カードをデジタル化して思考する――五藤隆介『アトミック・シンキング:書いて考える、ノートと思考の整理術』
五藤隆介『アトミック・シンキング:書いて考える、ノートと思考の整理術』を読む。結論から書くと、著者はノートをつけるのにObsidianというマークダウン記号を用いるエディタを利用している。要するに、ノート間にリンクを張ることができる執筆ツールである。
相互リンクしたノートの数が増え成長していくとやがてネットワーク状の構造を持つことになる。個々のノートは断片的な情報でしかないが、それらがリンクされると何らかの意味が浮かび上がってくる可能性がある。そういった着想を得るための手法である。
アトミックとはatom(原子)から。ここではそれ以上分解できないというニュアンス。一つのノートには一つの事を書くという原則を立てる。これはフィールドワークを行う研究者が紙のカードに情報を書き込んで並べ替えることで思考していたことに由来する。
著者はObsidianを使っているが、これは理系の素養を持った人向けという印象がある。筆者はScrapboxというWEBサービスを利用している。こちらはシンプルな造りなので入りやすいだろう。
ちなみにニクラス・ルーマンの著作を読んだことがあるが、読者が100人いたらその内の数人が理解できるかといったレベルの晦渋さだと思う。というか記述の仕方が平板というか他人に理解させるように書かれていないという印象である。
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