られては仕方がない。自分はこの坂にいる狐だ。助けてくれる代わりに守り銭を一文ずつあげようと言って、これは福の銭だから大事に持っていよ。これを廻して手を叩くと金が出るともったいらしく一文ずつ渡した。若い者たちはようやく手を放したので三四郎は家へ帰った。
若い者はそれぞれ家へ帰った。一人は得意になって帰る途中で狐を捕まえて守り銭を貰ったと話した。そして三四郎の言った通りに一文銭を廻して手を叩いた。しかし幾らやっても銭は出てこない。ただの一文銭だとなった。他の若い者の家でも同じことだった。段々その話が広がって三人の若い者は三四郎に騙されたのだと笑われた。
その話が大森の代官所の耳に入ったので、代官所では三四郎を呼び出した。三四郎はどうなることかと恐る恐る代官の前へ出た。近頃評判の一件は事実かと訊かれたので三四郎は事情を詳しく話すと、代官は三四郎の知恵で四人の命が助かったと褒美をくれた。
◆モチーフ分析
・大浦の三四郎が引迫坂を通りかかった
・雨なので萱みのを着け、寒いので狐の皮を着けていた
・三人の若者と出会った
・若者たちは三四郎を狐だと責める
・三四郎、事情を話すが聞き入れてもらえない
・三四郎、一文銭を狐の守り銭だと言って渡す
・若者たち、三四郎を解放する
・若者たち、家に帰る
・若者たち、三四郎に言われた通りにするが何も起きない
・ただの一文銭だとなる
・他の若者も同じ経験をする
・三四郎に騙されたと評判になる
・三四郎、代官所から呼び出される
・三四郎、事情を説明する
・代官所は三四郎の知恵を褒め、褒美を渡す
◆行為項分析
S1:(S2+O1)
意思の主体者がS1であり、行為の主体者がS2、S2の行為の対象がO1である
S(サブジェクト:主体)
S1:三四郎
S2:若者
S3:人々
S4:代官
O(オブジェクト:対象)
O1:引迫坂
O2:狐の皮
O3:一文銭
O4:家
O5:褒美
+:接
-:離
・大浦の三四郎が引迫坂を通りかかった
(通過)S1三四郎:S1三四郎+O1引迫坂
・雨なので萱みのを着け、寒いので狐の皮を着けていた
(装着)S1三四郎:S1三四郎+O2狐の皮
・三人の若者と出会った
(遭遇)S1三四郎:S1三四郎+S2若者
・若者たちは三四郎を狐だと責める
(誤認)S2若者:S2若者+S1三四郎
・三四郎、事情を話すが聞き入れてもらえない
(不問)S1三四郎:S2若者-S1三四郎
・三四郎、一文銭を狐の守り銭だと言って渡す
(譲渡)S1三四郎:S2若者+O3一文銭
・若者たち、三四郎を解放する
(解放)S2若者:S2若者-S1三四郎
・若者たち、家に帰る
(帰宅)S2若者:S2若者+O4家
・若者たち、三四郎に言われた通りにするが何も起きない
(不発)S2若者:S2若者-O3一文銭
・ただの一文銭だとなる
(判明)O3一文銭:O3一文銭-O3一文銭
・他の若者も同じ経験をする
(繰り返し)S2若者:S2若者-O3一文銭
・三四郎に騙されたと評判になる
(噂)S3人々:S1三四郎-S2若者
・三四郎、代官所から呼び出される
(呼出)S4代官:S4代官+S1三四郎
・三四郎、事情を説明する
(説明)S1三四郎:S1三四郎+S4代官
・代官所は三四郎の知恵を褒め、褒美を渡す
(褒章)S4代官:S1三四郎+O5褒美
◆行為項モデル
送り手→(客体)→受け手
↑
補助者→(主体)←反対者
というモデルを構築するのですが、ここでこのモデルに一つの要素を付加します。
聴き手(関心)
↓
送り手→(客体)→受け手
↑
補助者→(主体)←反対者
この聴き手は筆者が独自に付加したものです。「浮布の池」で解説しています。客体は分析で使用したサブジェクトやオブジェクトとは限りません。むしろ主体のこうなって欲しいという願いと説明した方が分かりやすいかもしれません。
聴き手(三四郎はその場を無事逃れられるか)
↓
送り手(三四郎)→ 一文銭(客体)→受け手(若者)
↑
補助者(なし)→ 三四郎(主体)← 反対者(若者)
といった行為項モデルが作成できるでしょうか。三四郎は狐の皮を防寒具としてまとっていたため引迫坂で人を化かす狐と勘違いされています。一文銭を狐の守り銭と偽って渡すことでその場を逃れます。事実が明らかとなって三四郎の評判は高まりますが、代官に呼び出されてしまいます。ですが、事情を聴収した代官は三四郎の知恵を褒めるのでした。三四郎の機転が大事になることを防いだ。そして若者たちの間抜けさというか素朴さが浮き彫りとなるという構図です。
三四郎―狐、三四郎―若者、三四郎―代官、一文銭―守り銭、といった対立軸が見出せます。守り銭/虚偽といった暗喩が同定できます。
◆関係分析
スーリオは演劇における登場人物の機能を六種に集約し占星術の記号で表記します。
♌しし座:主題の力(ヴェクトル)
☉太陽:価値、善
♁地球:善の潜在的獲得者
♂火星:対立者
♎てんびん座:審判者
☾月:援助者
という六つの機能が挙げられます。
☾は☾(♌)主題の援助者という風に表現されます。
☾(☉)☾(♁)☾(♂)☾(♎)もあり得ます。
一人の登場人物に二つまたは三つの星が該当することもあります。
これらを元に関係分析をすると、
三四郎♌☉―若者♂♁―代官♎
といった風に表記できるでしょうか。一文銭を狐の守り銭と偽りますので価値☉(-1)と表記できるでしょうか。代官は事情を聴収した上で褒章しますので審判者♎としました。
◆発想の飛躍
発想の飛躍はただの一文銭を狐の守り銭と偽ることでしょうか。「三四郎―一文銭/狐の守り銭―若者」という図式です。
◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.77-80.
・『物語構造分析の理論と技法 CM・アニメ・コミック分析を例として』(高田明典, 大学教育出版, 2010)
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◆あらすじ
新田(しんた)に喜六という男がいて久手(くて)の西田屋へ奉公していた。その頃は狐がたくさんいて夜になると畑へ出て芋を掘るので小屋がけして芋番をしていた。喜六も毎晩芋番に出ていた。ある日芋番をしていると狐が出てきた。喜六は持っていた鎌を力まかせに投げつけた。鎌は当たらなかったが、驚いた狐は逃げていった。
それから三日目の晩、喜六はいつもの様に芋番に出ていると、狐が喜六の友達の姿になってやって来た。友達は観音さまの庭で踊りの最中だ。親方も見ていないし、これから踊りに行こうと誘った。応じた喜六は観音さまの庭で踊り始めた。その内訳が分からなくなってしまった。
一方、西田屋では朝になっても喜六が帰ってこないので大騒ぎとなって、村中総出で喜六を探した。四日目の朝、喜六は新田の実家の納屋の入口に髪をおどろにして身体中血だらけになって放心して座っていた。
◆モチーフ分析
・喜六という男がいて西田屋へ奉公していた
・狐が畑で芋を掘るので喜六も芋番をしていた
・ある日、芋番をしていると狐が出てきた
・喜六、鎌を投げつけた
・鎌は当たらなかったが、狐は驚いて逃げた
・それから数日、芋番に出ていると友人(狐)がやってきた
・友人、観音さまの庭で踊りをやっていると喜六を誘う
・喜六、親方もいないしと踊りに行くことにする
・踊っていると訳が分からなくなる
・西田屋では喜六がいなくなったと大騒ぎとなる
・村中総出で探す
・四日目に血だらけの姿で新田の実家で見つかる
◆行為項分析
S1:(S2+O1)
意思の主体者がS1であり、行為の主体者がS2、S2の行為の対象がO1である
S(サブジェクト:主体)
S1:喜六
S2:狐
S3:友人(狐)
S4:親方
S5:村人
O(オブジェクト:対象)
O1:新田
O2:久手
O3:西田屋
O4:芋
O5:鎌
O6:観音さまの庭
O7:踊り
m(修飾語)
m1:前後不覚
+:接
-:離
・喜六という男がいて西田屋へ奉公していた
(存在)S1喜六:S1喜六+O3西田屋
・狐が畑で芋を掘るので喜六も芋番をしていた
(監視)S1喜六:S2狐+O4芋
・ある日、芋番をしていると狐が出てきた
(出現)S1喜六:S1喜六+S2狐
・喜六、鎌を投げつけた
(攻撃)S1喜六:S2狐+O5鎌
・鎌は当たらなかったが、狐は驚いて逃げた
(逃走)S2狐:S2狐-S1喜六
・それから数日、芋番に出ていると友人(狐)がやってきた
(来訪)S1喜六:S1喜六+S3友人(狐)
・友人、観音さまの庭で踊りをやっていると喜六を誘う
(誘惑)S3友人(狐):S1喜六+O7踊り
・喜六、親方もいないしと踊りに行くことにする
(離脱)S1喜六:S1喜六-S4親方
・踊っていると訳が分からなくなる
(前後不覚)S1喜六:S1喜六+m1前後不覚
・西田屋では喜六がいなくなったと大騒ぎとなる
(騒動勃発)O3西田屋:O3西田屋-S1喜六
・村中総出で探す
(捜索)S5村人:S5村人+S1喜六
・四日目に血だらけの前後不覚の姿で新田の実家で見つかる
(発見)S5村人:S1喜六+m1前後不覚
◆行為項モデル
送り手→(客体)→受け手
↑
補助者→(主体)←反対者
というモデルを構築するのですが、ここでこのモデルに一つの要素を付加します。
聴き手(関心)
↓
送り手→(客体)→受け手
↑
補助者→(主体)←反対者
この聴き手は筆者が独自に付加したものです。「浮布の池」で解説しています。客体は分析で使用したサブジェクトやオブジェクトとは限りません。むしろ主体のこうなって欲しいという願いと説明した方が分かりやすいかもしれません。
聴き手(果たして喜六は仕返しされるか)
↓
送り手(狐)→ 踊り(客体)→受け手(喜六)
↑
補助者(友人)→ 喜六(主体)← 反対者(狐)
といった行為項モデルが作成できるでしょうか。喜六は芋を盗りに来た狐に鎌を投げつけます。鎌は命中しなかったものの狐の強い恨みをかってしまうという筋立てです。巧みに踊りに誘われた喜六は狐の力で前後不覚となってしまい仕返しされます。
喜六―狐、喜六―友人、踊り―前後不覚、前後不覚―血みどろ、久手―新田、といった対立軸が見出せます。踊り/前後不覚といった暗喩が同定できます。
◆関係分析
スーリオは演劇における登場人物の機能を六種に集約し占星術の記号で表記します。
♌しし座:主題の力(ヴェクトル)
☉太陽:価値、善
♁地球:善の潜在的獲得者
♂火星:対立者
♎てんびん座:審判者
☾月:援助者
という六つの機能が挙げられます。
☾は☾(♌)主題の援助者という風に表現されます。
☾(☉)☾(♁)☾(♂)☾(♎)もあり得ます。
一人の登場人物に二つまたは三つの星が該当することもあります。
これらを元に関係分析をすると、
喜六♌☾(☉)―友人(狐)☾(♂)―狐♂―村人♎☾(♌)
といった風に表記できるでしょうか。芋を奪われないことを価値☉とすると芋番をする喜六は一応援助者☾(☉)とおけるでしょうか。狐が化けた友人は同一人物ですが狐の援助者☾(♂)と見なすことができます。村人は喜六を発見した後で事情を知るでしょうからここでは審判者♎としました。
◆発想の飛躍
発想の飛躍は踊っている内に前後不覚に陥ることでしょうか。「喜六―踊り/前後不覚―狐」という図式です。
◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.75-76.
・『物語構造分析の理論と技法 CM・アニメ・コミック分析を例として』(高田明典, 大学教育出版, 2010)
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◆あらすじ
浄福寺が鳥越(とりごえ)にあった頃、ここではお松狐に化かされる者が沢山いた。鳥居村迫(さこ)の原政四郎が魚商人をしていた。ある日魚を売っての帰りがけ、日の暮れぬ時刻に浄福寺の後ろを通りかかるとにわかに暗くなった。政四郎は自分を化かそうとしても叶わない。お松は七変化しか知らないだろうが自分は九変化できる皮をもっているからと叫んだ。すると元の様に明るくなった。そしてお松狐が出てきて政四郎の九変化の皮と自分の七変化の皮を換えてくれと頼んだ。政四郎は家へ連れて帰って座布団にしている猫の皮を出して、七変化の皮と取り替えた。そして近いうちに宮脇で婚礼があるから、この皮を被ってご馳走をよばれるとよいと教えた。さて、宮脇の婚礼の晩になると、お松は九変化の猫の皮を被ってのこのこと座敷へ上がっていった。宮脇ではこの狐めとよってたかって殴りつけた。お松はやっとのことで逃げて帰った。政四郎に騙されたと気づいたお松は七変化の皮を返して欲しいと頼んだ。政四郎はもう人を化かさないと約束させて返してやった。それから浄福寺のところで人が化かされることはなくなった。
◆モチーフ分析
・鳥越ではお松狐に化かされる者が大勢いた
・魚商人の政四郎が魚を売っての帰りがけに浄福寺の辺りを通りかかる
・急に暗くなる
・政四郎、自分は九変化の皮を持っているから化かされないと叫んだ
・お松狐が現れ、自分の七変化の皮と交換して欲しいと頼む
・政四郎、座布団にしていた猫の皮を七変化の皮と交換する
・近い内に婚礼があるから九変化の皮を被ってご馳走をよばれるといいと教える
・お松狐、九変化の皮を被って婚礼の席に出る
・狐とばれて散々な目に遭う
・政四郎に騙されたと悟ったお松狐は七変化の皮を返して欲しいと頼む
・政四郎、これから先は人を化かさないと約束させて皮を返す
・それから浄福寺で人が化かされることはなくなった
◆行為項分析
S1:(S2+O1)
意思の主体者がS1であり、行為の主体者がS2、S2の行為の対象がO1である
S(サブジェクト:主体)
S1:お松狐
S2:村人
S3:政四郎
O(オブジェクト:対象)
O1:浄福寺
O2:九変化の皮
O3:七変化の皮
O4:猫の皮
O5:婚礼の席
m(修飾語)
m1:暗い
+:接
-:離
・鳥越ではお松狐に化かされる者が大勢いた
(被害)S2村人:S1お松狐-S2村人
・魚商人の政四郎が魚を売っての帰りがけに浄福寺の辺りを通りかかる
(通貨)S3政四郎:S3政四郎+O1浄福寺
・急に暗くなる
(暗転)O1浄福寺:O1浄福寺+m1暗い
・政四郎、自分は九変化の皮を持っているから化かされないと叫んだ
(否定)S3政四郎:S1お松狐-O2九変化の皮
・お松狐が現れ、自分の七変化の皮と交換して欲しいと頼む
(依頼)S1お松狐:S1お松狐+O3七変化の皮
・政四郎、座布団にしていた猫の皮を七変化の皮と交換する
(交換)S3政四郎:S3政四郎+O3七変化の皮
・近い内に婚礼があるから九変化の皮を被ってご馳走をよばれるといいと教える
(教唆)S3政四郎:S3政四郎+S1お松狐
・お松狐、九変化の皮を被って婚礼の席に出る
(出席)S1お松狐:S1お松狐+O5婚礼の席
・狐とばれて散々な目に遭う
(発覚)S1お松狐:S2村人-S1お松狐
・政四郎に騙されたと悟ったお松狐は七変化の皮を返して欲しいと頼む
(再依頼)S1お松狐:S1お松狐+S3政四郎
・政四郎、これから先は人を化かさないと約束させて皮を返す
(返却)S3政四郎:S3政四郎-O3七変化の皮
・それから浄福寺で人が化かされることはなくなった
(平和)S2村人:S2村人-S1お松狐
◆行為項モデル
送り手→(客体)→受け手
↑
補助者→(主体)←反対者
というモデルを構築するのですが、ここでこのモデルに一つの要素を付加します。
聴き手(関心)
↓
送り手→(客体)→受け手
↑
補助者→(主体)←反対者
この聴き手は筆者が独自に付加したものです。「浮布の池」で解説しています。客体は分析で使用したサブジェクトやオブジェクトとは限りません。むしろ主体のこうなって欲しいという願いと説明した方が分かりやすいかもしれません。
聴き手(政四郎はお松狐を騙せるか)
↓
送り手(政四郎)→ 猫の皮(客体)→受け手(お松狐)
↑
補助者(なし)→ 政四郎(主体)← 反対者(お松狐)
といった行為項モデルが作成できるでしょうか。政四郎は九変化の皮と偽って猫の皮をお松狐に渡します。お松狐より能力が上だと欺くのです。それを信じたお松狐は猫の皮を被って婚礼の席に呼ばれて散々な目に遭ってしまうという筋立てです。
お松狐―村人、お松狐―政四郎、お松狐―婚礼の席の人々、七変化の皮―九変化の皮、といった対立軸が見出せます。皮/変化という暗喩が同定できます。
◆関係分析
スーリオは演劇における登場人物の機能を六種に集約し占星術の記号で表記します。
♌しし座:主題の力(ヴェクトル)
☉太陽:価値、善
♁地球:善の潜在的獲得者
♂火星:対立者
♎てんびん座:審判者
☾月:援助者
という六つの機能が挙げられます。
☾は☾(♌)主題の援助者という風に表現されます。
☾(☉)☾(♁)☾(♂)☾(♎)もあり得ます。
一人の登場人物に二つまたは三つの星が該当することもあります。
これらを元に関係分析をすると、
政四郎♌―お松狐♂☉―婚礼の席の人々☾(♌)―村人♁
といった風に表記できるでしょうか。ここではお松狐の持つ七変化の皮が価値☉でしょうか。政四郎によってお松狐は人を化かすのを止めますので享受者♁は村人となります。
◆発想の飛躍
発想の飛躍は九変化の皮でしょうか。「政四郎―九変化/七変化―お松狐」の図式です。狐を欺く知恵を発揮するという点で特徴的なお話です。
◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.73-74.
・『物語構造分析の理論と技法 CM・アニメ・コミック分析を例として』(高田明典, 大学教育出版, 2010)
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◆あらすじ
昔、仲の悪い姑と嫁がいた。姑は毎日文句ばかり言っている。嫁は姑を殺してしまえば家は無事に治まると思って医者のところへ行って姑を殺す毒薬を作って欲しいと頼んだ。医者はさっそく薬を作った。渡す際にこの薬を飲むと長い間はもたない、その間は精一杯懇ろにせよと言った。嫁は喜んで薬を貰って帰ると、そっと姑に飲ませて、それからは姑を大切にした。姑は喜んで金も着物もお前にやると言った。姑がこれまでとうって変わって優しくするので、嫁はこんないい姑を殺しては済まないと急いで医者に相談して、毒を消す薬を作ってもらうよう頼んだ。すると医者は前の薬は毒ではないと安心させた。それからは嫁と姑はとても仲よく暮らした。
◆モチーフ分析
・仲の悪い姑と嫁がいた
・嫁は姑を殺してしまおうと思い医者に毒薬を作らせる
・嫁、その薬を姑に飲ませる
・死ぬまでの間、姑によくする
・姑の態度が変わる
・後悔して解毒剤を医者に求める
・薬は毒ではなかった
・姑と嫁、仲良くなる
◆行為項分析
S1:(S2+O1)
意思の主体者がS1であり、行為の主体者がS2、S2の行為の対象がO1である
S(サブジェクト:主体)
S1:姑
S2:嫁
S3:医者
O(オブジェクト:対象)
O1:毒薬
O2:解毒剤
+:接
-:離
・仲の悪い姑と嫁がいた
(不仲)S2嫁:S2嫁-S1姑
・嫁は姑を殺してしまおうと思い医者に毒薬を作らせる
(謀略)S2嫁:S3医者+O1毒薬
・嫁、その薬を姑に飲ませる
(服毒)S2嫁:S1姑+O1毒薬
・死ぬまでの間、姑によくする
(好待遇)S2嫁:S2嫁+S1姑
・姑の態度が変わる
(変節)S1姑:S1姑+S2嫁
・後悔して解毒剤を医者に求める
(要求)S2嫁:S3医者+O2解毒剤
・薬は毒ではなかった
(判明)O1毒薬:S1姑-O1毒薬
・姑と嫁、仲良くなる
(和解)S2嫁:S2嫁+S1姑
◆行為項モデル
送り手→(客体)→受け手
↑
補助者→(主体)←反対者
というモデルを構築するのですが、ここでこのモデルに一つの要素を付加します。
聴き手(関心)
↓
送り手→(客体)→受け手
↑
補助者→(主体)←反対者
この聴き手は筆者が独自に付加したものです。「浮布の池」で解説しています。客体は分析で使用したサブジェクトやオブジェクトとは限りません。むしろ主体のこうなって欲しいという願いと説明した方が分かりやすいかもしれません。
聴き手(嫁のはかりごとは成功するか)
↓
送り手(嫁)→ 毒薬(客体)→受け手(姑)
↑
補助者(医者)→ 嫁(主体)← 反対者(姑)
といった行為項モデルが作成できるでしょうか。姑と不仲の嫁は医者に毒薬を調合させて姑に飲ませます。死ぬまでのつもりで姑に優しく接したところ姑の心持ちが変わるという内容です。
嫁―姑、嫁―医者、毒薬―偽薬、といった対立軸が見出せます。毒薬/和解という暗喩が同定できます。
◆関係分析
スーリオは演劇における登場人物の機能を六種に集約し占星術の記号で表記します。
♌しし座:主題の力(ヴェクトル)
☉太陽:価値、善
♁地球:善の潜在的獲得者
♂火星:対立者
♎てんびん座:審判者
☾月:援助者
という六つの機能が挙げられます。
☾は☾(♌)主題の援助者という風に表現されます。
☾(☉)☾(♁)☾(♂)☾(♎)もあり得ます。
一人の登場人物に二つまたは三つの星が該当することもあります。
これらを元に関係分析をすると、
嫁♌♁―医者♎☾(♌)☉―姑♂
といった風に表記できるでしょうか。価値☉をどう置くか悩みます。毒薬だとすると☉(-1)といった風に表記できるでしょうか。
◆発想の飛躍
発想の飛躍は毒薬のはずが偽薬だったというところでしょうか。「嫁―毒/偽薬―姑」の図式です。
◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.71-72.
・『物語構造分析の理論と技法 CM・アニメ・コミック分析を例として』(高田明典, 大学教育出版, 2010)
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◆あらすじ
昔、たくさんの財産をもった親父さんがいた。財産をどの子にやったらいいか迷っていた。そこであるとき三人の子供にお前たちはこれから先どうしようと思っているか聞こうとした。長男におまえはどういう考えか聞くと、長男は吉田の田部さんのような長者になりたいと答えた。次男は隠岐の島一の長者になりたいと答えた。そこで三男に聞くと赤ば牛の金玉が二つ欲しいと言った。びっくりした親父さんは訳を聞くと、三男は兄貴のような大馬鹿者に一つずつ分けてやるのだと答えた。赤ば牛の金玉をわけたらどうなるのか聞くと、なんぼ一生懸命働いても一生のうちに田部さんや隠岐のすけくのような日本で何番という長者になれるものではない。それを求めるのは夢の様な話だから、そんな馬鹿たれには赤ば牛の金玉くらいがちょうど良いと言った。親父さんは三男が一番利口なので家の財産を皆三男に譲ることにした。
◆モチーフ分析
・親父は財産をどの子に継がせるか迷っている
・三人の息子にこの先どうするか聞く
・長男は吉田の田部みたいな長者になりたいと答える
・次男は隠岐島一の長者になりたいと答える
・三男は赤ば牛の金玉が二つ欲しいと答える
・驚いた親父は三男に理由を聞く
・三男は二人の兄に一つずつ分けてやると答える
・親父、分けたらどうなるのか聞く
・一生懸命に働いても一生の内で日本有数の長者になることはできない。故に大馬鹿者には金玉で十分と答える
・親父、三男が一番利口と認め、財産を三男に譲ることにする
◆行為項分析
S1:(S2+O1)
意思の主体者がS1であり、行為の主体者がS2、S2の行為の対象がO1である
S(サブジェクト:主体)
S1:親父
S2:長男
S3:次男
S4:三男
O(オブジェクト:対象)
O1:財産
O2:吉田の田部
O3:隠岐のすけく
O4:金玉
+:接
-:離
・親父は財産をどの子に継がせるか迷っている
(迷い)S1親父:S1親父-O1財産
・三人の息子にこの先どうするか聞く
(聴聞)S1親父:S1親父+S2長男+S3次男+S4三男
・長男は吉田の田部みたいな長者になりたいと答える
(回答)S2長男:S2長男+O2吉田の田部
・次男は隠岐島一の長者になりたいと答える
(回答)S3次男:S3次男+O3隠岐のすけく
・三男は赤ば牛の金玉が二つ欲しいと答える
(回答)S4三男:S4三男+O4金玉
・驚いた親父は三男に理由を聞く
(聴収)S1親父:S1親父+S4三男
・三男は二人の兄に一つずつ分けてやると答える
(回答)S4三男:S2長男+S3次男+O4金玉
・親父、分けたらどうなるのか聞く
(回答)S1親父:S1親父+S4三男
・一生懸命に働いても一生の内で日本有数の長者になることはできない。故に大馬鹿者には金玉で十分と答える
(回答)S4三男:S2長男+S3次男+O4金玉
・親父、三男が一番利口と認め、財産を三男に譲ることにする
(委譲)S1親父:S4三男+O1財産
◆行為項モデル
送り手→(客体)→受け手
↑
補助者→(主体)←反対者
というモデルを構築するのですが、ここでこのモデルに一つの要素を付加します。
聴き手(関心)
↓
送り手→(客体)→受け手
↑
補助者→(主体)←反対者
この聴き手は筆者が独自に付加したものです。「浮布の池」で解説しています。客体は分析で使用したサブジェクトやオブジェクトとは限りません。むしろ主体のこうなって欲しいという願いと説明した方が分かりやすいかもしれません。
聴き手(遺産を相続するのは誰か)
↓
送り手(三男)→ 赤ば牛の金玉(客体)→受け手(長男、次男)
↑
補助者(親父)→ 三男(主体)← 反対者(長男、次男)
といった行為項モデルが作成できるでしょうか。実際に金玉を贈る訳ではありませんが、そうすると言うことで三男は長男と次男を遺産を相続するには不足であると示します。
吉田の田部―長者、隠岐のすけく―長者、長者―金玉、金玉―財産、といった対立軸が見出せます。相続/繁栄といった暗喩が同定できます。
◆関係分析
スーリオは演劇における登場人物の機能を六種に集約し占星術の記号で表記します。
♌しし座:主題の力(ヴェクトル)
☉太陽:価値、善
♁地球:善の潜在的獲得者
♂火星:対立者
♎てんびん座:審判者
☾月:援助者
という六つの機能が挙げられます。
☾は☾(♌)主題の援助者という風に表現されます。
☾(☉)☾(♁)☾(♂)☾(♎)もあり得ます。
一人の登場人物に二つまたは三つの星が該当することもあります。
これらを元に関係分析をすると、
三男♌♁―親父☉♎―長男♂―次男♂
といった風に表記できるでしょうか。援助者☾は不在と考えることができます。ここでは対立者♂が長男と次男の二名となります。親父は財産持ちですので価値☉であり、誰に相続させるかの決定権を持つ審判者♎であると言えます。
◆発想の飛躍
発想の飛躍は赤ば牛の金玉と回答することでしょうか。「三男―金玉―財産―親父」という図式です。末弟が最も賢いというパターンのお話です。
◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.69-70.
・『物語構造分析の理論と技法 CM・アニメ・コミック分析を例として』(高田明典, 大学教育出版, 2010)
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◆あらすじ
吉田の田部(たなべ)の先祖は綿売りで綿屋と言っていた。ところが綿売りで失敗したので吉田には帰らず、大阪へ出た。住吉さまに参詣したが、賽銭をあげようとすると一両小判が一枚あるだけである。そこで初めてのことだからと小判を賽銭箱に投げ入れた。懐には一文もなくなった。ところが、そこに旦那が二人参っていて、田部が一両小判を投げるのを見て驚いた。商人らしいが並みの者ではないと感心した。それは鴻池(こうのいけ)の旦那が番頭を連れて来ていたのだった。
鴻池の旦那は番頭に言って田部に今晩自宅に泊まって貰うよう頼んだ。田部は泊まることにした。田部は山や田畑の売り込みにくるのを見ては毎日ぶらぶらしていた。田部は旦那の碁打ちの相手もした。田部は碁が強く、旦那はやはり並みの者でないとますます田部に惚れ込んだ。
ある日、七里四方の山を買う話が持ち上がった。旦那が番頭に入札に行かせた。大抵の場合なら取って戻れとの指示であった。田部は旦那があれほど欲しがっているからにはきっと儲かる。ここだと思って自分も同道することにした。入札したところ田部に落札した。番頭が雲州の客に落札したと報告した。旦那は雲州の客ならよいと答えた。
帰る気になった田部は引き留められたが吉田へ帰った。帰りの旅費は旦那が出してくれた。
大きな買い物をした田部は吉田へ戻ってきた。そして吉田の家々に少しずつ金を分けてやって家にも土蔵にも提灯にも(綿)の印を入れさせた。七里四方の山を買った田部は大勢の木こりを入れて山稼ぎを始めた。月日が流れて三年経った。
鴻池ではあれから三年になるが金を送ってこぬし便りもない。一つ様子を見てこいと番頭が旦那の命を受けて吉田へやって来た。見ると村中(綿)の印なので驚いて、こんな大家に金の請求をすれば鴻池の恥じになると何も言わずに帰って旦那に報告した。旦那も番頭を褒めた。それから十年稼いで田部は大金を儲け、鴻池に返した。こうして田部家は今日の様に栄えた。
◆モチーフ分析
・吉田の田部は綿売りで綿屋と言った
・綿売りで失敗して大阪に出た
・住吉さんに参詣する
・一両小判を賽銭にする
・その姿をみていた鴻池の旦那と番頭が今晩泊まるように言う
・田部、泊まることにする
・ぶらぶらして数日が過ぎた
・田部、碁が強かった
・鴻池の旦那、ますます並みの者でないと感じる
・七里四方の山を買う話が持ち上がる
・鴻池の旦那、番頭を入札に行かせる
・儲かる話だと思った田部、同行する
・田部、落札する
・鴻池の旦那、雲州の客ならと諦める
・田部、引き留められるにも関わらず吉田へ帰る
・吉田に戻ってきた田部、吉田の家々に金を配り、(綿)印を入れさせる
・七里の山に木こりを入れ稼ぎはじめる
・三年が経過、鴻池の番頭が様子を見にやってくる
・見ると村中、(綿)の印だった
・大家に金を請求すると鴻池の恥になると番頭、引き返す
・十年稼いだ田部は大金を儲け、鴻池に返す
・田部家は栄えた
◆行為項分析
S1:(S2+O1)
意思の主体者がS1であり、行為の主体者がS2、S2の行為の対象がO1である
S(サブジェクト:主体)
S1:田部
S2:鴻池の旦那
S3:番頭
S4:吉田の家々
S5:木こり
O(オブジェクト:対象)
O1:綿
O2:大阪
O3:住吉神社
O4;小判
O5:碁
O6:山
O7:吉田
O8:綿印
O9:金
m(修飾語)
m1:繁栄
+:接
-:離
・吉田の田部は綿売りで綿屋と言った
(存在)S1田部:S1田部+O1綿
・綿売りで失敗して大阪に出た
(上京)S1田部:S1田部+O2大阪
・住吉さんに参詣する
(参詣)S1田部:S1田部+O3住吉神社
・一両小判を賽銭にする
(奉納)S1田部:O3住吉神社+O4小判
・その姿をみていた鴻池の旦那と番頭が今晩泊まるように言う
(目撃)S2鴻池の旦那:S3番頭+S1田部
・田部、泊まることにする
(宿泊)S1田部:S1田部+S2鴻池の旦那
・ぶらぶらして数日が過ぎた
(経過)S1田部:S1田部-S2鴻池の旦那
・田部、碁が強かった
(碁打ち)S1田部:S1田部+O5碁
・鴻池の旦那、ますます並みの者でないと感じる
(評価)S2鴻池の旦那:S2鴻池の旦那+S1田部
・七里四方の山を買う話が持ち上がる
(商談)S2鴻池の旦那:S2鴻池の旦那+O6山
・鴻池の旦那、番頭を入札に行かせる
(入札)S2鴻池の旦那:S3番頭+O6山
・儲かる話だと思った田部、同行する
(同行)S1田部:S3番頭+S1田部
・田部、落札する
(落札)S1田部:S1田部+O6山
・鴻池の旦那、雲州の客ならと諦める
(放棄)S2鴻池の旦那:S1田部+O6山
・田部、引き留められるにも関わらず吉田へ帰る
(帰郷)S1田部:S1田部-O2大阪
・吉田に戻ってきた田部、吉田の家々に金を配り、(綿)印を入れさせる
(押印)S1田部:S4吉田の家々+O8綿印
・七里の山に木こりを入れ稼ぎはじめる
(開山)S1田部:S5木こり+O6山
・三年が経過、鴻池の番頭が様子を見にやってくる
(来訪)S3番頭:S3番頭+O7吉田
・見ると村中、(綿)の印だった
(発見)S3番頭:S4吉田の家々+O8綿印
・大家に金を請求すると鴻池の恥になると番頭、引き返す
(撤退)S3番頭:S3番頭-O7吉田
・十年稼いだ田部は大金を儲け、鴻池に返す
(返金)S1田部:S2鴻池の旦那+O9金
・田部家は栄えた
(繁栄)S1田部:S1田部+m1繁栄
◆行為項モデル
送り手→(客体)→受け手
↑
補助者→(主体)←反対者
というモデルを構築するのですが、ここでこのモデルに一つの要素を付加します。
聴き手(関心)
↓
送り手→(客体)→受け手
↑
補助者→(主体)←反対者
この聴き手は筆者が独自に付加したものです。「浮布の池」で解説しています。客体は分析で使用したサブジェクトやオブジェクトとは限りません。むしろ主体のこうなって欲しいという願いと説明した方が分かりやすいかもしれません。
聴き手(事業に失敗した田部は復活できるか)
↓
送り手(田部)→ 切れ者であるとの認識(客体)→受け手(鴻池の旦那)
↑
補助者(住吉神社)→ 田部(主体)← 反対者(なし)
といった行為項モデルが作成できるでしょうか。田部は小判をお賽銭とすることで鴻池の旦那の目を惹きます。その後も碁打ちや山の入札、綿印で只者でないと思わせます。そのは後の田部の成功に繋がります。
小判―賽銭、田部―住吉神社、田辺―鴻池、田辺―綿印、綿印―番頭、といった対立軸が見出せるでしょうか。小判を賽銭とすることで、住吉神社/繁栄といった暗喩が同定できます。
◆関係分析
スーリオは演劇における登場人物の機能を六種に集約し占星術の記号で表記します。
♌しし座:主題の力(ヴェクトル)
☉太陽:価値、善
♁地球:善の潜在的獲得者
♂火星:対立者
♎てんびん座:審判者
☾月:援助者
という六つの機能が挙げられます。
☾は☾(♌)主題の援助者という風に表現されます。
☾(☉)☾(♁)☾(♂)☾(♎)もあり得ます。
一人の登場人物に二つまたは三つの星が該当することもあります。
これらを元に関係分析をすると、
田部♌♁―鴻池の旦那☉♎☾(♌)―番頭☾(☉)
といった風に表記できるでしょうか。対立者♂は不在と考えることができるでしょうか。鴻池の旦那は田部を高く評価しますので審判者♎また援助者☾と見なすことができます。また、田部の価値☉の源泉でもあります。
◆発想の飛躍
発想の飛躍は小判を賽銭にすることと、吉田の家々に綿印を入れさせることでしょうか。「小判―賽銭―住吉神社―繁栄」「吉田の家々―綿印―番頭」といった図式です。
◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.65-68.
・『物語構造分析の理論と技法 CM・アニメ・コミック分析を例として』(高田明典, 大学教育出版, 2010)
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◆あらすじ
昔、博多にゆう丹という船乗りがいた。ある年の初夢に梶の棒が折れた夢をみた。縁起が悪いのでゆう丹は起きずに寝ていた。妻が心配したので夢見が悪いと訳を話した。妻はそれは吉夢だと答えた。博多のゆう丹己詩(おれかじ)と言うではないかと。ゆう丹は喜んで起きた。
間もなく萩へ向かって出帆した。にわかに大南風(はえ)になって朝鮮の近くまで流された。そこへ南風のかわしが来たので、あの手この手で地方(じかた)に近づこうと努めたが、萩へ入ることができない。とうとう温泉津(ゆのつ)を過ぎて琴ヶ浜の神子地(みこじ)に着いた。
船を浜に上げて痛んだところを修理していると、大森から薪を売る者が来た。見ると薪の間に銀鉱がついていた。驚いて尋ねたところ、こんな石はいくらでもあると答えた。ゆう丹は倍払うからと言って船一杯の石を買いつけた。薪売りはゆう丹を馬鹿だと思った。帰ったゆう丹はそれを売って大もうけした。
また神子地へやって来たゆう丹だったが、薪売りはまた馬鹿な船頭が来たので石を出し始めたところ、船に半分出したところで代官から出してはいけないとなった。代官が石を鑑定させたところ銀鉱だと分かったからである。
ゆう丹は仕方なく船半分の荷を積んで帰ったが、今度は博多を引き上げて大森へやってきて銀を掘ることにした。これが大森銀山のはじまりだという。
◆モチーフ分析
・船乗り、初夢をみる
・船乗り、縁起が悪いと思い、そのまま寝ている
・妻に夢の内容を打ち明ける
・妻、それは吉夢だと言う
・船乗り、出帆するが大風で流される
・船乗り、目的地に辿り着けず、神子地へ漂着する
・船の修理をしていると、薪売りが来る
・薪売りの薪に挟まっていた小石を薪の倍の値段で買う
・船一杯に小石を買い、博多へ帰る
・再度、神子地へやって来る
・小石を買いつけていると、船に半分で止められた
・代官が小石を鑑定させ、銀鉱石だと判明した
・船乗り、止むなく半分の荷で博多へ帰る
・船乗り、博多を引き上げて大森へ移住する
・大森銀山の元となった
◆行為項分析
S1:(S2+O1)
意思の主体者がS1であり、行為の主体者がS2、S2の行為の対象がO1である
S(サブジェクト:主体)
S1:船乗り
S2:妻
S3:薪売り
S4:代官
S5:鑑定者
O(オブジェクト:対象)
O1:夢
O2:博多
O3:神子地
O4:小石
O5:大森
O6:大森銀山
+:接
-:離
・船乗り、初夢をみる
(初夢)S1船乗り:S1船乗り+O1夢
・船乗り、縁起が悪いと思い、そのまま寝ている
(ふて寝)S1船乗り:S1船乗り-O1夢
・妻に夢の内容を打ち明ける
(説明)S1船乗り:S2妻+O1夢
・妻、それは吉夢だと言う
(解釈)S2妻:S2妻+O1夢
・船乗り、出帆するが大風で流される
(出帆)S1船乗り:S1船乗り-O2博多
・船乗り、目的地に辿り着けず、神子地へ漂着する
(漂着)S1船乗り:S1船乗り+O3神子地
・船の修理をしていると、薪売りが来る
(邂逅)S1船乗り:S1船乗り+S3薪売り
・薪売りの薪に挟まっていた小石を薪の倍の値段で買う
(購買)S1船乗り:S1船乗り+O4小石
・船一杯に小石を買い、博多へ帰る
(帰還)S1船乗り:S1船乗り+O2博多
・再度、神子地へやって来る
(再訪)S1船乗り:S1船乗り+O3神子地
・小石を買いつけていると、船に半分で止められた
(差し止め)S1船乗り:S1船乗り-O4小石
・代官が小石を鑑定させ、銀鉱石だと判明した
(判明)S4代官:S5鑑定者+O4小石
・船乗り、止むなく半分の荷で博多へ帰る
(帰還)S1船乗り:S1船乗り+O2博多
・船乗り、博多を引き上げて大森へ移住する
(移住)S1船乗り:S1船乗り+O5大森
・大森銀山の元となった
(開山)S4代官:S1船乗り+O6大森銀山
◆行為項モデル
送り手→(客体)→受け手
↑
補助者→(主体)←反対者
というモデルを構築するのですが、ここでこのモデルに一つの要素を付加します。
聴き手(関心)
↓
送り手→(客体)→受け手
↑
補助者→(主体)←反対者
この聴き手は筆者が独自に付加したものです。「浮布の池」で解説しています。客体は分析で使用したサブジェクトやオブジェクトとは限りません。むしろ主体のこうなって欲しいという願いと説明した方が分かりやすいかもしれません。
聴き手(初夢が示唆したものは何か)
↓
送り手(薪売り)→ 銀鉱石(客体)→受け手(船乗り)
↑
補助者(妻)→ 船乗り(主体)← 反対者(代官)
といった行為項モデルが作成できるでしょうか。船乗りは初夢を縁起の悪いものと考えますが、妻が別の解釈を与え考え直します。それから博多を出たところ神子地に漂着してしまい、そこで銀鉱石の存在に気づくという筋立てとなっています。
船乗り―妻、船乗り―薪売り、船乗り―代官、初夢―銀鉱石、出帆―漂流、博多―神子地、小石―銀鉱石、馬鹿―賢い、といった対立軸が見出せるでしょうか。無価値と思われたものに価値があり、それにいち早く気づくという点で、初夢/無価値/価値といった暗喩が同定できます。
◆関係分析
スーリオは演劇における登場人物の機能を六種に集約し占星術の記号で表記します。
♌しし座:主題の力(ヴェクトル)
☉太陽:価値、善
♁地球:善の潜在的獲得者
♂火星:対立者
♎てんびん座:審判者
☾月:援助者
という六つの機能が挙げられます。
☾は☾(♌)主題の援助者という風に表現されます。
☾(☉)☾(♁)☾(♂)☾(♎)もあり得ます。
一人の登場人物に二つまたは三つの星が該当することもあります。
これらを元に関係分析をすると、
船乗り♌♎♁―妻☾(♌)♎―薪売り♂☉―代官♎
といった風に表記できるでしょうか。妻は初夢の意味に気づくという点で、船乗りと代官は小石が銀鉱石であることに気づくという点で審判者♎と見なすことができるでしょうか。薪売りは小石を運んでくるという点で価値☉の運搬者となっています。
◆発想の飛躍
発想の飛躍は無価値と思われた小石が実は銀鉱石だったということでしょうか。「小石―初夢―銀鉱石」という図式です。
◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.62-64.
・『物語構造分析の理論と技法 CM・アニメ・コミック分析を例として』(高田明典, 大学教育出版, 2010)
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◆あらすじ
昔、徳蔵という猟師がいた。毎日山へ入って生計を立てていた。ある日山から帰りがけに友達に会った。友達は変わった話として、どこぞの女房が他所の男と親しくなって自分の夫を殺すらしいという話をした。特に疑問に思わなかった徳蔵は女房に鏡を買って帰った。家へ戻ると女房が間男と徳蔵を殺す算段をしていた。その場に踏み込んだ徳蔵は女房にこの鏡は権現さまから授かった鏡で良い事悪い事が分かる鏡だとかまをかけた。間男は逃げた。驚いた女房はこれまでのことを白状して詫びた。
そんな事があって徳蔵の鏡でみるとどんな事も分かると評判になった。その頃、村の庄屋で四百両が無くなった。そこで庄屋から徳蔵に呼び出しがかかった。庄屋はケチでろくに給金を払わないと評判が悪かったので、誰かが盗んだのではないかと噂がたった。引き受けた徳蔵は夜中にこっそり権現さまに参詣して、かくかくしかじかの事情で嘘をついているが、どうか願いを聞いて欲しいと祈った。すると、誰かがきざはし(段)を上ってきた。隠れてみていると庄屋の女中であった。女中は徳蔵には気づかず、掃除をしていて大金を見つけた。給金を払ってもらってないが老母を養わねばならないので、つい盗んでしまった。どうか自分が取ったということは分からぬように庄屋のところに戻る様にして欲しい。金はきざはしを上り詰めた所の椎の木の穴の中に入れておくと頼んで帰った。徳蔵はあくる朝庄屋へ四百両のありかを伝えた。そして給金の払いがよくないから先々よくないことが起きると話した。庄屋は心を入れ替え、これまでの給金を払った。
無くなった四百両が無事戻ってきたので徳蔵の評判はますます高くなった。そこへ代官から呼び出された。徳蔵は自分がでたらめなことを言っているのでお叱りを受けるのではないかとびくびくしながら出頭すると、代官も失せ物があるという話だった。請け給わった徳蔵だったが、今度は権現さまの機嫌を損じたものか、誰も現れなかった。
◆モチーフ分析
・昔、徳蔵という猟師がいた
・ある日、友達と会う
・友達からどこぞの女房が夫を殺そうとしているらしいと聞く
・徳蔵、鏡を買う
・家に帰ったところ、女房が間男と一緒にいた
・間男、逃げる
・徳蔵、魔法の鏡と嘘をつき、女房を謝罪させる
・このことが評判となる
・ある日、庄屋から盗まれた四百両のありかを探して欲しいと頼まれる
・徳蔵、権現様に参る
・すると、四百両を盗んだ女中が現れ、四百両のありかを漏らす
・それを聞いた徳蔵、庄屋に話す
・無事、四百両がみつかる
・ケチだった庄屋の給金払いがよくなる
・ある日、徳蔵は代官所から呼び出される
・嘘をついていることを叱られるのかと思いビクビクする
・代官から失せ物の相談を受ける
・請け負った徳蔵、権現様に参る
・しかし、誰も現れなかった
◆行為項分析
S1:(S2+O1)
意思の主体者がS1であり、行為の主体者がS2、S2の行為の対象がO1である
S(サブジェクト:主体)
S1:徳蔵
S2:友人
S3:女房
S4:間男
S5:村人
S6:庄屋
S7:権現様
S8:女中
S9:代官
O(オブジェクト:対象)
O1:鏡
O2:四百両
O3:失せ物
+:接
-:離
・昔、徳蔵という猟師がいた
(存在)S1徳蔵:S1徳蔵+X村
・ある日、友達と会う
(会合)S1徳蔵:S1徳蔵+S2友人
・友達からどこぞの女房が夫を殺そうとしているらしいと聞く
(噂)S1徳蔵:S1徳蔵+S2友人
・徳蔵、鏡を買う
(購入)S1徳蔵:S1徳蔵+O1鏡
・家に帰ったところ、女房が間男と一緒にいた
(遭遇)S1徳蔵:S3女房+S4間男
・間男、逃げる
(逃亡)S4間男:S4間男-S1徳蔵
・徳蔵、魔法の鏡と嘘をつき、女房を謝罪させる
(謝罪)S1徳蔵:S1徳蔵+S3女房
・このことが評判となる
(流布)S5村人:S1徳蔵+O1鏡
・ある日、庄屋から盗まれた四百両のありかを探して欲しいと頼まれる
(依頼)S6庄屋:S1徳蔵+O2四百両
・徳蔵、権現様に参る
(参拝)S1徳蔵:S1徳蔵+S7権現様
・すると、四百両を盗んだ女中が現れ、四百両のありかを漏らす
(告白)S8女中:S8女中+O2四百両
・それを聞いた徳蔵、庄屋に話す
(報告)S1徳蔵:S1徳蔵+S6庄屋
・無事、四百両がみつかる
(発見)S6庄屋:S6庄屋+O2四百両
・ケチだった庄屋の給金払いがよくなる
(改心)S6庄屋:S6庄屋+S8女中
・ある日、徳蔵は代官所から呼び出される
(参集)S9代官:S9代官+S1徳蔵
・嘘をついていることを叱られるのかと思いビクビクする
(不安)S1徳蔵:S1徳蔵-S9代官
・代官から失せ物の相談を受ける
(相談)S9代官:S1徳蔵+O3失せ物
・請け負った徳蔵、権現様に参る
(参拝)S1徳蔵:S1徳蔵+S7権現様
・しかし、誰も現れなかった
(不発)S1徳蔵:S1徳蔵-S7権現様
◆行為項モデル
送り手→(客体)→受け手
↑
補助者→(主体)←反対者
というモデルを構築するのですが、ここでこのモデルに一つの要素を付加します。
聴き手(関心)
↓
送り手→(客体)→受け手
↑
補助者→(主体)←反対者
この聴き手は筆者が独自に付加したものです。「浮布の池」で解説しています。客体は分析で使用したサブジェクトやオブジェクトとは限りません。むしろ主体のこうなって欲しいという願いと説明した方が分かりやすいかもしれません。
聴き手(徳蔵は間男を取り押さえられるか)
↓
送り手(徳蔵)→ 鏡(客体)→受け手(女房)
↑
補助者(友人)→ 徳蔵(主体)← 反対者(間男)
聴き手(徳蔵は四百両を発見できるか)
↓
送り手(徳蔵)→ 四百両(客体)→受け手(庄屋)
↑
補助者(権現様)→ 徳蔵(主体)← 反対者(なし)
聴き手(徳蔵は失せ物を発見できるか)
↓
送り手(徳蔵)→ 失せ物(客体)→受け手(代官)
↑
補助者(なし)→ 徳蔵(主体)← 反対者(権現様)
といった三つの行為項モデルが作成できるでしょうか。徳蔵は鏡を魔法の鏡と偽ることで女房に謝罪させます。が、それが評判となってしまい庄屋から消えた四百両の捜索を依頼されてしまいます。幸い、権現様の助けか、女中が四百両の在りかを告白するのを耳にしたことにより事件を解決します。しかし、更に代官に失せ物の捜索を依頼されてしまいます。今度は権現様の助けもなく捜索は失敗に終わってしまいます。
徳蔵―間男、間男―女房、徳蔵―女房、徳蔵―庄屋、徳蔵―権現様、徳蔵―女中、徳蔵―代官といった多数の対立軸が見出せます。権現様/幸運といった暗喩が同定できます。
◆関係分析
スーリオは演劇における登場人物の機能を六種に集約し占星術の記号で表記します。
♌しし座:主題の力(ヴェクトル)
☉太陽:価値、善
♁地球:善の潜在的獲得者
♂火星:対立者
♎てんびん座:審判者
☾月:援助者
という六つの機能が挙げられます。
☾は☾(♌)主題の援助者という風に表現されます。
☾(☉)☾(♁)☾(♂)☾(♎)もあり得ます。
一人の登場人物に二つまたは三つの星が該当することもあります。
これらを元に関係分析をすると、
1. 徳蔵♌♁―間男♂―女房☉☾(♂)―友人☾(♌)
2. 徳蔵♌―権現様☾(♌)―庄屋♎♁―女中♂
3. 徳蔵♌―代官♎♁
といった風に表記できるでしょうか。徳蔵と女房との夫婦関係を価値☉と考えます。庄屋と代官は失せ物☉の持ち主なので享受者♁また審判者♎としました。権現様は四百両の失せ物の際は徳蔵の援助者☾となりますが、代官の場合は援助者☾となりません。
◆発想の飛躍
発想の飛躍は何でも見通す鏡だと偽ることでしょうか。「徳蔵―鏡―権現様」の図式です。また、最後は権現様の加護がなかったこともそうでしょうか。「権現様―徳蔵」の図式です。
◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.58-61.
・『物語構造分析の理論と技法 CM・アニメ・コミック分析を例として』(高田明典, 大学教育出版, 2010)
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2024年3月は数字が下がっている。Googleの検索アルゴリズム変更の影響もあるか。が、数年前の水準に戻っただけとも言える。
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