「選択と集中」は勝利の方程式ではない――増田寛也「地方消滅――東京一極集中が招く人口急減」
増田寛也「地方消滅――東京一極集中が招く人口急減」を読む。この本(電子書籍版)が刊行されたのは2015年である。文中の記述から書籍版は2014年頃出版ではないかと思われるが、2023年の今、既に8年以上が経過している訳である。2040年までは17年しかなく、具体的に想像のつく年代として視野に入ってくる。
地方消滅とあるのは、2040年に20~39歳の女性が50%以上減少する市区町村を意味する。巻末に全国各市区町村のデータが掲載されているが、惨憺たる数字である。人口再生産の基板たる若年女性が半減してしまうのである。
例えば僕の出身地である島根県浜田市だと、2010年の若年女性人口が5766人、2040年では2758人と-52.2%の減少となる。ちなみに今住んでいる横浜市都筑区は13.4%の増加となる。
出生率は沖縄の1.94から東京の1.13まで幅がある。東京が第二子をもうけ難い地域であるとは知らなかった。希望出生率は2.0を越えているが、それを阻害している要因が都市部にはあるということだ。
地方から東京への人口流入が止まらない。コロナ禍で出超となったが、2022年には入超となっている。本書では地域中核都市が人口のダムとなって、東京への人口流入を防ぐべきであるとしている。そのためには均衡な国土の発展ではなく、選択と集中が必要であるとしている。
この報告は増田レポートと呼ばれているが、他の新書を読むと選択と集中に懐疑的な論調も見られた。人口減対策として人々の活動動線集約を図るコンパクトシティ化が挙げられるが、限界集落で一軒家に住むお婆さんの人口集積地帯への移住ではなく、そこで最期を看取ってあげましょう的な論調である。
<追記 2026.01>
ただ、「選択と集中」という用語は本来は企業の事業ポートフォリオをどうしていくかという文脈で用いられたものだ。不採算部門を切り離して業績を回復させ株価を上げる。そしてその株を売って高利回りの売却益を得る、つまり株主の論理なのである。
この「選択と集中」は不思議なほど強い説得力を持つ。だが、かつて大艦巨砲主義が航空母艦の登場で一瞬にして過去のものとなったように局面が変われば最善手だったはずのものが悪手となってしまうリスクもはらんでいる。勝利の方程式では決してない。
なのにどういう訳か文脈が等閑視されて政治の世界に持ち込まれてしまった……といったところか。政治家や官僚ですら疑うことなく口にしている訳だから。
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