アナーキー 上野千鶴子「近代家族の成立と終焉」
上野千鶴子「近代家族の成立と終焉」(新版)を読む。著者はファインマンに代弁させる形で婚姻制度の廃止、家族の解体を唱える。法的関係については市民法で代替させるというものである。しかし、そんなことをしたら、これまで100年以上に渡って蓄積されてきた法や判例が灰燼に帰す。もしそうなったら損をするのは女性の方の可能性も高いと思われる。そして婚姻関係に入る際に分厚い契約書を交わすということになる。全くの無駄である。
本書は1990年代に出版されたものに新しい論文を加えて出版した新版である。90年代から夫婦別姓は議論になっていたが、今だ決着をみていない。婚姻は未開部族にもあり、時代によってとる形は異なるが今日まで継続してきたものである。それを解体するというのはアナーキーである。ポルポトとどこが違うのか。これは著者に限った話ではなく著述家に見られる傾向だが、法に無知と言わざるを得ない。ちなみにファインマンは法学部教授だとのこと。
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