大きな話――モチーフ分析
◆あらすじ
昔、ある若者が大阪へ出て、初めて宿に泊まった。女中が来てガラガラと雨戸を閉めた。若者はそれを見て、この家の雨戸は簡単でいい。自分のところでは、朝から昼まで中かかって雨戸を開け、夕方には昼から中かかって雨戸を閉めると言った。夕食の時給仕に出たさっきの女中が、明日この後ろの畠を見ろ。随分広い畠に粟が沢山播いてあると言うと、若者は自分のところには粟三斗蒔きの畠があると言った。女中がこの上へ行ってみましょう。向こうにとても長い橋ができたと言うと、若者は自分のところの前の川には十日渡りの橋があると言った。女中が何を言っても若者は大きなことを言うので、これは大した家らしいと思った。若者は女中に自分のところに来ないか。うちへ来てくれたら、米を搗(つ)くこともいらない。水を担ぐこともいらないと言った。すると、それでは明日一緒に行きましょうということになって、女中は若者について来た。行ってみると。粟三斗蒔きという畠は小さい、草のいっぱい生えた畠で、三斗蒔きというのは一度蒔いたが生えない。二度蒔いたが生えない。三度蒔いたらようやく生えた。それで三度蒔きで、昼までかかって雨戸を開け、昼から中かかって閉める雨戸というのはたった一枚で、上に引っかかり下に引っかかりガッタンピッシと中々動かない。長い橋というのはどこにあるかと訊くと、この下の谷川にかかった赤い橋で、毎月十日になると金比羅さんの祭りに皆が渡るから十日渡りの橋と言うのだ。米は搗かせないというのは、袋を下げてあっちこっちで貰って歩くから搗く必要がない。水は担がせないというのは、水はたごが一つしかないから担がれない。片手で下げてくるのだと言った。
◆モチーフ分析
・ある若者が大阪へ出て、初めて宿に泊まった
・女中が来てガラガラと雨戸を閉めた
・若者は自分のところでは朝から昼までかかって雨戸を開け、昼から夕方までかかって雨戸を閉めると言った
・夕食の給仕に出たとき、女中が後ろの広い畠に粟が沢山播いてあると言った
・若者は自分のところには粟三斗蒔きの畠があると言った
・女中が向こうにはとても長い橋があると言った
・若者は自分のところの前の川には十日渡りの橋があると言った
・女中が何を言っても若者は大きなことを言うので、大した家らしいと思った
・若者は女中にうちへ来ないか、米を搗くことも水を担ぐこともいらないと言った
・翌日、女中は若者について行った
・行ってみると、粟三斗蒔きは三度蒔いたらようやく生えたということだった
・雨戸はガタピシ動かない
・毎月十日になると金比羅さんの祭りがあるから十日渡りの橋と言う
・米は袋を下げてあっちこっちで貰って歩くから搗く必要がない
・水はたごが一つだけあるから担がれない。片手で下げてくるのだと言った
形態素解析すると、
名詞:若者 女中 こと 雨戸 十 三 ところ 橋 粟 自分 水 畠 米 あっちこっち うち たご とき ガラガラ 一つ 何 前 向こう 夕方 夕食 大阪 家 宿 川 後ろ 必要 昼 昼ま 朝 毎月 沢山 片手 祭り 給仕 翌日 袋 金比羅
動詞:言う ある 蒔く 下げる 出る 担ぐ 搗く 来る 渡る 閉める いう いる かかる ついて行く なる 動く 思う 播く 歩く 泊まる 生える 行く 貰う 開ける
形容詞:でかい ない 広い 長い
副詞:とても ようやく ガタピシ 初めて
連体詞:ある 大きな 大した
若者/女中の構図です。抽象化すると男/女です。若者―大きな話―女中という図式です。
大阪に初めて泊まった[宿泊]若者に女中が話しかける[対話]と若者はそれより大きな話をする[大言]。大した家らしいと思った[感心]女中は若者について行く[同行]。ところが若者の話は嘘ではないが[誤誘導]、とてもみすぼらしいものだった[露見]。
大きなことを放してばかりの若者だったが、実態はとてもみすぼらしいものだった……という内容です。
発想の飛躍は若者の大言壮語でしょうか。若者―大きな話―女中という図式です。この後女中は大阪に帰ったのでしょうか。
◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.317-318.
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