高田式行為項分析ができないか
見田宗弘「ごんは、なぜ、土間に栗を置いたのか?―グレマス『行為項モデル』に基づく『ごんぎつね』の解釈―」と高田明典『物語構造分析の理論と技法 CM・アニメ・コミック分析を例として』の行為項に関する部分を再読する。
行為項とはグレマスというフランスの構造主義記号学者が提示した概念で行為者とも訳される。グレマスの著作は『構造意味論 方法の探求』『意味について』の二冊を読んだ。非常に難解な本で(※フランス人自身が難解と言っているらしい)これに何の意味があるのかよく分からなかった。記号論の記号が使われているのだが独自に拡張されていてパソコンで表記するのはそのままでは難しい。
高田本ではプロップの提示した物語の機能(ファンクション)というかツークというかを関数で表し、関数を入れ子にすることでそこから論理関係を見出している。また、記号を∪∩から+-と変更し、手を入れることで分析しやすくしている。
まあ、物語を関数で表しても微分できる訳じゃないしなとも思うのだが。
見田論文は『ごんぎつね』を高田本で解説された手法で行為項分析している。高田式行為項分析としようか。論文末に行為項分析の具体的内容が示されているのだが、記号だけを見せられても「これは分析した本人しか意味がとれないだろう」となってしまう。
Sがサブジェクト(主体)、Oがオブジェクト(対象)、+がポジティブ、-がネガティブくらいの想像はつくのだが、記号の羅列だけでは何のことか分からない。
……ということで、当ブログには未来社『石見の民話』をモチーフ分析した記事がある。それらである程度下処理はできているので、それらをベースに実際に行為項分析ができないかと考えているところである。ネタ切れの今、できることと言ったらこれくらいしかない。
<追記 2025.08>
我流ではあるのだが、記号にキャプション(あるいはラベル)を付加して記述することにした。
(救う)S1男:S1男+S2鶴
(来訪)S2鶴:S2女房+S1男
という風に、例えば異類婚姻譚だと同じ主体で異なる姿をとることがままあるからである。……というか、キャプションを付加しないと、書いた本人でもしばらくしたら忘れて何のことか分からなくなってしまうからでもある。
伝説だとオブジェクトが思いの外多くなったりする。一々細かく記述する必要もないのかもしれないが、本文あるいは粗筋をそのまま式として記述しようとすると困難さを感じるはずである。僕自身は(過去に分析したものが流用できるからだが)一旦モチーフ分析したものをベースに行為項分析の式に置き換えていった。かなり冗長な記述となってしまったが。
行為項って電算処理と相性がいいのだろうかと考えたりするが、僕自身はそういったスキルがないため本当のところは理解できていない。会計システムの仕訳処理で+-で記述されているケースがあると聞いたことはあるけれど、ソースコードを実際に確認した訳ではない。
高田本では行為項モデルは立方体で表現されている。これは高田氏独自の発案によるものだろう。線分の他に面も加わり、より多面的な考察が可能となる。描画ツールが使いこなせる人ならば描画した立方体を回転させてあれこれ考えることも可能だろう。
ただ、僕自身は描画ツールは上手く扱えなくて、手書きなら描けなくもないのだけど、立方体でのモデルの記述は断念した。代わりに見田「ごんぎつね」論文の行為項モデルを参照している。
これも(客体)に相当する部分が客体とは限らなくなっていると指摘することはできる。むしろ行為というか動詞の方がしっくりくるのである。
で、本来ならモデルは一話につき一つでいいはずなのだが、いつのまにか複数化して物語の推移を記述するものと変化してしまった。
なので、もしもグレマスが見たら「これは私のやり方ではない」と言うかもしれないが、そもそも意図的に分かりにくく書いた方が悪いとも言えなくもない。
グレマスは登場人物の意思が物語を駆動すると考えていたように感じられる。が、実際には気象の変化や時間の経過による場面転換を割愛していいのだろうかとも考えている。また、昔話だと冒頭の状況を説明する語りに重要な情報が含まれることもままある。僕自身はそれらも盛り込んでしまったため、大幅に冗長な記述となってしまった。
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