論争発生――斎藤英喜, 井上隆弘/編『神楽と祭文の中世 変容する信仰のかたち』
斎藤英喜, 井上隆弘/編『神楽と祭文の中世 変容する信仰のかたち』を読む。祭文を手がかりに中世の神楽を考察した論考集。神楽の史料は江戸時代に唯一神道流に改訂されたものがほとんどで、それ以前の両部神道的な史料は限られている。その史料が残る奥三河の花祭や備後荒神神楽、土佐のいざなぎ流、南九州の神楽、対馬の神楽などが取り上げられる。
ここで注意しなければならないのは、『神楽の中世―宗教芸能の地平へ』という本に収録された鈴木正崇「神楽研究の再構築へ向けて」という論文である。鈴木氏は本書の編者である斎藤、井上氏を激しく批判している。一つの論争の発生である。
これは本書の論文が間違っているという訳ではないのだが、両部神道の史料にしても実際に残されたのは近世初期の史料というパターンが多く、そのまま中世に遡るのは問題ではないかという問題提起である。
鈴木氏と斎藤、井上氏の論争は今後に要注目。
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