血の池――モチーフ分析
◆あらすじ
島は左鐙から四キロ近く入った山中の寂しいところである。昔、畳へ出た平家の一族のものか、それとも別のものか、ここへ落ちていった平家の落人があった。途中の家で道を教えてもらい、追手が来ても言ってくれるなと口止料を置いていったが、その中に病人が一人いて、それをいたわりながら下島まで辿りついたとき、追手が来た。そこで病人をほとりのケヤキの大木に隠して戦ったが、皆討たれてしまった。ところが病人もケヤキの木の下の池に影が映ったため追手に見つかり、槍で刺し殺されてしまった。その時したたり落ちた血で真っ赤に染まったため、その池は血の池と呼ばれている。落人たちが哀れな最後を遂げたのは、口止料まで貰いながら落人の行き先を教えた途中の家の者のせいであった。そのためこの家では代々よくないことが続いたという。
◆モチーフ分析
・畳へ出た平家の落人が途中の家で道を教えてもらい、追手が来ても言うなと口止料を置いていった
・落人の中に病人が一人いて、それをいたわりながら下島まで辿りついたとき追手が来た
・病人をケヤキの大木に隠して戦ったが、皆討たれてしまった
・病人もケヤキの木の下の池に影が映ったため追手に見つかり、槍で刺し殺されてしまった
・そのときしたたり落ちた血で池が真っ赤に染まったため、血の池と呼ばれている
・落人たちが哀れな最後を遂げたのは口止料をもらいながら落人の行き先を教えた途中の家の者のせいであった
・そのため、この家では代々よくないことが続いたという
形態素解析すると、
名詞:落人 ため 家 病人 追手 とき ケヤキ 口止 池 途中 こと それ 一人 下 下島 中 代々 哀れ 大木 平家 影 最後 木 槍 畳 皆 真っ赤 者 血 血の池 行き先 道
動詞:教える 来る いう いたわる いる する もらう 出る 刺し殺す 呼ぶ 戦う 映る 染まる 続く 置く 落ちる 見つかる 言う 討つ 辿る 遂げる 隠す
形容詞:よい
連体詞:その この
接尾辞:料 たち
落人/家の者/追手の構図です。落人―口止料―家の者―(教える)―追手の図式です。
平家の落人は畳から島へと落ち延びた[逃亡]。途中道を訊いた家に口止め料を払ったが[口止め]、家の者が追手に教えたため[通報]、皆討たれてしまった[全滅]。病人がいたがケヤキの木の下の池に影が映ったため見つかってしまった[露見]。病人の血で池は真っ赤に染まった[鮮血]。
落人が病人をケヤキの木に隠したが、池に姿が写ったため見つかってしまい討たれた。そのときの血で池が真っ赤に染まった……という内容です。
発想の飛躍は病人の姿が池に映ったことでしょうか。病人―池―追手の図式です。
◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)p.361.
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