七人小屋――モチーフ分析
◆あらすじ
昔、七人の者が山の奥へ入って、小屋をかけて仕事をしていた。年の暮れになって、皆は年をとりに家へ帰ることになった。しかし、誰かあとに残って小屋番する者がいなければならないので、一人が残った。しかし皆が帰ってしまってたった一人になると心細くなった。その内に夕方になった。人里離れた山の中の小屋にたった一人いると、四十ばかりくらいの女の人がやって来た。山小屋のことだから戸は無いので、戸口にはただむしろが下げてあるばかりだった。女はそれを上げて内へ入ると、ぼた餅をこしらえてきたから食べなさいと言ってぼた餅をのぞけた。男はぼた餅が大好きであった。しかし、こんな山の奥へ見たこともない者がぼた餅を持ってくるのはおかしいと思って、自分はぼた餅はいらないから持って帰ってくれと言って、とうとう食べなかったので、女は帰っていった。しばらくすると、女は今度は茄子(なす)を持ってきて、それではこれを買ってくださいと言う。正月だから茄子のある頃ではないので、これは本当の茄子ではあるまいと思って、いらないと言った。ところが女はどうでも買ってくれと言って聞かない。そこで言い争いをしているところへ、大きな目玉をした、長い髪の真っ白い老人がやってきて、ドサッと座った。そして大きな目玉でギョロギョロ睨みまわしたので、女は出ていってしまった。自分はお前の氏神だ。今ついて帰れ。今きた女はこの奥に堤(つつみ)があるが、その主が化けてきたのだから、自分について帰れば助かるとその人は言った。男はホッとして何もかもほったらかしたまま、すぐその老人について帰った。老人の後ろは明るくて道がよく見えた。一気に家の側まで帰ったとき、氏神さまはパッと見えなくなってしまった。それから男はそこへ氏神さまの祠をこしらえて、お祀りした。
◆モチーフ分析
・七人の者が山奥へ入って小屋をかけて仕事をしていた
・年の暮れになって皆は家へ帰ることになった
・誰かあとに残って小屋番する者がいなければならないので、一人が残った
・皆が帰って一人きりになると心細くなった
・人里離れた山の中の小屋にたった一人でいると、四十くらいの女の人がやって来た
・女は戸口のむしろを上げて中へ入ると、ぼた餅をこしらえたから食べなさいと言った
・男はぼた餅が大好きであったが、こんな山奥へ見たこともない者がぼた餅を持ってくるのはおかしいと思って、自分はぼた餅はいらないから持って帰ってくれと言った
・男はとうとう食べなかったので、女は帰っていった
・女は今度は茄子を持ってきて、これを買ってくださいと言う
・正月だから茄子のある頃ではないので、これも本当の茄子ではないと思っていらないと言った
・女はどうしても買ってくれと言って聞かない
・言い争いしているところへ大きな目玉をした長い髪の真っ白い老人が来てドサッと座った
・老人が大きな目玉でギョロギョロ睨みまわすと女は出ていってしまった
・老人は自分はお前の氏神が、今ついて帰れ。今来た女はこの奥の堤の主が化けてきた。自分について帰れば助かると言った
・男はホッとして何もかもほったらかしたまま、すぐ老人について帰った
・老人の後ろは明るく道がよく見えた
・一気に家の側まで帰ったとき、氏神はパッと見えなくなった
・男はそこへ氏神の祠をこしらえてお祀りした
形態素解析すると、
名詞:女 老人 ぼた餅 男 小屋 氏神 者 自分 茄子 こと これ 一人 中 今 家 山奥 皆 目玉 四十 七 お前 そこ とき ところ まま むしろ 一人きり 主 人 人里 今度 仕事 側 堤 奥 山 年の暮れ 後ろ 戸口 本当 正月 番 祠 誰 道 頃 髪
動詞:帰る する 言う いる つく なる 持つ こしらえる 入る 思う 来る 残る 見える 買う 食べる ある いく かける たつ はいる ほったらかす やって来る 上げる 出る 助かる 化ける 座る 睨む 祀る 聞く 見る 言い争う 離れる
形容詞:ない おかしい 心細い 明るい 真っ白い 長い
形容動詞:こんな 大好き
副詞:あと すぐ とうとう どう よく ギョロギョロ ドサッと パッと ホッと 一気に 何もかも
連体詞:大きな この
男/女/氏神の構図です。抽象化すると、人間/魔性のもの/神です。男―女―氏神の図式です。
年の暮れに一人で山小屋に残った男[残留]の許へ見慣れない女人がやって来て[来訪]食べ物を食え、買えという[勧める]。おかしいと思った男は拒否する[拒否]。言い争いになったところへ氏神がやって来て[来訪]女は退散する[退散]。女は堤の主が化けたものだった[化身]。男は氏神について家へ帰り、無事だった[帰宅]。
堤の主に狙われた男だったが、氏神の導きで無事だった……という内容です。
発想の飛躍は入ってきた老人が男の氏神だったことでしょうか。男―女―氏神の図式です。
私だと口が卑しいですので、ぼた餅を食べてしまうところですが、そうしたらどうなるのでしょう。
◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.391-393.
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