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2022年11月11日 (金)

三人兄弟――モチーフ分析

◆あらすじ

 あるところに子供が三人いた。一番末の子が十になったとき、父親は子供を集めて、お前たちも兄の方は十三になる。弟の方は十二になる。末の方は十になった。ひとつこれから他所へ出て修行してこいと言った。そして三人が出かけるとき、来年の三月には帰ってこいと言った。明くる年の三月になって、子供たちが帰ってきた。何を習ってきたと父親が訊くと、兄は大工を習ったと言った。弟は左官を習ったと言った。中の方は何を習ったとも言わない。そこで父親がお前は何を習った。大方一年も出ていたのに何も習わなくて戻ったということはあるまいと叱った。すると、中の子が言っていいやら悪いやら知らないが、自分は盗人を習ったと言った。ちょうどこの時、父親の兄が家の子供が戻ったから話を聞きに来てくれということで来ていた。この伯父は金持ちであった。父親は盗人を習ってきたと言うのを聞くと、盗人を習ってとんでもない奴だと言って大くじをくった(大変叱った)。まあ待て。盗人と言ってもいい盗人もいれば悪い盗人もいる。どういう盗人か、話を聞いてみなければ分からないと伯父が言った。どういう盗人を習ってきたと訊くと、それは言えないと答えたので、そうか、そうすれば自分が今夜帰るから、うちの駄屋の中で馬に乗って千両箱を下げている。それを持って戻れば偉いものだと伯父が言ったので、それはやろうと息子は言った。そんなことができるもんか。なんぼ金が欲しくても馬へ乗って千両箱を持っているのが盗られる訳がないと父親が言った。伯父は、やってみなければ分からない。子供のすることをむやみにくじをくったり(叱ったり)話を潰したりしてはいけない、自分が一つやらせてみようと言って、駄屋の中で馬に乗って、千両箱を持って、盗りに来るのを待っていた。夜は段々ふけてきたが、息子はなかなかやって来ない。あの小僧、大きなことを言って自分を誤魔化しやがって。これが盗人の種だろうかと思っていた。その内に幾ら経っても来ないので、ついうとうとと眠ってしまった。はっとして目が覚めてみると、乗っていた馬がいない。あらっと思ってみると、駄屋に馬が出られないように丸い木のかんぬきが二本差してある上に鞍を据えて、伯父はその上に乗っていた。たまげたのたまげないのと言って、馬がいつ逃げたのやら、かんぬきの上へいつ乗せられたのか分からない。そこへ父親がやって来た。おい、兄よ。どうした、と父親が問うと、まあ見てくれ。不思議なことに、いつの間にやら、ここへ上がっているのだと伯父は言った。自分は確かにここで馬に乗っていたのだが千両箱はいつの間にか無くなってしまったと。それから父親は伯父と一緒に家へ帰った。息子はいつの間にかちゃんと帰っていた。お前どうだったと伯父が訊くと、伯父さんの持っていた千両箱はもらって帰ったと言った。馬はどうしたと訊くと、ここの駄屋へ入れてあると答えた。行ってみると馬はちゃんと駄屋へ入れてある。まあ、大変な大盗人だ。よくやったと伯父は手を叩いて感心した。そして父親も、お前は偉かったと言って頭を撫でた。

◆モチーフ分析

・あるところに子供が三人いた。兄は十三歳、弟は十二歳、末の子は十歳である
・末の子が十歳になったとき父親が子供に対してこれから他所へ出て修行してこいと言った。
・三人が出かけるとき、来年の三月には帰ってこいと言った
・明くる年の三月になって子供たちが帰ってきた
・何を習ってきたか父親が訊くと、兄は大工を習ったといい、末の弟は左官を習ったと言った
・中の子は何を習ったとも言わない
・父親が一年も出ていたのに何も習わなくて戻ったということはあるまいと叱った
・中の子は言って良いのか分からないが、自分は盗人を習ったと言った
・このとき伯父が子供が戻ったから話を聞きに来てくれというので来ていた
・伯父は金持ちであった
・父親は盗人を習ってきたと聞くと、盗人を習ってとんでもない奴だと叱った
・伯父が良い盗人か悪い盗人か話を聞いてみなければ分からないと言った
・どういう盗人を習ってきたかと訊くと、それは言えないと中の子は答えた
・伯父は自分は今夜帰るから、うちの駄屋の中で馬に乗って千両箱を下げている、それを持ってこいと言った
・中の子はそれはやろうと言った
・そんなことができるものかと父親が言った
・伯父はやってみなければ分からない、ひとつやらせてみようと言った
・伯父は駄屋の中で馬に乗って千両箱を持って盗りに来るのを待った
・夜は段々ふけてきたが息子はやって来ない
・大きなことを言って誤魔化しやがってと伯父は思った
・その内に幾ら経っても来ないので、うとうとと眠ってしまった
・はっと目覚めてみると乗っていた馬がいない。木のかんぬきの上に鞍を据えて、伯父はその上に乗っていた
・馬がいつ逃げたのか、かんぬきの上へいつ乗せられたのか分からない
・そこへ父親がやって来た
・伯父は自分は確かにここで馬に乗っていたのだが、いつの間にかに千両箱が無くなったと語った
・父親と伯父は一緒に家に帰った
・息子はいつの間にかちゃんと帰っていた
・伯父が訊くと、中の子は伯父の持っていた千両箱はもらって帰ったと言った
・馬はどうしたと訊くと、駄屋に入れてあった
・大変な盗人だ、よくやったと伯父は手を叩いて感心した
・父親もお前は偉かったと頭を撫でた

 形態素解析すると、
名詞:伯父 父親 中 子 盗人 馬 三 千両 子供 箱 こと それ とき 上 何 屋 末 自分 十 いつ かんぬき 兄 弟 息子 話 一 十二 十三 うち お前 ここ これ そこ ところ ひとつ もの 今夜 他所 修行 内 夜 大変 大工 奴 家 左官 感心 手 明くる年 木 来年 金持ち 鞍 頭
動詞:言う 習う 帰る 乗る いう やる 分かる 来る 訊く 聞く いる なる やって来る 出る 叱る 戻る 持つ ある する できる ふける もらう 下げる 乗せる 入れる 出かける 叩く 対 待つ 思う 据える 撫でる 無くなる 盗る 目覚める 眠る 答える 経つ 語る 誤魔化す 逃げる
形容詞:良い とんでもない 偉い 悪い
形容動詞:そんな 持ってこい 確か
副詞:どう いつの間に いつの間にか うとうと かちゃんと はっと よく 一緒に 幾ら 段々
連体詞:その ある この 大きな

 父親/三人兄弟/伯父の構図です。家族/親族同士の構図です。父親―中の子―伯父、中の子―千両箱―伯父の図式です。

 父親が三人の兄弟を修行に出した[修行]。一年経って兄弟たちは戻ってきたが[帰郷]、中の子は盗人を修行したと答えた[告白]。叱った父親だったが[叱責]、伯父がだったら自分の千両箱を盗ってみよと言った[課題の提示]。約束通り、中の子は千両箱をいつの間にかに盗んだ[課題の達成]ので、これは大した奴だとなった[反転評価]。

 自分の千両箱を盗んでみよと言ったところ、実際に盗んでしまったので、これは大した奴だとなった……という内容です。

 発想の飛躍は中の子が実際に千両箱を盗んでしまうことでしょうか。中の子―千両箱―伯父、駄屋―馬/鞍―かんぬきの図式です。

 三人兄弟が登場する話では、中の子が活躍することは少ないです。語りから抜け落ちてしまうことが多いのですが、この話では中の子が活躍する話となっています。

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