人口減の時代の処方箋――デービッド・アトキンソン『新・所得倍増論』『新・生産性立国論』
デービッド・アトキンソン『新・所得倍増論 潜在能力を活かせない「日本病」の正体と処方箋』『新・生産性立国論 人口減少で「経済の常識」が根本から変わった』を読む。
GDP総額=人口×1人あたりの生産性
という式が示される。日本は生産性が低いと昔から言われていたが、生産性とは何かを説明するものがなく、この本に至ってようやく理解した次第。
若かった頃、人事担当の人に生産性について質問したことがあるのだけど、その人は経済を専攻していなかったのかもしれない、よく分からないとの回答だった。
日本の経済指標は人口あたりにすると意外に低いことが明らかにされる。その点で伸びしろがあると分析している。
戦後の高度成長は急激な人口増に支えられたものだったと分析している。終身雇用、年功序列といった日本的経営は人口増の時代でないと成り立たないと指摘する。
これからは人口減の時代に突入する。人口減の時代に入ったら高齢者も減少するかと思ったら、高齢者人口はあまり変わらないのである。それ故、今以上に少ない現役世代が高齢者を支える図式となる。
高品質低価格に疑問を呈する。それは人口増の時代では売上増につながるが、人口減少の時代には自分の首を絞める愚策であるとする。
雇用者の給与は1990年代から減少し続けている。著者はこれを経営者の無能が招いた愚策だと指弾する。
また、GDPを維持するためには生産性の向上が欠かせないが、日本では女性の生産性が低く、女性が活躍する社会になることが求められているとする。その意味で専業主婦には否定的である。
人口減の時代では量的緩和を行っても、効果が低いとしている。
著者は元ゴールドマン・サックスのアナリストであり、分析は明快である。僕はこの人は政権中枢に食い込んでいるのでイギリスのスパイであっても不思議ではないと考えているが、処方箋自体は有益だろう。
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