高田本、二周目読了:行為項分析、これからの方針
高田明典『物語構造分析の理論と技法 CM・アニメ・コミック分析を例として』を読む。二周目。この本を買ったのは2023年2月24日なので、「昔話はなぜ面白いのか」上下巻より後で読んだことになる。
第4章が物語論概観となっている。下記の通りである。
第4章 物語論概観
1. 概要―物語とは何か―
2. プロップの機能分析
3. バルトの物語構造分析
4. グレマスの行為項分析
5. スーリオの関係分析
6. ジュネットの「物語行為」
7. ブレモンのシーケンス分析
8. トドロフ・前田のシーケンス分析
プロップについては「昔話の形態学」を読了しており前著で反映させている。
バルトについては「物語の構造分析」を読了している。ただ、バルトの分析手法を詳細に解説した本は邦訳されていないとのことである。次の行為項という概念については「物語の構造分析」で知った。それで高田本にたどり着いたのかもしれない。
グレマスについては「構造意味論 方法の探求」「意味について」の二冊を読了した。ただ、非常に難解な本で理解したとは言い難い。ちなみに読むなら「構造意味論 方法の探求」→「意味について」の順がいいと思う。
スーリオについては「二十万の演劇状況」を発注・手元に届いたところである。
ジュネットについてはナラトロジーと思われるので、長編小説や戯曲の分析中心になるのではと予想されるので今回は外した。
ブレモンについては「物語のメッセージ」を読了した。この本はプロップに影響を受けつつ、物語には複数の筋が同時並行的に進行していると分析している。なので一部取り入れるかもしれない。
トドロフについては高田本の参考文献一覧に列挙されておらず、また邦訳された本が多いためどの本を読めばよいのか分からない。おそらく「小説の記号学―文学と意味作用」か「幻想文学―構造と機能」ではないか。
前田愛「文学テクスト入門」については未発注である。トドロフ・前田の分析もおそらく長編小説の分析に関するものと思われるので今回は外す予定。
ということで、今年は高田本に依拠してグレマスの行為項分析、そして可能であればスーリオの関係分析を援用して昔話/伝説の分析を行ってみたいと思っている。
なお、第3章2項でレヴィ=ストロースの神話分析について取り上げられている。これは類話を収集して分析するもののようで今回は類話の分析ではないので外す。この内シェーマ分析については高田本の第3部 応用編でグレマスの行為項分析に応用されていると考えられるので、そちらも試みてみたい。
「構造人類学」については未読。「神話論理Ⅰ 生のものと火を通したもの」は読了している。「アスディワル武勲詩」の古本を発注。
第7章1項ではユングの元型理論が取り上げられている。未来社「石見の民話」では当てはまる事例が極わずかしかないと思われる。その都度取り上げたい。河合隼雄の昔話分析本については読了している。
高田本は物語の分析について幅広い理論を取り上げ解説している。高価だったり現在では入手しづらい理論書も多い。そのため、講義での理解度は7割の学生が7割程度の理解度といった風に書かれている。
「昔話はなぜ面白いのか」上下巻を一通り終えた段階で読んだので既にモチーフ分析は行っていたのだが、今回それに加えて行為項分析を試行してみようと考えた。行為項分析については高田式でのやり方を踏襲した。
行為項モデルはこれ以上シンプルにはできないかと思われるので、アウトプットとしては適当なのではないかと考えている。
前著では面白さの泉源を発想の飛躍と考えたのだが、今回はもう少し違う視点が得られないかなと思っている。
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