観光学必読の書――ジョン・アーリ/ヨーナス・ラースン「観光のまなざし」
ジョン・アーリ/ヨーナス・ラースン「観光のまなざし (増補改訂版)」を読む。初版は1990年に出されたそうで、増補改訂版が出版されたのは2011年とある。なので、Web2.0といった情報通信面での革命的進化についても触れられている。
本書の「まなざし」はフーコーの議論を援用したものとのこと。観光においては見る/見られる関係にある。観る価値があるものなのかの価値判断も伴う。
当ブログ的には第七章の写真論と第八章のパフォーマンス論が参考になるか。例えば島根県浜田市の三宮神社では神社の拝殿を舞台にして観光神楽を上演している。日常と観光との間の分化が溶融しているとも言える。
パッケージ・ツアーの発明とカメラの発明が共に1840年代だったというのも興味深い。
最終章の予測は化石燃料が枯渇して旅行が近代以前に戻ってしまうという最悪のシナリオを想定している。自分が生きている内にはそこまで行かないだろうけど、それ以降の世代だとそうなるかもしれない。
本書は観光学の理論書として必読の本と言えるだろう。
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