岡田の婆――モチーフ分析
◆あらすじ
猟師が山へ猟に行って日が暮れた。それで木の上へ登って夜の明けるのを待とうと思って木の上へ登っていた。すると夜中になって猫が沢山やってきた。一匹の猫が木の下へしゃがんで木に抱きついた。次の猫はその猫の背中から肩車(びんぶく)をした。それから次々に猫が肩車をして木へ登って猟師の足を捕まえようとしたが、ちょっと届かない。その猫は、自分は帰って岡田の婆さんを連れてくると言って、ばらっと崩れ落ちて皆いなくなった。猟師が岡田のばばあと言っていたが、あそこにおるばばあは猫かしらんと思っていると、大きな猫が来て、他の猫も木の下に集まった。それから前の様にして木へ登ってきて、一番終いに後から来た大きな猫があがってきた。そして猟師の足を捕まえたので、猟師はすぐ腰へ差している鉈(なた)を抜いて手を切った。猫は悲鳴をあげて下へ落ちると、どこへともなくいなくなった。夜が明けると猟師は木から下りてきて、岡田のばばあちゅうのは前から居るが、猫だったのかしらんと思って岡田の家へ行って隙間から見ると婆さんが手の傷を舐めて(ねぶって)いる。それで、これは本当に猫じゃなかろうかと思って隙間から鉄砲で撃ち殺してしまった。その家の人は大騒ぎを始めた。近所の人も来て大騒動になった。これは猫の化物だから撃ったのだ。こうしておくと、そのうち正体を現して猫になると言って、猟師は婆さんの足を縛って庭の上に下げておいた。二日ぶりに猟師が行ってみると、やはり婆さんである。三日ぶりに行ってみると、大きな古猫になっていた。それで猟師には何のこともなかった。戸へ背をすりつけるか、柱へ背をすりつけて通る猫は飼ってもよいが、部屋の真ん中を通る様になると踊りを踊る様になる。そうなると化けるから置いてはいけないと言う。
◆モチーフ分析
・猟師が山へ猟に行って日が暮れた
・木の上へ登って夜の明けるのを待った
・夜中になって猫が沢山やってきた
・一匹の猫が木の下へしゃがんで木に抱きついた
・次の猫はその猫の背中から肩車をした
・次々に猫が肩車をして木へ登って、猟師の足を捕まえようとしたが、ちょっと届かない
・その猫は自分は帰って岡田の婆さんを連れてくると言って、ばらっと崩れ落ちて皆いなくなった
・猟師は岡田のばばあは猫かしらんと思った
・大きな猫が来て、他の猫も木の下に集まった
・前の様にして木へ登ってきて、後から来た大きな猫が一番終いに上がってきた
・大きな猫は猟師の足を捕まえたので、猟師は鉈で猫の手を切った
・猫は悲鳴をあげて下へ落ちると、どこへともなくいなくなった
・夜が明けると猟師は木から下りてきて、岡田の家へ行って隙間から見ると婆さんが手の傷を舐めていた
・猟師はこれは本当に猫ではなかろうかと思って、隙間から鉄砲で撃ち殺した
・岡田の家の人は大騒ぎを始め、近所の人も来て大騒動になった
・これは猫の化物だからこうしておくと、そのうち正体を現して猫になると言って、猟師は婆さんの足を縛って庭の上にぶら下げておいた
・二日ぶりに猟師が行ってみると、やはり婆さんである
・三日ぶりに行ってみると、大きな古猫になっていた
・それで猟師には何のこともなかった
・戸へ背をすりつけるか、柱へ背をすりつけて通る猫は飼ってもよい
・部屋の真ん中を通る様になると踊りを踊る様になる
・そうなると猫は化けるから置いてはいけないと言う
形態素解析すると、
名詞:猫 猟師 木 婆さん 岡田 足 これ 上 人 夜 家 手 木の下 肩車 背 隙間 一 二 三 うち こと しらん どこ ばばあ ばら 下 他 何 傷 前 化物 古 夜中 大騒ぎ 山 庭 後 悲鳴 戸 日 本当 柱 次 正体 沢山 猟 皆 真ん中 背中 自分 近所 部屋 鉄砲 鉈 騒動
動詞:する なる 行く 来る 登る 言う いる すりつける 思う 捕まえる 明ける 踊る 通る あげる いける しゃがむ ぶら下げる やる 上がる 下りる 切る 化ける 始める 届く 崩れ落ちる 帰る 待つ 抱きつく 撃ち殺す 暮れる 現す 終う 縛る 置く 舐める 落ちる 見る 連れる 集まる 飼う
形容詞:ない よい
副詞:うかと こう そう ちょっと やはり 一番 次々
連体詞:大きな その
猟師/猫/大きな猫の構図です。抽象化すると、人/動物です。猟師―肩車―猫/大きな猫、猟師―(撃ち殺す)―岡田の婆さん―(現す)―大きな猫の図式です。
木の上へ登って夜を明かした男の許に猫たちがやってくる[集合]。猫たちは肩車を組んで猟師を捕まえようとするが[接近]、猟師が鉈で反撃[反撃]したのでいなくなる[逃散]。猫たちの会話を聞いた猟師は岡田の家へ行って婆さんを撃ち殺す[射殺]。婆さんの死体は三日目に古猫に変わった[解除]。
肩車を組んで接近してきた猫に反撃、手傷を負った古猫を射殺した……という内容です。
発想の飛躍は猫たちが肩車を組んで接近してくることでしょうか。猟師―肩車―猫の図式です。
一般には狼ばしごと呼ばれる話型です。離島など狼のいない地域では狼が猫に置き換えられるとのことですが、このお話は匹見町の昔話です。
◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.431-432.
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