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2022年10月22日 (土)

座頭の呪い――モチーフ分析

◆あらすじ

 昔、畳の長走りに大きな酒屋があった。山の手にずらりと酒蔵が並んでおり、高瀬舟を二杯持っていて舟の者が五六軒もあった。ある年の大歳の晩に座頭が来て宿を貸してくれと頼んだ。しかし酒屋では大切な大歳の晩だから赤乞食(あかぼいとう)には宿は貸せないと言って追い出してしまった。もっともそうではなく酒を飲ませてくれといってきたので、酒を飲ませると酒癖の悪い男でごねて何時までも帰ろうとしない、仕方がないので舟の者を呼んだ。舟の者たちは外へ出そうとしたがなかなか言うことを聞かないので、殴ったり蹴ったり散々痛めつけて下の川端へ引きずり出したのだとも言う。座頭は出る時、屋根小口の萱を三本抜いて琵琶を逆さまにして弾いて、今に見ておれ、この酒屋を潰してやると言って呪った。それからどうも事業が上手くいかなくなって、一度は天気のいい日であったが、酒をいっぱい造りこんである五尺の酒桶の樋(とい)がひとりでに抜けて、中の酒がみんな流れてしまった。酒は下の川へ流れて、ずっと川下の方まで酒の匂いがした。また作った酒がみんな腐って、さっぱり酒にならないこともあった。こうして酒屋は潰れてしまった。

◆モチーフ分析

・畳の長走りに大きな酒屋があって、高瀬舟を二杯持っていて舟の者が五六軒あった
・ある年の大歳の晩に座頭が来て宿を貸してくれと頼んだ
・酒屋は大切な大歳の晩だから宿は貸せないといって追い出した
・もしくは座頭が酒を飲ませてくれと言ってきた
・酒癖の悪い男でごねて何時までも帰ろうとしない
・舟の者を呼んで、外へ出そうとしたが言うことを聞かない
・殴ったり蹴ったり散々痛めつけて川端へ引きずり出した
・座頭は出る時に屋根小口の萱を三本抜いて琵琶を逆さまに弾いて、今に見ておれ、この酒屋を潰してやると呪った
・それからどうも事業が上手くいかなくなった
・天気のいい日に五尺の酒桶の樋がひとりでに抜けて中の酒がみんな流れてしまった
・作った酒がみんな腐って、酒にならないこともあった
・こうして酒屋は潰れてしまった

 形態素解析すると、
名詞:酒 酒屋 座頭 こと みんな 大歳 宿 晩 者 舟 二 三 五 五六 中 事業 今 外 大切 天気 小口 屋根 川端 年 日 時 桶 樋 琵琶 男 畳 萱 逆さま 酒癖 長 高瀬
動詞:ある する いく 出る 言う 貸す ごねる なる 作る 呪う 呼ぶ 帰る 引きずり出す 弾く 抜く 抜ける 持つ 来る 殴る 流れる 潰す 潰れる 痛めつける 聞く 腐る 見る 蹴る 追い出す 頼む 飲む
形容詞:いい 上手い 悪い
副詞:こう どう ひとりでに 何時まで 散々
連体詞:ある この 大きな

 座頭/酒屋の構図です。座頭―(引きずり出す)―舟の者、座頭―(呪う)―酒―酒屋といった図式です。

 大歳の晩に宿を貸してくれ[要請]と言ってきた座頭は酒癖が悪く何時までも帰ろうとしないので殴って引きずりだした[拒否]。座頭は酒屋を呪った[呪い]。それから事業がうまくいかなくなって酒屋は潰れてしまった[倒産]。

 座頭が呪ったところ、事業が上手くいかなくなった酒屋は潰れてしまった……という内容です。

 発想の飛躍は座頭が萱を三本抜いて琵琶を逆さまに弾いて呪うことでしょうか。座頭―琵琶―(呪う)―酒屋の図式です。座頭の呪力の高さを説明したお話です。

◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.362-363.

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