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2022年11月20日 (日)

西行歌くらべ――モチーフ分析

◆あらすじ

 昔、西行法師が諸国修行の旅に出た。ちょうど今日のようなとても暑い日に歩いていったら、あるお宮のところへ行った。そして何と涼しい、いい塩梅だと腰を下ろして休んでいたが、一つここで歌を詠んでやろうと思って「このほどに涼しき森でありながら 熱田が森とは神もいましめ」と読んだ。するとお宮の宮司が出て「西行の西という字は西とかく 東にむいてなぜに行くかな」と詠んだ。それで西行は負けてしまった。それからまた歩いていたら、暑くていけない。困ったことだ。ここはどこか知らないが、喉が渇いていけない。お茶を一杯飲みたいと思って行くと、娘が二階で機を織るのが聞こえてきた。西行はここで一つ、あの娘のところでお茶を貰って飲もうと思って、もしもし姉さん、暑くていけないが、お茶を一杯飲ませてくれないかと言った。すると娘は戸をパチーンとたてて内へ入って下へ下りてしまった。西行はがっかりして、せっかく茶をもらって飲もうと思ったのに戸をたててしまいやがった。親切気のない奴だ。一つ歌を詠んでやろうと思って「パッチリとたった障子が茶になれば 旅する僧ののどはかわかん」と詠んだ。すると娘が家の中から「シャンシャンと煮えたつまでのたて障子 すこし待たんせ 旅の御僧」と詠んだ。西行は歌でやられたので、茶も飲むことができないで歩いていった。それからだいぶ行ったが暑くてかなわないので、谷ばたに木陰があったので、そこでしばらく休むことにした。すると、ほとりに亀が昼寝をしていた。ちょうどその時、糞をしたくなったので、よし、一つこの亀の上にひりかけてやれと思って、亀の背中にひりかけた。すると亀がびっくりして、糞を負って逃げ出した。これは面白いと思って「西行もいくらの修行もしてみたが 生き糞ひったのはこれが始めて」と歌を詠んだ。すると亀が「道ばたに思わずしらず昼寝して 駄賃とらずの重荷負い」と詠んだので、西行がまたやられた。それからしばらく行くと、下の谷川で十二、三の小娘が菜を洗っていた。娘はいかにも思い詰めたように西行を見ているので、この娘は自分に惚れたかと思って「十二や三の小娘が 恋路の道を知ることはなるまい」と歌を詠んだ。すると娘が「おおそれや谷あいのつつじ椿をご覧ない せいは小さいが花は咲きます」と詠んだ。これはまたやられたと思って、それからまた行っていたら広いところへ出た。ここは奥州の鳴滝川という川のほとりであった。西行はお腹がすいたので、粉を出して食べた。粉は口のほとりへまぶれるので、それを拭いては食べていると、馬が菰(こも)を背に乗せて川を向こうへ渡った。ところがその馬がやせていて、骨と皮ばかりであった。これを一つ歌に詠んでやろうと思って、西行は「奥州の鳴瀬川とは音に聞けど 菰のせ馬がやせ渡る」と詠んだ、すると馬追いが「奥州の鳴瀬川とは音には聞けど 粉食い坊主がむせ渡る」と詠んだ。それで、西行はどうしても歌に負けた。

◆モチーフ分析

・西行法師が諸国修行の旅に出た
・暑い日に歩いていったら、あるお宮のところへ行った
・これは涼しいと腰を下ろして休んでいたら、一つここで歌を詠んでやろうと思った
・「このほどに涼しき森でありながら 熱田が森とは神もいましめ」と詠んだ
・するとお宮の宮司が出て「西行の西という字は西とかく 東にむいてなぜに行くかな」と詠んだ
・西行は負けてしまった
・また歩いていたら、暑くていけない。ここはどこか知らないが喉が渇いていけない、お茶を一杯飲みたいと思っていくと、娘が二階で機を織るのが聞こえてきた
・西行は娘に暑くていけないが、お茶を一杯飲ませてくれないかと言った
・すると娘は戸を立てて内へ入って下へ下りてしまった
・西行はがっかりして、せっかく茶を貰って飲もうと思ったのに戸をたててしまいやがった。親切気のない奴だ。一つ歌を詠んでやろうと思った
・「パッチリとたった障子が茶になれば 旅する僧ののどはかわかん」と詠んだ
・すると娘が家の中から「シャンシャンと煮えたつまでのたて障子 すこし待たんせ 旅の御僧」と詠んだ
・歌でやられたので、西行は茶を飲むことができないで歩いていった
・それからだいぶ行ったが暑くてかなわないので木陰でしばらく休むことにした
・すると、ほとりに亀が昼寝をしていた
・西行はちょうどその時、糞をしたくなったので、一つこの亀の上にひりかけてやろうと思って、亀の背中にひりかけた
・すると亀がびっくりして、糞を負って逃げ出した
・これは面白いと思って「西行もいくらの修行もしてみたが 生き糞ひったのはこれが始めて」と詠んだ
・すると亀が「道ばたに思わずしらず昼寝して 駄賃とらずの重荷負い」と詠んだ
・西行はまたやられた
・それからしばらく行くと、下の谷川で十二、三歳の小娘が菜を洗っていた
・娘は思い詰めたように西行を見ているので、この娘は自分に惚れたかと思って「十二や三の小娘が 恋路の道を知ることはなるまい」と詠んだ
・すると娘が「おおそれや谷あいのつつじ椿をご覧ない せいは小さいが花は咲きます」と詠んだので、またやられた
・それからまた行っていたら広いところへ出た
・奥州の鳴滝川という川のほとりであった
・西行はお腹がすいていたので、粉を出して食べた
・粉は口のほとりにまぶれるので、それを拭いては食べていると、馬が菰を背に乗せて川を向こうへ渡った
・その馬は痩せて骨と皮ばかりであった
・これを一つ歌に詠んでやろうと思って、「奥州の鳴瀬川とは音に聞けど 菰のせ馬がやせ渡る」と詠んだ
・すると馬追いが「奥州の鳴瀬川とは音には聞けど 粉食い坊主がむせ渡る」と詠んだ
・それで西行はどうしても歌に負けた

 形態素解析すると、
名詞:西行 娘 亀 歌 これ 一つ こと ほとり 奥州 旅 粉 糞 茶 十二 三 お宮 お茶 ここ ところ 下 修行 僧 小娘 川 戸 昼寝 森 菰 西 障子 音 馬 鳴瀬川 二重 いくら お腹 このほど ご覧 すこし それ たて つつじ のど びっくり 上 中 内 口 向こう 喉 坊主 奴 字 宮司 家 恋路 日 時 木陰 東 椿 機 滝川 熱田 皮 神 背 背中 腰 自分 花 菜 西行法師 親切気 諸国 谷あい 谷川 道 道ばた 重荷 馬追い 駄賃 骨 鳴
動詞:詠む 思う する 行く 飲む ひる やる 出る 歩く 渡る いう なる 休む 知る 聞く 負う 負ける 食べる いましめる おそれる かく かわかす しる すく たつ たてる できる とる のせる まぶす むく むせる やせる 下りる 下ろす 乗せる 入る 出す 咲く 始める 待つ 思い詰める 惚れる 拭く 洗う 渇く 煮えたつ 生きる 痩せる 立てる 織る 聞こえる 見る 言う 貰う 逃げ出す
形容詞:暑い ない 涼しい かなわない 小さい 広い 面白い
形容動詞:一杯
副詞:また しばらく がっかり せっかく だいぶ ちょうど どう どこか なぜ シャンシャン パッチリ 思わず
連体詞:この その ある

 西行/旅で遭った人の構図です。西行―歌―宮司、西行―歌/お茶―娘、西行―糞/歌―亀、西行―歌/恋―娘、西行―歌/馬―馬追いの図式です。

 諸国修行の旅に出た西行はお宮で休憩[休憩]して歌を詠んだところ[詠歌]、宮司に詠み返されて負けてしまう[敗北]。次に機織りの娘に茶を所望したが[所望]断られ歌を詠むと詠み返されて負けてしまう[敗北]。次に休憩したとき、亀に糞をひりかけて[脱糞]歌を詠んだところ詠み返されて負けてしまった[敗北]。次に十二三の娘に恋の歌を詠みかけたが[恋]、詠み返されてしまい負けてしまった[敗北]。次に川辺で痩せ馬を歌に詠んだところ[描写]、馬追いに詠み返されてまた負けてしまった[敗北]。

 諸国修行の旅に出た西行だったが、遭う人遭う人に歌で負けてしまう……という内容です。

 発想の飛躍は西行が詠んだ歌でしょうか。西行なのにことごとく詠み負けてしまいます。私は詩心がないので歌のやり取りが魅力的に見えます。

◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.454-457.

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