メモをとる際は自分の言葉で書き直す――ズンク・アーレンス『TAKE NOTES! メモで、あなただけのアウトプットが自然にできるようになる』
ズンク・アーレンス『TAKE NOTES! メモで、あなただけのアウトプットが自然にできるようになる』(二木夢子/訳)を読む。ドイツの著名な社会学者であるニクラス・ルーマンが用いたツェッテルカステンというカードを用いた情報管理法について解説したもの。ルーマンは生涯で58冊の著書と膨大な遺稿を残した。その生産性を支えたのがツェッテルカステンである。現代、ZettelkastenはObsidianというアプリに結実した。ノートにメモをとるツールである。
一つのノート自体はプレーンなテキストファイルである。それにマークダウン記号を付加していくことでテキストを修飾したり階層性を持たせたりする。最大の特徴はノート間にリンクを貼る機能でキーワードを[[ ]]で括ることでリンクが生成される。括るとアンダーラインに表示が変わるのでそれをクリックすると該当のキーワードをタイトルとしたノートが新規作成されるという仕組みである。これでノート間にリンクが張り巡らされネットワーク状の構造を持つことになる。
ルーマンは膨大な紙のカードで情報を管理していたが、現在ではソフトウェア上で実現できるようになった。かなり敷居が下がったと思われる。
著者及びルーマンはメモはそれが書かれた文脈とは異なる文脈で意味を持つことがあるとしている。それに気づくことが創造性に繋がるという主張である。
また、創造性はIQの高低とは相関関係にないとしている(※IQ120以上の場合かもしれない)。
本書で強調されるのはメモをとる際、自分の言葉で書き直すことである。丸写しは否定される。書き直すことが理解に繋がるという主張である。
実際そうだと思う。ただ、例えば法律だと自分の言葉で置き換えることが難しく感じる。
本書は主に卒論や博士論文の執筆を想定して書かれている。早い段階でツェッテルカステンの技法を取り入れれば生産性を上げ創造性を発揮することが可能になると主張している。
Obsidianを試用してみると、パソコンスキルの高い人向けという印象である。筆者はよりシンプルな類似のWEBサービスであるScrapboxを利用している。
ルーマンの著作を読んだことがあるが、非常に晦渋で筆者にはとても理解できる内容ではなかった。その点で引っかかりは感じる。
| 固定リンク
« KJ法を否定――立花隆『「知」のソフトウェア 情報のインプット&アウトプット』 | トップページ | いきなり中級者向け環境構築法が解説される――Pouhon「Obsidianでつなげる情報管理術」 »
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 入力したテキストが消えた?(2024.12.07)
- ようやく読了する――野口悠紀雄『ブロックチェーン革命』(2024.10.15)
- 創造も守破離――佐宗邦威『模倣と創造 13歳からのクリエイティブの教科書』(2024.10.09)
- 初心者向け公式マニュアル――樋口耕一、中村康則、周景龍『動かして学ぶ! はじめてのテキストマイニング フリー・ソフトウェアを用いた自由記述の計量テキスト分析』(2024.06.24)
- 浜田駅裏のジャストも閉店に(2024.06.22)