内向型であることと才能の有無は無関係――中村あやえもん「内向型の生き方戦略――『社会から出て、境地を開拓する』
中村あやえもん「内向型の生き方戦略――『社会から出て、境地を開拓する』という生き方提案」を読む。著者は心理学や精神医学とは関係のない人、クリエイティブ職の人らしい。
性格はおおざっぱに外向型と内向型とに分けられるが、本書では外向型を社会維持型、内向型を境地開拓型と定義する。社会維持型と境地開拓型でおよそ8:2の割合と見積もる。内向型の方が少数派なのである。ここに内向型の生きづらさが生じる。
境地を開拓するとは孤独を不安に思わず何かに没頭する、で人によっては大きな成果を挙げるというタイプである。クリエイティブな職種に多いタイプだろう。
境地開拓型は刺激に敏感であるとする。要するにストレスに弱いのである。それは生得的なもので後天的に変えられるものではないから無理することはないよという内容である。
ゆとり教育が失敗したのは、ゆとり教育が向いていたのは全体の二割に過ぎない境地開拓型に適した教育法だったからだと指摘している。境地開拓型の子は放っておいても勝手に自分の興味を追求するが、社会維持型の子は放っておくと遊んでしまうのだ。
本書の欠点は内向型であることと才能の有無とは無関係であることだ。スティーブ・ジョブズのような人は数十億人に一人の存在である。内向型の大半の人は特にこれといった才能のない人だろう。
僕は内向型だが突出した能力はない。特にクリエイティブな能力はない。このブログでは小難しいことを書いているが、それは表面的にそう見えるだけでやっていること自体は説明すれば高校生でもできることである。実際、ネットに掲示された論文を読むと自分は大学院には入れないなと思う。
「一体何だったら適性があるのだろう?」と長年苦しんでいたが、結局のところ誰でも使えるツール(パソコン、デジカメ等)を使って足で稼ぐというスタイルになった。
なお、別に特別な能力でなくてもいいのである。たとえば僕の母は内向型の人間だったが料理は毎日作ってくれた。揚げ物は冷凍食品ではなかった。専業主婦だからできたことだが、料理というスキルは有していたのである。僕は料理すらできない。鍋物くらいである。
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