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2022年10月 5日 (水)

馬が軒へあがる――モチーフ分析

◆あらすじ

 昔ある家に寝小便する小僧がいた。いくら注意しても治らないので、旦那もたいそう困って、ある晩小僧にあんなに寝小便してくれては困る。もう家の中では寝させられないから、今晩から駄屋の軒へあがって藁を敷いてその上へ寝なさい。そうすれば寝小便しても下は馬の駄屋だから構わない。肥やしもよくできる。お前も安心して寝られると言った。小僧はその晩から言われた通りに駄屋の軒へあがって寝た。なるほど小便は藁から板を通って駄屋へ落ちるので、小僧は安心して寝られた。馬こそいい災難で、眠っていると上から温い小便が落ちてくる。ところが、その内毎晩のことで、軒の板が腐って折れて、小僧も一緒に馬の鼻先へどすんと落ちた。小僧はそれでも知らずにぐうぐう寝ていると、馬が息を吹きかけながら鼻の先で転がした。小僧は目を覚まして、びっくりして大きな声で叫んだ。旦さん、旦さん、早く来てください。馬が軒へ上がりました。

◆モチーフ分析

・ある家に寝小便する小僧がいた
・いくら注意しても直らないので、旦那が小僧を駄屋の軒で藁を敷いて寝るように言った
・寝小便しても下は馬の駄屋だから構わない
・肥やしもよくできる
・小僧も安心して寝られる
・小僧はその晩から言われた通りに駄屋の軒へ上がって寝た
・馬はいい災難で、温い小便が藁から板を通って駄屋へ落ちてくる
・毎晩のことで、軒の板が腐って折れて、小僧も一緒に馬の鼻先へ落ちた
・小僧はそれでも知らずに寝ていると、馬が息を吹きかけながら鼻の先で転がした
・小僧は目を覚まして、旦さん、馬が軒へ上がりましたと大声で叫んだ

 形態素解析すると、
名詞:小僧 馬 軒 屋 寝小便 板 藁 こと それ 下 大声 安心 家 小便 息 旦 旦那 晩 毎晩 注意 災難 目 通り 鼻の先 鼻先
動詞:寝る 上がる 落ちる 言う いる できる 叫ぶ 吹きかける 折れる 敷く 構う 直る 知る 肥やす 腐る 覚ます 転がす 通る
形容詞:いい 温い
副詞:いくら よく 一緒に
連体詞:ある その

 旦那/小僧/馬の構図です。旦那―小僧―軒/寝小便―馬といった図式です。

 いくら注意しても寝小便が直らない小僧が駄屋の軒で寝ることになった[転居]。小僧は安心して寝小便したが[排泄]、その内軒の板が腐ってしまい[腐食]。馬の鼻先に落ちた[落下]。小僧は馬が軒に上がってきたと勘違いした[寝ぼけ]。

 寝小便が重なって軒の板が腐って落ちてしまった小僧だった……という内容です。

 発想の飛躍は馬が軒に上がってきたと小僧が寝ぼけたところでしょうか。小僧―軒/寝小便―馬の図式です。

◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)p.319.

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