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2022年9月24日 (土)

茗荷――モチーフ分析

◆あらすじ

 ある夕方に金持ちのお客が宿屋へ着いた。お客は沢山の金を持っていたので、これを亭主に預けた。亭主は茗荷をたくさん食べると物を忘れるということを聞いていたので、あちらこちらで茗荷を買い集めて、そのお客にご馳走した。お客はまた大の茗荷好きであったので、出した茗荷をみんな食べた。あくる朝、亭主はお客が預けた金を忘れてたつと良いがとそればかり祈っていた。ところが、お客は旅支度を済ますと、たいへんお世話になりました。では預けておいたお金を頂きましょうと言ったので、仕方なく出して渡した。亭主はあんなに沢山茗荷を食べさせたのだから何か忘れるはずだがと思って気をつけていたが、お客は何一つ忘れるものもなく、皆持って出ていった。亭主はすっかり当てが外れたので嫌な顔をして帳場の机にもたれている内についうとうとと眠ってしまった。昼前になって目を覚まし、皆の者、さっきのお客は大きな忘れ物をしたでと言った。皆はびっくりして預けた金を忘れていったのかと訊くと、宿賃を払うのを忘れていってしまったと言ったが、もう後の祭りだった。

◆モチーフ分析

・ある夕方、金持ちの客が宿屋へ着いた
・客は沢山の金を亭主に預けた
・亭主は茗荷をたくさん食べると物を忘れるというので、あちこちで茗荷を買い集めて客にご馳走した
・客は茗荷好きだったので、出した茗荷をみんな食べた
・あくる朝、亭主は客が預けた金を忘れてたつと良いがと祈っていた
・ところが客は旅支度を済ませると、では預けておいたお金を頂きましょうと言ったので、仕方なく出して渡した
・亭主はあんなに沢山茗荷を食べさせたのだから何か忘れるはずだと思って気をつけていたが、客は何一つ忘れるものなく、皆持って出ていった
・当てが外れた亭主は嫌な顔をして帳場の机にもたれえうとうと眠ってしまった
・昼前になって目を覚まし、皆の者、さっきのお客は大きな忘れ物をしたと言った
・皆びっくりして預けた金を忘れていったのかと訊くと、宿賃を払うのを忘れていってしまったと言った
・後の祭りだった

 形態素解析すると、
名詞:客 亭主 茗荷 皆 金 沢山 あくる朝 あちこち お客 お金 ご馳走 さっき たくさん たつ はず びっくり みんな もの 夕方 宿屋 宿賃 帳場 後の祭り 忘れ物 旅支度 昼前 机 気 物 目 者 金持ち 顔
動詞:忘れる 預ける 言う 食べる する 出す いう いく つける なる もたれる 出る 外れる 当てる 思う 払う 持つ 済ませる 渡す 眠る 着く 祈る 覚ます 訊く 買い集める 頂く
形容詞:ない 仕方ない 良い
形容動詞:あんな 嫌
副詞:うとうと 何か 何一つ
連体詞:あくる 大きな

 客/亭主の構図です。客―茗荷/(忘れる)―亭主、客―金―亭主という図式です。

 宿に泊まったお客が沢山の金を亭主に預けた[預託]。亭主は茗荷を沢山食べるとと物忘れするというので茗荷を沢山お客に食べさせる[ご馳走]。明くる朝、客は旅支度をすると預けていた金を返してもらい出ていった[返金]。当てが外れた亭主は帳場でうとうとしてしまうが、お客が宿賃を払うのを忘れていたことに気づいた[判明]。

 大金を預けた客に預けたことを忘れさせようと亭主は茗荷を食べさせるが、客は宿賃を払うのを忘れてしまった……という内容です。

 発想の飛躍は茗荷を食べると物忘れするということでしょうか。客―茗荷/(忘れる)―亭主という図式です。

◆参考文献
・『日本の民話 34 石見篇』(大庭良美/編, 未来社, 1978)pp.292-293.

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