平成という空虚――東浩紀「忘却にあらがう 平成から令和へ」
東浩紀「忘却にあらがう 平成から令和へ」を読む。朝日新聞系の雑誌AERAに連載されたコラムをまとめたもの。抽象的な思考をよくする著者が時事問題にとり組んでいる。著者の政治的なスタンスがよく現れていると思う。非自民非共産でリベラルな中道。連載時期的にSNSの社会的影響力が示されている。当初は期待をもって受け止められたSNSだが、実際にはポピュリズムとの相性がよかったことが明らかとされる。最後は「平成という病」という論考で締め括られている。平成とは祭りの時代であり、残されたものは空虚であった。平成の三十年と共に歩んだ思想家・批評家としての徒労感が率直に告白されている。まあ、東氏が世界を変えられると思ったのは氏が知的エリートであるからであるが。
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