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2022年11月19日 (土)

蛙の恩返し――モチーフ分析

◆あらすじ

 昔、あるところに男がいた。ある日道を歩いていると、蛇が蛙(かえる)をくわえて呑もうとしていた。男はそれを見ると蛙がかわいそうになって、まあ悪いことをする。その蛙を放してやれ。自分の女房にしてやるからと言った。すると蛇はくわえていた蛙を放してするすると草の中へ入ってしまった。自分の言うことを聞いたものだと男は思った。それと共にえらいことを言ったものだと後悔したが、もうどうすることもできない。どうしたものか思案していた。しばらくして、きれいな女が男のところを訪ねてきた。この間約束したが、蛙を許してやったから、あなたの女房にしてくださいと女は言った。それはまあ、ああして約束したのだから、しないとは言えない。困ったことだと思ったが、約束したので女房にした。ところが男は自分の女房は蛇だ。困ったものだのうと思えば思うほど気持ちが悪くてたまらない。とうとう気病みになって床についてしまった。ある日この家へ一人の男がやって来て、ここには病人がいるということだが悪いことだと言った。それで事情を話したところ、ああ、あなたの病気にはいい薬があるがと言った。何だろうか。それは、これの背戸の大きな松の枝へ鷹(たか)が巣をかけている。その卵をとって飲んだら、たちまち良くなると男は言った。それを聞くと、男はいいことを聞いたと思って、鷹の卵をとるというのは容易なことじゃあないがと思って、女房にその話をした。すると女房は、それなら自分がとってあげる。自分なら木へ昇るのは上手だから、必ずとってあげると言った。男は喜んで、それなら取ってきてくれと言って頼んだ。女房は背戸の松の木へ行ってみた。大きな松の木のずっと上に鷹の巣がある。とても高くて女の姿では昇ることはできない。女房は元の蛇になってするすると昇っていった。ところが、巣のところへ行って卵を取ろうとするのを鷹が見つけた。雀のような小さな鳥ならどうすることもできないが、鷹のことである。二羽の鷹は鋭いくちばしと爪で飛びかかって蛇を殺してしまった。これを見たよそから来た男はくっくと笑って草の中へ姿を隠した。それは男が助けてやった蛙であった。

◆モチーフ分析

・あるところに男がいた
・ある日道を歩いていると、蛇が蛙をくわえて呑もうとしていた
・男はかわいそうに思って、その蛇を放してやれ、自分の女房にしてやるからと言った
・蛇はくわえていた蛙を放して草の中へするすると入ってしまった
・えらい事を言ったものだと後悔したが、もうどうすることもできない
・しばらくして、きれいな女が男のところを訪ねてきた
・この間約束したが、蛙を放してやったから、女房にしてくださいと女は言った
・約束したのだから、しないとは言えない
・困ったことだと思ったが、約束したので女房にした
・男は自分の女房は蛇だと思えば思うほど気持ち悪くてたまらない
・とうとう気病みになって床についてしまった
・ある日、この家へ一人の男がやって来て、ここには病人がいるということだが悪いことだと言った
・事情を話したところ、あなたの病気にはいい薬があると言った
・それは、背戸の大きな松の枝へ鷹が巣をかけている。その卵をとって飲んだら、たちまち良くなると男は言った
・いいことを聞いたと思って、鷹の卵をとるのは容易なことではないと思って、女房にその話をした
・女房は、それなら自分がとってあげると言った
・男は喜んで、それなら取ってきてくれと言って頼んだ
・女房は背戸の松の木へ行ってみた
・大きな松のずっと上に鷹の巣がある
・とても高くて女の姿では昇ることができない
・女房は元の蛇になってするすると昇っていった
・巣のところへ行って卵をとろうとするのを鷹が見つけた
・二羽の鷹は鋭いくちばしと爪で飛びかかって蛇を殺してしまった
・これを見た他所から来た男はくっくと笑って草の中へ姿を隠した
・それは男が助けてやった蛙であった

 形態素解析すると、
名詞:男 女房 こと 蛇 それ ところ 蛙 鷹 卵 女 約束 自分 中 姿 巣 松 背戸 草 二 あなた かわいそう きれい くちばし くっく ここ これ もの 一人 上 事 事情 他所 元 家 容易 床 後悔 松の木 枝 気病み 爪 病人 病気 薬 話 道 間 鷹の巣
動詞:する 言う 思う とる やる 放す ある いる くわえる できる なる 昇る 行く あげる いう かける つく やって来る 入る 助ける 取る 呑む 困る 来る 歩く 殺す 笑う 聞く 見つける 見る 訪ねる 話す 隠す 頼む 飛びかかる 飲む
形容詞:いい えらい たまらない ない 悪い 気持ち悪い 良い 鋭い 高い
副詞:ある日 しばらく ずっと たちまち とうとう とても どう もう 喜んで 思うほど
連体詞:その この 大きな ある

 男/女房/他所から来た男の構図です。男/蛇/蛙でもあります。抽象化すると、男/動物/動物です。男―女房/蛇―男/蛙、女/蛇―卵―鷹の図式です。

 蛙を助けたら嫁にしてやると蛇に約束した男だったが[約束]、果たして女が嫁にして欲しいとやって来たので嫁にする[成就]。気に病んで床についた男だったが[病気]、他所から来た男が鷹の卵を飲めば治ると教えた[教示]。女は蛇の姿に戻って卵を取ろうとしたが[変化を解く]、鷹が蛇を殺してしまう[殺害][婚姻の解消]。他所から来た男は男が助けた蛙だった[正体露見]。

 鷹の卵を取りに蛇の姿に戻ったところ、親の鷹に殺されてしまった……という内容です。

 発想の飛躍は、鷹の卵を飲めば病気が治ると教えることでしょうか。女/蛇―卵―鷹の図式です。

 異類婚姻譚ですが、この話では女房が蛇であることを知って気味悪がっているという点が特徴です。婚姻は解消されますが、望んでのことである点が他の異類婚姻譚とは異なっています。

◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.449-451.

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