彼岸――モチーフ分析
◆あらすじ
昔、たいそう仲の悪い嫁と姑とがいた。あるとき、また二人が喧嘩をはじめた。嫁は彼岸を「ひいがん」だと言った。姑はいや、ひいがんではない、「ひがん」だと言った。何遍言っても、どちらも自分の言うのが本当だと言って聞かない。しまいにはつかみ合いになって叩いたり蹴ったりして喧嘩をしたが、それでも勝負がつかない。それでとうとう、それならお寺へ行って和尚に決めてもらおうということになった。嫁と姑とは二人連れでお寺へ行って、和尚に訳を話した。そして、どちらが本当かと言った。和尚は前の三日がひいがんで、後の三日がひがんで、中に一日(ひてえ)がお中日と言った。それでどちらも勝ち負けはなかった。
◆モチーフ分析
・たいそう仲の悪い嫁と姑がいた
・また二人が喧嘩をはじめた
・嫁は彼岸を「ひいがん」だと言った
・姑はひいがんではない、「ひがん」だと言った
・どちらも自分の言うのが本当だと言って聞かない
・しまいにはつかみ合いになって叩いたり蹴ったりして喧嘩をしたが、勝負がつかない
・それならお寺へ行って和尚に決めてもらおうということになった
・嫁と姑は二人連れでお寺へ行って、和尚に訳を話した
・そしてどちらが本当か尋ねた
・和尚は前の三日がひいがんで、後の三日がひがんで、中に一日がお中日と言った
・それでどちらも勝ち負けはなかった
形態素解析すると、
名詞:どちら 和尚 姑 嫁 三 お寺 がん 喧嘩 本当 一 お中日 こと しまい それ ひがん 中 二人 二人連れ 仲 前 勝ち負け 勝負 彼岸 後 自分 訳
動詞:言う ひく する なる 行く いう いる つかみ合う つく はじめる ひがむ 叩く 尋ねる 決める 聞く 話す 蹴る
形容詞:ない 悪い
副詞:たいそう また
嫁/姑の構図です。抽象化すると、女/女の家族です。嫁―彼岸―姑、和尚―彼岸―嫁/姑の図式です。
仲の悪い嫁と姑がいて[不仲]、彼岸を何と読むかで喧嘩になった[論争]。和尚に裁定してもらおうと寺に行ったが[裁定]、和尚は双方の言い分を聞いて勝負が付かなかった[引き分け]。
彼岸を何と読むかで和尚に裁定してもらったが、和尚は双方の言い分を聞いて勝負がつかなかった……という内容です。
発想の飛躍は彼岸を「ひいがん」と読むか「ひがん」と読むかということでしょうか。彼岸―ひいがん/ひがんの図式です。
◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)p.460.
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