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2022年9月 4日 (日)

博労と狐――モチーフ分析

◆あらすじ

 昔、博労(ばくろう)がいた。牛や馬を売ったり買ったりするのが商売で、なかなか悪賢い男であった。近くによく化ける狐がいた。ある日博労が狐にお前は何変化知っているか尋ねた。狐は七変化知っていると答えた。すると博労は自分は八変化知っていると答えた。狐がひとつ教えてくれんかと言うと、博労は自分は博労だからお前が良い牛に化ければ教えてやる、お前より一変化多いから狐がなんぼ変化しても見れば分かると答えた。

 狐は良い牛に化けるからひとつ教えて欲しいと頼んだ。それではずっと良い牛に化けよと博労が言い、狐は一変化多く教えて貰おうと思って良い牛に化けた。博労はそれをあれこれ言って直させて良い牛にこしらえてお金持ちの百姓のところへ連れていった。百姓の旦那はとても良い牛なので沢山の金を払った。博労は金を沢山貰って帰った。

 狐は駄屋へ入れられた。藁を与えられたが少しも食べられない。仕方ないので二三日いて抜けて帰った。

 狐は博労のところに来て、やれ苦しかった、二三日ほど何も食わないで戻ったから早く変化を教えてくれと頼んだ。博労はそういう約束だったから教えてやるから大きな袋をひとつ持ってこいと言った。

 狐が袋を持ってくると、お前に親類や子供や兄弟がいれば皆呼んでこい。そうれば皆習われる。お前一人習ってもつまらん、皆連れて知らねばいかんと答えた。狐は親兄弟、一家親類みな連れてきた。お前の兄弟親類は他にはおらんかと博労が尋ねると、狐はこれほどだと答えた。それじゃあ、この袋に入れと博労が言った。

 狐が皆袋に入ると、博労は口をしっかり縛って、教えるからよく習えよと言って大きな棒を持ってきて、袋に入っているのを「一変化」といってぶん殴った。狐は痛いので、こんなことをしてはいけない、変化を教えよと言った。博労はこれが変化だ、二変化といって叩いた。コンコン狐が言うのを三変化、四変化と言って、とうとう七変化と言って七つ叩いたときには狐はもう皆死んでしまった。

◆モチーフ分析

・悪賢い博労がいた
・よく化ける狐がいた
・博労、狐に何変化知っているか尋ねる
・狐が七変化知っていると答えると、博労は八変化知っていると答える。嘘
・狐、一変化教えて欲しいと頼む
・博労、狐に牛に化けさせる
・博労、牛に化けた狐を百姓に売って大金を得る
・狐は牛小屋に入れられるが、食べるものもないので二三日で抜けてくる
・狐、博労に一変化教えて欲しいと頼む
・博労、狐に大きな袋を持ってこさせる
・博労、狐に親兄弟、親類を呼んでこさせる。嘘
・博労、狐たちに袋に入らせる
・博労、袋の口を縛って逃げられないようにする
・博労、変化と言って袋を棒で叩く
・狐、痛い、早く変化を教えよと言う
・博労、これが変化だと言って袋を叩く
・七回叩いたところで狐は皆死ぬ

 形態素解析すると、
名詞:狐 博労 変化 袋 一変 嘘 牛 二三 七 八 これ ところ もの 七変化 何 口 大金 棒 牛小屋 百姓 皆 親兄弟 親類
動詞:化ける 叩く 教える 知る 言う いる 答える 頼む する 入る 入れる 呼ぶ 売る 尋ねる 得る 抜ける 持つ 死ぬ 縛る 逃げる 食べる
形容詞:欲しい ない 悪賢い 早い 痛い
副詞:よく
連体詞:大きな

 狐/博労の構図です。狐―変化―博労、百姓―牛/狐―博労、狐―袋―博労の図式です。

 博労、狐に何変化知っているか尋ねる[質問]。博労、狐より一変化多いと言う[騙し]。一変化を知りたい狐、牛に化ける[変化]が百姓に高値で売られる[大儲け]。抜け出してきた[逃走]狐、博労に一変化教えるように頼む[再依頼]。博労、狐に一族を連れてこさせる[連行]。狐たちを袋に入れた博労、棒で叩く[殴打]。狐、文句を言うが[苦情]、博労、構わずに叩く[殴打]。狐たち、皆死ぬ[死亡]。

 博労が嘘で狐を騙し売り飛ばすが、もう一変化を知りたい狐は更に博労に騙されて袋詰めにされて叩き殺されてしまう……という内容です。

 発想の飛躍は博労が狐に一変化多く知っていると騙すところでしょうか。狐―七変化/八変化―博労の図式です。

 どうしてもその一変化を知りたい狐はまんまと騙されてしまうのです。博労の悪知恵が狐を上回る話であります。

◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.227-229.

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