ぶんぶん岩――モチーフ分析
◆あらすじ
須川にぶんぶん岩という岩があった。今では道路ができて岩もなくなったが、昔は夜など気味の悪い寂しいところであった。昔、若い女が夜糸をつむいで帰りにここで殺された。女は十九であった。それから夜に人がここを通ると「去年も十九 今年も十九 ぶうん ぶうん」と唄を唄って糸車を廻す音が聞こえた。それでここを「ぶんぶん岩」という様になった。ぶんぶん岩の下の田の畔(あぜ)は夜になると白い鶏が歩くということであった。横道に十九原というところがある。ここへは夜は若い女が出て「去年も十九 今年も十九」と言って踊りを踊ると言う。
◆モチーフ分析
・須川にぶんぶん岩という岩があった。夜は気味の悪い寂しいところであった
・昔、十九歳の女が夜に糸をつむいだ帰りにここで殺された
・それから夜にここを通ると「去年も十九 今年も十九 ぶうん ぶうん」と唄を唄って糸車を廻す音が聞こえた
・それでここをぶんぶん岩と言う様になった
・ぶんぶん岩の下の田の畔は夜になると白い鶏が歩くという
・横道に十九原というところがあって、夜に若い女が出て「去年も十九 今年も十九」と言って踊りを踊ると言う
形態素解析すると、
名詞:十九 夜 岩 ここ ところ 今年 去年 女 下の田 原 唄 昔 横道 気味 畔 糸 糸車 踊り 音 須川 鶏
動詞:いう 言う ある ぶる つむぐ なる 出る 唄う 帰る 廻す 歩く 殺す 聞こえる 踊る 通る
形容詞:寂しい 悪い 白い 若い
副詞:ぶんぶん
女/岩/唄の構図です。女―岩―唄の図式です。
昔、十九歳の女が糸をつむいだ帰りに殺された[殺害]。それから夜にここを通ると「去年も十九 今年も十九 ぶうん ぶうん」と唄って糸車を廻す音が聞こえるようになった[幽霊的事象]。そこでここをぶんぶん岩という様になった[由来]。ぶんぶん岩の死の畔は夜になると白い鶏が歩くと言う[風聞」。十九原と言うところがあって、夜に若い女が出て「去年も十九 今年も十九」と踊るという[風聞]。
若い女がここで殺されてから、幽霊の声が聞こえるようになったのが岩の名の由来だとする……という内容です。
発想の飛躍は「去年も十九 今年も十九 ぶうん ぶうん」という唄でしょうか。歳をとれない幽霊の悲哀です。女―岩―唄の図式です。
これも複数の伝説からなるお話です。
◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)p.369.
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