神話分析の具体例――レヴィ=ストロース『アスディワル武勲詩』
レヴィ=ストロース『アスディワル武勲詩』(西澤文昭/訳)を読む。レヴィ=ストロース『神話論理』第一巻は読んだ。面白い内容だったが、どうやって分析しているのかは皆目見当がつかなかった。
高田明典『物語構造分析の理論と技法 CM・アニメ・コミック分析を例として』でレヴィ=ストロースの分析手法は『アスディワル武勲詩』で紹介されているとあったので読んでみたもの。
分析の対象となる神話は北米の先住民のもの。現在のカナダの太平洋岸に位置する。当該の部族たちは狩猟採集民で二つの川の間を移動して生活していた。農耕は行っていなかったので冬季にはしばしば飢餓に陥った。飢えを救ったのは冬季に川を遡上してくるキャンドル・フィッシュと呼ばれる魚だった。夏にはサケ漁が行われた。捕獲されたサケは燻製にされた。食肉の対象となる動物として熊、山羊、セイウチなどが登場する。部族は母系社会だが神話では主人公の家に妻と子が居住する形態も見られる。
主人公は狩猟の旅を続けながら天上と地下世界にも赴く。天上には熊に変化した女に誘われ、そこで試練を乗り越え結婚し魔法の道具を授かる。しかし、地上に帰還し何人かの女性と結婚を繰り返す。また、地下世界では獲物であるセイウチに助けられる。あるとき魔法の道具を忘れた主人公は動けなくなってしまい、石と化してしまう……といった内容である。
レヴィ=ストロースはこれらの類話群から二項対立的な要素を抽出し、シェーマ(スキーマ)要するに概念として二次元で表記する。そこまでは理解できるのだが、更に概念操作、変形を加える。ここが神話分析の肝と思われるが自分にはよく理解できなかった。
解説によると、〔A:B〕:〔A+B:C〕となるらしい。
レヴィ=ストロースにはこういった他の学者とは異なる論理の飛躍とでもいうか特異な概念操作があって特徴たらしめているようだ。
ChatGPT3.5に質問してみると、類話間で概念が変化して伝えられることを指していると解釈されているようだ。こういう例は無いと思うが、ジャガーがピューマになったりとか。パラディグムというのだろうか。
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