はんだの馬場の尻焼狐――モチーフ分析
◆あらすじ
小路の爺さんは度胸のいい人だった。ある日日が暮れてから山の内の方から牛を引いて帰った。寂しいはんだの馬場に差しかかると、年頃の娘がひょっこり出てきて道連れになった。そして、爺さん、足がだるいがその牛に乗せてくれないかと言った。爺さんは来たなと思ったが、そしらぬ顔で、乗せてやるともと言い、鞍にかき乗せて、しっかりと綱でくくりつけた。娘はそんなに締めたら痛いと言う。いいや、落ちると悪いからと構わずにしっかり縛りつけて歩き出した。その内に村の近くになった。娘は、爺さん、降ろしてください。歩くからと言ったが、いいや、もうじきに村だから、ついでに乗ってらっしゃいと答える。小便がしたいから降ろして下さいと言うと、もうじきだから、ついでにそのままにしなさい。娘は降りようと思ってもがいたが、しっかり縛りつけてあるのでどうにもならない。爺さんはいくらもがいても何と言っても取りあわず、とうとう自分の家まで帰った。そして門口から、婆さん、お客さんを連れてきたから足を洗う湯をもってきなさい。うめないでよい。なるたけよく沸かして熱くしてもってきなさいと言った。婆さんは変なことだと思ったが、ぐらぐら煮える熱い湯をたらいに入れてもってきた。爺さんは娘をしっかり抱きかかえて降ろし、それお客人、足を洗ってあげますと言って湯の中へ入れたので、娘はたちまち正体を現し狐になって、尻を焼かれて逃げていった。
◆モチーフ分析
・小路の爺さんは度胸がよかった
・日が暮れてから牛を引いて帰ってきた
・はんだの馬場に差しかかると年頃の娘と道連れになった
・娘は足がだるいから牛に乗せてくれと言った
・爺さんは応じて、娘を鞍に乗せて綱でくくり付けた
・娘が痛いといったが、爺さんは落ちると悪いからと取りあわない
・村の近くになって娘が降ろしてくれと言ったが、爺さんは取りあわない
・娘は降りようともがいたが、しっかり縛りつけられているのでどうにもならない
・爺さんは家に着くと婆さんに足を洗う湯を頼んだ
・婆さんが煮えた熱い湯をたらいに入れて持ってきた
・爺さんが娘を降ろして足を洗おうとして湯の中に入れると、娘は正体を現し狐になった
・尻を焼かれて狐は逃げていった
形態素解析すると、
名詞:娘 爺さん 湯 足 婆さん 牛 狐 たらい はんだ 中 家 小路 尻 年頃 度胸 日 村 正体 綱 近く 道連れ 鞍 馬場
動詞:なる 乗せる 入れる 取りあう 洗う 言う 降ろす いく くくり付ける する もがく 差しかかる 帰る 引く 応じる 持つ 暮れる 焼く 煮える 現す 着く 縛りつける 落ちる 逃げる 降りる 頼む
形容詞:だるい よい 悪い 熱い 痛い
副詞:しっかり どう
爺さん/娘(狐)の構図です。抽象化すると、人間/動物となります。爺さん―牛―娘=狐、爺さん―(煮える)湯―娘=狐といった図式です。
爺さんが牛を引いて帰ってきたところ[帰還]、はんだの馬場で娘と道連れになった[遭遇]。足がだるいと言う娘を牛に乗せ[依頼][承諾]、綱で縛りつける[緊縛]。娘は文句を言うが[苦情]、爺さんは取りあわない[無視]。家に着き、煮えた湯で足を洗おう[検査]とすると正体を現し[露見]、狐は逃げていった[逃走]。
馬場で道連れになった娘が牛に乗せてくれるよう依頼し、爺さんが応じるが、しっかり縛りつけて問答無用で家まで連れ帰る。煮えた湯を足につけると狐は正体を現した……という内容です。
発想の飛躍は、爺さんが狐に勝つことでしょうか。爺さん―(煮える)湯―娘=狐の図式です。狐に化かされる話がほとんどなのですが、この話では珍しく人間が勝ちます。
◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.311-312.
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