« 話は彦八――モチーフ分析 | トップページ | 唯野教授の野望――筒井康隆「文学部唯野教授」 »

2022年10月 8日 (土)

八匹の馬――モチーフ分析

◆あらすじ

 彦八の旦那のところへ商人が一夜宿を借りた。夕飯を食べながら色々話すうちに商人が、旦那様、今日自分が来る道でタノキのマタへ烏が巣をかけていたと言った。旦那がそんな馬鹿げた話をしなさんなと言った。いや、嘘ではない。本当であると商人が言ったので、もし本当でなかったら、お前の荷をみんな置いていけ。もし自分が負けたら八匹の馬がいるから皆あげようと旦那が言った。旦那と商人は手を打って約束をした。朝になると旦那と商人は飯も食わずに出かけた。旦那が商人について行くと、田の中に木があって、木の股に烏が巣をかけていた。旦那、あれを見よ。田の木の股に烏が巣を作っておろうと商人が言った。旦那は狸はどこにいるかね。狸なんぞいはしないじゃないかと言うと、商人は狸の話など誰もしはしない。自分が言ったのは田の木の股と言ったのだと言った。旦那の負けになった。そこで旦那はこっそり彦八を呼びにやった。そして訳を話し、お前はこれの下男ということになって上手くやってくれと頼むと、彦八はポンと膝を打って、それは自分が引き受けようと言って、本当の下男を呼んで駄屋から一番痩せた馬を出させ、庭の植木鉢に縄をかけて引っ張らせ、商人さん、さあハチヒキの馬をあげるから受け取れと言った。商人は話が違うが、まあいいと思って馬を引っ張って出ると、商人さん、お前の荷は置いていけ、八引く二(荷)が残るということがあるからと言って、とうとう商人の荷を取り上げてしまった。

◆モチーフ分析

・彦八の旦那のところに商人は一夜宿を借りた
・商人が今日自分が来る道でタノキのマタへ烏が巣をかけていたと言った
・旦那がそんな馬鹿げた話をしなさんなと言った
・もし本当でなかったら商人の荷をみんな置いていけ。旦那が負けたら八匹の馬をあげようと賭けをした
・朝になると旦那と商人は出かけた
・旦那が商人について行くと、田の中に木があって木の股に烏が巣をかけていた
・狸はどこだと旦那が言った
・狸の話などしてはいない。自分が言ったのは田の木の股と言ったのだと商人が言った
・旦那の負けとなった
・旦那はこっそり彦八を呼びにやって訳を話した
・彦八は自分が引き受けようと言った
・下男を呼んで駄屋から一番痩せた馬を出させ、植木鉢に縄をかけて引っ張らせ、ハチヒキの馬をあげるから受け取れと言った
・商人は話が違うが、まあいいと思って馬を引いて出た
・彦八が八引く二(荷)が残るということがあると言って商人の荷を取り上げた

 形態素解析すると、
名詞:商人 旦那 彦八 馬 木 自分 荷 話 八 巣 烏 狸 股 二 こと ところ どこ みんな タノキ ハチ ヒキ マタ 一夜 下男 今日 宿 屋 朝 本当 植木鉢 田 田の中 縄 訳 賭け 道
動詞:言う かける する あげる ある なる 呼ぶ 引く 負ける いう いる ついて行く やる 借りる 出かける 出す 出る 取り上げる 受け取る 引き受ける 引っ張る 思う 来る 残る 痩せる 置く 話す 違う 馬鹿げる
形容詞:いい
形容動詞:そんな
副詞:こっそり まあ もし 一番

 旦那/商人/彦八の構図です。商人―タノキ―旦那、商人―ハチヒキの馬―彦八という図式です。

 彦八の旦那が商人と賭けをした[勝負]。商人はタノキとは田の木だと言って商人の勝ちとなった[敗北]。旦那は彦八を呼んで八匹の馬を鉢引きの馬にすり替えた[すり替え]。その際八引く二で商人の荷を取り上げてしまった[追徴]。

 田の木を狸と勘違いさせたから八匹の馬は鉢引きの馬にすり替える……という内容です。

 発想の飛躍は鉢引きの馬でしょうか。商人―ハチヒキの馬―彦八の図式です。更に八引く二(荷)で荷物も取り上げてしまうのです。

◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.324-325.

|

« 話は彦八――モチーフ分析 | トップページ | 唯野教授の野望――筒井康隆「文学部唯野教授」 »

昔話」カテゴリの記事