盛りだくさん――高田明典「物語構造分析の理論と技法 CM・アニメ・コミック分析を例として」
高田明典「物語構造分析の理論と技法 CM・アニメ・コミック分析を例として」を読む。この本では様々な分析手法が紹介される盛りだくさんの内容となっている。それだけに真面目にこの本に取り組むと難解な理論書を色々と読む必要が生じてくるし、七割の生徒が七割くらいの理解度というのも分かる。多くの理論書が思考の過程を記述していない(故に難解となる)という問題はこの本である程度解消されるだろう。
個人的にはグレマスの行為項分析はS1、S2、S3等と記号のみで表記するのでなく、その指示対象も記述して欲しかった。記号だけだと読んでいるだけでは頭に入らないのである。なお、グレマスの分析が簡略化され∪が+に、∩が―に表記されている。グレマスの記号の使用の仕方には論理学と異なるロジックが採用されているものと思われるので、高田説の方が理解し易いだろう。
また、名人芸的と言われるレヴィ=ストロースの神話分析も解説して欲しかった。
グレマスの行為項分析サンプル
事例:アンパンマン
・食品を模したキャラクターが登場
・ドキンちゃんがおねだりする
・バイキンマンがその食品を不正な方法を用いて入手する
・アンパンマンが救援しようとするが失敗する。「顔が汚れて力が出ない」という状態になる
・さらにドキンちゃんがおねだりをする
・バイキンマンがさらに不正を働こうとする
・アンパンマンは救援しようとし、先ほどと同様に「顔が汚れて力が出ない」という状況になる
・ジャムおじさんが「新しい顔」を焼いてくれる
・「アンパンチ」による撃退
・「バイバイキーン」と叫びながら、バイキンマンとドキンちゃんは逃げていく
・食品キャラが村に到達する
・食品キャラが食品をみんなに振る舞う
S1:食品キャラ
S2:ドキンちゃん
S3:バイキンマン
S4:ジャムおじさん
S5:アンパンマン
O1:村
O2:顔の汚れ
O3:力を出さないこと
O4:新しい顔
Sn:登場人物
On:対象
+:付く
ー:離れる
S1:(S2+O1)
意思の主体者がS1であり、行為の主体者がS2、S2の行為の対象がO1である
(来訪)X1:S1食品キャラ+O1村
(欲求)S2ドキンちゃん:S2ドキンちゃん+S1食品キャラ
(入手)S2ドキンちゃん:S3バイキンマン+S1食品キャラ
(制止)S5アンパンマン:S5アンパンマン-S3バイキンマン
(汚濁)S3バイキンマン:S5アンパンマン+O2顔の汚れ
(妨害)S3バイキンマン:S5アンパンマン-O3力を出さないこと
(欲求)S2ドキンちゃん:S2ドキンちゃん+S1食品キャラ
(入手)S2ドキンちゃん:S3バイキンマン+S1食品キャラ
(制止)S5アンパンマン:S5アンパンマン‐S3バイキンマン
(汚濁)S3バイキンマン:S5アンパンマン+O2顔の汚れ
(妨害)S3バイキンマン:S5アンパンマン‐O3力を出さないこと
(復活)S4ジャムおじさん:S5アンパンマン+O4新しい顔
(制止)S5アンパンマン:S5アンパンマン‐S3バイキンマン
(排除)S5アンパンマン:S3バイキンマン‐O1村
(排除)S5アンパンマン:S2ドキンちゃん‐O1村
(復旧)S4ジャムおじさん:S1食品キャラ+O1村
(獲得)S1食品キャラ:S6+S1食品キャラ
※S6は村人か
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