馬鹿むこ――モチーフ分析
◆あらすじ
昔、馬鹿な聟がいた。あるとき嫁さんの親元へ行ったら団子をこしらえてご馳走した。聟は団子を食べたのは初めてで、あまりに美味かったので腹いっぱい食べた。そして家へ帰ったらこしらえてもらおうと思って、これは大変美味いものだが、何というものかのと尋ねた。これは団子というものだとお母さんがいった。団子、団子と言って聟はしきりにうなずいていたが、忘れてはいけないと思って、帰る道々で団子、団子と言いながら歩いた。家の近くまで帰ったとき。小さな溝があった。聟はうんとこしょと言って飛び渡った。それから今度はうんとこしょ、うんとこしょと言いながら帰った。聟は家に帰ると早速嫁さんに、うんとこしょをこしらえてくれと言った。嫁さんは何のことか分からないので、うんとこしょとは何かと尋ねた。今日お前のところへ行ったら、お母さんがこしえらえてご馳走しなさった。とても美味かったからこしらえてくれと聟は言った。それでもうんとこしょと言っても何やら分からないと嫁さんが言うと、分からないことはない。すぐこしらえよと聟は言った。それでも嫁さんは分からないのでどうしようもない。いくら聞いても分からないので押問答をする内に聟は腹を立てて、そこにあった火吹竹で嫁さんの頭を叩いた。嫁さんはびっくりして額を押さえた。額はみるみる内に団子の様に腫れ上がった。何を無茶なことをするのか。これを見なさい。団子のようなこぶが出来たと嫁さんが言うと、おう、そうだ、団子だった。すぐ団子をこしらえてくれと聟は言った。
◆モチーフ分析
・馬鹿な聟がいた
・嫁の親元へ言ったら団子をこしらえてご馳走した
・聟は団子を食べるのは初めてで、美味かったので腹一杯食べた
・家へ帰ったらこしらえてもらおうと思って、これは何というものかと尋ねた
・義母がこれは団子だと答えた
・聟は忘れてはいけないと思って帰る道々で団子、団子と言いながら歩いた
・家の近くまで帰ったとき、小さな溝があった。聟はうんとこしょと言って飛び渡った
・それから今度はうんとこしょ、うんとこしょと言いながら帰った
・聟は家に帰ると早速嫁にうんとこしょをこしらえてくれと言った
・嫁は何のことか分からず、うんとこしょとは何かと尋ねた
・今日嫁の家に行ったら義母がこしらえてご馳走した、美味しかったからこしらえてくれと聟は言った
・それでもうんとこしょとは何か分からないと嫁が言った
・分からないことはない。すぐこしらえよと聟は言った
・嫁は分からないので、どうしようもない
・いくら聞いても分からないので押問答をする内に聟は腹をたてて、火吹竹で嫁の頭を叩いた
・嫁がびっくりして額を押さえると、額はみるみる内に団子の様に腫れ上がった
・無茶なことをする、団子のようなこぶが出来たと嫁が言うと、そうだ団子だった、団子をこしらえてくれと聟は言った
形態素解析すると、
名詞:団子 嫁 聟 こしょ 家 こと これ ご馳走 何 内 義母 額 こぶ とき びっくり もの 今度 今日 初めて 押問答 溝 火吹竹 腹 親元 近く 道々 頭 馬鹿
動詞:言う こしらえる 分かる 帰る する 尋ねる 思う 食べる ある いける いる たてる 出来る 叩く 忘れる 押さえる 歩く 渡る 答える 聞く 腫れ上がる 行く 飛ぶ
形容詞:しようもない ない 美味い 美味しい
形容動詞:無茶
副詞:うんと いくら すぐ そう どう みるみる 何か 早速 腹一杯
連体詞:何という 小さな
聟/嫁の構図です。抽象化すると、男/女です。聟―団子/うんとこしょ―嫁の図式です。
嫁の実家で団子が振る舞われた[ご馳走]。気に入った聟は嫁に作ってもらおうと思って団子、団子と復唱しつつ帰ったが[復唱]、溝を跳び越えるときにうんとこしょと言ってしまった[言い間違い]。それで嫁に伝わらなかったが[説明不可]、嫁をぶったところ団子のようなこぶができて[殴打]、そうだ、団子だとなった[気づき]。
団子、団子と復唱していたところを、はずみでうんとこしょと言い間違ってしまった……という内容です。
発想の飛躍は溝を跳び越えた際にうんとこしょと間違って記憶してしまうところでしょうか。団子/うんとこしょの図式です。
子供の頃ははったい粉をまぶしたお団子が好きでした。
◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.412-413.
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