この人物が若者の代表者? 古市憲寿「絶望の国の幸福な若者たち」
古市憲寿「絶望の国の幸福な若者たち」を読む。
初手で「今の若者は幸せ」と逆張りをかまし、以降脚注で冷笑するというスタイル。コンサマトリー(自己充足的)という概念が提示されるのは全体の1/3ほどが経過してようやく。
初手で逆張りをかますので論旨が捻じれてしまっている。そこが今どきの若者らしいのかもしれない。でも著者も2024年現在では青年とも言えない年齢に差し掛かっている。
件のアンケートでは「幸福」ですかと訊かれて「現時点で嫌なことはありません」と答えているだけなのではないか。
日本の将来はお先真っ暗と今現在満たされているのはなんら矛盾しない。いわゆる茹でガエル状態なのに気づいていないだけである。誰かが「若年世代は茹でガエルだ」と指摘せねばならなかったのではないか(※若年世代だけでなく日本人全体かもしれないが)。将来、消費税が15%や20%となってようやく気づくのである。急激な円安で気づいたかもしれないが。
若者が車離れしたのは単純に車両価格が高くなったからである。今だと軽自動車でも売れ筋は新車で200万円からという時代である。90年代初めだとトヨタ・カローラでも150万円以下で買えたはず。要するに先進安全装備が標準装備となったのでその分だけ高くなってしまったのである。
若手の研究者の本も読まないとと思って読んでみたのだが、逆張りをかまして捻じれた論旨を展開するスタイル、耳目を集めることはできても、これでは大成できないだろう。本書執筆当時は若手代表者のポジションで重宝されたのだろう。人生の前半はイージーモードだったかもしれないが、後半もそうだとは限らない。
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