閻魔になった彦八――モチーフ分析
◆あらすじ
彦八が死んで閻魔(えんま)さんの前へ行った。閻魔さんがお前は娑婆(しゃば)で何をしていたか訊いた。彦八は面白い話をして人を楽しませていたと答えた。閻魔さんは嘘を言え、面白い話ではない。いつも人を騙していたではないか。お前は地獄へ行くより仕方がないと言った。そんなことはない。あなたにも聞かせる。それはとても面白い話だと彦八が言うと、そんなに面白い話ならひとつ聞かせてもらおうかと閻魔さんが言った。彦八は話は高い台の上へあがらねば話せない。それから装束もつけねばやはりいい話ができないと言った。装束も何もないからそのままで話したらよいではないかと閻魔さんが言うと、装束はあなたの着物を貸していただけば結構ですと彦八が言ったので、閻魔さんは台から降りて着物を脱いだ。彦八はその着物を着てすぐ台の上へあがって話を始めた。ちょうどその時地獄から鬼が出て今来た罪人はどれじゃと言った。閻魔さんは罪人は閻魔の着物を着て台の上にいると言った。彦八は台の上から閻魔さんを指して罪人はそこにおると大きな声で叫んだ。わしは閻魔だ。台の上におるのが罪人だと閻魔さんは言ったが、偽りを言うなと言って鬼は閻魔さんを捕まえて地獄へ連れていってしまった。それから閻魔さんは彦八になったので罪人の取調べもやさしいそうである。
◆モチーフ分析
・彦八が死んで閻魔さんの前へ行った
・閻魔さんがお前は娑婆で何をしていたか訊くと、彦八は面白い話をして人を楽しませていたと答えた。
・閻魔さんがお前はいつも人を騙していたでないか。地獄へ行くより仕方がないと行った
・彦八はそんなことはない。あなたにも面白い話を聞かせると言った
・閻魔さんはそんなに面白い話なら、ひとつ聞かせてもらおうと言った
・彦八は話は高い台の上へあがらねば話せない。装束もつけねばやはりいい話ができないと言った
・装束も何もないからそのままで話したらよいではないかと閻魔さんが言った
・彦八はあなたの着物を貸していただけば結構ですと言った
・閻魔さんは台から降りて着物を脱いだ
・彦八はその着物を着てすぐ台の上へあがって話を始めた
・その時地獄から鬼が出て今来た罪人はそれかと言った
・彦八は台の上から閻魔さんを指して罪人はそこにいると大きな声で叫んだ
・閻魔さんは台の上にいるのが罪人だと言ったが、偽りを言うなと言って鬼は閻魔さんを捕まえて地獄へ連れていった
・閻魔さんは彦八になったので、罪人の取調べもやさしいそうである
形態素解析すると、
名詞:閻魔 彦八 話 台 上 罪人 地獄 着物 あなた お前 人 装束 鬼 こと そこ そのまま それ ひとつ 今 何 前 声 娑婆 時 結構
動詞:言う 行く あがる いる する 聞く つける できる なる 偽る 出る 取調べる 叫ぶ 始める 指す 捕まえる 来る 楽しむ 死ぬ 着る 答える 脱ぐ 訊く 話す 話せる 貸す 連れる 降りる 騙す
形容詞:面白い ない いい やさしい よい 仕方がない 何もない 高い
形容動詞:そんな
副詞:いつも すぐ そんなに やはり
彦八/閻魔の構図です。抽象化すると、人間/異界の人物です。彦八―着物―閻魔の図式です。
彦八が死んで閻魔さまの前へ行った[冥界行き]。彦八は生前面白い話をして人を楽しませていたと言う[申告]。閻魔さまがお前は人を騙してばかりではないかと言うと[却下]、それなら面白い話をしてみせると彦八は言った[提案]。話をするには準備が必要だと閻魔さまの着物を着て台の上にあがったところ[すり替え]に鬼がやって来た[到着]。鬼は閻魔さまを罪人と思って[誤認]地獄へ連れていった[連行]。
言葉巧みに閻魔さまと入れ替わった彦八は自分が閻魔さまとなってしまう……という内容です。
発想の飛躍は彦八が舌先三寸で閻魔さまと入れ替わってしまうところでしょうか。彦八―着物―閻魔の図式です。彦八は死んでも彦八であるという面白みがあります。
◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.326-327.
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