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2022年11月

2022年11月29日 (火)

命に別状なしとのこと

都立大で社会学者の宮台真司氏がナイフで切られたとの報道が。幸い命に別状はないらしい。この頃、この人の本を読んでいたので驚く。しかし、首を切られたそうなので、箇所によっては頸動脈が傷つけられる可能性もある。

ちなみにTwitterで宮台氏のアカウントをフォローしていたのだけど、発言にイラッとすることが多くてフォローを解除したのが数ヶ月前。

<追記>
この事件、なぜ背後から刺さなかったのかが解せない。切りつけるだけで恐怖心を植え付けるのが目的なのだろうか。

<追記>
容疑者が自殺していたという報道があった。結局、動機は不明なままとなった。

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記号じゃ分からん

バルトの著作にあったグレマスの「行為項」という用語をググってみた。なるほど、こういう風に分析するのかと思ったが、式に変換してしまうと、書いている本人には分かっても読者にとっては途端に分かりにくいものになってしまうと思う。

まだネットで得た知識だけなのだけど、プロップやグレマスの提示した枠組みは冒険譚には非常によく適合するけれど、それらの枠組みに収まらないお話も多々あるのだ。

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2022年11月28日 (月)

地理学の本――『ライブパフォーマンスと地域 伝統・芸術・大衆文化』

『ライブパフォーマンスと地域 伝統・芸術・大衆文化』(神谷浩夫, 山本健太, 和田崇/編, ナカニシヤ出版, 2017)を読む。サブタイトルが「伝統・芸術・大衆文化」なのだけど、これは地理学の本である。

第二章では広島県の芸北神楽が取り上げられている。これは神楽の観光資源化などの諸問題を扱っている。広島県では他に演劇が取り上げられている。広島市は演劇の街でもあるのだ。

他、和太鼓、沖縄のエイサー、アートプロジェクト、都内を活動場所とするミュージシャン、東京の小劇場演劇、東京都のヘブンアーティスト(大道芸など)、フィリピン系移民、北米ベイエリアの和太鼓、韓国ソウルの祝祭などが取り上げられている。

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2022年11月27日 (日)

さすが、シロ難――ロラン・バルト『物語の構造分析』

ロラン・バルト『物語の構造分析』(花輪光/訳)を読む。みすず書房から刊行された本。白い表紙のシリーズで、一部ではシロ難とも言われている。実際に読んでみたが、難解で意味がとりにくい論文もあった。

「物語の構造分析序説」が目当てだったのだけど、非常に難しいという感想。プロップの『昔話の形態論』は読んでいたのだけど、歯が立たなかった。

まあ、これは研究者や評論家に向けた本だろうから、これより難しい本もそうそうないということではあるが。

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2022年11月25日 (金)

人口減の時代の処方箋――デービッド・アトキンソン『新・所得倍増論』『新・生産性立国論』

デービッド・アトキンソン『新・所得倍増論 潜在能力を活かせない「日本病」の正体と処方箋』『新・生産性立国論 人口減少で「経済の常識」が根本から変わった』を読む。

GDP総額=人口×1人あたりの生産性

という式が示される。日本は生産性が低いと昔から言われていたが、生産性とは何かを説明するものがなく、この本に至ってようやく理解した次第。

若かった頃、人事担当の人に生産性について質問したことがあるのだけど、その人は経済を専攻していなかったのかもしれない、よく分からないとの回答だった。

日本の経済指標は人口あたりにすると意外に低いことが明らかにされる。その点で伸びしろがあると分析している。

戦後の高度成長は急激な人口増に支えられたものだったと分析している。終身雇用、年功序列といった日本的経営は人口増の時代でないと成り立たないと指摘する。

これからは人口減の時代に突入する。人口減の時代に入ったら高齢者も減少するかと思ったら、高齢者人口はあまり変わらないのである。それ故、今以上に少ない現役世代が高齢者を支える図式となる。

高品質低価格に疑問を呈する。それは人口増の時代では売上増につながるが、人口減少の時代には自分の首を絞める愚策であるとする。

雇用者の給与は1990年代から減少し続けている。著者はこれを経営者の無能が招いた愚策だと指弾する。

また、GDPを維持するためには生産性の向上が欠かせないが、日本では女性の生産性が低く、女性が活躍する社会になることが求められているとする。その意味で専業主婦には否定的である。

人口減の時代では量的緩和を行っても、効果が低いとしている。

著者は元ゴールドマン・サックスのアナリストであり、分析は明快である。僕はこの人は政権中枢に食い込んでいるのでイギリスのスパイであっても不思議ではないと考えているが、処方箋自体は有益だろう。

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2022年11月23日 (水)

神楽に行けず

今日は大宮住吉神楽と梅鉢会の神楽の日だったのだけれど、行けなかった。前日に家賃を振り込みにいった際、片道2キロくらい歩くのだけど、歩いていてこれはダメだと思った。近々大学病院で精密検査する予定。マスクをして長時間立ちっぱなしで鑑賞するというスタイルが苦しくなっている。

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『石見の民話』モチーフ分析を終えて

以上のような形で未来社『石見の民話』に収録された163話のモチーフ分析を行いました。モチーフとは話の筋の核となる部分です。

要するに抽象化する訳ですが、こういう処理をすると語りの魅力は捨象されてしまいます。そういう面では十全な分析ではありません。また、精神分析的な分析も行いません。

桃太郎の場合ですと、

・お爺さんとお婆さんがいた。お爺さんは山へ芝刈りに、お婆さんは川に洗濯にいった
・お婆さんが川で洗濯していると上流から大きな桃が流れてきたので、それを家へ持ち帰った
・桃を割ろうとすると、中から元気な男の子が出てきたので桃太郎と名づけた
・成長した桃太郎はきび団子をこしらえて貰って旅に出る
・きび団子を犬・猿・キジにやって家来にする
・犬、猿、キジを伴って鬼ヶ島に攻め入り、鬼を征伐する
・鬼の宝物を村に持ち帰って凱旋する

のようになります。

通常は異類婚姻譚(鶴女房とか雪女とか)だったら異類婚姻譚同士でモチーフ分析して比較検討するのですが、ここでは『石見の民話』に収録された163話とばらばらのお話の分析を行いました。

これはこれくらいのボリュームを分析すれば何か見えてくるものがあるかもしれないという極めて楽観的な思いつきによって実行したものです。

以前、大塚英志の『ストーリーメーカー 創作のための物語論』を読んでいて、ウラジミール・プロップの『昔話の形態学』を紹介してロシアの魔法昔話を分析すると、およそ31の機能(ファンクション)が抽出できると解説されていました。

留守/禁止/違反/探り出し/情報漏洩/謀略/幇助/加害/欠如/仲介/対抗開始/出立/贈与者/呪具の贈与・獲得/二つの国の間の空間移動/闘い/標づけ/勝利/不幸・欠如の解消/帰還/追跡/救助/気付かれざる到着/不当な要求/難題/解決・発見・認知/正体露見/変身/処罰/結婚

といったものです。流れとしては、

1. 家族の成員のひとりが家を留守にする(留守)
2. 主人公に禁を課す(禁止)
3. 禁が破られる(違反)
4. 敵対者が探り出そうとする(探り出し)
5. 犠牲者に関する情報が敵対者に伝わる(情報漏洩)
6. 敵対者は犠牲となる者なりその持ち物なりを手に入れようとして、犠牲となる者をだまそうとする(謀略)
7. 犠牲となる者は欺かれ、そのことによって心ならずも敵対者を助ける(幇助)
8. 敵対者が、家族の成員のひとりに害を加えるなり損傷を与えるなりする(加害)
9. 被害なり欠如なりが[主人公に]知らされ、主人公に頼むなり命令するなりして主人公を派遣したり出立を許したりする(仲介、つなぎの段階)
10. 探索者型の主人公が、対抗する行動に出ることに同意するか、対抗する行動に出ることを決意する(対抗開始)
11. 主人公が家を後にする(出立)
12. 主人公が[贈与者によって]試され・訊ねられ、攻撃されたりする。そのことによって、主人公が呪具なり助手なりを手に入れる下準備がなされる。(贈与者の第一機能)
13. 主人公が、贈与者となるはずの者の働きかけに反応する(主人公の反応)
14. 呪具[あるいは助手]が主人公の手に入る(呪具の贈与・獲得)
15. 主人公は、探し求める対象のある場所へ連れて行かれる・送りとどけられる・案内される(二つの国の間の空間移動)
16. 主人公と敵対者とが、直接に闘う(闘い)
17. 主人公に標(しるし)がつけられる(標づけ)
18. 敵対者が敗北する(勝利)
19. 発端の不幸・災いか発端の欠如が解消される(不幸・欠如の解消)
20. 主人公が帰路につく(帰還)
21. 主人公が追跡される(追跡)
22. 主人公は追跡から救われる(救助)
23. 主人公はそれと気付かれずに、家郷か、他国かに、到着する(気付かれざる到着)
24. ニセ主人公が不当な要求をする(不当な要求)
25. 主人公に難題が課される(難題)
26. 難題を解決する(解決)
27. 主人公が発見・認知される(発見・認知)
28. ニセ主人公あるいは敵対者(加害者)の正体が露見する(正体露見)
29. 主人公に新たな姿形が与えられる(変身)
30. 敵対者が罰せられる(処罰)
31. 主人公は結婚し、即位する(結婚)
※プロップ『昔話の形態学』より抜粋。

といった流れとなります。また、登場人物を

・主人公(探索者)
・敵対者
・家族の成員
・犠牲者
・贈与者
・助手
・ニセ主人公

と類型化(抽象化)しています。

昔話には法則があったのか、面白いと思いました。プロップのそれはあくまで「ロシアの」「魔法昔話」に限った話だったのですけれど、私は誤読して全ての昔話に適用されると思い込んでしまったのです。

プロップの昔話の機能は動詞を基礎とします。たとえば、

・キツネが人を化かした
・タヌキが人を化かした

というのは別のモチーフになります。プロップの形態論では動詞(ここでは化かす)を主として考え、主語、目的語は入れ替え可能なものと考えるのです。

これには意訳に意訳を重ねているという批判もあるようです。

プロップの機能は冒険譚にはよく当てはまると思うのですが、昔話はそういう話ばかりという訳ではないのです。

そんな訳で昔話から何か法則の様なものが見いだせないか調べるのが私の野望となったのです。

その後、昔話の理論書を読んでいって、アラン・ダンデスの本に行き当たりました。ダンデスはプロップの機能をモチーフ素と呼び変えることを提唱していました。それは音と音素から着想したもので、モチーフとモチーフ素に分解するのです。これは実質的にプロップの機能を全昔話に適用できるように拡張するという狙いが見てとれます。

今回の分析では、民話を読んであらすじに要約(※これは未来社『石見の民話』を底本としているからでして、それをそのまま転載する訳にいきませんので、一旦あらすじに起こすという作業をしているものです。自分で収集した昔話がある場合には不要の過程です)、あらすじをモチーフに分解するという手順を踏んでいます。一文単位で要約していますのでモチーフというよりその一段下のツーク(Zug)とした方がいいかもしれません。

それから、このモチーフを形態素解析にかけて品詞を抽出する作業を行いました。これはネット上に形態素解析のツールが公開されていますので、それを利用しました。

もちろん、あらすじを形態素解析にかけてもいいのですが、抽出したいのは話の骨子ですので、モチーフで十分だろうと考えました。

これで名詞、動詞などの品詞に分解したものから、幾つか主要なものを選んで概念と概念の繋がりを線で結び。名詞―名詞―名詞、名詞―(動詞)―名詞といった形で昔話の図式を抽出しました。

中には、これは名詞ではなく副詞に分類した方がいいのではないかという事例もありますが、サーバーが返した結果をそのまま残しています。

これは、掟想視『思考と発想 ノート術』という電子書籍を読んでの発想です。この本はノート術と発想法について書かれた本で、ノートに思いついた要素を書いていきます。その中で繋がりのある要素同士を線分で結びます。すると、意外なところに繋がりが見つかるという形で着想を得るという手法を解説したものです。

これは発想法であるKJ法を連想させる手法です。

つまり、昔話のどこに着想部分、いいかえれば閃き、ないしは発想の飛躍があるか抽出してみようという試みです。昔話の研究者は基幹プロット、核心モチーフとしていますが、これとほぼ同じであるとしていいでしょう。

これは昔話の誕生がどのように着想されたかを推定するものです。昔話は語りを通じて洗練されていきますが、着想、発想の飛躍というのは一回限りのものです。そこに昔話の源流に遡る鍵があるのではないかと考えたのです。

発想の飛躍とは脳内で神経回路が新たに繋がることでしょう。暗黙知で言えば創発というプロセスに該当します。脳は何もしていない状態では、デフォルト・モード・ネットワークという状態になっており、この際に閃きが起きやすいとされています。入浴や散歩といったリラックスした状態がそれです。私の場合は散歩中は特に浮かんできませんが、考えがいい意味で煮詰まっていると、入浴中にアイデアが湧いてきます。

なお、序盤の昔話では記号論的解釈を行っていますが、以降は行っていません。ここら辺の解釈の問題は将来の課題としたいと思っています。

グリム兄弟以降、昔話の研究が進展していきました。19世紀はまた比較言語学や神話学が発達した時代でもあります。インド-ヨーロッパ語族という枠組みが認知されました。サンスクリット語が高く評価されています。昔話のインド起源説があるそうですが、これは明らかにインド-ヨーロッパ語族の枠組みの中で構想されたものでしょう。『ジャータカ』『パンチャタントラ』といった古い説話集の存在も背景にあります。

19世紀に登場した昔話の起源に関する解釈は、他に自然説話説などがあるようですが、現在では否定されてしまっているようです。

20世紀に入るとフィンランドで叙事詩『カレワラ』の起源を探る研究の中から歴史地理的手法が発達します。歴史地理的手法は昔話を広く収集して、昔話の類話の収集地、収集時期をプロットして相互の比較を行うものです。そういった過程を経て昔話の起源・伝播の様態を考察する手法となっています。

例えば、「帝王と総院長」というバラッドについては、

(1)登場人物
a. 登場人物の数
b. 謎の提出者
c. 被質問者
d. 解答者

(2)謎
a. 謎
b. 実際の謎とその答え
 A:天の高さは?
 B:海の深さは?
 C:海の水の量は?
 …………
 Q:私は何を考えているか

(3)他の項目
a. 謎を出した理由
b. 解答の期限
c. 解答不能の場合の罰
d. 被質問者と解答者の肉体的類似点
e. 解答者すり替えの方法
f. 行為の結果

トンプソン『民間説話 世界の昔話とその分類【普及版】』411P

……といった分析が行われます。

この歴史地理的手法からアールネの昔話の話型(タイプ)インデックスが成立します。これらは昔話の研究に決定的な影響を及ぼしました。また、米国のスティス・トンプソンは話型インデックスの補完とモチーフ・インデックスの編纂を行いました。ATで表記される記号がそれです。

トンプソンの研究は第二次大戦前後に行われたものです。1920年代には既にロシアのプロップの昔話の形態論があったのですが、これが欧州に紹介されるのは1950年代後半になります。その点でモチーフ・インデックスと昔話の機能とは別々に存在する形となっています。

プロップの昔話の形態学はロシア・フォルマリズムという潮流に乗ったものでしたが、プロップの研究が欧米に紹介されることで、構造主義的諸学問に影響を与えたのです。

つまりダンデスのモチーフ素は歴史地理的手法と昔話の形態論を繋げる試みとも見ることができます。

当ブログでは三~四行程度に要約したモチーフの末尾に括弧でくくって[モチーフ素]を追記することで、これがモチーフ素ではないかと提示しています。

当初はモチーフ素間の繋がりに何か意味がないかと思ったのですが、ノートに書き出して線で繋いでみたところ、リニアなのです。プロップ自身、機能の継起順序は常に一定であるとしています。

モチーフ素を抽出する作業は意訳に意訳を重ねるという点で恣意的であり、その点では形態素解析の方が原型を損なうことなく物語の骨子を抽出できるかもしれません。ただ、要するに類話を比較するために抽出するのですから、意訳しても構わないでしょう。

これらの研究が出そろったのは1990年代のようです。平成とほぼ重なりますが、その後の進展は調べた限りでは見られないようです。日本の研究者たちはアジアのインデックス作成に従事しているようです。

昔話より視野を広げればナラトロジーなどがありますが、ここでは昔話の分析に限定しますので取り入れません。ナラトロジーは入門書を読みましたが、誰でも何となくは知っていることで、現状そのレベルで十分かなと考えました。

自力で何か新しいものを付け加えられないかと考えたのが形態素解析です。形態素解析による分析は日本ですと『源氏物語』の各帖の分析が行われたりしています。それには複雑な数式が用いられており、昔話研究というより情報学、計量文献学のジャンルになります。本来は大量のデータを解析するためのツールですが、小文に用いてはいけないという制約はないでしょう。

私は文系かつ事務系ですので統計学的な量的分析の手法は知りません。それで、形態素解析で抽出した品詞から概念同士の繋がりを見て、発想の飛躍を抽出するという試みを行いました。これは文脈の読めないコンピューターでは行えない作業です。

私大文系の限界で、これ以上の分析は出来ないのですが、この分析スタイルについて他の方の意見を聞きたいところです。英語で検索してもヒットするのはプロップの形態論だけですから、海外でもやっている人はいない可能性があります。

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石西編が終わる

未来社「石見の民話」のモチーフ分析、石西編が終わった。これで163話全部終了。6月から始めたので半年かかった。実はこれで終わりではない。初期と現在では分析手法が変わっているので、はじめからロールバックして100話ほど修正しなければならない。負荷のかかるのは粗筋を起こすところなので、山場は過ぎたのだけど、まだ長い作業が待っている。

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長い話――モチーフ分析

◆あらすじ

天からへこ(ふんどし)が下がった。

◆モチーフ分析

・天からふんどしが下がった

 形態素解析すると、
名詞:ふんどし
動詞:下がる
副詞:天から

 天/ふんどしの構図です。天―(下がる)―ふんどしの図式です。

 天からふんどしが下がった[下垂]。

 天からふんどしが下がった……という内容です。

 発想の飛躍は天とふんどしを結びつけることでしょうか。天―(下がる)―ふんどしの図式です。

 天使の梯子(はしご)の様なものでしょうか。ここでは、ふんどしという下着を描写することで尾籠(びろう)さを表現して笑いを誘う意図が見えます。

◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)p.469.

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果てなしばなし――モチーフ分析

◆あらすじ

 とんとん昔もあった。大きな渕があって、その縁(へり)に大きな栃(とち)の木があった。秋になってその実が落ちはじめた。「からから どんぶり からから どんぶり」

◆モチーフ分析

・大きな渕があって、その縁に大きな栃の木があった
・秋になってその実が落ちはじめた
・からから どんぶり からから どんぶり

 形態素解析すると、
名詞:どんぶり 実 栃の木 渕 秋 縁
動詞:ある なる 落ちはじめる
副詞:からから
連体詞:その 大きな

 栃の木/実の構図です。抽象化すると、植物/実です。栃の木―落ちはじめる―実の図式です。

 大きな渕の縁に大きな栃の木があった[存在]。秋になってその実が落ちはじめた[結実]。

 大きな渕の縁にある栃の木から実が落ちはじめた……という内容です。

 発想の飛躍は実が落ちる様を「からから どんぶり」と形容することでしょうか。実―落ちはじめる―どんぶり/からからの図式です。

 栃の木ですので、どんぐりでしょう。秋になって実がなった様を描いています。

◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)p.469.

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なさけない――モチーフ分析

◆あらすじ

 昔、お爺さんとお婆さんがいた。お婆さんは菜を買いに行った。お爺さんは酒を買いに行った。どちらもなかったので、なさけないと言った。

◆モチーフ分析

・お爺さんとお婆さんがいた
・お婆さんは菜を買いに行った
・お爺さんは酒を買いに行った
・どちらもなかったので、なさけないと言った

 形態素解析すると、
名詞:お婆さん お爺さん 買い どちら 菜 酒
動詞:行く いる なさる 言う
形容詞:なし

 お爺さん/お婆さんの構図です。抽象化すると、男の老人/女の老人です。お婆さん―菜―お爺さん―酒の図式です。

 お婆さんが菜を買いにいった[購買]。お爺さんが酒を買いにいった[購買]。どちらもなかったので[不在]、なさけないと言った[感嘆]。

 菜も酒もなかったので、なさけないと言った……という内容です。

 発想の飛躍は、なさけないと言うことでしょうか。菜―なし―酒の図式です。

◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)p.468.

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八人の座頭――モチーフ分析

◆あらすじ

 昔、八人の座頭が山路を歩いていた。すると、路の上へ木の切株がにょきっとのぞいていた。真っ先を歩いていた座頭がごつんと切株で頭を打った。座頭は痛いのをこらえて黙っていた。二番目の座頭もごつんと頭を打った。その座頭も痛いのをこらえて黙っていた。三番目の座頭も頭を打った。そして皆ごつんごつんと頭を打った。そのとき一番目の座頭が今何時(なんどき)じゃと言った。すると一番後ろの座頭が八つの頭(かしら)を今打ったと言った。

◆モチーフ分析

・八人の座頭が山路を歩いていた
・すると路の上へ木の切株がにょきっとのぞいていた
・真っ先を歩いていた座頭がごつんと切株で頭を打った
・座頭は痛いのをこらえて黙っていた
・二番目の座頭もごつんと頭を打った
・その座頭も痛いのをこらえて黙っていた
・三番目の座頭も頭を打った
・そして皆ごつんごつんと頭を打った
・一番目の座頭が今何時じゃと言った
・すると一番後ろの座頭が八つの頭を今打ったと言った

 形態素解析すると、
名詞:座頭 頭 今 切株 一 三 八 一番後ろ 上 二番目 何時 八つ 山路 木 皆 真っ先 路
動詞:打つ こらえる 歩く 言う 黙る のぞく
形容詞:痛い
副詞:ごつんと きっと
連体詞:その

 座頭/切株の構図です。抽象化すると、宗教家/植物です。座頭―切株―座頭の図式です。

 八人の座頭が山路を歩いていた[行進]。一番目の座頭が切株でごつんと頭を打ったが[殴打]痛みをこらえていた[我慢]。続く七人の座頭も皆頭を打った[繰り返し]。一番目の座頭が今何時か訊くと一番後ろの座頭がが八つの頭を今打ったと言った[皮肉]。

 痛いのを我慢していたら、八人とも頭を打ったので、八つの頭を今打ったと言った……という内容です。

 発想の飛躍は座頭が八人とも頭を打ってしまうことでしょうか。座頭―切株―座頭/座頭/座頭/座頭/座頭/座頭/座頭の図式です。

 不意に頭を打ったときはかなり痛いのですが、皆こらえていたというのも面白みがあります。

◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)p.467.

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おばあさんと小僧――モチーフ分析

◆あらすじ

 昔、お婆さんがいた。毎日毎日お寺へ参っては、仏さまの前へ座って、仏さま、この世に自分のようなふ(運)の悪いものはいない。どうぞ早くあの世へ引き取ってくれと言ってお願いしていた。寺にいたずらな小僧がいた。毎日毎日お婆さんがやってきて、同じことをお願いするので、ひとつ悪戯(いたずら)をしてやろうと思った。ある日仏さまの後ろへ隠れて待っていると、お婆さんはいつもの様にやってきて、仏さまの前へ座ってお願いをした。すると小僧が後ろから、よし、お前は毎日きて熱心に頼むから、明日のこの頃には引き取ってやる。安心するがよいと言った。お婆さんはびっくりして、まあ、これの仏さまのような冗談(どうたん)も言えないと言って飛んで帰った。

◆モチーフ分析

・お婆さんがいた
・毎日お寺へ参っては、仏さまの前へ座って、この世に自分ほど運の悪いものはいないから、どうか早くあの世へ引き取ってくれとお願いしていた
・寺にいたずらな小僧がいた
・毎日お婆さんがやってきて同じことをお願いするので、ひとつ悪戯してやろうと思った
・ある日、仏さまの後ろへ隠れて待っていると、お婆さんがいつもの様にやってきて、仏様の前へ座ってお願いをした
・小僧が後ろから、よし、お前は毎日来て熱心に頼むから、明日のこの頃には引き取ってやる。安心するがよいと言った
・お婆さんはびっくりして、まあ、仏さまの様な冗談も言えないと言って飛んで帰った

 形態素解析すると、
名詞:お婆さん お願い 仏 毎日 前 小僧 後ろ あの世 お前 お寺 こと この世 ひとつ びっくり もの 仏様 冗談 安心 寺 悪戯 明日 自分 運 頃
動詞:いる 言う やる 座る 引き取る する 参る 帰る 待つ 思う 来る 隠れる 頼む 飛ぶ
形容詞:よい 悪い 早い
形容動詞:いたずら 同じ 熱心
副詞:ある日 いつも どう
連体詞:この

 お婆さん/仏/小僧の構図です。お婆さん―仏さま―小僧の図式です。

 自分ほど運の悪い者はいない[不幸自慢]から早くあの世へ引き取ってくれと毎日仏さまにお願いに来る婆さんがいた[祈念]。いたずら小僧が仏さまの後ろに隠れて、熱心だから明日には引き取ろうといったところ[ものまね]、婆さんは仏さまの様な冗談も言えないと飛んで帰った[驚愕]。

 願いを叶えてやると言われたところ、それは冗談だと婆さんは言った……という内容です。

 発想の飛躍は小僧が悪戯するところでしょうか。お婆さん―仏さま―小僧の図式です。

 お婆さんは小僧の声を真に受けてしまうところが魅力的です。

◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.465-466.

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2022年11月22日 (火)

和尚さんと小僧――モチーフ分析

◆あらすじ

 昔、あるお寺に和尚がいた。その弟子に「ええかん」という小僧と「こす」という小僧がいた。和尚は大変酒が好きで、毎晩ちびりちびりと飲んでいたが、小僧たちには少しも飲ませなかった。あるとき和尚は酒が無くなったので、小僧や、一寸(ちょっと)用事に行ってくれないかと言った。そして酒と言っては小僧が知るからと思って、酒はあるまいから「ごまず」を買って来てくれと言った。「ええかん」と「こす」は樽を竿に通して担いでいった。そして酒屋へ入ると、ここに「ごまず」はあるまいから酒をいっぱいくれと言って酒樽をのぞけた。小僧さん、酒はあるまいから「ごまず」をくれというのではないかなと酒屋の主人は言った。樽にいっぱい酒を入れてもらうと、「ええかん」と「こす」は竿に通して担いで、唄を唄いながら帰った。しばらく帰ると、これは重い。しんどくていけない。一口飲んでいこうというので、二人は土手の上へ据えてぐいぐい飲んだ。そして川の水を入れて唄いながら帰った。お寺へ帰ると、もう日がとっぷり暮れていた。和尚さま、今帰りましたと言うと、大儀だった。上がって早く寝ないと、また朝うんうん言うからと和尚は言った。小僧たちは夕飯を食べると、早く床へ潜りこんだ。そして今夜は寝たふりをして、寝ないでいようと相談した。和尚は一人になると酒を沸かして、ちびりちびり飲みはじめた。酒はちょうどいい塩梅に沸いていたので、和尚は思わず、ああ、ええかんと独り言を言った。すると、「ええかん」がはあいと言って起きてきた。和尚さま、何か用事ですかと「ええかん」は言った。和尚はしまったと思ったが仕方ない。いや、お前を呼んだのではなかったがと言いながら、「ええかん」にお酒をついでやった。今度は「ええかん」が和尚についだ。「ええかん」は急に徳利を傾けたので、酒がどぶどぶ出て杯からこぼれた。ああ、こすこす(こぼれる)と和尚が言った。すると、「こす」がはあいといって起きてきた。和尚さま、何か用事ですかと「こす」は言ったので、和尚はまた仕方なしに酒をついでやった。

◆モチーフ分析

・あるお寺に和尚がいた。その弟子に「ええかん」という小僧と「こす」という小僧がいた
・和尚は酒が好きで、毎晩ちびりちびり飲んでいたが、小僧たちには少しも飲ませなかった
・あるとき酒が無くなったので、和尚は小僧や、ちょっと用事に行ってくれないかと言った
・酒と言っては小僧が知るからと思って、酒はあるまいから「ごまず」を買って来てくれと言った
・「ええかん」と「こす」は樽を竿に通して担いでいった
・酒屋へ入ると、酒はあるまいから「ごまず」をくれと言って酒樽をのぞけた
・酒屋の主人は、小僧さん、酒はあるまいから「ごまず」をくれではないかと言った
・樽にいっぱい酒を入れてもらい「ええかん」と「こす」は竿に通して担いで唄いながら帰った
・しばらく帰ると、これは重い。しんどくていけない。一口飲んで行こうと言って、二人は土手の上へ据えてぐいぐい飲んだ
・そして川の水を入れて、唄いながら帰った
・お寺へ帰ると、日がとっぷり暮れていた
・和尚さま、今帰りましたと言うと、大儀だった、上がって早く寝ないと、また朝うんうん言うからと和尚は言った
・小僧たちは夕飯を食べると、早く床へ潜りこんだ
・今夜は寝たふりをして寝ないでいようと相談した
・和尚は一人になると酒を沸かして、ちびりちびり飲み始めた
・酒はちょうどいい塩梅に沸いていたので、和尚は思わず「ああ、ええかん」と独り言を言った
・すると、「ええかん」がはあいと言って起きてきた
・和尚さま、何か用事ですかと「ええかん」は言った
・和尚はしまったと思ったが、仕方なく「ええかん」にお酒をついでやった
・今度は「ええかん」が和尚についだ
・「ええかん」は急に徳利を傾けたので、酒が杯からこぼれた
・和尚は、ああ、こすこす(こぼれる)と言った
・すると「こす」がはあいと言って起きてきた
・和尚さま、何か用事ですかと「こす」は言ったので、和尚はまた仕方なしに酒をついでやった

 形態素解析すると、
名詞:和尚 酒 かん 小僧 ごま 用事 あい お寺 樽 竿 酒屋 いっぱい お酒 これ とき ふり 一人 一口 上 主人 二人 今 今夜 今度 土手 塩梅 夕飯 大儀 少し 川 床 弟子 徳利 日 朝 杯 水 独り言 相談 酒樽
動詞:言う こす 帰る 飲む ある つぐ 寝る 思う いう いる くれる こぼれる 入れる 唄う 行く 起きる 通す くる しまう する なる のぞく 上がる 傾ける 入る 担う 担ぐ 据える 暮れる 来る 沸かす 沸く 潜りこむ 無くなる 知る 買う 食べる 飲み始める
形容詞:早い いい しんどい ない 仕方ない 重い
形容動詞:好き
副詞:ああ ちびりちびり また 何か うんうん ぐいぐい しばらく ちょうど ちょっと とっぷり 仕方なしに 急に 毎晩
連体詞:ある その

 和尚/小僧の構図です。抽象化すると、師匠/弟子です。和尚―酒―ええかん/こすの図式です。

 和尚は小僧に酒と悟られないように「ごまず」を買ってこいと言った[お使い]。が、意図を見抜いていた小僧たちは酒を買って[購入]、途中で飲んで帰る[盗み飲み]。その夜、和尚が一人で酒を飲んでいると[一人酒]、「ええかん」「こすこす」と言ったので[独り言]、呼ばれた振りをして小僧が起きてくる[起床]。

 「ええかん」「こすこす」と言ったので、自分たちが呼ばれた振りをして小僧たちが起きてくる……という内容です。

 発想の飛躍は小僧たちの名前が「ええかん」「こす」であることでしょうか。和尚―酒―ええかん/こすの図式です。

 お寺では酒は般若湯と呼びますが、小僧たちの年齢で飲めたのでしょうか。

◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.461-464.

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2022年11月21日 (月)

美学的観点から――マックス・リュティ『昔話 その美学と人間像』

マックス・リュティ『昔話 その美学と人間像』(小澤俊夫/訳)を読む。リュティの本は抽象的議論に終始しており、内容を要約しづらい。

メルヘンでは美を描写することは無い。それは語り手の資質に由来するものではなく、描写しないことで美を強調するのである。美はその程度を述べるにあたって、その美しさの及ぼす働き、言い換えれば美の作用を以て表現する。沈黙させたり、身動きできなくなるといった形でである……といった美学的な話が中心である。

昔話研究ではリュティが最も独自性のある研究者かもしれない。

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彼岸――モチーフ分析

◆あらすじ

 昔、たいそう仲の悪い嫁と姑とがいた。あるとき、また二人が喧嘩をはじめた。嫁は彼岸を「ひいがん」だと言った。姑はいや、ひいがんではない、「ひがん」だと言った。何遍言っても、どちらも自分の言うのが本当だと言って聞かない。しまいにはつかみ合いになって叩いたり蹴ったりして喧嘩をしたが、それでも勝負がつかない。それでとうとう、それならお寺へ行って和尚に決めてもらおうということになった。嫁と姑とは二人連れでお寺へ行って、和尚に訳を話した。そして、どちらが本当かと言った。和尚は前の三日がひいがんで、後の三日がひがんで、中に一日(ひてえ)がお中日と言った。それでどちらも勝ち負けはなかった。

◆モチーフ分析

・たいそう仲の悪い嫁と姑がいた
・また二人が喧嘩をはじめた
・嫁は彼岸を「ひいがん」だと言った
・姑はひいがんではない、「ひがん」だと言った
・どちらも自分の言うのが本当だと言って聞かない
・しまいにはつかみ合いになって叩いたり蹴ったりして喧嘩をしたが、勝負がつかない
・それならお寺へ行って和尚に決めてもらおうということになった
・嫁と姑は二人連れでお寺へ行って、和尚に訳を話した
・そしてどちらが本当か尋ねた
・和尚は前の三日がひいがんで、後の三日がひがんで、中に一日がお中日と言った
・それでどちらも勝ち負けはなかった

 形態素解析すると、
名詞:どちら 和尚 姑 嫁 三 お寺 がん 喧嘩 本当 一 お中日 こと しまい それ ひがん 中 二人 二人連れ 仲 前 勝ち負け 勝負 彼岸 後 自分 訳
動詞:言う ひく する なる 行く いう いる つかみ合う つく はじめる ひがむ 叩く 尋ねる 決める 聞く 話す 蹴る
形容詞:ない 悪い
副詞:たいそう また

 嫁/姑の構図です。抽象化すると、女/女の家族です。嫁―彼岸―姑、和尚―彼岸―嫁/姑の図式です。

 仲の悪い嫁と姑がいて[不仲]、彼岸を何と読むかで喧嘩になった[論争]。和尚に裁定してもらおうと寺に行ったが[裁定]、和尚は双方の言い分を聞いて勝負が付かなかった[引き分け]。

 彼岸を何と読むかで和尚に裁定してもらったが、和尚は双方の言い分を聞いて勝負がつかなかった……という内容です。

 発想の飛躍は彼岸を「ひいがん」と読むか「ひがん」と読むかということでしょうか。彼岸―ひいがん/ひがんの図式です。

◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)p.460.

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西行法師と小野小町――モチーフ分析

◆あらすじ
 昔、西行法師が阿波の鳴門があまりに大きな音をたてて鳴るので、これを封じようと思ってやってきた。鳴門の手前のところで小野小町が茶屋を出していた。西行は小野小町とは知らないから茶店へ寄ってお茶を飲んで色々話すうちに、小町がお坊さまはこれからどちらへお出ででございますかと尋ねた。自分は阿波の鳴門があまり大きな音で鳴るので、これを封じようと思ってきたところだと西行が言うと、それではお坊さまは何で封じようと思われますかと小町が言った。自分は「山畑の」でいこうと思うと西行は答えた。小町はそれを聞くと一寸(ちょっと)用事に立ったような振りをして、裏から出て鳴門へ向かって「山畑のつくり荒らしのととこ草 粟になれとは誰がいうたか」と歌を詠んだ。すると、それまで大きな音をたてていた鳴門はぱったり止んだ。しまった、西行は気がついて慌てて鳴門へ飛んでいったが、小町に先を越されて負けてしまった。

◆モチーフ分析

・西行法師が阿波の鳴門があまりに大きな音をたてて鳴るので、これを封じようと思ってやってきた
・鳴門の手前で小野小町が茶屋を出していた
・西行は小野小町とは知らないから茶店へよってお茶を飲んで色々話をした
・小町がお坊さまはこれからどちらへお出ででございますかと尋ねた
・西行法師が阿波の鳴門が大きな音を立てて鳴るのを封じようと思って来たところだと言った
・小町がそれではお坊さまは何で封じようと思われますかと訊いた
・西行は「山畑の」でいこうと思うと答えた
・それを聞いた小町はちょっと用事に立ったような振りをして、裏から出て鳴門へ向かって「山畑のつくり荒らしのととこ草 粟になれとは誰がいうたか」と歌を詠んだ
・すると、それまで大きな音をたてていた鳴門がぱったり止んだ
・西行は気がついて慌てて鳴門へ飛んでいったが、小町に先を越されて負けてしまった

 形態素解析すると、
名詞:鳴門 小町 西行 音 お坊さま これ それ 小野小町 山畑 西行法師 阿波 お出で お茶 たか つくり とこ ところ どちら 先 手前 歌 気 用事 粟 色々 茶屋 茶店 裏 話 誰
動詞:思う 封じる する たてる 鳴る いう いく ござる つく なる やる よる 出す 出る 向かう 尋ねる 慌てる 振る 来る 止む 知る 立つ 立てる 答える 聞く 言う 訊く 詠む 負ける 越す 飛ぶ 飲む
副詞:あまり それまで ちょっと ぱったり 何で
連体詞:大きな

 西行法師/小野小町の図式です。抽象化すると、男の歌人/女の歌人です。西行―鳴門―小町の図式です。

 阿波の鳴門の音を封じよう[封印]と思ってきた西行法師を小野小町が茶店で迎えた[歓迎]。小町としらない西行は自分の目的を話し[説明]、「山畑の」で封じるつもりだと言うと[秘密漏洩]、それを聞いた小町が「山畑の」で歌を詠み[模倣]、鳴門を封じてしまった[封印]。

 小町にうっかり意図を話したところ、模倣されて先を越されてしまった……という内容です。

 発想の飛躍は「山畑の」でしょうか。鳴門を封じるキーワードになります。西行―山畑の―小町の図式です。

 石西の人は西行法師が負ける話が好みなのでしょうか。これも歌心があって魅力的です。

◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.458-459.

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2022年11月20日 (日)

西行歌くらべ――モチーフ分析

◆あらすじ

 昔、西行法師が諸国修行の旅に出た。ちょうど今日のようなとても暑い日に歩いていったら、あるお宮のところへ行った。そして何と涼しい、いい塩梅だと腰を下ろして休んでいたが、一つここで歌を詠んでやろうと思って「このほどに涼しき森でありながら 熱田が森とは神もいましめ」と読んだ。するとお宮の宮司が出て「西行の西という字は西とかく 東にむいてなぜに行くかな」と詠んだ。それで西行は負けてしまった。それからまた歩いていたら、暑くていけない。困ったことだ。ここはどこか知らないが、喉が渇いていけない。お茶を一杯飲みたいと思って行くと、娘が二階で機を織るのが聞こえてきた。西行はここで一つ、あの娘のところでお茶を貰って飲もうと思って、もしもし姉さん、暑くていけないが、お茶を一杯飲ませてくれないかと言った。すると娘は戸をパチーンとたてて内へ入って下へ下りてしまった。西行はがっかりして、せっかく茶をもらって飲もうと思ったのに戸をたててしまいやがった。親切気のない奴だ。一つ歌を詠んでやろうと思って「パッチリとたった障子が茶になれば 旅する僧ののどはかわかん」と詠んだ。すると娘が家の中から「シャンシャンと煮えたつまでのたて障子 すこし待たんせ 旅の御僧」と詠んだ。西行は歌でやられたので、茶も飲むことができないで歩いていった。それからだいぶ行ったが暑くてかなわないので、谷ばたに木陰があったので、そこでしばらく休むことにした。すると、ほとりに亀が昼寝をしていた。ちょうどその時、糞をしたくなったので、よし、一つこの亀の上にひりかけてやれと思って、亀の背中にひりかけた。すると亀がびっくりして、糞を負って逃げ出した。これは面白いと思って「西行もいくらの修行もしてみたが 生き糞ひったのはこれが始めて」と歌を詠んだ。すると亀が「道ばたに思わずしらず昼寝して 駄賃とらずの重荷負い」と詠んだので、西行がまたやられた。それからしばらく行くと、下の谷川で十二、三の小娘が菜を洗っていた。娘はいかにも思い詰めたように西行を見ているので、この娘は自分に惚れたかと思って「十二や三の小娘が 恋路の道を知ることはなるまい」と歌を詠んだ。すると娘が「おおそれや谷あいのつつじ椿をご覧ない せいは小さいが花は咲きます」と詠んだ。これはまたやられたと思って、それからまた行っていたら広いところへ出た。ここは奥州の鳴滝川という川のほとりであった。西行はお腹がすいたので、粉を出して食べた。粉は口のほとりへまぶれるので、それを拭いては食べていると、馬が菰(こも)を背に乗せて川を向こうへ渡った。ところがその馬がやせていて、骨と皮ばかりであった。これを一つ歌に詠んでやろうと思って、西行は「奥州の鳴瀬川とは音に聞けど 菰のせ馬がやせ渡る」と詠んだ、すると馬追いが「奥州の鳴瀬川とは音には聞けど 粉食い坊主がむせ渡る」と詠んだ。それで、西行はどうしても歌に負けた。

◆モチーフ分析

・西行法師が諸国修行の旅に出た
・暑い日に歩いていったら、あるお宮のところへ行った
・これは涼しいと腰を下ろして休んでいたら、一つここで歌を詠んでやろうと思った
・「このほどに涼しき森でありながら 熱田が森とは神もいましめ」と詠んだ
・するとお宮の宮司が出て「西行の西という字は西とかく 東にむいてなぜに行くかな」と詠んだ
・西行は負けてしまった
・また歩いていたら、暑くていけない。ここはどこか知らないが喉が渇いていけない、お茶を一杯飲みたいと思っていくと、娘が二階で機を織るのが聞こえてきた
・西行は娘に暑くていけないが、お茶を一杯飲ませてくれないかと言った
・すると娘は戸を立てて内へ入って下へ下りてしまった
・西行はがっかりして、せっかく茶を貰って飲もうと思ったのに戸をたててしまいやがった。親切気のない奴だ。一つ歌を詠んでやろうと思った
・「パッチリとたった障子が茶になれば 旅する僧ののどはかわかん」と詠んだ
・すると娘が家の中から「シャンシャンと煮えたつまでのたて障子 すこし待たんせ 旅の御僧」と詠んだ
・歌でやられたので、西行は茶を飲むことができないで歩いていった
・それからだいぶ行ったが暑くてかなわないので木陰でしばらく休むことにした
・すると、ほとりに亀が昼寝をしていた
・西行はちょうどその時、糞をしたくなったので、一つこの亀の上にひりかけてやろうと思って、亀の背中にひりかけた
・すると亀がびっくりして、糞を負って逃げ出した
・これは面白いと思って「西行もいくらの修行もしてみたが 生き糞ひったのはこれが始めて」と詠んだ
・すると亀が「道ばたに思わずしらず昼寝して 駄賃とらずの重荷負い」と詠んだ
・西行はまたやられた
・それからしばらく行くと、下の谷川で十二、三歳の小娘が菜を洗っていた
・娘は思い詰めたように西行を見ているので、この娘は自分に惚れたかと思って「十二や三の小娘が 恋路の道を知ることはなるまい」と詠んだ
・すると娘が「おおそれや谷あいのつつじ椿をご覧ない せいは小さいが花は咲きます」と詠んだので、またやられた
・それからまた行っていたら広いところへ出た
・奥州の鳴滝川という川のほとりであった
・西行はお腹がすいていたので、粉を出して食べた
・粉は口のほとりにまぶれるので、それを拭いては食べていると、馬が菰を背に乗せて川を向こうへ渡った
・その馬は痩せて骨と皮ばかりであった
・これを一つ歌に詠んでやろうと思って、「奥州の鳴瀬川とは音に聞けど 菰のせ馬がやせ渡る」と詠んだ
・すると馬追いが「奥州の鳴瀬川とは音には聞けど 粉食い坊主がむせ渡る」と詠んだ
・それで西行はどうしても歌に負けた

 形態素解析すると、
名詞:西行 娘 亀 歌 これ 一つ こと ほとり 奥州 旅 粉 糞 茶 十二 三 お宮 お茶 ここ ところ 下 修行 僧 小娘 川 戸 昼寝 森 菰 西 障子 音 馬 鳴瀬川 二重 いくら お腹 このほど ご覧 すこし それ たて つつじ のど びっくり 上 中 内 口 向こう 喉 坊主 奴 字 宮司 家 恋路 日 時 木陰 東 椿 機 滝川 熱田 皮 神 背 背中 腰 自分 花 菜 西行法師 親切気 諸国 谷あい 谷川 道 道ばた 重荷 馬追い 駄賃 骨 鳴
動詞:詠む 思う する 行く 飲む ひる やる 出る 歩く 渡る いう なる 休む 知る 聞く 負う 負ける 食べる いましめる おそれる かく かわかす しる すく たつ たてる できる とる のせる まぶす むく むせる やせる 下りる 下ろす 乗せる 入る 出す 咲く 始める 待つ 思い詰める 惚れる 拭く 洗う 渇く 煮えたつ 生きる 痩せる 立てる 織る 聞こえる 見る 言う 貰う 逃げ出す
形容詞:暑い ない 涼しい かなわない 小さい 広い 面白い
形容動詞:一杯
副詞:また しばらく がっかり せっかく だいぶ ちょうど どう どこか なぜ シャンシャン パッチリ 思わず
連体詞:この その ある

 西行/旅で遭った人の構図です。西行―歌―宮司、西行―歌/お茶―娘、西行―糞/歌―亀、西行―歌/恋―娘、西行―歌/馬―馬追いの図式です。

 諸国修行の旅に出た西行はお宮で休憩[休憩]して歌を詠んだところ[詠歌]、宮司に詠み返されて負けてしまう[敗北]。次に機織りの娘に茶を所望したが[所望]断られ歌を詠むと詠み返されて負けてしまう[敗北]。次に休憩したとき、亀に糞をひりかけて[脱糞]歌を詠んだところ詠み返されて負けてしまった[敗北]。次に十二三の娘に恋の歌を詠みかけたが[恋]、詠み返されてしまい負けてしまった[敗北]。次に川辺で痩せ馬を歌に詠んだところ[描写]、馬追いに詠み返されてまた負けてしまった[敗北]。

 諸国修行の旅に出た西行だったが、遭う人遭う人に歌で負けてしまう……という内容です。

 発想の飛躍は西行が詠んだ歌でしょうか。西行なのにことごとく詠み負けてしまいます。私は詩心がないので歌のやり取りが魅力的に見えます。

◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.454-457.

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呼び子――モチーフ分析

◆あらすじ

 昔、木挽きが二人で山へ仕事に入っていた。深い山の中で小屋に泊まり込んで仕事をしていたが、ある日夕方になって一人が帰ってこなかった。どうしたのだろうと思って待ってみたが、暗くなっても帰ってこないので、おーい、××やーいと大きな声で呼んだ。すると向こうの山から、おういと化物が呼び返してきた。男はしまったと思った。これは呼び子という化物で、これに呼び返しをされると、負けない様にこっちからも呼び返ししないと、呼び負けると死ぬということを聞いているからである。それで男はおういと呼び返した。すると、向こうからもやっぱり、おういと呼び返してくる。男は一生懸命に呼び返しをした。その内に次第次第に喉が痛くなり、声がかすれてきた。それでも負けられない。おうい、おうい、そうして呼び返しをしている内にようやく東が白んで夜が明けてきた。そこでようやく呼び子は呼ぶのを止めた。男はぐったりしてへたばった。そこへ連れの男が帰ってきた。お前はゆうべはどこへ行ってたのか。なんぼ待っても戻らないから大声で叫んだ(ひゃこった)が、お前が声をかけてくれないから、とうとう呼び子が声をかけてきた。呼び負けたら死ぬという話を聞いているから夜が明けるまで呼んでおった。それでとうとう息がきれてしまうところだったと男は言った。こういうことがあるから、山では一人では人を呼ぶものではないということである。

◆モチーフ分析

・木挽きが二人で山へ仕事に入っていた
・深い山の中で小屋に泊まり込んで仕事をしていたが、ある日夕方になって一人が帰ってこなかった
・どうしたのだろうと思って待ってみたが、暗くなっても帰ってこないので、大声で呼んだ
・すると向こうの山から、おういと化物が呼び返してきた
・男はしまったと思った
・呼び子という化物で、これに呼び返されて呼び負けすると死ぬという
・男は、おういと呼び返した
・向こうからもやはり、おういと呼び返してくる
・男は一生懸命に呼び返しをした
・その内に次第に喉が痛くなり、声がかすれてきた
・それでも負けられない
・おうい、おういと呼び返している内にようやく東が白んで夜が明けてきた
・それで呼び子は呼ぶのを止めた
・男はぐったりしてへたばった
・連れの男が帰ってきた
・呼び子の正体は連れの男だった
・こういうことがあるから、山では一人では人を呼ぶものではない

 形態素解析すると、
名詞:木 二 山 仕事 山 中 小屋 仕事 日 夕方 一 の 大声 向こう 山 おう いと 物 男 呼び子 物 男 おうい 向こう おうい 男 喉 声 おうい おうい 内 東 夜 呼び子 の 男 男 呼び子 正体 男 こと 山 一 人 もの
動詞:挽く 入る 泊まり込む する ある なる 帰る 思う 待つ 帰る 呼ぶ 呼ぶ 返す しまう 思う いう 呼ぶ 返す 呼ぶ 負ける する 死ぬ いう 呼ぶ 返す 呼ぶ 返す 呼ぶ 返す する かすれる 負ける 呼ぶ 返す 白む 明ける 呼ぶ 止める する へたばる 連れる 帰る 連れる ある 呼ぶ
形容詞:深い 暗い 一生懸命だ 痛い
副詞:やはり その内 次第に ようやく ぐったり

 男/呼び子の構図です。抽象化すると、人間/妖怪です。男―呼び子―もう一人の男という図式です。

 深い山中に二人で小屋がけして泊まり込んでいた[宿泊]木挽きだが、ある日一人が帰ってこなかった[未帰還]。おーいと呼んだところ、呼び子が呼び返してきた[応答]。呼び負けると死ぬので夜明けまで呼び合いを続けた[応答合戦]。もう一人が帰ってきて呼び子だと思ったのは、もう一人の呼び声だと分かった[判明]。

 呼び子だと思って呼び合っていたところ、もう一人の呼び声だった……という内容です。

 発想の飛躍は、呼び子という化物の存在でしょうか。呼び負けると死んでしまうという意味では怖い存在です。男―呼び子―もう一人の男という図式です。

◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.452-453.

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2022年11月19日 (土)

蛙の恩返し――モチーフ分析

◆あらすじ

 昔、あるところに男がいた。ある日道を歩いていると、蛇が蛙(かえる)をくわえて呑もうとしていた。男はそれを見ると蛙がかわいそうになって、まあ悪いことをする。その蛙を放してやれ。自分の女房にしてやるからと言った。すると蛇はくわえていた蛙を放してするすると草の中へ入ってしまった。自分の言うことを聞いたものだと男は思った。それと共にえらいことを言ったものだと後悔したが、もうどうすることもできない。どうしたものか思案していた。しばらくして、きれいな女が男のところを訪ねてきた。この間約束したが、蛙を許してやったから、あなたの女房にしてくださいと女は言った。それはまあ、ああして約束したのだから、しないとは言えない。困ったことだと思ったが、約束したので女房にした。ところが男は自分の女房は蛇だ。困ったものだのうと思えば思うほど気持ちが悪くてたまらない。とうとう気病みになって床についてしまった。ある日この家へ一人の男がやって来て、ここには病人がいるということだが悪いことだと言った。それで事情を話したところ、ああ、あなたの病気にはいい薬があるがと言った。何だろうか。それは、これの背戸の大きな松の枝へ鷹(たか)が巣をかけている。その卵をとって飲んだら、たちまち良くなると男は言った。それを聞くと、男はいいことを聞いたと思って、鷹の卵をとるというのは容易なことじゃあないがと思って、女房にその話をした。すると女房は、それなら自分がとってあげる。自分なら木へ昇るのは上手だから、必ずとってあげると言った。男は喜んで、それなら取ってきてくれと言って頼んだ。女房は背戸の松の木へ行ってみた。大きな松の木のずっと上に鷹の巣がある。とても高くて女の姿では昇ることはできない。女房は元の蛇になってするすると昇っていった。ところが、巣のところへ行って卵を取ろうとするのを鷹が見つけた。雀のような小さな鳥ならどうすることもできないが、鷹のことである。二羽の鷹は鋭いくちばしと爪で飛びかかって蛇を殺してしまった。これを見たよそから来た男はくっくと笑って草の中へ姿を隠した。それは男が助けてやった蛙であった。

◆モチーフ分析

・あるところに男がいた
・ある日道を歩いていると、蛇が蛙をくわえて呑もうとしていた
・男はかわいそうに思って、その蛇を放してやれ、自分の女房にしてやるからと言った
・蛇はくわえていた蛙を放して草の中へするすると入ってしまった
・えらい事を言ったものだと後悔したが、もうどうすることもできない
・しばらくして、きれいな女が男のところを訪ねてきた
・この間約束したが、蛙を放してやったから、女房にしてくださいと女は言った
・約束したのだから、しないとは言えない
・困ったことだと思ったが、約束したので女房にした
・男は自分の女房は蛇だと思えば思うほど気持ち悪くてたまらない
・とうとう気病みになって床についてしまった
・ある日、この家へ一人の男がやって来て、ここには病人がいるということだが悪いことだと言った
・事情を話したところ、あなたの病気にはいい薬があると言った
・それは、背戸の大きな松の枝へ鷹が巣をかけている。その卵をとって飲んだら、たちまち良くなると男は言った
・いいことを聞いたと思って、鷹の卵をとるのは容易なことではないと思って、女房にその話をした
・女房は、それなら自分がとってあげると言った
・男は喜んで、それなら取ってきてくれと言って頼んだ
・女房は背戸の松の木へ行ってみた
・大きな松のずっと上に鷹の巣がある
・とても高くて女の姿では昇ることができない
・女房は元の蛇になってするすると昇っていった
・巣のところへ行って卵をとろうとするのを鷹が見つけた
・二羽の鷹は鋭いくちばしと爪で飛びかかって蛇を殺してしまった
・これを見た他所から来た男はくっくと笑って草の中へ姿を隠した
・それは男が助けてやった蛙であった

 形態素解析すると、
名詞:男 女房 こと 蛇 それ ところ 蛙 鷹 卵 女 約束 自分 中 姿 巣 松 背戸 草 二 あなた かわいそう きれい くちばし くっく ここ これ もの 一人 上 事 事情 他所 元 家 容易 床 後悔 松の木 枝 気病み 爪 病人 病気 薬 話 道 間 鷹の巣
動詞:する 言う 思う とる やる 放す ある いる くわえる できる なる 昇る 行く あげる いう かける つく やって来る 入る 助ける 取る 呑む 困る 来る 歩く 殺す 笑う 聞く 見つける 見る 訪ねる 話す 隠す 頼む 飛びかかる 飲む
形容詞:いい えらい たまらない ない 悪い 気持ち悪い 良い 鋭い 高い
副詞:ある日 しばらく ずっと たちまち とうとう とても どう もう 喜んで 思うほど
連体詞:その この 大きな ある

 男/女房/他所から来た男の構図です。男/蛇/蛙でもあります。抽象化すると、男/動物/動物です。男―女房/蛇―男/蛙、女/蛇―卵―鷹の図式です。

 蛙を助けたら嫁にしてやると蛇に約束した男だったが[約束]、果たして女が嫁にして欲しいとやって来たので嫁にする[成就]。気に病んで床についた男だったが[病気]、他所から来た男が鷹の卵を飲めば治ると教えた[教示]。女は蛇の姿に戻って卵を取ろうとしたが[変化を解く]、鷹が蛇を殺してしまう[殺害][婚姻の解消]。他所から来た男は男が助けた蛙だった[正体露見]。

 鷹の卵を取りに蛇の姿に戻ったところ、親の鷹に殺されてしまった……という内容です。

 発想の飛躍は、鷹の卵を飲めば病気が治ると教えることでしょうか。女/蛇―卵―鷹の図式です。

 異類婚姻譚ですが、この話では女房が蛇であることを知って気味悪がっているという点が特徴です。婚姻は解消されますが、望んでのことである点が他の異類婚姻譚とは異なっています。

◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.449-451.

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2022年11月18日 (金)

手水をまわせ――モチーフ分析

◆あらすじ

 昔、あるところに一人の庄屋がいた。あるとき代官が見回りにきて庄屋の家で泊まることになったので、庄屋はたいそう恐れて取りもった。明くる朝代官が縁側へ出て手を叩いたので、下女が飛んでいってご用を伺うと、代官は手水(ちょうず)をまわせと言った。下女は驚いて庄屋のところへ行って、代官が手水をまわせと言っているがどうしようと言ったので、庄屋はびっくりして、手水をまわせと言われても、厠(かわや)は九尺二間に風呂場がついているから回すことはできないと言って、下男の長吉を呼んで寺へ行って訊いてこいと言った。長吉はさっそく飛んでいって尋ねたので、和尚さんはびっくりして何事だと言うと、長吉が事情を説明した。和尚は字引きを出して調べていたが、分かった。ちょうは長い、ずは頭だ。ちょうずというのは長い頭だ。お前の頭は長いから、それを回せばいいと言った。長吉は飛んで帰ってみると、代官はしきりに手水をまわせと催促していた。そこで長吉は代官の前へ行って、ただ今回しますと言って、長い頭をぎいらりぎいらり回しはじめた。代官はこれを見ておかしな事をする奴だと思って、早く手水をまわせと催促した。長吉はただ今回しているところですと言うので、代官は不思議に思って、どうして頭を回しているのかと問うと、ちょうは長い、ずは頭ですから、私の長い頭を回しているのですと長吉は答えた。代官は笑って、手水とはそうではない。顔を洗う水のことだと言って聞かせた。代官が帰った後で、庄屋が自分もひとつ旅に出て代官の通りにやってみようと思って、ある宿屋に泊まった。朝になって縁側へ出て、手水をまわせと言ったら、下女はたらいに水を入れて塩を持ってきた。庄屋はどうしてよいかさっぱり分からないが、これはこの水に塩を入れて飲むのに違いないと思って、水の中に塩を入れて、飲みにくいのを我慢してみんな飲んでしまった。それから家に帰って話すと、下女が代官さまは塩で歯をすり、水で顔を洗ったと言ったので、庄屋はこれはしまった。やり直してこようと言ってまた旅に出て前の宿屋に泊まった。庄屋は朝になって縁側に出て、手水をまわせと言うと、宿の者が、あのお客はこの前泊まったとき手水を使わずに飲んでしまったから、きっとお腹がすくのであろうと言って、今度は下女が盆に団子をのせて梅干を添えて持ってきた。はあ、水の代わりに団子。塩の代わりに梅干だなと思って、梅干で歯をすり、団子を潰して顔に塗りまわしたので、宿の者はおかしくてたまらず、それは顔につけるものではない、食べるものだと言った。

◆モチーフ分析

・あるところに一人の庄屋がいた
・あるとき代官が見回りにきて庄屋の家で泊まることになった
・庄屋はたいそう恐れて取りもった
・明くる朝、代官が縁側へ出て手を叩いたので、下女がご用を伺うと、代官は手水をまわせと言った
・下女は驚いて庄屋のところへ言って手水をまわせと言っているがどうしようと言った
・庄屋はびっくりして、厠は九尺二間に風呂場がついているから回すことはできないと言って、下男を呼んで寺へ行って尋ねさせた
・和尚が何事だと言うと下男が事情を説明した
・和尚は字引を出して調べていたが、ちょうは長い、ずは頭だ。つまり、ちょうずは長い頭だ。下男の頭は長いから、それを回せばいいと言った
・下男が飛んで帰ってみると、代官はしきりに手水をまわせと催促していた
・下男は代官の前へ行って長い頭を回しはじめた
・代官はおかしな事をする奴だと思って、早く手水をまわせと催促した
・下男はただ今回しているところですと言った
・代官が不思議に思って、どうして頭を回しているのかと問うと、ちょうず、つまり自分の長い頭を回しているのだと下男は答えた
・代官は笑って、手水とは顔を洗う水のことだと言って聞かせた
・代官が帰った後で、庄屋は自分も旅に出て代官の通りにやってみよと思って、ある宿屋に泊まった
・朝になって縁側へ出て、手水をまわせと言ったら、下女はたらいに水を入れて塩を持ってきた
・庄屋はどうしたらよいか分からないが、これはこの水に塩を入れて飲むのだろうと思って、我慢してみんな飲んでしまった
・それから家へ帰って話すと、下女は代官は塩で歯をすり、水で顔を洗ったと言った
・しまった、やり直してこようと思った庄屋はまた旅に出て前の宿屋に泊まった
・朝になって庄屋は縁側に出て手水をまわせと言った
・宿の者はあの客はこの前泊まったとき手水を使わず飲んでしまったから、きっとお腹がすくのだろうと思って、今度は盆に団子と梅干しを載せて持ってきた
・庄屋は梅干で歯をする、団子を潰して顔に塗り回した
・宿の者はおかしくてたまらず、それは顔につけるものではない、食べるものだと言った

 形態素解析すると、
名詞:代官 庄屋 手水 下男 頭 下女 水 顔 こと 前 塩 縁側 それ ちょうず とき ところ もの 催促 和尚 団子 家 宿 宿屋 朝 歯 者 自分 お腹 これ ご用 ただ今 たらい ちょう とこ びっくり また旅 みんな 一人 不思議 九尺二間 事 事情 今度 何事 厠 奴 字引 客 寺 後 我慢 手 旅 明くる朝 梅干 梅干し 盆 説明 通り 風呂場
動詞:言う する まわす 思う 出る 回す 泊まる なる 帰る 飲む 入れる 持つ 洗う 行く いる くる すく たまる つく つける できる やり直す やる 伺う 使う 出す 分かる 取りもつ 叩く 呼ぶ 問う 回しはじめる 塗り回す 尋ねる 恐れる 潰す 笑う 答える 聞く 見回る 話す 調べる 載せる 飛ぶ 食べる 驚く
形容詞:長い いい おかしい ない よい 早い
副詞:どう きっと しきりに たいそう
連体詞:ある この あの おかしな

 庄屋/下女/代官、下男/和尚、庄屋/宿の者といった構図です。庄屋―下女―手水―代官、下男―手水―和尚、下男―(回す)―代官、庄屋―手水―宿の者といった図式です。

 代官を泊めることになった庄屋は代官の手水をまわせという言葉が理解できず[理解困難]、寺の和尚にまで聞きにいくが[使い]和尚も知らなかった[不知]。代官が手水の意味を説明してその場は収まったが[収束]、庄屋は自分もと旅に出て宿を借りた[模倣]。そこで手水の意味を誤解して宿の者に笑われた[勘違い]。

 手水を使う様子を下女に聞かないまま宿を借りた庄屋は恥をかいてしまった……という内容です。

 発想の飛躍は庄屋の周りの者、和尚ですら手水を回すの意味を知らなかったことでしょうか。和尚―手水―ちょう―長―ずー頭―下男、庄屋―水―塩―手水―宿の者という図式です。

◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.445-448.

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2022年11月17日 (木)

弓の名人――モチーフ分析

◆あらすじ

 昔、ある田舎に百姓の息子がいた。毎日毎日仕事をしていたが、百姓が嫌になったので、一つこれから侍になってやろう。侍になったら威張ることができると思った。そこで刀を二本求めて腰に差し、旅に出た。その内に日が暮れたので宿へ泊まった。部屋に通されたところ、床の間に長刀(なぎなた)が飾ってあった。この長刀は自分がいつも使う鎌とは大分違うと息子はつくづく長刀を見て感心した様につぶやいた。刀かけを見ると刀がかけてある。息子は手にとって抜いて見た。刀はぴかぴか光っている。これが本当の名剣というものだと息子はつぶやいた。ほとりに弓があった。息子は弓を取り上げると、矢をつがえてみた。一生懸命引き絞ってパッと放した。すると矢は障子をぶすっと射ぬいて外へ飛んでいってしまった。しまった。これは大事になった。誰かやかましく言ってくるに違いない。早く出ていこう。息子は慌てて庭へ下りて草鞋(わらじ)を履いていると、隣の家の人がごめんくださいと宿屋へ入ってきた。何を言うかと思って聴いていると、この宿にお侍さんが泊まっているかとその人は宿の者に尋ねた。これはしまった。あの弓を射たのでやられるに違いないと思っていると、それでは今弓を射てくれたのはその人に違いない。実はうちの蔵へ盗人が入って物を盗って出ようとするところへ矢が当たって盗人が倒れたので、おかげで物を盗られずに済んだと言った。息子はそれを聞くと、早速草履を脱いで座敷へ上がってかしこまっていた。するとそこへ、弓を射てくださったお侍というのはあなたかと言ってさっきの隣の人が入ってきた。その人はお礼に沢山の金をくれた。それからこの話が段々伝わって隣の村へ聞こえた。隣の村では猪が出て田畑を荒らす。何とかして退治せねばと言っているところだったので、隣の村に弓の名人がいるということだ。それに頼んで退治してもらおうということになって頼みに来た。息子は引き受けた。馬の用意をせよと言った。馬を連れてきたが、息子は馬に乗ったこともなければ、馬に乗ったのを見たこともないので、大きなことを言ったが困ったと思った。それから馬の上へ這い上がって後ろ向きに乗った。そして尻尾を固く握りしめた。この侍は不思議な侍だと言いながら隣村の百姓たちは馬の後ろへついて行った。その内に川へ来た。馬が川へ下りていくと、尻尾の方が高くなって、とてもいい具合だった。百姓たちは感心した。ところが川を渡ると、今度は向こうの岸へ上がることになった。馬は立った様に前が高くなったので、息子は弓を持ったまま、どぶんと川へ落ちてしまった。百姓たちがたまげると、その方ども、何を騒ぐかと言って息子は鮎を二尾ほど矢へ突き刺して、これを獲りに入ったのだと言って上がってきた。なるほど、名人というものは違ったものだ、百姓たちはまた感心した。それからまた馬に乗って、いよいよ隣村へ着いた。猪はどこに出るかと聞くと、あの向こうの山へ出るとなって、明くる日になると、息子は大きな高い崖のほとりへ行って待っていた。ところがいくら待っても猪が出てこない。退屈になったので、着物を脱いで蚤(のみ)を取りはじめた。そこへ大きな音がしたかと思うと、大きな猪が飛んできた。あまり急に来たので、弓を射る間もありはしない。慌てて蚤をとっていた着物を振ると、猪が真っ直ぐに飛んでいって崖の上から下へ落ちてしまった。息子は急いで下りてみると、猪は足を折って死んでいる。百姓たちが来ては具合が悪い。矢を尻の穴に力いっぱい差し込んでおいた。それから上へあがって着物を着て休んでいると百姓たちがやって来た。あそこの崖の下にいるはずだから行ってみよと言い、一緒に下りてみると、大きな猪が死んでいる。百姓たちは感心して見ていたが、どこにも矢が立っていない。よくよく見ると尻の穴から羽根が覗いている。これは上手なこと。肉を少しも痛めずに射たものだ。これがまことの名人だと百姓たちはますます感心した。この話がどんどん広がって殿さまの耳に入った。殿さまには姫がいたが、いい聟がいなくて困っていた。そういう弓の名人がいるなら、この頃山賊が出て困っているからこれを退治させて、退治したら姫の聟にすることにしようと殿さまは言った。百姓の息子は殿さまの前へ召し出された。姫が見ると出来の悪い百姓の様な男なので、どうもこの男は自分の聟には欲しくないと思って、どうかして殺してやりたいと思った。そこで握飯を沢山こしらえて、その中へ毒を入れて持たせて山賊の出るところへ連れていった。息子はそれがしは弓の名人である。山賊どもが毎晩出て荒らすということを聞いて征伐に参った。すぐに出てこいと大きな声で怒鳴った。すると何をぬかすか、小せがれめと言って五六人の山賊が岩屋から出てきた。息子は弓を射ることも何もできない。これは敵わないと思って、どんどん逃げ出した。山賊たちはどこまでも追っかけてくるので、息子は敵わないので木へ登った。木登りはとても上手なので猿の様に上っていくと、腰に結んでいた握飯の紐が解けてボトボトみな落ちた。山賊たちはこれを見ると、腹が減っていたと見えてわれ勝ちに拾って食べたので皆死んでしまった。息子はこの様を見ると、木の上から下りてきて皆首を切って、殿さまのところへ持って帰った。いいつけ通り、山賊をことごとく退治したから、約束通り姫の聟にしてくれと殿さまに申し上げた。そして殿さまも姫も息子を聟にした。

◆モチーフ分析

・ある田舎に百姓の息子がいた
・百姓が嫌になったので、これから侍になってやろう、侍になったら威張ることできると思った
・そこで刀を二本求めて腰に差し、旅に出た
・日が暮れたので宿へ泊まった。
・床の間に長刀や刀が飾ってあったので、これが本物だと感心した
・弓があったので矢をつがえて、一生懸命引き絞ってパッと放した
・矢は障子を射ぬいて外へ飛んでいってしまった
・これは大事になった。早く出ていこうと草鞋を履いていると、隣の家の人が宿屋へ入ってきた
・隣の家の人はうちの蔵に盗人が入って物を盗って出ようとするところへ矢が当たって盗人が倒れたので、おかげで物を盗られずに済んだと言った
・息子は草鞋を脱いで座敷へ上がってかしこまった
・宿の人はお礼に沢山の金をくれた
・この話が段々伝わって隣の村へ聞こえた
・隣の村では猪が出て田畑を荒らすので何とかして退治せねばと言っているところだったので、隣の村の弓の名人に頼んで退治してもらおうと頼みに来た
・息子は馬の用意をさせた
・馬に乗ったことがなく、馬に乗ったのを見たこともなかった
・息子は馬に後ろ向きに乗って尻尾を固く握りしめた
・馬が川を渡ると、馬は立ったように前が高くなったので、息子は弓を持ったまま川へ落ちてしまった
・息子は鮎を二尾ほど矢を突き刺して、これを獲りに入ったのだと言い張った
・隣村に着いた明くる日、息子は高い崖のほとりへ行って村人たちが猪を追い込むのを待っていた
・いくら待っても猪が出てこない
・退屈なので、着物を脱いで蚤を取りはじめた。
・そこへ大きな猪が飛んできた
・急に来たので弓を射る間もなかった、着物を振ると、猪は真っ直ぐに飛んでいって崖から下へ落ちてしまった
・息子が急いで下りてみると猪は足を折って死んでいた
・百姓たちが来ては具合が悪いので、猪の尻の穴に差し込んでおいた
・百姓たちがやって来て崖の下に下りてみると、大きな猪が死んでいる
・よく見ると尻の穴から羽根が覗いているので、肉を少しも痛めずに射た、これがまことの名人だと百姓たちは感心した
・この話がどんどん広がって殿さまの耳に入った
・殿さまには姫がいたが、いい聟がいなくて困っていた
・弓の名人がいるなら、このころ山賊が出て困っているから、これを退治させて、退治したら姫の聟にしようと殿さまは言った
・百姓の息子は殿さまの前へ召し出された
・姫が見ると、出来の悪い百姓の様な男なので、この男は聟に欲しくないと思って、どうにかして殺してやりたいと思った
・そこで握飯を沢山こしらえて、その中へ毒を入れて持たせて、山賊の出るところへ連れていった
・息子は自分は弓の名人である。征伐に参った。すぐに出てこいと大声で怒鳴った
・すると、五六人の山賊が岩屋から出てきた
・息子は弓を射ることも何もできない
・これは敵わないと思って、どんどん逃げ出した
・山賊たちはどこまでも追ってくるので、息子は木の上へ登った
・木登りは上手なので猿の様に上って行くと、腰に結んでいた握飯の紐が解けて皆落ちてしまった
・山賊たちは腹が減っていたと見えてわれ勝ちに拾って食べたので皆死んでしまった
・息子はこの様を見ると、木の上から下りてきて皆首を切って殿さまのところへ持って帰った
・言いつけ通り、山賊をことごとく退治したから、約束通り姫の聟にしてくれと殿さまに申し上げた
・殿さまも姫も息子を聟にした

 形態素解析すると、
名詞:息子 猪 これ 弓 殿さま 百姓 山賊 馬 こと 姫 聟 退治 隣 名人 矢 ところ 人 崖 村 皆 二 上 下 侍 刀 前 家 宿 尻 感心 握飯 木 沢山 物 男 盗人 着物 穴 腰 草鞋 話 五六 うち おかげ お礼 ころ そこ ほとり まこと まま われ 上手 中 何 具合 出来 外 大事 大声 宿屋 少し 尻尾 岩屋 川 床の間 座敷 征伐 後ろ向き 旅 日 明くる日 木登り 本物 村人 毒 猿 用意 田畑 田舎 約束 紐 羽根 耳 肉 腹 自分 蔵 蚤 足 金 長刀 障子 隣村 首 鮎
動詞:出る する いる 入る 思う 見る 言う 下りる 乗る 射る 持つ 来る 死ぬ 落ちる 飛ぶ できる なる 困る 待つ 盗る 脱ぐ 行く 頼む ある かしこまる かす くれる こしらえる つがえる やって来る 上がる 上る 伝わる 倒れる 入れる 切る 参る 取りはじめる 召し出す 威張る 射ぬく 履く 差し込む 差す 帰る 広がる 引き絞る 当たる 怒鳴る 急ぐ 折る 拾う 振る 握りしめる 放す 敵う 暮れる 殺す 泊まる 済む 減る 渡る 獲る 申し上げる 痛める 登る 着く 突き刺す 立つ 結ぶ 聞こえる 荒らす 見える 覗く 解ける 言いつける 追い込む 追う 逃げ出す 連れる 食べる 飾る
形容詞:ない 悪い 高い いい 固い 早い 欲しい 間もない
形容動詞:この様 嫌 退屈
副詞:どんどん いくら ことごとく すぐ どう どこまでも よく パッと 一生懸命 何とか 急に 段々 求めて 真っ直ぐ
連体詞:この 大きな ある その

 息子/盗人/隣の人、息子/馬/隣村の人、息子/猪/隣村の人、息子/山賊/姫/殿さまの構図です。抽象化すると、主人公/敵対者/隣人です。息子―弓―盗人―隣の人、息子―馬―隣村の人、息子―猪―隣村の人、息子―毒/握飯―山賊、息子―姫―殿さまの図式です。

 百姓が嫌になった息子は侍に扮して旅に出る[出立]。宿屋で矢を射たところ、隣の家に泥棒に入った盗人に当たった[的中]。隣村で猪退治を請けたところ、飛んできた猪が崖から落ちて死んでしまった[転落死]。殿さまから山賊退治を言いつけられるが逃走[逃走]、その際に落ちた毒入り握飯を食べた山賊たちが皆死んでしまう[毒殺]。息子は殿さまの姫の聟になった[聟入り]。

 弓の名人を自称したところ様々な難題が課せられるが、幸運で切り抜ける……という内容です。

 発想の飛躍は、幸運で難題を解決して行くところでしょうか。息子―矢―盗人、息子―鮎―馬、息子―着物/矢―猪、息子―毒/握飯―山賊といった図式です。

 外国の昔話では若者が姫の聟になってメデタシメデタシで終わる話が多いのですが、日本ではあまり見られないようです。「弓の名人」はそうした数少ない事例です。

 毒入りのおむすびを食べさせて山賊を退治する筋は「怪我の功名」と共通しています。

◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.437-444.

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2022年11月16日 (水)

選民意識――大塚英志、宮台真司「愚民社会」

大塚英志、宮台真司「愚民社会」を読む。対談集だが、かなり抽象的な話に終始しており、理解したとは到底いいがたい。

さすがに「土人」はないと思わされた。ポピュリズムを「魚の群れ」と形容する方がまだ適当である。「土人」って凄く見下しているということで選民意識が露わになっている。自分の思い通りにならないからと見下す心性が卑しい。

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炭焼き長者――モチーフ分析

◆あらすじ

 昔、京の都にお金持ちの家があって、その家に器量のよい娘がいた。ところが、どうしたことか縁談がない。聟に来てくれる者がないので、とうとう困って、易者のところへ行って見てもらった。すると易者がなんぼここの方で聟を貰おうと思っても、それはないと言うので、どうしたら良いかと訊くと、こっちからずっと西へ向けて五十里ほど行って今度は東北へ向けてずっとまた二十里ほど上がっていったところにお前の聟がいると言って聞かせた。娘はこれは大変なことだと思ったが、聟が欲しくてたまらないので、金もあることだし、財宝をみな売って路銀にして、西へ西へと下っていった。そして易者が言ったところまで行くと大きな川があった。そこから川についてまた何十里という道をよっこらよっこら歩いて上った。しかしなんぼ行っても、まったく聟になりそうな男はいない。ああ、これは何でも嘘だったのだろう。自分があまりに聟を欲しがるから、あんなことを言って聞かせたのだろう。まあ仕方ない、やりかけた事だから、もう少し行ってみようと思って行ったら、山の中へ入った。ところがその内に日が暮れてしまった。真っ暗な中を探りながら歩いていると、向こうの方に灯りが見えてきた。あそこに灯りが見えるから、灯りのあるところには人がいるに決まっているから、行って一つ宿を貸してもらおうと思って訪ねていった。中には炭焼きが一人いた。これこれで難儀をしている者だが、一夜宿を貸して下さいと言うと、炭焼きは、そんなことはできない。大体泊めるといったところで布団が一枚ある訳でもない、自分も寝間着をくるめてこもを着て寝るようなことだから、とてもいけない。こらえてくれ。それから食べさせるものもないと言って断った。何と言っても見たこともないきれいな娘だったから、炭焼きもたまげて、とても人間ではないと思った。それでも娘は今からどこへも行けないから、どうでも泊めて下さいという。炭焼きはいよいよ米が無くなったので、明日は買いに行こうと思うのだが、今食べる米もない。それでどうしようもないのだと言った。それでは米を買いにいってくださいと娘が言うと、買いに行こうと言っても夜だし、それに米のあるところまでは三里もある。とても行かれはいないと炭焼きは答えた。それでは夜が明けてから行きなさい。どうでもいいから今夜は泊めて下さいと言って、とうとうそこで泊めてもらった。夜が明けると娘はこれを持っていって米を買ってきなさいと言って小判を出した。すると、炭焼きはあんなものでは米はくれはしないと言った。それなら何で米を買うのかと娘が訊くと、それは炭を持っていかねば米でも醤油でもくれはしない。味噌でも塩でも皆炭で買うのだ。こんなものなら、ある所にはなんぼでもある。この前窯(かま)を作ろうと思って掘っていたら、この類いが出て邪魔になるから泥をかけておいたと言った。娘は驚いて行って掘ってみると、黄金がざくざく出てきた。それから二人は夫婦になって安楽に暮らした。後には加計(かけ)の炭屋と言う分限者になった。

◆モチーフ分析

・京の都に金持ちの家があって、器量のよい娘がいたが、どうしたことか縁談がない
・聟に来てくれる者がいないので、困って易者のところへ行って見てもらった
・易者がここの方で聟を貰おうと思ってもそれは無いと言った
・どうしたら良いか訊くと、ここから西へ向けて五十里ほど行って、今度は東北へ向けて二十里ほど上がっていったところに聟がいると言って聞かせた
・娘は聟が欲しくてたまらないので、財宝をみな売って路銀にして西へ西へと下っていった
・易者が言ったところまで行くと大きな川があった
・そこから川について何十里という道をよっこらと歩いて上った
・しかし、なんぼ行っても聟になりそうな男はいない
・これは嘘だったのだろう。自分が聟を欲しがるから、あんなことを言って聞かせたのだろうと思った
・やりかけた事だから、もう少し行ってみようと思って行ったら、山の中へ入った
・その内に日が暮れてしまった
・真っ暗な中を探りながら歩いていると、向こうの方に灯りが見えてきた
・灯りのあるところには人がいるに決まっているから、行って宿を貸してもらおうと思って訪ねていった
・中には炭焼きが一人いた
・一夜宿を貸して下さいと言うと、炭焼きは布団はないし食べさせるものもないからと言って断った
・炭焼きは見たこともないきれいな娘だったから、とても人間ではないと思った
・娘は今からどこへも行けないから、どうしても泊めてくださいと言った
・炭焼きは米が無くなったので、明日買いに行こうと思うのだが、今食べる米がないと言った
・娘はそれでは米を買いにいってくださいと言った
・炭焼きは米のあるところまでは三里もある、夜だし、とても行くことができないと答えた
・娘はそれでは夜が明けてから行きなさい、どうでもいいから今夜は泊めて下さいと言って、とうとうそこで泊めてもらった
・夜が明けると娘はこれを持っていって米を買ってきなさいと言って小判を出した
・炭焼きはそんなものでは米をくれはしないと言った
・それなら何で米を買うのか娘が訊くと、炭を持って行かねば、米でも醤油でも味噌でも塩でも買えないのだと炭焼きは言った
・炭焼きは小判の様なものなら、ある所にはなんぼでもある。この前窯を作ろうと思って掘っていたら、この類いが出て邪魔になるから泥をかけておいたと言った
・娘が驚いて行って掘ってみると、黄金がざくざく出てきた
・それから二人は夫婦になって安楽に暮らした
・後に加計の炭屋という分限者になった

 形態素解析すると、
名詞:娘 炭焼き 米 聟 ところ こと それ もの 中 夜 易者 西 ここ これ そこ 今 宿 小判 川 方 買い きれい どこ みな よっこ 一人 一夜 三里 事 二人 二十里 五十里 京 人 人間 今夜 今度 何 内 分限者 加計 十里 向こう 味噌 嘘 器量 塩 夫婦 安楽 家 山 布団 後 所 日 明日 東北 泥 炭 炭屋 男 真っ暗 窯 縁談 者 自分 財宝 路銀 道 都 醤油 金持ち 黄金
動詞:言う 行く 思う ある いる する なる 泊める 買う いう いく 出る 向ける 掘る 明ける 歩く 灯る 聞く 見る 訊く 貸す 食べる かける くれる つく できる やる 上がる 上る 下る 作る 入る 出す 困る 売る 持っていく 持って行く 探る 断る 暮らす 暮れる 来る 決まる 無くなる 答える 行う 見える 訪ねる 貰う 類う 驚く
形容詞:ない 欲しい いい たまらない よい 無い 良い
形容動詞:あんな そんな 邪魔
副詞:どう とても なんぼ ざくざく とうとう もう少し 何で
連体詞:この ある その 大きな

 娘/炭焼きの構図です。抽象化すると、女/男です。娘―小判/黄金―炭焼きといった図式です。

 聟が来ないので易者に占ってもらった[予言]通りに旅に出た京の娘は山の中で日が暮れてしまい、炭焼きの家に一夜の宿を求める[要求]。炭焼きは何もないから泊められないと断るが[謝絶]、娘はどうにでもと言って泊まる[宿泊]。娘が小判を出してこれで米を買えといったところ、炭焼きはそんなものはごろごろしていると言った[無知]。娘と炭焼きは結婚して分限者になった[栄達]。

 娘が小判を出したところ、炭焼きはそんなものは幾らでもあると言って価値を認めなかったが、その発言で黄金が発見される……という内容です。

 発想の飛躍は黄金が幾らでもあると小判の価値を認めないことでしょうか。娘―小判―炭―炭焼きの図式です。

 実際には黄金がそのまま出てくるはずはないのですが、鉱石を見分ける術を娘は知っていたのでしょうか。

◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.433-436.

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2022年11月15日 (火)

岡田の婆――モチーフ分析

◆あらすじ

 猟師が山へ猟に行って日が暮れた。それで木の上へ登って夜の明けるのを待とうと思って木の上へ登っていた。すると夜中になって猫が沢山やってきた。一匹の猫が木の下へしゃがんで木に抱きついた。次の猫はその猫の背中から肩車(びんぶく)をした。それから次々に猫が肩車をして木へ登って猟師の足を捕まえようとしたが、ちょっと届かない。その猫は、自分は帰って岡田の婆さんを連れてくると言って、ばらっと崩れ落ちて皆いなくなった。猟師が岡田のばばあと言っていたが、あそこにおるばばあは猫かしらんと思っていると、大きな猫が来て、他の猫も木の下に集まった。それから前の様にして木へ登ってきて、一番終いに後から来た大きな猫があがってきた。そして猟師の足を捕まえたので、猟師はすぐ腰へ差している鉈(なた)を抜いて手を切った。猫は悲鳴をあげて下へ落ちると、どこへともなくいなくなった。夜が明けると猟師は木から下りてきて、岡田のばばあちゅうのは前から居るが、猫だったのかしらんと思って岡田の家へ行って隙間から見ると婆さんが手の傷を舐めて(ねぶって)いる。それで、これは本当に猫じゃなかろうかと思って隙間から鉄砲で撃ち殺してしまった。その家の人は大騒ぎを始めた。近所の人も来て大騒動になった。これは猫の化物だから撃ったのだ。こうしておくと、そのうち正体を現して猫になると言って、猟師は婆さんの足を縛って庭の上に下げておいた。二日ぶりに猟師が行ってみると、やはり婆さんである。三日ぶりに行ってみると、大きな古猫になっていた。それで猟師には何のこともなかった。戸へ背をすりつけるか、柱へ背をすりつけて通る猫は飼ってもよいが、部屋の真ん中を通る様になると踊りを踊る様になる。そうなると化けるから置いてはいけないと言う。

◆モチーフ分析

・猟師が山へ猟に行って日が暮れた
・木の上へ登って夜の明けるのを待った
・夜中になって猫が沢山やってきた
・一匹の猫が木の下へしゃがんで木に抱きついた
・次の猫はその猫の背中から肩車をした
・次々に猫が肩車をして木へ登って、猟師の足を捕まえようとしたが、ちょっと届かない
・その猫は自分は帰って岡田の婆さんを連れてくると言って、ばらっと崩れ落ちて皆いなくなった
・猟師は岡田のばばあは猫かしらんと思った
・大きな猫が来て、他の猫も木の下に集まった
・前の様にして木へ登ってきて、後から来た大きな猫が一番終いに上がってきた
・大きな猫は猟師の足を捕まえたので、猟師は鉈で猫の手を切った
・猫は悲鳴をあげて下へ落ちると、どこへともなくいなくなった
・夜が明けると猟師は木から下りてきて、岡田の家へ行って隙間から見ると婆さんが手の傷を舐めていた
・猟師はこれは本当に猫ではなかろうかと思って、隙間から鉄砲で撃ち殺した
・岡田の家の人は大騒ぎを始め、近所の人も来て大騒動になった
・これは猫の化物だからこうしておくと、そのうち正体を現して猫になると言って、猟師は婆さんの足を縛って庭の上にぶら下げておいた
・二日ぶりに猟師が行ってみると、やはり婆さんである
・三日ぶりに行ってみると、大きな古猫になっていた
・それで猟師には何のこともなかった
・戸へ背をすりつけるか、柱へ背をすりつけて通る猫は飼ってもよい
・部屋の真ん中を通る様になると踊りを踊る様になる
・そうなると猫は化けるから置いてはいけないと言う

 形態素解析すると、
名詞:猫 猟師 木 婆さん 岡田 足 これ 上 人 夜 家 手 木の下 肩車 背 隙間 一 二 三 うち こと しらん どこ ばばあ ばら 下 他 何 傷 前 化物 古 夜中 大騒ぎ 山 庭 後 悲鳴 戸 日 本当 柱 次 正体 沢山 猟 皆 真ん中 背中 自分 近所 部屋 鉄砲 鉈 騒動
動詞:する なる 行く 来る 登る 言う いる すりつける 思う 捕まえる 明ける 踊る 通る あげる いける しゃがむ ぶら下げる やる 上がる 下りる 切る 化ける 始める 届く 崩れ落ちる 帰る 待つ 抱きつく 撃ち殺す 暮れる 現す 終う 縛る 置く 舐める 落ちる 見る 連れる 集まる 飼う
形容詞:ない よい
副詞:うかと こう そう ちょっと やはり 一番 次々
連体詞:大きな その

 猟師/猫/大きな猫の構図です。抽象化すると、人/動物です。猟師―肩車―猫/大きな猫、猟師―(撃ち殺す)―岡田の婆さん―(現す)―大きな猫の図式です。

 木の上へ登って夜を明かした男の許に猫たちがやってくる[集合]。猫たちは肩車を組んで猟師を捕まえようとするが[接近]、猟師が鉈で反撃[反撃]したのでいなくなる[逃散]。猫たちの会話を聞いた猟師は岡田の家へ行って婆さんを撃ち殺す[射殺]。婆さんの死体は三日目に古猫に変わった[解除]。

 肩車を組んで接近してきた猫に反撃、手傷を負った古猫を射殺した……という内容です。

 発想の飛躍は猫たちが肩車を組んで接近してくることでしょうか。猟師―肩車―猫の図式です。

 一般には狼ばしごと呼ばれる話型です。離島など狼のいない地域では狼が猫に置き換えられるとのことですが、このお話は匹見町の昔話です。

◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.431-432.

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2022年11月14日 (月)

くも女房――モチーフ分析

◆あらすじ

 昔、後家じいさんがいた。そこへひょっこり、ばあさんが来て、自分は茶でも沸かすから、これに置いてくださいと言って上がり込んだ。そしてそのまま居てもらうことになった。ところがばあさんはご飯をあまり食べないので、じいさんは不思議に思った。ある日、隣の家からぼたもちを持ってきた。じいさんは留守でばあさんが一人いた。それでばあさんがどうするかと思って、隣の人は外へ出て戸の隙間から様子を見ていた。するとばあさんは髪を解いてぼたもちをみな頭の中へすり込んでしまった。隣の人はびっくりして、じいさんが帰るとそっとそのことを知らせた。じいさんはびっくりして、家へ帰るとばあさんに、お前は今日からうちにはいらないから出ていってくれと言った。するとばあさんは出ろというなら出るから、自分が欲しいというものをくれと言った。何がいるかと訊くと、桶をくれと言った。そこでじいさんが桶をやると、ばあさんはその桶に入れと言った。じいさんが桶へ入るとばあさんはそれを軽々と背負って、ひょんひょん山へ入っていった。じいさんはどこへ行くやらと思って、恐ろしくなったので、どうにかして逃げだそうと思った。ちょうどいい具合に頭の上に大きな木の枝が覗いていたので、その下を通るときこれにつかまって桶から出た。ばあさんはそんなことは知らないでひょんひょん行くので、じいさんは送り狼に知られない様に跡をつけていった。そのうちにばあさんの家へついた。ばあさんは、いい肴を持ってきたから皆出ろと言った。すると上から蜘蛛が沢山下りてきた。ばあさんは桶を下ろして中を見たが、じいさんがいない。これはまた、どこで抜け出したものだろうと言ってびっくりしていたが、今夜の晩に行ってお茶の中に入って、あのじいさんがお茶を飲むときに喉へ入って喰い殺してやると言った。じいさんはそれを聞くと一散に家へ帰って近所の若い人を皆雇ってきた。そして囲炉裏に炭の火をかんかんに起こして、今夜蜘蛛が来るから、蜘蛛が来たら誰でもいいからすぐ火の中へくべてくれと言った。みんな火箸を持って火を起こして待っていると、夜遅くなってから大きな蜘蛛が自在鍵を伝って下りて来た。そら来たと言うので皆でその蜘蛛を火の中へ放り込んで焼いてしまった。それから朝蜘蛛は吉相だから殺してはいけない。夜蜘蛛は人を獲るから殺さねばいけないということになった。

◆モチーフ分析

・後家じいさんがいた
・ばあさんがひょっこり来て、自分は茶でも沸かすから、ここに置いてくれと上がり込み、そのまま居てもらうことになった
・ばあさんはご飯をあまり食べないので、じいさんは不思議に思った
・ある日、隣の家からぼたもちを持ってきた
・じいさんは留守でばあさんが一人いた
・ばあさんはどうするか、隣の人は外へ出て戸の隙間から様子を見た
・ばあさんは髪を解いて、ぼたもちを頭の中にすり込んでしまった
・びっくりした隣の人はじいさんが帰るとそっとそのことを知らせた
・びっくりしたじいさんはばあさんに出ていってくれと言った
・ばあさんは出るから、自分が欲しいものをくれと言った
・何が要るか訊くと、桶をくれと言った
・じいさんが桶をやると、ばあさんはその桶に入れと言った
・じいさんが桶へ入ると、ばあさんはそれを軽々と背負って、ひょんひょん山へ入っていった
・じいさんは恐ろしくなったので、逃げだそうと思った
・ちょうどいい具合に頭の上に大きな木の枝が覗いていたので、じいさんは枝につかまって桶から出た
・ばあさんはそんな事は知らずにひょんひょん行くので、じいさんは送り狼に知られない様に跡をつけた
・ばあさんの家に着くと、ばあさんはいい肴を持ってきたから皆出ろと言った
・すると、上から蜘蛛が沢山下りてきた
・ばあさんは桶を下ろして中を見たが、じいさんがいないので、今夜の晩に行ってお茶の中に入ってじいさんが飲むときに喉へ入って喰い殺してやると言った
・じいさんはそれを訊くと一散に家へ帰って、近所の若い人を雇ってきた
・囲炉裏に炭の火をかんかんに起こして、今夜蜘蛛が来るから、来たらすぐ火の中へくべてくれと言った
・みな火箸を持って火を起こして待っていると、夜遅くなってから大きな蜘蛛が自在鍵を伝って下りて来た
・そら来たと皆で蜘蛛を火の中へ放り込んで焼いた
・それから朝蜘蛛は吉相だから殺してはいけない、夜蜘蛛は人を獲るから殺さねばいけないことになった

 形態素解析すると、
名詞:じいさん ばあさん 桶 中 ひょん 人 火 こと 家 蜘蛛 隣 それ びっくり ぼたもち 上 今夜 皆 自分 頭 お茶 ここ ご飯 とき みな もの 一人 不思議 事 何 具合 吉相 喉 囲炉裏 外 夜 山 後家 戸 晩 朝 木の枝 枝 様子 沢山 火箸 炭 留守 肴 自在 茶 跡 近所 送り狼 鍵 隙間 髪
動詞:言う 出る 来る 入る いる 持つ いける くれる する なる 下りる 帰る 思う 殺す 知る 行く 見る 訊く 起こす いく くべる つかまる つける やる 上がり込む 下ろす 伝う 入れる 喰い殺す 居る 待つ 放り込む 沸かす 焼く 獲る 着く 知らせる 置く 背負ってる 要る 覗く 解く 逃げだす 雇う 食べる 飲む
形容詞:いい 夜遅い 恐ろしい 欲しい 若い
形容動詞:かんかん そんな
副詞:あまり ある日 すぐ そっと そのまま ちょうど どう ひょっこり 一散に 軽々
連体詞:その 大きな

 じいさん/ばあさん/蜘蛛という構図です。抽象化すると、主人公/妖怪の構図でもあります。じいさん―桶―ばあさん、じいさん―火―蜘蛛という図式です。

 じいさんと同居することになったばあさんだが[同居]、正体は化物だった[露見]。ばあさんはじいさんを桶に入れて山の中へ入った[誘拐]。枝につかまって桶から出た[脱出]。じいさんはばあさんの跡を追った[追跡]。ばあさんの正体は蜘蛛だった[判明]。家へ帰ったじいさんは蜘蛛を待ち構え[待ち伏せ]、火で蜘蛛を焼き殺した[焼殺]。

 ばあさんの正体が蜘蛛だと分かったじいさんは家で待ち構えて蜘蛛を焼き殺した……という内容です。

 発想の飛躍はばあさんが蜘蛛だったことでしょうか。じいさん―桶―ばあさん/蜘蛛の図式です。

 食わず女房の類話です。ここでは家に戻ったじいさんが蜘蛛を焼き殺す筋となっています。

◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.428-430.

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宮台真司「社会という荒野を生きる。」

宮台真司「社会という荒野を生きる。」を読む。多彩な内容が取り上げられていて、マルチな才能の持ち主という印象。タイトルから共同体の空洞化について語られるのかと思ったけれど、僕の望む様なトピックスは出てこなかった。それはそのジャンルではフィールドワークしていないからなんだけど。

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2022年11月13日 (日)

法事の使い――モチーフ分析

◆あらすじ

 あるところに馬鹿な息子と父親がいた。あるとき父親が、今年は死んだ母親の三年になるから、法事をしなければならない。お前、ご苦労だが、お寺へ行って和尚さんに頼んでこいと息子に言った。息子は、うん、それは行こうと言った。それでも、自分は和尚さんというものを知らないが、一体どんな着物を着ていなさるかと言うので、いつも黒い衣を着ているから、黒い着物を着ている人に頼めば間違いないと父親は言った。息子はどんどん行くと、木の上に真っ黒いものがいた。そこで、その下へ行って、和尚さん、うちの母の三年の法事をするから、ご苦労だが来てくれないかと言ったら、カー、カーと言って飛んでいった。息子は帰って父親に今頼んできたからと言った。和尚さんはどう言いなさったと父親が訊くと、自分がよく頼んだら、カーカー言って逃げなさったと息子が答えた。お前、それは和尚さんではない、烏だと父親は言った。もういっぺん行ってこい。和尚さんは下へもっていって白い着物を着て、上へもっていって黒い衣を着ているから、今度はそれを目当てに行ってこいと父親は言った。息子はまたどんどん行くと、今度は田んぼの中に下に白いものを着て上に黒いものを着たものがいた。それで側へ行って、和尚さん、今度うちの母の三年の法事をするから、ご苦労だが来てくれないかと言ったらシイガラ、トウガラといって飛んでいった。息子は帰って、よく頼んでおいたからと言った。和尚さんはどう言ったと父親が訊くと、シイガラ、トウガラと言って逃げてしまったと息子が答えた。まあ、この子は。それは四十雀(しじゅうから)という鳥だから、何でもない。それではお前はうちで留守番をしておれ、自分が頼みに行ってくるからと言って、今度は父親がお寺へ行った。父親は帰って、これで和尚さんは来てやると言いなさったから、お経を読んでもらったら、何かご馳走しなければならない。うちではこうして女手もなくて何もないから、二階に柿がこしらえてあるから、あれを下ろしてご馳走しよう。お前、てご(手伝い)をせよと息子に言った。そこで父親は二階へ上がって、息子は真下へ行って待っていた。今、はんどう(水瓶)を下ろすから、お前、けつをよく持っておれよと言って父親ははんどうへ付けた柿を上から除いた。息子は自分のけつを一生懸命押さえていた。お前、けつを持ったかと父親が言った。かとう(固く)持ってるから世話はない、下ろしなさいと息子は言った。そこで父親は安心して手を離したので、はんどうは落ちて壊れてしまった。まあ、お前、何をしているかと言うと、けつを持っておれと言うんだから、自分は固くけつを持っていたと言った。

◆モチーフ分析

・あるところに馬鹿な息子と父親がいた
・父親が今年は死んだ母親の三年になるから法事をしなければらないと言い、息子に和尚さんに頼んでこいと言った
・息子は行こうと言い、自分は和尚というものを知らないが、どんな着物を着ているのかと訊いた
・父親は和尚はいつも黒い衣を着ているから、黒い着物を着ている人に頼めば間違いないと言った
・息子がどんどん行くと木の上に真っ黒いものがいた
・木の下へ行って、和尚さん、うちの母の三年の法事をするから、ご苦労だが来てくれないかと言った
・黒いものはカー、カーといって飛んでいった
・息子は帰って、父親に今頼んできたからと言った
・父親が和尚はどう言ったか訊くと、息子は自分が頼んだら、カーカーいって飛んでいったと答えた
・父親はそれは和尚ではない、烏だと言った
・父親はもういっぺん行ってこい、和尚は下に白い着物を着て、上に黒い衣を着ているから、それを目当てに行ってこいと言った
・息子がまたどんどん行くと、今度は田んぼの中に白いものを来て上に黒いものを着たものがいた
・息子は側へ行って、和尚、今度うちの母の三年の法事をするから、ご苦労だが着てくれと言った
・それはシイガラ、トウガラといって飛んでいった
・息子は帰ってよく頼んでおいたからと言った
・父親が和尚はどう言ったと訊いたところ、シイガラ、トウガラと言って逃げてしまったと息子が言った
・父親はそれは四十雀だ。お前は留守番をしておれ、自分が頼みに行ってくると言ってお寺へ行った
・父親は帰ってきて、和尚が来るからお経を読んでもらったら、ご馳走しなければならない。二階に柿があるから、それを下ろしてご馳走しようと言った
・父親は息子に手伝いをせよと言った
・父親は水瓶を下ろすから、けつをよく持っておれと言った
・息子は自分のけつを一生懸命持っている
・お前、けつを持ったかと父親が言った
・持っていると息子が言ったので、手を離すと、水瓶は落ちて壊れてしまった
・お前、何をしているかと父親が言うと、息子はけつを持っておれと言うんだから、自分はけつを固く持ったと言った

 形態素解析すると、
名詞:息子 父親 和尚 もの けつ それ 自分 ガラ 三 お前 上 法事 着物 うち ご苦労 ご馳走 ところ カー シイ トウ 今度 母 水瓶 衣 二 お寺 お経 カーカー 下 中 人 今 今年 何 側 四十雀 手 木 木の下 柿 母親 烏 田んぼ 留守番 目当て 馬鹿
動詞:言う 行く 着る する 持つ 頼む いく いる 帰る 来る 訊く 飛ぶ 下ろす ある いう なる ばる 壊れる 手伝う 死ぬ 知る 答える 落ちる 読む 逃げる 離す
形容詞:黒い よい 白い ない 固い 真っ黒い 間違いない
形容動詞:どんな
副詞:どう どんどん いっぺん いつも また もう 一生懸命
連体詞:ある

 父親/息子の構図です。家族同士の構図です。父親―法事―息子、父親―水瓶―息子の図式です。

 母親の三年目の法事なので、父親が息子に和尚に伝えてこいと命じたが[お使い]、息子は父親の言ったことを理解しておらず鳥に呼びかけてしまう[錯誤]。父親がお寺に行って話をしてきた[代理]。和尚にご馳走するので水瓶を二階から下ろすことにしたが[運搬]、息子は水瓶の尻を持たず、自分の尻を持った[錯誤]ので水瓶が壊れてしまった[損壊]。

 息子の錯誤で父親は自分の言ったことが伝わっていないと知る……という内容です。

 発想の飛躍は息子が父親の言ったことを字義通りに受け取ってしまうことでしょうか。息子―衣―鳥、息子―けつ―父親という図式です。

◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.424-427.

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聖書の神は預言者の無意識ではないか――ジョン・ヒック『宗教と理性をめぐる対話』

ジョン・ヒック『宗教と理性をめぐる対話』(間瀬啓允/訳)を読む。南雲功先生に送っていただいたもの。神の存在について肯定/否定する立場の論者が対話するという内容。

記述自体は平易だが、内容は深いので到底理解したとは言えない(哲学については、理性・悟性・感性からやり直すレベル)。日本人には書けない/書かない本だという印象。

一神教の神とは、聖書の原典に当たったことはないし、著者も言及を避けているが、元を辿れば預言者の無意識が宇宙の究極原理を自称するまでに肥大化したものなのかなと考える。

個人的には地元の神社のローカルな神さま(ご先祖さま)が好きである。仏教徒(臨済宗)であるので、いずれ鈴木大拙の本を読んでみたいとも思っている。

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2022年11月12日 (土)

環境に関する言及なし――クリスティアン・ポルフ『ニクラス・ルーマン入門 社会システム理論とは何か』

クリスティアン・ポルフ『ニクラス・ルーマン入門 社会システム理論とは何か』(庄司信/訳)を読む。社会学の社会システム理論に関する入門書。宮台真司の著作で社会システム理論の存在を知って読んでみたものだけど、社会システム理論はグランド・セオリーを志向したものであり、抽象的な内容に終始するものだった。宮台の著作を読んでいなかったから、何のことかさっぱりだったろう。

マルクスは社会を上部構造と下部構造の二層とするが、ルーマンのシステムは平面的でフラットなものである。

ルーマンは社会をシステム/環境に二分する。システムには政治、経済、法律、芸術、宗教などがある。宮台の本では環境が生活世界に置き換えられていると思われるのだが、環境に関する言及はほとんどなかった。

<追記>
ルーマン「社会システム理論」上下巻を読んだ上で再読する。「社会システム理論」には具体例がほとんど無く、抽象的な概念の操作に終始するので、入門書の本書の存在はありがたかった。ちなみに、ダブル・コンティンジェンシーは偶発性と訳されているようだ。

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ひと口なすび――モチーフ分析

◆あらすじ

 昔、夫婦がいた。お産をすることになって、いよいよ今日明日にも産まれるという日になった。それで主人は、どうぞお産がみやすうに(楽に)済むようにと思って、夜の丑みつ時に氏神さまへ行ってお願いした。ところが雨が酷く降り出して帰れなくなった。早く帰らねばと家のことが気にかかって仕方がないが、どうすることもできない。仕方なしにお宮で雨の止むのを待ちながらおこもりした。そのうちに昼の疲れが出て、男は寝た様な気がした。すると遠くからカッポカッポと蹄(ひづめ)の音がしてきた。そしてお宮の前へ来ると、あんた、今晩何兵衛のところにお産があるのだが行かないかなと言った。すると、お宮の中から、不意にお客さんが一人お泊まりがあるから行けない。済まないが、一人で行ってくれという声が聞こえた。そうか、外の声の主はそう言うと、蹄の音をさせてどこかへ行った。そうして、一時すると、また戻ってきて、やっとまあ行ってきたと外から声をかけた。様子はどうだったと内の声が尋ねた。男はさっき何兵衛のところでお産があると自分の名を言っていたので、何でも安産である様にと祈っていたところだったから、家の女房がお産をしたのだなと思って耳を澄ました。お産はみやすくて、男の子のくりくりした、とても元気な子が産まれた。だが、この子は七つの年の十二月の一日に、この上(かみ)の竜神渕の渕の主の餌になることになっているから可哀想だ。気の毒だが、それまでしか寿命がない、外の声はそういうと帰っていった。男はふと目が覚めてみると、雨も止んで夜がしらじらと明けかけていた。おかしな夢を見たがと思って、それでも確かに自分の名を言ったが、夢だから分からない。ひょっとすると子が産まれたのかもしれない。早く帰ってみようと急いで帰った。すると、家ではくりくりする様な元気な男の子が生まれていた。それで昨夜の夢が気にかかったが、家内には黙っていた。子供は元気にすくすくと大きくなった。しかし父親は夢のことが気にかかって仕方がなかった。あんなに元気にしているが、本当に七つの年の十二月の一日には、竜神渕の主の餌になるのかと思うと可哀想でならない。その内に月日はどんどん過ぎて、とうとう七つの年の十二月の一日になった。今日はどういうことがあっても、どこにもやらない様に内に置かねばと父親は思っていたが、どうしても仕方のない用事ができて、子供を他所へ行かせねばならないことになった。そして行くところは川を向こうへ渡らねばならないところだった。そこで父親は、自分がおこもりをしている時に神さまが話していたが、この子は今日竜神渕の主に食われるのだから、上等の弁当を作ってやろうと思って、家内にいい弁当を作らせ、心いっぱいのご馳走をして出した。そして弁当を渡すとき、この弁当は竜神渕の上を渡ってから食べてはいけない。必ず渡るより前に食べて、それから渡れと言って聞かせた。子供はうんと言って出かけた。父親は子供がどうしただろうか、もうどの辺まで行っただろうか、もう食われる頃だが、どうだろうかと心配していた。とうとう日が暮れた。子供は帰って来ないので、やはり渕の主に食べられてしまったのだと悲しんでいると、遅くなって子供が帰ってきた。お前戻ったのかと言って父親は大喜びをした。そして、竜神渕の上を渡るときに何かありはしなかったかと尋ねた。お父さん、今日は恐ろしかったと子供は話した。お父さんが家を出る時に竜神渕を渡るときには、渡るより前に弁当を食べよと言ったから、川のほとりで弁当を出して食べていた。そうしたら、あの渕から大きな何か知らないおかしげなものが出て、お前は何をすると問うた。自分は弁当を食べていると答えたら、うむ、お前は今日自分の餌になるはずだが、今食べているものは何かと問うたから、これはおかずだと答えた。おかずとは何かと問うたので、これはひと口なすびだと言うと、何といい匂いのするものだな、ひとつくれてみよと言うから、おかずのひと口なすびをやったら、とって食べて、何と美味しいものだ、人間はこういうものを三百六十日食べているのかとい言うから、そうだと言ったら、お前は今日自分の餌になるのだが、こういうものを食べているものを自分が今とって食っては可哀想だから、今日は餌にしない。帰って精を出して、うちの言うことを聞いて仕事をせよ。お前は助けてやるといって渕の中へゴボッといって入ってしまったと話した。それで十二月の一日には必ずひと口なすびを食べるものだということである。

◆モチーフ分析

・夫婦がいた。お産をすることになっていよいよ産まれる日になった
・主人はどうかお産が楽の済むようにと思って、夜の丑みつ時に氏神さまへ行ってお願いしした
・雨が酷く降り出して帰れなくなったので、仕方なくお宮で雨の止むのを待ちながらおこもりした
・昼の疲れが出て、男は寝た様な気がした
・すると遠くから蹄の音がしてきて、お宮の前へ来ると、今晩何兵衛のところにお産があるのだが行かないかと言った
・お宮の中から、お客さんが一人お泊まりがあるから行けない、一人で行ってくれという声が聞こえた
・外の声の主はそうかと言うと蹄の音をさせてどこかへ行った
・一時するとまた戻ってきて、行ってきたと外から声をかけた
・どうだったと内の声が尋ねると、男は自分の名を言っていたので安産である様にと祈っていたところだったから、女房がお産をしたのだと思って耳を澄ました
・お産は楽で、くりくりしたとても元気な男の子が産まれた。だが、この子は七つの年の十二月の一日に竜神渕の主の餌になることになっているから可哀想だと外の声は言って帰っていった
・ふと目が覚めてみると、雨が止んで夜がしらじらと明けかけていた
・男はひょっとすると子が産まれたのかもしれない、早く帰ってみようと急いで帰った
・すると家ではくりくりと元気な男の子が生まれていた
・昨夜の夢が気にかかったが、家内には黙っていた
・子供はすくすくと大きくなった
・父親は本当に七つの年の十二月一日に竜神渕の主の餌になるのかと夢のことが気にかかって仕方がなかった
・月日はどんどん過ぎて、とうとう七つの年の十二月の一日になった
・今日はどういうことがあっても、どこにもやらない様に内に置かねばと思っていたが、どうしても仕方のない用事ができて、子供を他所へ行かせねばならないことになった
・父親は今日竜神渕の主に食われるのだから、上等の弁当を作ってやろうと思って家内にいい弁当を作らせ、心いっぱいのご馳走をして出した
・弁当を渡すとき、この弁当は竜神渕の上を渡ってから食べてはいけない、必ず渡るより前に食べて、それから渡れと言って聞かせた
・子供はうんと言って出かけた
・父親は子供はどうしただろうかと心配していたが、とうとう日が暮れた
・子供は帰って来ないので、やはり渕の主に食べられてしまったのだと悲しんでいると、遅くなって子供が帰ってきた
・お前戻ったのかと言って父親は大喜びした
・そして竜神渕の上を渡るときに何かありはしなかったか尋ねた
・今日は恐ろしかったと子供は話した
・川のほとりで弁当を食べていたら、渕から大きな何かが出て、お前は何をしていると問うた
・自分は弁当を食べていると答えたら、お前は今日自分の餌になるはずだったが、今食べているものは何かと問うた
・これはひと口なすびだと言うと、何といい匂いのするものだ、ひとつくれと言うから、おかずをやったら、とって食べた
・何と美味しいものだ、人間はこういうものを三百六十日食べているのかと言ったからそうだと答えた
・お前は今日自分の餌になるのだが、こういうものを食べているものを今とって食っては可哀想だから今日は餌にしない、お前は助けてやると言って渕の中へ入ってしまったと子供が話した
・それで十二月の一日には必ずひと口なすびを食べるものだという

 形態素解析すると、
名詞:子供 渕 もの 今日 弁当 お前 お産 こと 声 竜神 餌 一 父親 自分 十二 お宮 七つ 主 何 外 年 気 男 雨 それ とき ところ なすび ひと口 一人 上 中 今 元気 内 前 可哀想 夜 夢 子 家内 日 男の子 蹄 音 三百六十 おかず お客さん お泊まり お願い これ ご馳走 しらじら どこ どこか はず ひとつ ふと目 ほとり みつ 上等 丑 主人 人間 今晩 他所 何か 兵衛 匂い 十二月一日 名 大喜び 夫婦 女房 安産 家 川 心配 昨夜 昼 月日 本当 氏神 用事 耳 遠く
動詞:する 言う 食べる なる 帰る 行く いう ある 思う 渡る 産まれる かかる とる やる 作る 出る 問う 尋ねる 戻る 来る 止む 答える 話す 食う いける いる かける くれる こもる しれる できる 入る 出かける 出す 助ける 寝る 待つ 急ぐ 悲しむ 明ける 暮れる 済む 渡す 澄ます 生まれる 疲れる 祈る 置く 聞く 聞こえる 行う 覚める 過ぎる 降り出す 黙る
形容詞:いい 仕方がない 仕方ない 仕方のない 大きい 恐ろしい 早い 美味しい 遅い 酷い
形容動詞:楽 くりくり
副詞:どう こう そう とうとう 主に 何と 必ず いよいよ うんと くりくり すくすく とても どんどん ひょっと また やはり 何か 心いっぱい
連体詞:この 大きな

 氏神/父親、父親/子供/竜神の構図です。抽象化すると、家族/神です。父親―氏神―外の声、父親―子供/なすび―竜神の図式です。

 氏神の声を聞いた[啓示]父親は子供が七つの年の十二月一日に渕の主の竜神の餌になってしまう運命だと知る[予知]。その日が来て、どうしても外出させねばならなくなった[不可抗力]ので上等の弁当を渡して送りだした[送出]。子供が川のほとりで弁当を食べていると[食事]、竜神が現れて弁当のおかずを所望した[所望]。その味に満足した竜神は子供の命を助けた[助命]。

 子供が食われる運命は回避できないと知った親は弁当を持たせて送り出すが、渕の主は弁当のおかずが気に入り、子供を助命した……という内容です。

 発想の飛躍はひと口なすびが竜神の気にいったというところでしょうか。子供―なすび―竜神の図式です。

 運定めの昔話タイプですが、ここでは子供が竜神に七歳で食べられてしまうといった予知となっています。

 私の場合、茄子を食べられるようになったのは大人になってからですから、竜神に食べられてしまうことになります。

◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.418-423.

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2022年11月11日 (金)

三人兄弟――モチーフ分析

◆あらすじ

 あるところに子供が三人いた。一番末の子が十になったとき、父親は子供を集めて、お前たちも兄の方は十三になる。弟の方は十二になる。末の方は十になった。ひとつこれから他所へ出て修行してこいと言った。そして三人が出かけるとき、来年の三月には帰ってこいと言った。明くる年の三月になって、子供たちが帰ってきた。何を習ってきたと父親が訊くと、兄は大工を習ったと言った。弟は左官を習ったと言った。中の方は何を習ったとも言わない。そこで父親がお前は何を習った。大方一年も出ていたのに何も習わなくて戻ったということはあるまいと叱った。すると、中の子が言っていいやら悪いやら知らないが、自分は盗人を習ったと言った。ちょうどこの時、父親の兄が家の子供が戻ったから話を聞きに来てくれということで来ていた。この伯父は金持ちであった。父親は盗人を習ってきたと言うのを聞くと、盗人を習ってとんでもない奴だと言って大くじをくった(大変叱った)。まあ待て。盗人と言ってもいい盗人もいれば悪い盗人もいる。どういう盗人か、話を聞いてみなければ分からないと伯父が言った。どういう盗人を習ってきたと訊くと、それは言えないと答えたので、そうか、そうすれば自分が今夜帰るから、うちの駄屋の中で馬に乗って千両箱を下げている。それを持って戻れば偉いものだと伯父が言ったので、それはやろうと息子は言った。そんなことができるもんか。なんぼ金が欲しくても馬へ乗って千両箱を持っているのが盗られる訳がないと父親が言った。伯父は、やってみなければ分からない。子供のすることをむやみにくじをくったり(叱ったり)話を潰したりしてはいけない、自分が一つやらせてみようと言って、駄屋の中で馬に乗って、千両箱を持って、盗りに来るのを待っていた。夜は段々ふけてきたが、息子はなかなかやって来ない。あの小僧、大きなことを言って自分を誤魔化しやがって。これが盗人の種だろうかと思っていた。その内に幾ら経っても来ないので、ついうとうとと眠ってしまった。はっとして目が覚めてみると、乗っていた馬がいない。あらっと思ってみると、駄屋に馬が出られないように丸い木のかんぬきが二本差してある上に鞍を据えて、伯父はその上に乗っていた。たまげたのたまげないのと言って、馬がいつ逃げたのやら、かんぬきの上へいつ乗せられたのか分からない。そこへ父親がやって来た。おい、兄よ。どうした、と父親が問うと、まあ見てくれ。不思議なことに、いつの間にやら、ここへ上がっているのだと伯父は言った。自分は確かにここで馬に乗っていたのだが千両箱はいつの間にか無くなってしまったと。それから父親は伯父と一緒に家へ帰った。息子はいつの間にかちゃんと帰っていた。お前どうだったと伯父が訊くと、伯父さんの持っていた千両箱はもらって帰ったと言った。馬はどうしたと訊くと、ここの駄屋へ入れてあると答えた。行ってみると馬はちゃんと駄屋へ入れてある。まあ、大変な大盗人だ。よくやったと伯父は手を叩いて感心した。そして父親も、お前は偉かったと言って頭を撫でた。

◆モチーフ分析

・あるところに子供が三人いた。兄は十三歳、弟は十二歳、末の子は十歳である
・末の子が十歳になったとき父親が子供に対してこれから他所へ出て修行してこいと言った。
・三人が出かけるとき、来年の三月には帰ってこいと言った
・明くる年の三月になって子供たちが帰ってきた
・何を習ってきたか父親が訊くと、兄は大工を習ったといい、末の弟は左官を習ったと言った
・中の子は何を習ったとも言わない
・父親が一年も出ていたのに何も習わなくて戻ったということはあるまいと叱った
・中の子は言って良いのか分からないが、自分は盗人を習ったと言った
・このとき伯父が子供が戻ったから話を聞きに来てくれというので来ていた
・伯父は金持ちであった
・父親は盗人を習ってきたと聞くと、盗人を習ってとんでもない奴だと叱った
・伯父が良い盗人か悪い盗人か話を聞いてみなければ分からないと言った
・どういう盗人を習ってきたかと訊くと、それは言えないと中の子は答えた
・伯父は自分は今夜帰るから、うちの駄屋の中で馬に乗って千両箱を下げている、それを持ってこいと言った
・中の子はそれはやろうと言った
・そんなことができるものかと父親が言った
・伯父はやってみなければ分からない、ひとつやらせてみようと言った
・伯父は駄屋の中で馬に乗って千両箱を持って盗りに来るのを待った
・夜は段々ふけてきたが息子はやって来ない
・大きなことを言って誤魔化しやがってと伯父は思った
・その内に幾ら経っても来ないので、うとうとと眠ってしまった
・はっと目覚めてみると乗っていた馬がいない。木のかんぬきの上に鞍を据えて、伯父はその上に乗っていた
・馬がいつ逃げたのか、かんぬきの上へいつ乗せられたのか分からない
・そこへ父親がやって来た
・伯父は自分は確かにここで馬に乗っていたのだが、いつの間にかに千両箱が無くなったと語った
・父親と伯父は一緒に家に帰った
・息子はいつの間にかちゃんと帰っていた
・伯父が訊くと、中の子は伯父の持っていた千両箱はもらって帰ったと言った
・馬はどうしたと訊くと、駄屋に入れてあった
・大変な盗人だ、よくやったと伯父は手を叩いて感心した
・父親もお前は偉かったと頭を撫でた

 形態素解析すると、
名詞:伯父 父親 中 子 盗人 馬 三 千両 子供 箱 こと それ とき 上 何 屋 末 自分 十 いつ かんぬき 兄 弟 息子 話 一 十二 十三 うち お前 ここ これ そこ ところ ひとつ もの 今夜 他所 修行 内 夜 大変 大工 奴 家 左官 感心 手 明くる年 木 来年 金持ち 鞍 頭
動詞:言う 習う 帰る 乗る いう やる 分かる 来る 訊く 聞く いる なる やって来る 出る 叱る 戻る 持つ ある する できる ふける もらう 下げる 乗せる 入れる 出かける 叩く 対 待つ 思う 据える 撫でる 無くなる 盗る 目覚める 眠る 答える 経つ 語る 誤魔化す 逃げる
形容詞:良い とんでもない 偉い 悪い
形容動詞:そんな 持ってこい 確か
副詞:どう いつの間に いつの間にか うとうと かちゃんと はっと よく 一緒に 幾ら 段々
連体詞:その ある この 大きな

 父親/三人兄弟/伯父の構図です。家族/親族同士の構図です。父親―中の子―伯父、中の子―千両箱―伯父の図式です。

 父親が三人の兄弟を修行に出した[修行]。一年経って兄弟たちは戻ってきたが[帰郷]、中の子は盗人を修行したと答えた[告白]。叱った父親だったが[叱責]、伯父がだったら自分の千両箱を盗ってみよと言った[課題の提示]。約束通り、中の子は千両箱をいつの間にかに盗んだ[課題の達成]ので、これは大した奴だとなった[反転評価]。

 自分の千両箱を盗んでみよと言ったところ、実際に盗んでしまったので、これは大した奴だとなった……という内容です。

 発想の飛躍は中の子が実際に千両箱を盗んでしまうことでしょうか。中の子―千両箱―伯父、駄屋―馬/鞍―かんぬきの図式です。

 三人兄弟が登場する話では、中の子が活躍することは少ないです。語りから抜け落ちてしまうことが多いのですが、この話では中の子が活躍する話となっています。

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2022年11月10日 (木)

馬鹿むこ――モチーフ分析

◆あらすじ

 昔、馬鹿な聟がいた。あるとき嫁さんの親元へ行ったら団子をこしらえてご馳走した。聟は団子を食べたのは初めてで、あまりに美味かったので腹いっぱい食べた。そして家へ帰ったらこしらえてもらおうと思って、これは大変美味いものだが、何というものかのと尋ねた。これは団子というものだとお母さんがいった。団子、団子と言って聟はしきりにうなずいていたが、忘れてはいけないと思って、帰る道々で団子、団子と言いながら歩いた。家の近くまで帰ったとき。小さな溝があった。聟はうんとこしょと言って飛び渡った。それから今度はうんとこしょ、うんとこしょと言いながら帰った。聟は家に帰ると早速嫁さんに、うんとこしょをこしらえてくれと言った。嫁さんは何のことか分からないので、うんとこしょとは何かと尋ねた。今日お前のところへ行ったら、お母さんがこしえらえてご馳走しなさった。とても美味かったからこしらえてくれと聟は言った。それでもうんとこしょと言っても何やら分からないと嫁さんが言うと、分からないことはない。すぐこしらえよと聟は言った。それでも嫁さんは分からないのでどうしようもない。いくら聞いても分からないので押問答をする内に聟は腹を立てて、そこにあった火吹竹で嫁さんの頭を叩いた。嫁さんはびっくりして額を押さえた。額はみるみる内に団子の様に腫れ上がった。何を無茶なことをするのか。これを見なさい。団子のようなこぶが出来たと嫁さんが言うと、おう、そうだ、団子だった。すぐ団子をこしらえてくれと聟は言った。

◆モチーフ分析

・馬鹿な聟がいた
・嫁の親元へ言ったら団子をこしらえてご馳走した
・聟は団子を食べるのは初めてで、美味かったので腹一杯食べた
・家へ帰ったらこしらえてもらおうと思って、これは何というものかと尋ねた
・義母がこれは団子だと答えた
・聟は忘れてはいけないと思って帰る道々で団子、団子と言いながら歩いた
・家の近くまで帰ったとき、小さな溝があった。聟はうんとこしょと言って飛び渡った
・それから今度はうんとこしょ、うんとこしょと言いながら帰った
・聟は家に帰ると早速嫁にうんとこしょをこしらえてくれと言った
・嫁は何のことか分からず、うんとこしょとは何かと尋ねた
・今日嫁の家に行ったら義母がこしらえてご馳走した、美味しかったからこしらえてくれと聟は言った
・それでもうんとこしょとは何か分からないと嫁が言った
・分からないことはない。すぐこしらえよと聟は言った
・嫁は分からないので、どうしようもない
・いくら聞いても分からないので押問答をする内に聟は腹をたてて、火吹竹で嫁の頭を叩いた
・嫁がびっくりして額を押さえると、額はみるみる内に団子の様に腫れ上がった
・無茶なことをする、団子のようなこぶが出来たと嫁が言うと、そうだ団子だった、団子をこしらえてくれと聟は言った

 形態素解析すると、
名詞:団子 嫁 聟 こしょ 家 こと これ ご馳走 何 内 義母 額 こぶ とき びっくり もの 今度 今日 初めて 押問答 溝 火吹竹 腹 親元 近く 道々 頭 馬鹿
動詞:言う こしらえる 分かる 帰る する 尋ねる 思う 食べる ある いける いる たてる 出来る 叩く 忘れる 押さえる 歩く 渡る 答える 聞く 腫れ上がる 行く 飛ぶ
形容詞:しようもない ない 美味い 美味しい
形容動詞:無茶
副詞:うんと いくら すぐ そう どう みるみる 何か 早速 腹一杯
連体詞:何という 小さな

 聟/嫁の構図です。抽象化すると、男/女です。聟―団子/うんとこしょ―嫁の図式です。

 嫁の実家で団子が振る舞われた[ご馳走]。気に入った聟は嫁に作ってもらおうと思って団子、団子と復唱しつつ帰ったが[復唱]、溝を跳び越えるときにうんとこしょと言ってしまった[言い間違い]。それで嫁に伝わらなかったが[説明不可]、嫁をぶったところ団子のようなこぶができて[殴打]、そうだ、団子だとなった[気づき]。

 団子、団子と復唱していたところを、はずみでうんとこしょと言い間違ってしまった……という内容です。

 発想の飛躍は溝を跳び越えた際にうんとこしょと間違って記憶してしまうところでしょうか。団子/うんとこしょの図式です。

 子供の頃ははったい粉をまぶしたお団子が好きでした。

◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.412-413.

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2022年11月 9日 (水)

猿の嫁さん――モチーフ分析

◆あらすじ

 昔、あるところにお爺さんがいた。ある日山へ行って畑をうっていたが、何分年をとっているので骨が折れて仕方ない。少しうっては休み、少しうっては休みしていた。その内にとうとうくたびれ込んでしまって、ああ、何ともしんどくていけない。誰か来てうってくれないかと独り言を言った。すると、ほとりの山から猿が一匹出てきた。お爺さん、あんたの娘をわしの嫁にくれ。畑をうってあげるからと言った。お爺さんはもうすっかりくたびれてしんどくていけないので喜んで、それはありがたい。娘はやるからうってくれと言った。猿は大喜びで、お爺さんの鍬をとると一寸(ちょっと)の間にその畑をうってしまった。夕方になってお爺さんは猿を連れて家へ帰ってきた。二人の娘たちは湯を沸かして待っていた。お爺さんは足を洗ってあがると、今日のことを詳しく話して、姉娘にこういう訳だから、お前猿の嫁に行ってくれと言った。姉娘はすっかり腹をたてて、馬鹿を言うな、自分は一生涯嫁にいかなくても猿の嫁になど行きはしないと言った。お爺さんは仕方がないので、今度は妹娘に頼むと、それでは自分が行くから、鏡と大きな水瓶(はんどう)を一つ買ってくださいと言った。お爺さんが鏡と大きな水瓶を買ってやると、娘は鏡を懐に入れて、猿の婿に水瓶を負わせた。そして婿と花嫁は連れだって猿の家へ行った。途中に川があって橋がかかっていた。橋の中ほどまで行くと、嫁の鏡が川の中へ落ちた。早く行って取ってきてください。早く行かないと流れると言って大騒ぎをした。猿はびっくりして大きな水瓶を背負ったまま川へ入ったので、水瓶の中へ水が入って上がることができない。とうとう溺れ死んでしまった。そこで娘は家へ帰ってきた。姉娘はとうとう一生涯嫁入りをしなかった。

◆モチーフ分析

・あるところにお爺さんがいた
・ある日山へ行って畑をうっていたが、年をとっているので骨が折れる
・少しうっては休み、少しうっては休みしていたが、その内にくたびれてしまった
・しんどくていけない、誰か来てうってくれないかと独り言を言った
・すると、ほとりの山から猿が一匹出てきた
・猿は畑をうってあげるから、爺さんの娘を自分の嫁にくれと言った
・爺さんはすっかりくたびれているので、それはありがたい、娘はやると言った
・猿は大喜びで畑をうった
・夕方になってお爺さんは猿を連れて家へ帰ってきた
・今日のことを詳しく話して、姉娘に猿の嫁に行ってくれないかと言った
・姉娘は腹をたてて、自分は一生涯嫁に行かなくとも猿の嫁になど行きはしないと言った
・仕方ないので、お爺さんは妹娘に頼んだ
・妹娘はそれでは自分が行くから鏡と大きな水瓶を買ってくれと言った
・爺さんが買ってやると、妹娘は鏡を懐に入れ、猿の婿に水瓶を負わせた
・婿と花嫁は連れだって猿の家へ行った
・途中に川があって橋がかかっていた
・橋の中ほどまで行くと、嫁は鏡が川の中へ落ちた、早く行って取ってきてくれと大騒ぎした
・猿はびっくりして大きな水瓶を背負ったまま川へ入った
・水瓶の中に水が入ってきて上がることができず、猿は溺れ死んでしまった
・娘は家へ帰ってきた
・姉娘は一生涯嫁入りをしなかった

 形態素解析すると、
名詞:猿 娘 嫁 水瓶 お爺さん 妹 姉 家 爺さん 畑 自分 鏡 こと それ 一生涯 中 休み 婿 少し 川 橋 一 ところ びっくり ほとり まま 中ほど 今日 内 夕方 大喜び 大騒ぎ 嫁入り 山 年 懐 日山 水 独り言 腹 花嫁 誰 途中 連れ 骨
動詞:行く うつ 言う する くたびれる やる 入る 帰る 買う あげる ある いる かかる くれる たてる できる とる なる 上がる 入れる 出る 取る 折れる 来る 死ぬ 溺れる 背負う 落ちる 話す 負う 連れる 頼む
形容詞:ありがたい しんどい 仕方ない 早い 詳しい
副詞:すっかり
連体詞:ある 大きな その

 お爺さん/猿/娘の構図です。抽象化すると、父/動物/娘です。お爺さん―畑/(うつ)―猿、猿―嫁入り―娘、猿―水瓶―妹娘の図式です。

 畑をうってもらう見返りに娘を嫁にやる[取引]と言ったお爺さんだったが[約束]、姉娘は拒否する[拒否]。妹娘がそれなら自分がいく[応諾]といって鏡と水瓶を用意する[準備]。水瓶を背負った猿は川に鏡を取りに入り、溺れ死んでしまう[計略死]。妹は家に帰った[帰還]。姉は生涯嫁に行かなかった[未婚]。

 猿に水瓶を背負わせて、川の中に入らせることで溺れ死にさせた……という内容です。

 発想の飛躍は猿に水瓶を背負わせることでしょうか。猿―水瓶―妹娘の図式です。

 知恵で動物の嫁になることを回避します。姉は生涯嫁に行かないといったためか、未婚で終わります。

◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.409-411.

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本光寺の説教――モチーフ分析

◆あらすじ

 昔、日原の本光寺に、説教の上手な和尚さんがいた、ある晩、和尚さんが説教をすることになった。近所の人たちは、これはありがたいと我も我もみなお寺へ出かけた。そのうちに和尚さんが出てきて、法座へあがって説教を始めた。みんなは一生懸命お説教を聞いていたが、その内に一人帰り、二人帰り、みんなこそこそと帰ってしまった。そして源十という男がたった一人残った。和尚さんは感心して、何という信心深い男だ。他の者はああして皆帰ってしまったのに、お前は一人になってもちゃんと聞いている。自分は一人になっても説教を止めはしない。お前にありがたいお話を終いまで聞かせてやると言った。そして長いことお説教をしてようやく終わった。源十はその間じっと黙って聞いていたが、和尚さま、実は私もとうから帰ろうと思っていましたが、草履を和尚さまの座っていなさる法座の下へ入れておきましたので帰ることができませんでしたと言った。

◆モチーフ分析

・日原の本光寺に説教の上手な和尚がいた
・ある日、和尚が説教することになったので、我も我もとみなお寺へ出かけた
・和尚が出てきて法座へ上がって説教を始めた
・皆一生懸命にお説教を聞いていたが、その内に一人帰り、二人帰りと皆こそこそと帰ってしまった
・源十という男がたった一人残った
・和尚は感心して、何という信心深い男だ。自分は一人になっても説教を終いまで聞かせてやると言った
・長いこと説教をして、ようやく終わった
・源十は黙って聞いていたが、実は自分もとうから帰ろうと思っていたが、草履を法座の下へ入れておいたので帰ることができなかったと言った

 形態素解析すると、
名詞:説教 和尚 こと 一人 十 法座 源 男 皆 自分 お寺 お説教 とう みな 一生懸命 上手 下 二人 内 感心 日原 本光寺 草履
動詞:帰る 聞く なる 言う いう いる する たつ できる 上がる 入れる 出かける 出る 始める 思う 残る 終う 終わる 黙る
形容詞:信心深い 長い
副詞:ある日 ようやく 実は 我も我も
連体詞:その 何という

 和尚/皆/源十の構図です。抽象化すると、僧侶/信徒/男です。和尚―説教―皆、和尚―説教/草履―源十という図式です。

 本光寺に説教の上手い和尚がいて、ある日皆が説教を聴くことになった[開催]。長い説教に一人帰り、二人帰りして最後に源十という男が残った[残存]。和尚は信心深いと感心したが[感心]、源十は草履が法座の下にあったため帰れないだけだった[勘違い]。

 草履が法座の下にあったため、源十だけ帰れなかった……という内容です。
 発想の飛躍は、源十の草履が法座の下にあったということでしょうか。和尚―説教/草履―源十の図式です。

 人の集中力が保つのが九十分くらいと言いますので、和尚の説教はそれより長かったのかもしれません。

◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)p.408.

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2022年11月 8日 (火)

子より孫はかわいい――モチーフ分析

◆あらすじ

 昔は年がよっても死ぬことがなかった。それで、年がよると山へ捨てることにしていた。あるとき親が年をとったので山へ捨てようと思って息子と孫と二人で担いでいった。そしていよいよ山へ連れていって帰る時、息子は担いできた天秤棒をそこにおいたまま帰りかけた。すると孫がこれは持って帰ろうと言った。息子はこれはいらないから持って帰らなくてもいいと言った。すると孫は、それでも今度はお前を担いでくるのに要るから持って帰ろうと言った。息子はそれを聞いて、やがて自分もこうして捨てられるのだと思うと、そのまま帰ることができなくなった。そこで捨てた親をまた担いで帰って、床の下に隠して養った。それで子より孫は可愛いと言うのだそうだ。

◆モチーフ分析

・昔は年をとっても死ぬことがなく、年をとると山へ捨てていた
・親が年をとったので山へ捨てようと息子と孫が担いでいった
・いよいよ山へ連れていって帰るとき、息子は担いできた天秤棒をそこに置いたまま帰りかけた
・孫がこれは持って帰ろうと言った
・息子はこれは要らないから持って帰らなくてもいいと言った
・孫は今度は息子を担いでくるのに要るから持って帰ろうと言った
・息子はそれを聞いて、やがて自分もこうして捨てられるのだと思うと、そのまま帰ることができなくなった
・そこで捨てられた親をまた担いで帰って床の下に隠して養った
・それで子より孫は可愛いと言う

 形態素解析すると、
名詞:息子 孫 山 年 こと これ そこ 親 それ とき まま 下 今度 天秤棒 子 床 昔 自分
動詞:帰る 捨てる 言う 担ぐ 持つ とる 要る いく する できる 思う 担う 死ぬ 置く 聞く 連れる 隠す 養う
形容詞:いい ない 可愛い
副詞:いよいよ こう そのまま とっても また やがて

 息子/親/孫の図式です。家族同士の構図です。息子―親/天秤棒―孫の図式です。

 年取った親を山に捨てよう[遺棄]と息子と孫が担いでいった[姥捨て]。帰りがけ、天秤棒を置いて帰ろうとしたが、孫が息子を捨てるときに要ると言った[再利用]。自分もいずれは捨てられる[繰り返し]のだと思った息子は親を連れ帰って床の下に隠して養った[養育]。

 親を捨てようとした息子だったが、自分もいずれ捨てられると気づいて考えを改める……という内容です。

 発想の飛躍は孫がいずれ息子を捨てるときに要ると言ったことでしょうか。息子―親/天秤棒―孫の図式です。

 実際に山に姥捨てしていた証拠はないそうですが、心性としてはあったのでしょう。

◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)p.407.

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宗丹――モチーフ分析

◆あらすじ

 昔、宗丹という坊主が青野ヶ原を焼いたため津和野の殿さまに捕らえられた。取調べがあって、お仕置きを受けることになったが、何かこれについていい歌を詠んだら生命だけは助けてやろうと殿さまが言った。宗丹はそこで歌を詠んだ。「うるしももたん宗丹が 一夜のうちに 青野ヶ原を墨ぬりにした」。しかしこの歌は殿さまの気に入らなかったので、宗丹はやはりお仕置きを受けることになった。宗丹はいよいよ殺されるとき、殿さまに向かって糞を食らえと言った。

◆モチーフ分析

・宗丹という坊主が青野ヶ原を焼いたため、津和野の殿さまに捕らえられた
・取調べがあって、お仕置きを受けることになったが、何かこれについて歌を詠んだら生命だけは助けてやろうと殿さまが言った
・宗丹は「うるしももたん宗丹が 一夜のうちに 青野ヶ原を墨ぬりにした」と歌を詠んだ
・この歌は殿さまの気に入らなかったので、やはりお仕置きを受けることになった
・宗丹はいよいよ殺されるとき、殿さまに向かって糞を食らえと言った

 形態素解析すると、
名詞:丹 宗 殿さま 歌 お仕置き こと 青野 うち うるし これ ため とき 一夜 坊主 墨 津和野 生命 糞
動詞:なる 受ける 言う 詠む ある いう する つく ぬる もつ 助ける 取調べる 向かう 捕らえる 殺す 気に入る 焼く 食らう
副詞:いよいよ やはり 何か
連体詞:この

 宗丹/殿さまの構図です。抽象化すると、僧侶/領主です。宗丹―歌/お仕置き―殿さまの図式です。

 青野ヶ原を焼いたため仕置きを受けることになった宗丹だが[仕置き]、これについて何か歌を詠めば助命しようと言われた[助命の提案]。そこで宗丹は歌を詠んだが殿さまの気にいらなかった[不受理]。仕置きをされることになった宗丹は殿さまに捨て台詞を吐いた[捨て台詞]。

 助命の条件として歌を詠んだ宗丹だったが、殿さまの気にいらず、捨て台詞を吐いた……という内容です。

 発想の飛躍は歌を詠むものの殿さまの気に入らなかったということでしょうか。宗丹―歌/お仕置き―殿さまの図式です。

 青野ヶ原は青野山の周辺でしょうか。青野山には父が登ったことがあると言っていたのですが、体力が落ちた現在ではとても登ることは叶いません。

◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)p.406.

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2022年11月 7日 (月)

文系学問は役にたたないか――吉見俊哉『「文系学部廃止」の衝撃』

吉見俊哉『「文系学部廃止」の衝撃』を読む。タイトルは2015年6月文部科学省が出した通知が国立大学の文系学部の縮小を提言した内容で、マスコミによって大きく取り上げられ話題となったことに由来する。

平成の三十年で新自由主義/グローバリズムが主流となり、またインターネットの登場によって情報爆発が起き価値観が多様化した。そういう流転する状況に応じた大学の在り方を考察した本。

大学は企業と違って長期的な視野/価値観で動いているから、当然企業とは異なる在り方になること等が挙げられていた。

僕が大学生だったのは三十年以上前で、それから知識がアップデートされていなかった。知っていたのは出身大学が人気校となったことくらいである。だから現在の大学については知らないことだらけだった。

僕自身は典型的な私大文系だから国立大学について何か言うつもりはない。リアルな国立大学は元々理系優位だそうだ。

いいなと思ったのは、米国の大学がメジャー/マイナーと専攻/副専攻を履修できること。学生時代、現代思想に興味を持ったが、法学部だったので力が入らず中途半端になってしまった。

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作蔵庄屋――モチーフ分析

◆あらすじ

 昔、柿木に作蔵という庄屋がいた。この庄屋は知恵者であった。あるとき、津和野の殿さまが屋形舟で高津参りをするのへお供をして先触れをして行った。高津へ着いて人丸さまへ参って、徳城の峠を越して柳まで戻ると、お宮があった。殿さまが先触れ、この社(やしろ)は何という社かと訊いたので、はい、弥四郎は三年前の飢饉で逃げましたと作蔵は答えた。それから商人(あきんど)まで戻ると、またお宮があった。殿さまが先触れ、このお宮は何というお宮かと訊くと、はい、お宮は弥四郎の女房で、弥四郎と連れて逃げましたと作蔵は言った。津和野の四本松へ戻ると、大きな松があった。先触れ、この松は何年経っているかと殿さまが訊いた。はい、千三年経っておりますと作蔵が答えたので、殿さまがどうしてそれがわかると訊くと、はい、松は千年経つと逆枝を打ちます、この松は三年前に逆枝を打ちましたと作蔵は答えた。

 津和野で庄屋の集まりがあって、作蔵がこれからひとつ松茸を採って飲もうと言った。他の庄屋たちが松茸をどこで採ると訊いた。それはお城山へ行って採ると作蔵は答えた。お城山には山番がいるから採られはしないと他の庄屋が言うと、それは自分が採ってくると言って、作蔵は顔に鍋炭を塗って、浅葱(あさぎ)の手ぬぐいで頬かむりをして、鎌竿と袋を持って出かけた。作蔵はお城山へ上がって松茸をとっては柴の下へ隠し、鎌竿を持って松の上の方の枝をがさがさやり、また松茸をとって柴の下へ隠しては、鎌竿で松の上の方の枝をがさがさ揺すぶった。こうして段々登って行くと、山番が見つけた。何をしていると山番が叱ると、松茸を採りに来たと作蔵が言った。この馬鹿たれ、松茸が木の上にあるものか、帰れ帰れと山番は言った。それで作蔵は帰った。そうして隠しておいた松茸をみな袋へ入れて帰って、皆と食べた。

 津和野の城下には度々火事があって、その度に殿さまから木を出せということがあった。ある時また火事があって、木を出せと言ってきたので、作蔵は茂右衛門という百姓に木を出させた。津和野へ持って行くと、殿さまはこの木はどこで伐ったか訊いた。これは火の浦の燃えあがりの茂右衛門の山で伐ったと作蔵が答えた。殿さまはそんな縁起の悪い木はいらないと言って、それから木を出させなかった。

◆モチーフ分析

・柿木に作蔵という知恵者の庄屋がいた
・あるとき津和野の殿さまが高津参りするのに先触れを務めた
・高津の人丸さまに参って、徳城の峠を越して柳まで戻るとお宮があった
。殿さまがこの社は何という社か訊いたので、作蔵は弥四郎は三年前の飢饉で逃げたと答えた
・商人まで戻ると、またお宮があった。殿さまが何というお宮か訊くと、作蔵はお宮は弥四郎の女房で弥四郎と連れて逃げたと答えた
・四本松へ戻ると大きな松があった。殿さまがこの松は何年経っているかと訊いたので、作蔵は松は千年経つと逆枝を打つ。この松は三年前に逆枝を打ったので千三年経っていると答えた
・庄屋の集まりがあって、作蔵がこれから松茸を採って飲もうと言った
・他の庄屋たちが松茸をどこで採るのか訊いた
・作蔵はお城山へ行って採ると答えた
・他の庄屋がお城山には山番がいるから採られないと言うと、作蔵は自分で採ってくると言って、顔に炭を塗って浅葱の手ぬぐいで頬かむりをして鎌竿と袋を持って出かけた
・作蔵はお城山へ上がって松茸を採っては柴の下に隠し、鎌竿を持って松の上の方の枝をがさがさ揺すぶった
・それを繰り返して段々登って行くと、山番が見つけた
・山番が叱ると、松茸を採りに来たと作蔵は答えた
・松茸が木の上にあるものか、帰れと山番が言ったので作蔵は帰った
・隠しておいた松茸をみな袋へ入れて帰って皆と食べた
・津和野の城下には度々火事があって、その度に殿さまから木を出せと言われた
・また火事があって木を出せと言ってきたので、作蔵は茂右衛門という百姓に木を出させた
・津和野へ持っていくと、この木はどこで伐ったか殿さまが訊いた
・これは火の浦の燃えあがりの茂右衛門の山で伐ったと答えたところ、殿さまはそんな縁起の悪い木はいらないと言って、それから木を出させなかった

 形態素解析すると、
名詞:作蔵 木 殿さま 松茸 松 お宮 山番 庄屋 城山 弥四郎 枝 津和野 三 これ どこ 上 他 火事 社 茂右衛門 逆 鎌 高津 千 千三 それ とき ところ みな もの 下 人丸 何年 先触れ 商人 四本松 城下 女房 山 峠 度 徳城 手ぬぐい 方 柳 柴 柿木 浅葱 浦 火 炭 百姓 皆 知恵者 縁起 自分 袋 頬かむり 顔 飢饉
動詞:ある 採る 言う 答える 訊く 出す 帰る 戻る 経つ いう いる 伐る 参る 打つ 持つ 行く 逃げる 隠す する はいる 上がる 入れる 出かける 出る 務める 叱る 塗る 持っていく 揺すぶる 来る 燃えあがる 登る 繰り返す 見つける 越す 連れる 集まる 食べる 飲む
形容詞:悪い
形容動詞:そんな
副詞:また がさがさ 度々 段々
連体詞:この 何という ある その 大きな

 作蔵/殿さま、作蔵/山番の構図です。抽象化すると、庄屋/領主です。作蔵―(答える)/(訊く)―殿さま、作蔵―松茸―山番、作蔵―木―殿さまの図式です。

 津和野に作蔵という知恵者の庄屋がいた[知恵者]。作蔵は殿さまの先触れをした際、百姓の窮状をそれとなく訴えた[示唆]。また、作蔵は城山の山番の目を誤魔化して松茸を採った[窃盗]。作蔵は火事の後の木の徴発に火の名のある土地の木を出させて、そこから木を出さない様にした[免租]。

 作蔵という知恵者の庄屋が津和野の殿さまと駆け引きをして巧みに要求を通した……という内容です。

 発想の飛躍は作蔵の知恵でしょうか。作蔵―(答える)/(訊く)―殿さまという図式でさりげなく窮状を訴えるのです。

◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.402-405.

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2022年11月 6日 (日)

椛谷の次郎――モチーフ分析

◆あらすじ

 昔、吉賀の椛谷(かばたに)に椛谷の次郎という百姓がいた。次郎は大した力持ちで、人の大勢集まるところへ行ったときには、人が取り違えないように履き物を脱いで柱を抱え上げてその下へ入れておいた。次郎は毎年、津和野の殿さまのところへ山芋を納めることになっていた。あるとき山芋を納めに行くと山芋が折れていたので、役人はこんな折れた山芋は受け取られないと言ってどうしても受け取ってくれない。次郎は仕方ないので遠い道を帰って、掘って折らさない様に気をつけて持っていった。役人は今度は何とも言わないで受け取った。ところが次郎は納めが済んでも役所へ座り込んで、いつまでも帰ろうとしない。役人が変に思って、納めが済んだのにどうして帰らないのかと言った。すると次郎は、この前お役人さまは折れた山芋は受け取られないと言って受け取らせませんでした。殿さまは山芋をあのまま丸呑みにしなさるのだろうから、今日持ってきたのを丸呑みにしなさるのを見ねば帰らないと言った。役人は腹をたてて、大きな縄で次郎をそこの柱へ縛りつけてしまった。次郎は平気な顔をして、せられるままにしていた。役人たちはどうするかと思って見ていると、次郎はもぞもぞと動き出した。そして身体を一ゆすり、一ゆすり、ゆすりあげる度に柱がついて上がって家がぐらぐら動く。次郎はその度に、その周りに脱いであった役人たちの草履や雪駄を柱の下へかき込んだ。役人たちはそれを見ると、慌てて大騒ぎしはじめた。殿さまは次郎の力の強いのに感心して、もうよい。早く縄を解いてやれと言った。

 次郎はあるとき女竹のいっぱい茂った藪を畠にしようと思って女竹を片っ端から根ごと引き抜いていった。女竹は根が互いに繋がっていて、鍬で掘ってもなかなか掘り上げるのが大変なものだが、次郎は力が強いのでどんどん手で引き抜いた。そうして立派な畠が出来上がった。次郎は畠へ種子を播いたが、作物はさっぱり出来なかった。底の苦土(にがつち)が畠いっぱいに散らばったからであった。

◆モチーフ分析

・吉賀の椛谷に椛谷の次郎という百姓がいた
・次郎は大した力持ちで、人の大勢集まるところへ行ったときには履き物を脱いで柱を抱え上げてその下へ入れておいた
・次郎は毎年、津和野の殿さまのところへ山芋を納めることになっていた
・あるとき山芋を納めに行くと、山芋が折れていたので、役人は受け取らなかった
・仕方ないので、次郎は遠い道を帰って、掘って折れないように気をつけて持っていった
・役人は今度は何も言わずに受け取った
・次郎は納めが済んでも役所へ座り込んでいつまでも帰ろうとしない
・変に思った役人が納めが済んだのにどうして帰らないのかと尋ねた
・次郎は、この前お役人さまは折れた山芋は受け取らなかった。殿さまは山芋を丸呑みになさるだろうから、それを見なければ帰らないと言った
・腹をたてた役人は次郎を柱へ縄で縛りつけてしまった
・次郎は平気な顔をして、されるままにしていた
・どうするかと思っていた役人たちが見ていると、次郎はもぞもぞと動きだした
・身体をゆすりあげる度に柱がついて上がって家がぐらぐら動いた
・次郎はその度に、周りに脱いであった役人たちの草履や雪駄を柱の下へかき込んだ
・役人たちはそれを見て、慌てて大騒ぎしはじめた
・殿さまは次郎の力の強いのに感心して、もうよい、早く縄を解いてやれと言った
・次郎は女竹の茂った藪を畠にしようと思って、女竹を片っ端から根を引き抜いていった
・女竹は根が互いに繋がっていて掘り上げるのが大変だが、次郎は力が強いので、どんどん引き抜いた
・立派な畠ができあがった
・次郎は種を播いたが、作物はさっぱり出来なかった
・底の苦土が畠いっぱいに散らばったからだった

 形態素解析すると、
名詞:次郎 役人 山芋 柱 女竹 殿さま 畠 それ とき ところ 下 力 度 根 椛谷 縄 いっぱい いつ こと まま もぞもぞ ゆすり 丸呑み 人 今度 何 作物 力持ち 吉賀 周り 変 大勢 大変 大騒ぎ 家 履き物 平気 底 役所 感心 毎年 気 津和野 百姓 種 立派 腹 苦土 草履 藪 身体 道 雪駄 顔
動詞:する 帰る 納める 受け取る 思う 折れる 見る 言う 引き抜く 掘る 済む 脱ぐ 行く あげる いう いる かき込む たてる つく つける できあがる なさる なる 上がる 入れる 出来る 動きだす 動く 尋ねる 座り込む 慌てる 抱える 持っていく 播く 散らばる 縛りつける 繋がる 茂る 解く 集まる
形容詞:強い よい 仕方ない 早い 遠い
副詞:どう ぐらぐら さっぱり どんどん もう 互いに 片っ端から
連体詞:その ある この 大した

 次郎/役人の構図です。次郎―柱―役人の図式です。

 椛谷の次郎は家の柱を持ち上げるほど力持ちだった[怪力]。ある年、次郎が折れた山芋を納めようとしたところ[納付]、役人は受け取らなかった[拒否]。次郎は折れていない山芋を納め直したが[再納付]、殿さまがそれを呑み込むのを見るまでは帰らないと言った[口ごたえ]。役人は次郎を柱に縛り付けたが[緊縛]、次郎は柱を持ち上げ、家がぐらぐらしたので[怪力発揮]、許された[赦免]。

 椛谷の次郎は口答えして役人に縛られたが、怪力で家をぐらぐらと揺すり、許された……という内容です。

 発想の飛躍は次郎が怪力で家を揺するところでしょうか。次郎―柱―役人の図式です。縛られているのに草履や雪駄を拾ってしまうというところはわずかに引っかかります。

 他の民話集では、山芋は長いので持って歩くのに障りになる。次郎はどうせ細かく切って食べるのだからと言って山芋を折ってしまうという筋になっています。

◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.399-401.
・『夕陽を招く長者 山陰民話語り部シリーズ1』(民話の会「石見」/編, ハーベスト出版, 2013)pp.32-34.

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2022年11月 5日 (土)

明快さの裏に潜む危うさ――宇野常寛「遅いインターネット」

宇野常寛「遅いインターネット」を読む。「遅い」とは雑誌に近いコンセプトでじっくりと記事に取り組むというスタンス。新聞やテレビだとニュースは刻一刻と移り変わっていくので、NHK解説委員みたいなサイトがあってもいいとは思う。

一方で次の様な問題も抱えている。例えば市民/大衆という二項対立を何の説明もなしに提示してくる。上院が市民、下院が大衆などといった喩えは初耳である。上院は英語では Senateだ。つまり元老に由来する。

宇野氏はしばしば独自の解釈を施すが、それが独自のものであることに無頓着である。いつ解釈を無言で変えて論じられるかも分からない。自分の主張したい図式に強引に当てはめて恣意的に論じる。そういう点で危うさを抱えているのである。

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二人の焼物屋――モチーフ分析

◆あらすじ

 二人の焼物屋が雪道を天秤棒の後先に茶碗をいっぱい担いで歩いていた。その内に前の男がつるりと滑って転んだので、茶碗はみんな壊れてしまった。男は後ろの男に、これはどうも仕方ない。自分が親の言うことを聞かなかったばかりにこういうことになった。自分が家を出る時、親父は雪道を歩くには、上り坂では爪先きで歩け、下り坂ではかかとで歩けとあれだけ言ってくれたのに。こんなことになるのも、親の言うことを聞かなかった罰だと言った。後ろの男はそれを聞いて、なるほどそういう具合に歩かねばいけないのだなと思った。そして次に下り坂へ向いた時、かかとで歩く様にすると、つるりと滑って茶碗をみんな壊してしまった。前の男は上り坂と下り坂の時をわざと反対に言ったので、そうすると滑る筈だった。

◆モチーフ分析

・二人の焼物屋が天秤棒に沢山の茶碗を担いで歩いていた
・前の男がつるりと滑って転んだので、茶碗はみんな壊れてしまった
・男は後ろの男に、自分が親の言うことを聞かなかったばかりにこういうことになったと言った
・男の親父は雪道を歩くには、上り坂では爪先で歩け、下り坂ではかかとで歩けど言った
・男はこんなことになるので、親の言うことを聞かなかった罰だと言った
・後ろの男はそれを聞いて、なるほどそういう具合に歩かねばいけないのかと思った
・後ろの男は次の下り坂へ向いたとき、かかとで歩く様にすると、つるりと滑って茶碗をみんな壊してしまった
・前の男は上り坂と下り坂の時をわざと反対に言ったのだった

 形態素解析すると、
名詞:男 こと 下り坂 後ろ 茶碗 かかと みんな 上り坂 前 親 それ とき 二人 具合 天秤棒 時 次 沢山 焼物 爪先 罰 自分 親父 雪道
動詞:歩く 言う 聞く いう なる 滑る いける する 向く 壊す 壊れる 思う 担う 転ぶ
形容動詞:こんな 反対
副詞:つるりと こう そう なるほど わざと

 前の男/後ろの男の構図です。前の男―雪道―後ろの男の図式です。

 二人の焼物屋が茶碗を担いで歩いていたが[歩行]、前の男が雪道で滑って転んだので[転倒]茶碗がみんな壊れた[損壊]。前の男が親の言う通りに歩いていればといったので[後悔]、後ろの男が真似したところ[真似]、滑って転んで茶碗を壊してしまった[転倒]。

 前の男の言ったことを真似したところ、嘘だったので、後ろの男も滑って転んでしまった……という内容です。

 発想の飛躍は親から言われた事を正反対に伝えることでしょうか。前の男―(聞く)―後ろの男の図式です。

 前の男は後ろの男も滑って転ばせることで、自分だけが転んで茶碗を壊したのではないと既成事実を作ってしまったのです。

◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)p.398.

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2022年11月 4日 (金)

茶碗売りのお爺さん――モチーフ分析

◆あらすじ

 冬の寒いみぞれの降る日に一人のお爺さんが天秤棒の後先に茶碗を沢山つけて町の中を売り歩いていた。お爺さんはこんな雪の降る日にまで商いをして歩かないでも困るほどではなかったが、働くことの好きなお爺さんは寒い中を出かけたのだった。その内にみぞれはだんだん激しくなって、どうにもこうにも外は歩けないほど酷く降り出した。お爺さんはほとりに大きな呉服屋があったので、軒下に荷を下ろして少し休ませてもらうことにした。店へ入ってみると、ちょうど客もいないので、広い店先に番頭が一人ぽつねんと火鉢に寄りかかっていた。お爺さんは訳を話して少し休ませてくれと頼むと、どうぞ、こっちへ来て手をあぶりなさいと番頭が言った。お爺さんはお礼を言って火鉢で手をあぶりながら番頭と色々な話をした。しばらくして番頭はお前さんはまことに感心にこんな寒い日に商いをして歩くが、滑って茶碗を壊してしまったらどうするかと言った。それはどうも仕方ない。また仕入れて売るとお爺さんは答えた。それではその荷も滑って壊してしまったらどうするか、番頭はにやにや笑いながら言った。仕方ない、もう一度いって貸してもらって売る。では、その荷も壊してしまったらどうする。お爺さんはこいつは人を馬鹿にして、しつこく同じことを訊く奴だと思った。そして、そうなったら仕方ない。あなたの様に人に使ってもらうと言った。番頭は赤い顔をして黙ってしまった。

◆モチーフ分析

・冬の寒いみぞれの降る日に一人のお爺さんが天秤棒に茶碗を沢山つけて町の中を売り歩いていた
・お爺さんはこんな雪の降る日にまで商いをして歩かないでも困らなかったが、働くことが好きなのだった
・みぞれが激しくなって、どうにもこうにも外は歩けない程に酷く降り出した
・ほとりに大きな呉服屋があったので、軒下に荷を下ろして、少し休ませてもらうことにした
・店へ入ってみると、ちょうど客もおらず、店先に番頭が一人ぽつねんと火鉢に寄りかかっていた
・お爺さんは訳を話して少し休ませてくれと頼むと、番頭はこちらへ来て手をあぶりなさいと言った
・お爺さんは礼を言って火鉢で手をあぶりながら番頭と色々な話をした
・番頭はこんな寒い日に商いをして歩くが、滑って茶碗を壊してしまったらどうするかと訊いた
・それは仕方ない、また仕入れて売るとお爺さんは答えた
・それではその荷も壊してしまったらどうするかと番頭は訊いた
・お爺さんはもう一度いって貸してもらって売ると答えた
・では、その荷も壊してしまったらどうすると番頭は訊いた
・お爺さんは、こいつは人を馬鹿にして同じことをしつこく訊く奴だと思った
・お爺さんはそうなったら仕方ない、あなたの様に人に使ってもらうと答えた
・番頭は顔を赤くして黙ってしまった

 形態素解析すると、
名詞:お爺さん 番頭 こと 日 荷 みぞれ 一人 人 商い 少し 手 火鉢 茶碗 あなた こいつ こちら それ ほとり もこう 中 冬 呉服 外 天秤棒 奴 客 店 店先 沢山 町 礼 程 色々 訳 話 軒下 顔 馬鹿
動詞:する 訊く 壊す 歩く 答える あぶる 休む 売る 言う ある いく おる つける なる 下ろす 仕入れる 使う 働く 入る 困る 売り歩く 寄りかかる 思う 来る 滑る 話す 貸す 降り出す 降る 頼む 黙る
形容詞:仕方ない 寒い しつこい 激しい 赤い 酷い
形容動詞:こんな 同じ 好き
副詞:どう そう ちょうど ぽつねんと また もう 一度
連体詞:その 大きな 雪の降る

 爺さん/番頭の構図です。抽象化すると商人/商人です。番頭―茶碗―番頭の図式です。

 みぞれの降る日に商いに出かけた爺さんは[商い]、みぞれが酷くなったので呉服屋で休憩することにする[休憩]。呉服屋の番頭が商売ものの茶碗が壊れたらどうするとしつこく訊くので[質問]、爺さんはお前のように他人に使ってもらうと答えた[回答]。番頭は黙った[沈黙]。

 番頭に茶碗が壊れたらどうすると、しつこく訊かれた爺さんはお前の様に他人に使ってもらうと答えると番頭は黙った……という内容です。

 発想の飛躍は、茶碗が何度も壊れたら他人に使って貰うということでしょうか。番頭―茶碗―番頭の図式です。

 いくら番頭と言っても他人に使ってもらっている。それより、小規模でも独立した方がいいでしょうか。

◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.396-397.

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2022年11月 3日 (木)

隅の庄九郎――モチーフ分析

◆あらすじ

 昔、隅の庄九郎という男が上方へ行った帰りに三隅の辺りで日が暮れた。どこか宿を借りる様な所はないかと思って探したが、家が一軒もない。これは困ったものだと思って仕方なしに歩いていると、川のほとりに一軒の家があった。これはいいことだと思って、日が暮れて泊まるところがないので困っているが、ひとつ泊めてくれないかと言うと、泊めてあげようと言うので泊めてもらった。上へあがって食事を済ませて休んでいると、しばらく経ってから、前の川の中から、今夜も漁に行こうと言うものがある。今夜はどこへ行くかと宿の主人が言うと、今夜は寺の土井の又三郎を取りに行こうと川の中から言った。庄九郎はこれを聞くとびっくりした。どうもこの様子を見ると、この家の主人は人間ではなくえんこうらしいのである。庄九郎は恐ろしくなってぶるぶる震えだした。主人はそれを見ると、お前はそんなに恐れなくてもいい。何、お前は隅の庄九郎といって人のよい男だから取ったりしない。安心して寝るがよい。寺の土井の又三郎という男は川のほとりをびっしり歩き回って川を荒らすから、それで取ってくるというのだと言った。寺の土井の又三郎は津和野の殿さまの言いつけで、いつも堤防を直したり、井堰を作って水を上げたりしていたので、えんこうのいる所が壊されて住みにくくなるので、えんこうたちが取りにいこうとしたのであった。男はそう言って出ていった。しかし、取ることはできなかった模様で、又三郎が川で死んだという話はなく、長生きして沢山の仕事をした。

◆モチーフ分析

・隅の庄九郎という男が上方へ行った帰りに三隅の辺りで日が暮れた
・どこか宿を借りる所はないかと探したが、家が一軒もない
・仕方なしに歩いていると、川のほとりに一軒の家があった
・これはいいと思って、日が暮れて泊まるところがないので困っている、ひとつ泊めてくれないかと頼むと泊めてあげようと言うので泊めてもらった
・上へあがった食事を済ませて休んでいると、前の川の中から今夜も漁に行こうというものがある
・宿の主人が今夜はどこへ行くかと言うと、今夜は寺の土井の又三郎を取りに行こうと川の中から言った
・庄九郎はこれを聞いてびっくりした
・どうもこの家の主人は人間ではなくえんこうらしい
・恐ろしくなった庄九郎はぶるぶる震えだした
・宿の主人はお前は良い男だから取ったりしない、そんなに恐れなくてもいいと答えた
・宿の主人は寺の土井の又三郎は川のほとりを歩き回って川を荒らすから、それで取ってくるのだと言った
・又三郎は津和野の殿さまの言いつけで堤防を直したり井堰を作って水を上げたりしていたので、えんこうのいる所が壊されて住みにくくなって、えんこうたちが取りにいこうとしたのだと言って男は出ていった
・しかし、取ることはできなかった模様で、又三郎が川で死んだという話はなく、長生きして沢山の仕事をした

 形態素解析すると、
名詞:川 主人 又三郎 宿 えんこう 今夜 家 庄九郎 男 これ ほとり 一軒 中 土井 寺 所 日 お前 こと それ ところ どこ ひとつ びっくり もの 三隅 上 上方 井堰 人間 仕事 前 堤防 模様 殿さま 水 沢山 津和野 漁 話 辺り 長生き 隅 食事
動詞:取る 言う する 行く いう 泊める ある 暮れる あがる あげる いく いる できる 上げる 休む 住む 作る 借りる 出る 困る 壊す 帰る 思う 恐れる 探す 歩き回る 歩く 死ぬ 泊まる 済ませる 直す 答える 聞く 荒らす 言いつける 震えだす 頼む
形容詞:ない いい 恐ろしい 良い
副詞:そんなに どう どこか ぶるぶる 仕方なしに
連体詞:この

 庄九郎/主人/えんこう/又三郎の構図です。抽象化すると、人間/妖怪/人間です。庄九郎―主人―えんこう―又三郎の図式です。又三郎―堤防―えんこうの図式でもあります。

 庄九郎はえんこうが又三郎を取りに行こうという声を聞いて[側聞]、えんこうの宿に泊まってしまったと気づく[発覚]。が、宿の主人は庄九郎がいい男だから取らないと言った[保証]。その後、又三郎が川で死んだという話はなく長生きした[失敗]。

 又三郎は川の改修工事でえんこうに恨まれていたが、長生きした……という内容です。

 発想の飛躍は又三郎を取りに行こうというところでしょうか。又三郎―堤防―えんこうの図式です。

 人間にとっては有益な又三郎の仕事も、えんこうにとっては川を荒らす行為だったのです。ここでは又三郎が陰の主役でしょうか。

◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.394-395.

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七人小屋――モチーフ分析

◆あらすじ

 昔、七人の者が山の奥へ入って、小屋をかけて仕事をしていた。年の暮れになって、皆は年をとりに家へ帰ることになった。しかし、誰かあとに残って小屋番する者がいなければならないので、一人が残った。しかし皆が帰ってしまってたった一人になると心細くなった。その内に夕方になった。人里離れた山の中の小屋にたった一人いると、四十ばかりくらいの女の人がやって来た。山小屋のことだから戸は無いので、戸口にはただむしろが下げてあるばかりだった。女はそれを上げて内へ入ると、ぼた餅をこしらえてきたから食べなさいと言ってぼた餅をのぞけた。男はぼた餅が大好きであった。しかし、こんな山の奥へ見たこともない者がぼた餅を持ってくるのはおかしいと思って、自分はぼた餅はいらないから持って帰ってくれと言って、とうとう食べなかったので、女は帰っていった。しばらくすると、女は今度は茄子(なす)を持ってきて、それではこれを買ってくださいと言う。正月だから茄子のある頃ではないので、これは本当の茄子ではあるまいと思って、いらないと言った。ところが女はどうでも買ってくれと言って聞かない。そこで言い争いをしているところへ、大きな目玉をした、長い髪の真っ白い老人がやってきて、ドサッと座った。そして大きな目玉でギョロギョロ睨みまわしたので、女は出ていってしまった。自分はお前の氏神だ。今ついて帰れ。今きた女はこの奥に堤(つつみ)があるが、その主が化けてきたのだから、自分について帰れば助かるとその人は言った。男はホッとして何もかもほったらかしたまま、すぐその老人について帰った。老人の後ろは明るくて道がよく見えた。一気に家の側まで帰ったとき、氏神さまはパッと見えなくなってしまった。それから男はそこへ氏神さまの祠をこしらえて、お祀りした。

◆モチーフ分析

・七人の者が山奥へ入って小屋をかけて仕事をしていた
・年の暮れになって皆は家へ帰ることになった
・誰かあとに残って小屋番する者がいなければならないので、一人が残った
・皆が帰って一人きりになると心細くなった
・人里離れた山の中の小屋にたった一人でいると、四十くらいの女の人がやって来た
・女は戸口のむしろを上げて中へ入ると、ぼた餅をこしらえたから食べなさいと言った
・男はぼた餅が大好きであったが、こんな山奥へ見たこともない者がぼた餅を持ってくるのはおかしいと思って、自分はぼた餅はいらないから持って帰ってくれと言った
・男はとうとう食べなかったので、女は帰っていった
・女は今度は茄子を持ってきて、これを買ってくださいと言う
・正月だから茄子のある頃ではないので、これも本当の茄子ではないと思っていらないと言った
・女はどうしても買ってくれと言って聞かない
・言い争いしているところへ大きな目玉をした長い髪の真っ白い老人が来てドサッと座った
・老人が大きな目玉でギョロギョロ睨みまわすと女は出ていってしまった
・老人は自分はお前の氏神が、今ついて帰れ。今来た女はこの奥の堤の主が化けてきた。自分について帰れば助かると言った
・男はホッとして何もかもほったらかしたまま、すぐ老人について帰った
・老人の後ろは明るく道がよく見えた
・一気に家の側まで帰ったとき、氏神はパッと見えなくなった
・男はそこへ氏神の祠をこしらえてお祀りした

 形態素解析すると、
名詞:女 老人 ぼた餅 男 小屋 氏神 者 自分 茄子 こと これ 一人 中 今 家 山奥 皆 目玉 四十 七 お前 そこ とき ところ まま むしろ 一人きり 主 人 人里 今度 仕事 側 堤 奥 山 年の暮れ 後ろ 戸口 本当 正月 番 祠 誰 道 頃 髪
動詞:帰る する 言う いる つく なる 持つ こしらえる 入る 思う 来る 残る 見える 買う 食べる ある いく かける たつ はいる ほったらかす やって来る 上げる 出る 助かる 化ける 座る 睨む 祀る 聞く 見る 言い争う 離れる
形容詞:ない おかしい 心細い 明るい 真っ白い 長い
形容動詞:こんな 大好き
副詞:あと すぐ とうとう どう よく ギョロギョロ ドサッと パッと ホッと 一気に 何もかも
連体詞:大きな この

 男/女/氏神の構図です。抽象化すると、人間/魔性のもの/神です。男―女―氏神の図式です。

 年の暮れに一人で山小屋に残った男[残留]の許へ見慣れない女人がやって来て[来訪]食べ物を食え、買えという[勧める]。おかしいと思った男は拒否する[拒否]。言い争いになったところへ氏神がやって来て[来訪]女は退散する[退散]。女は堤の主が化けたものだった[化身]。男は氏神について家へ帰り、無事だった[帰宅]。

 堤の主に狙われた男だったが、氏神の導きで無事だった……という内容です。

 発想の飛躍は入ってきた老人が男の氏神だったことでしょうか。男―女―氏神の図式です。

 私だと口が卑しいですので、ぼた餅を食べてしまうところですが、そうしたらどうなるのでしょう。

◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.391-393.

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2022年11月 2日 (水)

五人小屋――モチーフ分析

◆あらすじ

 昔、奥山に仕事に入ってはいけないという山があった。ところが五人の木挽(こび)きが、何故人が入ってはいけないというのか、そんな馬鹿なことはないと言うので、五人連れでその山へ入って行った。木挽きたちはどんどん入って、そこで仕事をすることになり、小屋をかけて泊まった。夕飯を炊いて食べ、そま(斧)を枕元において寝た。その内に四人の木挽きはいびきをぐうぐうかいて寝入ってしまった。ところが一人の男はどうした訳かなかなか寝つかれない。すると、どこからともなく蝶々が一羽飛んできた。蝶は一人の男の鼻の周りをくるくる廻りはじめた。これはどうしたことだろうと思って見ている内に、その男の鼻からぷうっと血が出てきた。すると蝶は次の男のところへ行って、また鼻のほとりをくるくる廻りはじめた。見ていると、また鼻からぷうっと血が噴き出した。そして、とうとう四人とも鼻から血を出してしまった。男はこれはいけないと思って、他の男を起こしてみると、皆死んでいた。男は恐ろしくなって逃げ出さねばいけないと思ったが、そまを持って蝶を切ってやろうと思って、そまを振り回して蝶々に切ってかかった。しかし蝶々はひらひら身をかわして、なかなかそまが当たらない。その内にくたびれて息が弾んできた。そこで外へ逃げだそうとすると、戸口から御幣をかついだお爺さんが入ってきた。やれしもうた、自分は所の氏神だが、もう少し早く来ようと思ったが、他のところへ出かけていて一足遅れたばかりに四人を死なせてしまった。済まないことをしたが、お前は自分について来い。自分について来れば助かると言ってお爺さんが先に立って歩き出した。男はお爺さんについて山を出たので助かった。それで、所の氏神さまというのは大事にしなければいけない。

◆モチーフ分析

・奥山に仕事に入ってはいけない山があった
・五人の木挽きが何故人が入ってはいけないのか、そんな馬鹿なことはないと言って五人連れでその山へ入った
・そこで仕事をすることになり、小屋をかけて泊まった
・夕飯を炊いて食べ、そまを枕元に置いて寝た
・四人の木挽きはぐうぐういびきをかいて寝入ってしまった
・一人の男はどうした訳かなかなか寝付かれない
・どこからともなく蝶々が一羽飛んできた
・蝶は一人の男の鼻の周りをくるくる廻りはじめた
・その男の鼻からぷうっと血が出てきた
・蝶は次の男のところへ行って、また鼻のほとりをくるくる廻りはじめた
・またぷうっと鼻血が噴き出した
・とうとう四人とも鼻から血を出してしまった
・これはいけないと思った男は他の四人を起こしてみると、皆死んでいた
・男は逃げ出さねばいけないと思ったが、そまを振り回して蝶々に切ってかかった
・蝶はひらひら身をかわして、なかなかそまが当たらない
・くたびれて息が弾んできた
・外へ逃げだそうとすると、戸口から御幣をかついだお爺さんが入ってきた
・自分は所の氏神だが、他所へ出かけていて一足遅れたばかりに四人を死なせてしまった。お前は自分について来いとお爺さんは言った
・お爺さんが先に立って歩きだした
・男はお爺さんについて山を出たので助かった
・ところの氏神さまは大事にしなければいけない

 形態素解析すると、
名詞:男 四 お爺さん 鼻 そま 山 蝶 五 こと ところ 一人 仕事 木挽き 氏神 自分 蝶々 血 一 いびき お前 これ どこ ほとり 一足 人 他 他所 周り 夕飯 外 大事 奥山 小屋 息 戸口 所 枕元 次 皆 訳 御幣 身 馬鹿 鼻血
動詞:いける する 入る つく 出る 廻る 思う 死ぬ 言う ある かかる かく かける かつぐ かわす くたびれる なる 出かける 出す 切る 助かる 噴き出す 寝る 寝付く 寝入る 弾む 当たる 振り回す 来る 歩きだす 泊まる 炊く 立つ 置く 行く 起こす 逃げだす 逃げ出す 遅れる 飛ぶ 食べる
形容詞:ない
形容動詞:そんな
副詞:くるくる なかなか ぷうっと また ぐうぐう とうとう どう ひらひら 何故 先に
連体詞:その

 男/蝶、木挽き/蝶の構図です。木挽き―鼻血―蝶、男―蝶―氏神という図式です。

 禁じられた山[禁止]に入った五人の木挽きだったが[侵犯]、小屋で寝ているうちに蝶[魔性のもの]がやってきて四人の男を殺した[殺害]。残りの一人は起きていたので無事で[難を逃れる]、氏神に伴って山を出たので助かった[脱出]。

 人を殺す蝶に遭遇した五人の男たちは四人までが殺されてしまった……という内容です。

 発想の飛躍は蝶が鼻のまわりをくるくる回ると鼻血が出て死んでしまうことでしょうか。蝶―鼻血―男の図式です。

 石見の民話では珍しく怖い話です。蝶の正体は明らかにされません。その山に入ることが禁じられていたという理由づけになっています。

◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.389-390.

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2022年11月 1日 (火)

ポストモダン的認識の枠組みは果たして正しいのか――宇野常寛「リトル・ピープルの時代」

宇野常寛「リトル・ピープルの時代」を読む。この批評家さんは純文学からサブカルチャーまで幅広く物語を摂取して明快に論じているのが売りだと思う。ただ、議論の前提にあるのがポストモダン的な認識なのである。例えば東浩紀の批評に強く影響されている。

読んでいて思うのだけど、ポストモダン的な認識は当たっていないのではないかと思うのである。インターネット以前/以後の方が実態に即しているのではないか。

ポストモダンの本、リオタールの著作を読んで理解できなかったのだけど、リオタールはポストモダンを明快に論じている訳ではない。高度情報化社会の到来を予言したりはしていない。

例えばポストモダンでは大きな物語(イデオロギー等)が消失し、無数の小さな物語が乱立すると解釈されている。サブカルチャーの二次創作を取り上げれば、そういうことにはなるだろう。ただ、それも著作権という掌の上で踊っているに過ぎない。宣伝になるから見逃されているだけである。

大きな物語が死んだと言えるだろうか。冷戦の終結で唯物史観は退潮したが、今でもしぶとく残っている。フランクフルト学派の議論がポリティカル・コレクトネスに影響しているとのことである。

また、現在では新自由主義/グローバリズムという大きな物語が厳然としてあるのではないかと思う。かつては「いい大学に入っていい企業に就職すれば将来安泰」という図式があったが、現在では「弱肉強食ですよ。自己責任ですよ」という図式がとって代わっていると見ることができるのではないか。

「リトル・ピープルの時代」は国民国家をビッグ・ブラザーと見なし、1960年代末、政治の季節と共に死んだとしている。が、リアルな世界ではGoogleこそがビッグ・ブラザーではないだろうか。我々は自ら進んで情報をネット企業に差し出しているのである。「リトル・ピープルの時代」が刊行されたのは2010年代初頭であるが、2020年代の現在、中国の監視社会はビッグ・ブラザー的ではないだろうか。ロシア≒プーチンではないだろうか。

ポストモダン的な認識の枠組みに強引に当てはめて論じているように見えるのである。間違った前提の上で幾ら議論を積み重ねたところで、それは砂上の楼閣に過ぎない。思考の柔軟性に欠ける批評家という印象。

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うぐいす――モチーフ分析

◆あらすじ

 昔、娘がいた。何遍も婿をもらったが皆じきに帰ってしまう。ところが、また婿に来ようという男があった。娘は自分は月に一度ずつ町へ遊びに行くが、それが承知ならもらおうと言った。男はそれを承知で来た。娘は初めの話の様に毎月一度、町へ行くといって出ていったが、出る時、自分の留守に土蔵の二階を見てはいけないと言った。男は一体何があるのだろうと思うと見たくてたまらなくなった。そして壁に梯子(はしご)を立てかけ、そっと窓から覗いてみた。中には色々な木の花がいっぱい咲いていて、うぐいすが一羽、ほうほけきょう、ほうほけきょうと鳴きながら枝から枝へ飛んでいた。娘は町から帰ると、お前は自分があれだけ言っておいたのに、土蔵の二階を見てしまった。すぐ出ていけと言った。男は仕方なしに帰っていった。娘は町へ行くといって土蔵の二階へ上がって、うぐいすになって遊んでいたのだ。娘はやがてうぐいすになってしまった。うぐいすは元は娘であったそうだ。
◆モチーフ分析

・娘がいて何遍も婿をもらったが皆じきに帰ってしまう
・また嫁に来ようという男があった
・娘は月に一度町へ遊びに行くが、それを承知ならもらおうと言った
・男は承知で来た
・娘は初めの話の様に毎月一度、町へ行くといって出ていった
・出る時、自分の留守に土蔵の二階を見てはいけないと言った
・男は見たくてたまらなくなった
・壁に梯子を立てかけ、窓からそっと覗いた
・中には色々な木の花が咲いていて、うぐいすが一羽、ほうほけきょうと鳴きながら枝から枝へ飛んでいた
・娘は町から帰ると、あれだけ言っておいたのに土蔵の二階を見た。すぐ出ていけと言った
・男は仕方なしに帰った
・娘は町へ行くといって土蔵の二階へ上がって、うぐいすになって遊んでいた
・娘はやがてうぐいすになってしまった
・うぐいすは元は娘であった

 形態素解析すると、
名詞:娘 うぐいす 男 町 二 土蔵 一度 承知 枝 一 きょう それ 中 何遍 元 初め 壁 婿 嫁 時 月 木の花 梯子 毎月 留守 皆 窓 自分 色々 話
動詞:言う 出る 帰る 行く 見る いく なる もらう 来る 遊ぶ ある いう いける いる ほる 上がる 咲く 立てかける 覗く 飛ぶ 鳴く
形容詞:たまらない
形容動詞:じき
副詞:あれだけ すぐ そっと また やがて 仕方なしに

 娘/男の図式です。娘―うぐいす/土蔵―男の図式です。

 娘が婿に町に出かけるときは土蔵の二階を見るなと言い置いたが[禁止]、婿は見たくてたまらなくなって覗いてしまった[侵犯]。土蔵の二階では娘がうぐいすになって遊んでいた[変化]。婿は家を追い出された[追放]。
 見るなの禁止を破った婿は娘から追放された……という内容です。

 発想の飛躍は娘がうぐいすになることでしょうか。娘―(なる)―うぐいすという図式です。

 見るなの座敷型の話です。ここでは旅人ではなく婿が登場します。

◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.387-388.

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みんみん蝉――モチーフ分析

◆あらすじ

 昔、嫁と姑があった。あるとき針が無くなったので姑は嫁にお前は知らないかと言った。嫁は「見ん」と言った。それでも姑はお前が取ったのだろうといって、とうとう責め殺した。嫁は死んで蝉(せみ)になった。それで今でも、みん、みん、と言って鳴くのだそうである。

◆モチーフ分析

・嫁と姑がいた
・あるとき針が無くなったので、姑は嫁に知らないかと言った
・嫁は見んと言った
・姑は嫁が取ったのだろうと言って責め殺した
・嫁は死んで蝉になった
・それで今でも、みん、みんと言って鳴く

 形態素解析すると、
名詞:嫁 姑 とき みん みんと 今 蝉 針
動詞:言う いる なる 取る 死ぬ 無くなる 知る 見る 責め殺す 鳴く
連体詞:ある

 嫁/姑の構図です。家族同士の構図です。嫁―針―姑の図式です。

 嫁と姑がいて、あるとき姑の針が無くなったので嫁に知らないかと尋ねたところ[質問]、嫁は見んと言った[回答]。それでも姑はお前が取ったのだろうと言って責め殺した[責任転嫁]。嫁は死んで蝉になり、みん、みん、と鳴く[転生]。

 姑に針をとったと責め殺された嫁はミンミンゼミに転生した……という内容です。

 発想の飛躍は嫁が蝉に転生するところでしょうか。嫁―(なる)―蝉の図式です。

 亡くなった母方の祖母が呆けて疑り深くなりました。財布がないと言って叔母を責めたのだそうです。

◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)p.386.

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