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2024年3月28日 (木)

つまるところコミュ力――斎藤環『承認をめぐる病』

斎藤環『承認をめぐる病』を読む。多岐に渡る内容なので要約は難しい。主題としては「承認」と「キャラ」だろうか。現代の中学校や高校では自然とクラスの中でキャラづけがされてそれを演じることが求められてしまう。ペルソナの仮面が外せなくなってしまうといったところだろうか。それがスクールカースト化につながっていると指摘する。

日本でもスクールカーストってリアルに存在するの? という驚きがある。僕の時代でも外向的なタイプと内向的なタイプとで自然と分かれてはいたが。公立の中学だと多様な生徒が集まるが、高校は偏差値である程度輪切りにされているだろう。割と近いもの同士なはずなのにと思う。

著者は熱心にテレビ版エヴァンゲリオンに言及されるのでエヴァ直撃世代なのかと思って奥付を確認すると庵野監督と同世代の人だった。まあ、症例として典型的な事例が三つ揃った稀有な事例なのだろう。『シン・エヴァンゲリヲン』に関しては著者の望む話の落とし方ではなかったかもしれない。

ポストモダンに関する議論は見直す必要があると思う。ここ二十年ほど新自由主義という新たな大きな物語が世界を席巻しているはずなのだ。大きな物語が消失したというのは冷戦崩壊直後のわずかな期間に過ぎないはずだ。

あと、サブカル評論家としての東浩紀の議論、彼はメタフィクショナルな構造を持つ作品だけを好んで称賛する傾向があるので、そこから漏れてしまう時代を象徴する重要作品も出てきてしまっていることは指摘しておくべきかもしれない。

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