従来の再開発モデルが成り立たなくなっている
NHK+で「NHKスペシャル まちづくりの未来 ~人口減少時代の再開発は~」を見る。冒頭で秋葉原の電気街が紹介される。建物が老朽化し、高層ビル化の計画が立てられているとのこと。秋葉原の魅力は雑居ビルに個人商店が入居した雑然とした感覚にあるので高層ビル化には反対意見もあるとのこと。
高層ビルを建て、新たに増えたフロアからの収益と補助金とで再開発費用を賄うのが現在の再開発の主流だが、コロナ禍以降、入居率の低下と世界的な資材費の高騰とで計画の見直しを迫られている都市も多いとのこと。
福岡市は九州一の都市としてアジアの金融センターとしての地位を確立することを狙っている。一方で、東京の湾岸エリアでは高層ビルの入居率の低下に苦しんでいる。福井市も住民主導で進む地区の再開発は資材の高騰で計画の見直しを余儀なくされた。
一方、神戸市では三宮周辺にタワーマンションの建設を規制する条例を施行した。阪神淡路大震災の経験から一極集中を避け面での再開発を目指している。市長は人口減少は避けられない流れとし、短期的な人口増加策より長期的な視点で取り組むべきとする。
下北沢は再開発の計画が持ち上がる度に住民の反対運動が起こる町だが、鉄道の地下化による再開発が進んでいる。負担できる範囲でのテナント料に合わせた小さな面積の店舗が多く設けられている。
岩手県紫波町では日本一高価な雪捨て場と揶揄された町有地にまずサッカー場や役所や図書館といった人が集まる施設を建設し、それからテナントを募った。結果、年間100万人の訪問者が来る地区となった。地価も30%上昇した。
……といった事例が紹介された。経済合理性で言うとコンパクトシティ化なのだが、短期的にはそこに住む住民がいて居住の自由もある。短期的な視点と長期的な視点をどう結合させるかが問題とする、また高度成長期から開発に対する基本的な方針が変わっていないとする解説員がいた。他の解説員は再開発がブラックボックス化していて住民の多様な声が反映されていない。反映されるように変えていくべきだとした。また、床に対する需要が減っていくのだから減築利用も進めていくべきだとした。別の解説員は若者に自分たちの力で社会が変わっていく体験をさせたいと語っていた。
……以前、経済系の週刊誌で読んだのだが、不動産業の人たちはタワーマンションをお勧めしていなかった。災害に弱いといった理由からだろう。タワーマンションに住む人は要するに通勤時間を減らしたいのだろうから一概に言い切れるものではないが。
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