厳しい批判――『神楽の中世―宗教芸能の地平へ』
『神楽の中世―宗教芸能の地平へ』(山本ひろ子、松尾恒一、福田晃/編)を読む。タイトル通り、中世の神楽をテーマとした本である。中世の神楽史料は乏しく、諸国一宮などの史料から神楽像を組み立てている。松江の佐陀神社も取り上げられている。
読んでいて驚いたのは、鈴木正崇「神楽研究の再構築へ向けて」という論文である。本論文では近世前期の史料から中世の神楽を照射することは危険だとして斎藤英喜氏や井上隆弘氏らを厳しく批判している。また、その批判は岩田勝、牛尾三千夫、石塚尊俊らにまで及ぶ。言ってしまえば構築主義的なスタンスである。
「神楽と文芸(総論)」という電子書籍を書いたのだけど、正直、これを読んでからの方が良かったなと思う。2021年5月に初版発行なので、読む機会はあったのだが、先延ばしにしていたらこれである。
一宮というと、石見国の一宮は大田市の物部神社だが、物部神社の神楽については聞いたことがない。出雲に近いので、出雲神楽に近いのではないかと思われるが、史料が残されていないのか。
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