著者自身が担い手――橋本幸作「豊前国神楽考」
橋本幸作「豊前国神楽考」を読む。豊前国(北九州市の一部~宇佐市)にまたがる神楽を取り扱ったもの。地割(五行神楽)、先駈(ミサキ)、天岩戸、大蛇神楽などは演劇化されているが、それ以外の演目は儀式舞と言っていいだろう。中国地方に比べて演劇化の度合いが少なめになっている。湯立神楽も重要視されている。
明治時代以降の農民神楽について古老に取材しており、人間関係などが克明に記されている。江戸時代の神職神楽については言及が少ない。既に廃絶した神楽講も少なからずあるようだが、丹念に取材されている。演目解説も祝詞が掲載されており、詳しく分かる。みさき神楽は他所の荒神神楽とほぼ同じといっていいだろう。湯立神楽の詳細も分かる。
著者自身が神楽の担い手であり、そういう意味では網羅的な内容となっている。専門の学者ではないため、理論的な考察はほとんど成されていない。
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