猫島犬島――モチーフ分析
◆あらすじ
昔、聖武天皇の勅願によって日本全国に国分寺が建てられた。石見の国でも国分の丘に建てられたが、たいそう立派なもので、その甍(いらか)の陰が遠く唐の国まで届いて田畑の陰となって作物を作る邪魔となった。そこで唐の国から一匹の赤い猫が日本へ渡って来て、国分寺を焼き払って陰を取り除こうと思って様子を窺っていた。ところが日本の犬がこれを嗅ぎだし、猫を見つけると一気にかみ殺そうと思って飛びかかった。びっくりした猫は逃げ出したが、追い詰められて畳ヶ浦の上の古登多加山(ことたかやま)から海へ飛び込んだ。犬も続いて飛び込んだが、寒中のことで、二匹とも凍え死んでそのまま二つの岩になった。これが猫島と犬島である。猫島、犬島は浜田市国府の畳ヶ浦にあって周囲四、五〇メートル、高さ三〇メートル、同じ様な大きさで海岸に近い方が犬島、遠い方が猫島である。
◆モチーフ分析
・全国に国分寺が建てられ、石見の国でも国分寺が建てられた
・石見の国分寺はたいそう立派で甍の陰が唐の国まで届いて作物を作る邪魔となった
・唐の国から一匹の赤い猫が日本へ渡って来て、国分寺を焼き払おうと様子を窺っていた
・日本の犬がこれを嗅ぎだし、猫をかみ殺そうと思って飛びかかった
・びっくりした猫は逃げたが、追い詰められて畳ヶ浦の海へ飛び込んだ
・犬も飛び込んだ
・寒中で、二匹とも凍え死んでそのまま二つの島となった
・これが猫島と犬島である
形態素解析すると、
名詞:国分寺 国 猫 これ 唐 日本 犬 石見 一 二 びっくり 二つ 作物 全国 寒中 島 様子 海 犬島 猫島 甍 畳ヶ浦 立派 陰
動詞:建てる 飛び込む かみ殺す なる 作る 凍え死ぬ 嗅ぎだす 届く 思う 来る 渡る 焼き払う 窺う 追い詰める 逃げる 飛びかかる
形容詞:赤い
形容動詞:邪魔
副詞:そのまま たいそう
犬/猫の構図です。猫―国分寺―犬の図式です。猫―海―猫島、犬―海―犬島、国分寺―陰―唐でもあります。
石見国分寺を焼き払おう[焼却]と唐の国から渡ってきた[渡来]猫だったが、日本の犬に追い立てられ[追跡]、寒中の海に飛び込み凍死して[凍死]岩と化した[化石]。
国分寺を焼き払おうとした唐の猫が日本の犬と争って寒中の海に落ちて凍死して岩になった……という内容です。
発想の飛躍は石見国分寺の陰が唐の国まで届いたというところでしょうか。国分寺―陰―唐の図式です。
実際の国分寺では火事があったと発掘物から知れる様です。
◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)p.250.
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